「はぁ……はぁ……」
「みんな大丈夫っ!?すんごいことなってたみたいだけど!」
息を切らしながらまざるを抱えてなんとか事務所の前まで来たソードとムネツグ。はるが階段を駆け下り2人を迎えた。
「なんとか逃げてきたんですけど……まざるちゃんがっ!」
「と、とりあえず入って!」
満身創痍のまざるを見て気が動転しつつも、なんとかドアを開け3人を中へ入れる。
――――――――――
「…………」
水を一気飲みするムネツグ。ソファの上でゴロンと寝転がるなお。目覚めてからずっと部屋の隅で縮こまっているまざる、それを心配そうに見つめているはる。
なんとも言えない殺伐とした空気が、事務所内に充満していた。そんな中――
「あのっ!」
――最初に口を開いたのははるだった。全員の視線がはるに向けられる。若干プレッシャーを感じながらも、深呼吸して続けた。
「……今回のこと、割とSNSとかでも話題になってて、さ。色々流れてきたよ。ボロボロのユウナンとか」
銃の怪人との街中での大戦闘。まざるたちも怪人も暴れすぎたせいか、インターネットでもそれなりに話題になっているようだ。
「一体何があったの……?」
三角座りでちょこんと座っていたまざるがついに口を開いた。はるを見る目が涙で滲んでいる。
「肉片……銃の怪人はっ……銃の怪人は……私のっ、私の友達の江崎くんっ……で……」
なおが目を大きく開ける。はるも口に手を当てて、驚きを隠せない様子で。
「戦ったあとっ……逃げた江崎くんを見つけたら……江崎くん、江崎くん、自分で自分のこと…………撃って……」
脳内にその光景が何度もフラッシュバックする。なんとか言葉を紡いでいくが大粒の涙が止まらない。
「私、何も出来なかった!私が、私がっ……私が江崎くんを殺しちゃった…………!」
顔を赤くして泣き止まないまざる。なんとか慰めるなお。それを横目に、ムネツグは冷静に言葉を並べた。
「今の話を聞くに……あの怪人、最初から最後まで宿主の意識があったように思える」
「そう……。そう……だったのね」
「それで、あまりよく分かっていないが……俺となおが到着した時、まざるがもう1人、別の魔法少女と戦闘していた」
「それって……」
「ああ。なおたちのように肉片を取り込んでいる者たちだ。予想はしていたがなかなか面倒なことになった」
ムネツグの話し終わったあと、まざるはむせながら、今日得た情報を伝える。魔法少女は『グラビティ』と名乗っていたこと、肉片を集めていること、強力な力を持っていたこと。現状分からないことが多すぎる中で、その情報はムネツグたちにはなんともありがたかった。
「肉片集めにライバル現る、か……なんとかしなければ」
「なるほど…………。ね、とりあえず何か食べましょう。出前でもなんでもとっちゃうわ」
何が食べたい?とまざるに聞くが、まざるは首を振るばかり。代わりになおが『ピザ』と答えて、はるは素早い手つきで電話をかけた。
――――――――――
「まざるちゃん、なにか食べよっ……」
「…………」
なおがピザを口元に持っていっても何の反応もない。はるがじっとなおのことを見て、何も言わずにそっとピザの残りを別皿に置いた。
「食べたいとき、食べてね」
ラップをかけて電子レンジの上へ置く。まざるは虚ろな目でぼーっとしながら、そっとソファに横になった。
「寝ちゃった……」
――――――――――
「苺園、おはよう」
「うん、おはよう……」
「バイバイ、苺園」
「バイバイ、江崎くん……」
それが夢だと気付いたのは、彼の背中を見たときだった。頭によぎるあの光景。信じられない、信じたくない光景。彼が倒れて光の粒が溢れ出る。彼が撃つ。倒れる。撃つ。倒れる。
去る彼の幻の手をギュッと握ろうとするも、その体は粒となり散った。
「私がもっと強かったら……」
まざるが目を覚ますと、はると目が合った。
「あ、おはよう」
「…………今、何時ですか」
「じゅ・う・に・じ」
ハッとまざるはスマホの画面を見る。通知欄は家族からのメッセージで埋め尽くされていた。
「あっ……」
「あっ、まざるちゃん。起きたのね」
あくびをしているなお。もう0時なのに、帰らずそこいる……と、不思議そうな表情のまざる。
「せっかくだから泊まっていきなよ。もう布団も敷いちゃったし」
「あ、はい」
まざるはポコポコと文字を打ち込んでメッセージ送信。ふと反射した画面に映る自分の顔。目の周りは涙の跡があって、酷く醜く見える。洗面所でジャバジャバと顔を洗って、よろよろと布団の上に座り込んだ。
「でも正直眠れないよね。まざるちゃん、さっき起きたばっかりだし」
奥から出てきたなおがそう言って、まざるの隣の布団に寝転んだ。
「私、正直こういう時になんて声かければいいか分からないんだけど……。私も、もっと強くなるよ。腕を磨いて、また怪人みたいなのが出てきたら一撃で倒してやる……なんて」
クスッと微笑んで、数秒の沈黙の後にまざるの方を見る。するとひゅ〜っとまざるも寝転がって、なおと顔を見合わせた。
「なお先輩。……ありがとうございます」
「どういたしまして。明日、学校行けそう?」
「…………はい。いつまでも挫けてられませんから」
まざるちゃんって、私の思っていたよりも強いんだ。なおは口に出さずに、そっと微笑んだ。
「……はる、言ってた雑誌買ってきたぞ」
「おかえりぃ〜!」
――――――――――
「苺園さん、おはよう」
「うん、おはよう」
教室に入って、まざるは後ろの席が視界に入らないように過ごしていた。それを見てしまうと、彼のことを思い出してしまうから。昨日はああ言ったものの、そう簡単に乗り越えられない。
「苺園さん、なんか雰囲気変わったよね」
「え、そうかなぁ……」
委員長の佐藤みかん。まざるとはそれなりに仲のいい友人だが、別に遊んだことなどがあるわけではない。
「江崎くん、昨日の放課後から連絡つかないんだって。何かあったのかな」
「……そ、そうなんだ」
少し雰囲気が変わったとてまざるはまざる。嘘をつくのが下手だ。動揺しているし、冷や汗もかいている。幸い佐藤には何も察されなかったようで、まざるは内心ホッとした。
――――――――――
放課後、校門へ向かうなおをつけている者が1人。
彼女が校門を通る直前、振り返って後方を確認。その女子生徒がビクッ!と体を震わせた。
「枠島せんぱぁい……少しお話いいですか?」
甘えた声で話す1年生の女子生徒。水色のツインテールが可愛い。
「えっと……何かしら」
「ふっふふー」
ぴょんこ、ぴょんこ。軽快なステップでなおの耳元に近寄り囁く。
「枠島先輩……いや、『ソード』……。私はあなたの秘密を知っています」
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なおに話しかけた少女……その正体とは!?続きは月曜日更新です。