Ep.8「その名は砥川さやの」
「枠島先輩……いや、『ソード』、……。私はあなたの秘密を知っています」
「!!」
鳥肌がヤバい。なおは寒気がした。なぜ、知っている?
「何の話よ」
ポーカーフェイスは得意だ。なおはその女子生徒を一蹴しようとするが……
「しらばっくれても無・駄、ですよ。何故なら私はあなたの写真と動画を持っているから」
「はぁ、全く……」
スタスタと歩いているが向こうに引く様子はないようだ。最終的に、なおは女子生徒のスマホを通して動画を見せられた。複合施設ユウナンの周辺で銃の怪人と戦闘を繰り広げているソード、そしてジャム。そしてもう1つ見せられた動画。いつ撮られたものか分からないが、ソードの変身が解け、なおに戻る様子がバッチリと映されていた。
「はぁ……!?」
「まぁそういうことですよ」
「あーもう……そうよ、私よ。まさかこんな感じでバレるなんて思いもしなかったけど。それで、何が目的?あなたの名前は?」
「
「はぁ…………場所、変えましょうか」
2人は駅周辺のあのファミリーレストランへ向かい、案内されたテーブルのソファに座る。しばらくして注文していたフライドポテトが届き、それをサクサクと食べながら話す。
「まぁ、言いたいことは分かったけど……。ところで、あなたも魔法少女なの?」
「そんなわけないじゃないですかぁ!もし仮にそうなら、あの時にズバッと助けてますよぉ」
「それもそうよね……なんとなくだけど、あなたはそういう性格な気がする」
「そうですかあ?じゃあ――」
「待って」
ピタッとポテトを食らうさやのの手が止まる。少しすると再び口と手を動かし、それをパクパクと食べ切るとごくんと飲み込んで、なおの方に顔を近付ける。
「えー、なんでですかぁ?」
「いや、協力したいっていうのはもちろん嬉しいしありがたいのよ?でも、ジャムがなんて言うか分からないし……他にも仲間がいるから、他の人にも聞いてみないと……」
「そーですかぁ……じゃあ今度会わせてくださいよ!」
(この子、グイグイ来るわね……)
最後のポテトを食べて、席を立つ。「また今度お話ししましょ」と支払いを済ませ、店を出た。
「えー…………まぁいっかぁ、連絡先も貰ったし」
――――――――――
時は少し遡り、とある中学校で。
「うみちゃーん?ちょっとそこでじっとしてて……ねっ!」
放課後、2年3組の教室内。気弱そうな女子生徒、
「ひゃっ!」
パシャッと音が鳴り、机の周辺に水がぶちまけられた。机はもちろん、カバンも制服も濡れてしまっている。
「あはははっ!」
「やっぱ小さくても水散っちゃうなぁ……後で拭いといて」
「へいへい」
嘲笑。うみは悲しげな表情で濡れたカバンを背負って、何も言わずに教室から去る。
「泣いちゃうかな〜?」
「こんなので?」
「さ〜あ〜ね〜」
茶髪の生徒は雑巾で机を拭きながら、窓から景色を見ている金髪の女子生徒たちと笑い合う。拭き終わったところで、彼女は水風船のゴミを拾い上げて、証拠隠滅と言わんばかりにポケットの中へ入れた。
――――――――――
「あ、金陽さん!」
夕暮れ時、着替えもせずにびしょ濡れのまま帰る少女が一人。するといきなり声をかけられ、彼女はビクッと怯えたような表情で振り向く。
「一緒に帰らない?」
「う、うん」
「金陽さん、服濡れちゃってるけど何かあったの?」
「ううん、ちょっと水こぼして……
「ああ、バスケ部?やめちゃった〜」
苺園 かわる。まざるの妹。まざるよりも短いヘアスタイルで、印象もおおらかそうで性格も温厚だ。うみとは去年同じクラスで、そこそこ仲が良かった。
「そうそう、この間ね、お姉ちゃんがなかなか帰ってこなくてさ〜」
「えっ……」
「そしたらほんと夜遅くに連絡来て、友だちの家泊まってる〜って。本当、心配するよね〜」
「うん……早めに連絡してもらわないと心配しちゃうよね。……苺園さんのお姉ちゃんってどんな人?」
「うーん……おっちょこちょいだけど他人思いで、いいお姉ちゃん!」
満面の笑みを見せるかわる。うみは何故だか、羨ましいと思ってしまった。
「あ、バイバイ。苺園さん」
「そっか、金陽さんはそっちの方向だよね。……うん、またね!」
ずっとこの時間が続けばいいのにと思ってみても、時というものは残酷。かわるに向かって手を振りながら、うみは心の中で呟いた。
(学校に行くのは辛い。でも、今日みたいな日があったら嬉しい)
春風と陽気のせいか、濡れていた服がいつの間にか気にならないくらいに乾いている。うみの顔から微笑みがこぼれて、一歩踏み出した。
――――――――――
「バババババ、バレちゃった!?」
『えぇ、まぁ、そうみたい』
学校から帰宅し、リビングでくつろいでいたまざる。テレビの音に紛れて、彼女のスマートフォンが着信音を鳴らしていた。まざるが出てみると、電話の向こうからなおの声。その内容に驚いてしまって、思わず叫んでしまった。かわるの視線を感じ取ると、今度は逆にとても小さな声で話し始める。
「砥川さやのちゃん……うちにはいないから、多分よそのクラスだと思う」
『同学年だし、もしかしたらと思ったんだけど、まぁそう上手くはいかないわよね』
「あの!私、会ってみたいです!さやのちゃんに!」
「ええー……」と、電話の向こうから声がする。何を渋っているのかと、まざるは分からなかったが。
『うーむ。……分かったわ』
少し溜めて、言う。
『じゃあ、また後で連絡するわね。ありがと』
「はい、ありが――」
プツン。言い切る前に電話が切れた。
砥川さやのちゃん。一体どんな子なんだろう?まざるはワクワクを隠しきれない様子で。
「はあぁ……」
正直怪しさ満点だが、まざるも会いたいと言うのなら仕方ない。
「仲間がいる。私1人で決めちゃいけないわよね」
と呟いてみる。だが。でも、しかし――
「不安だわ…………」
まざるちゃんの妹、かわるちゃん。姉妹そろって変な名前ですが、まぁよろしくお願いします。