昼下がり。とあるカフェの屋外席に座る2人。
(遅いわね……)
(遅いなぁ……)
1人目、枠島 なお。
そして2人目、砥川 さやの。
集合時間は13時。現在時刻は13時10分。まざるが来ない。流石にこの時間だ、寝坊はありえないはずだが……。と、なおが考えを巡らせているうちに、彼女はひょっこりと現れた。
「ごめんなさい!おばあちゃん助けてたら遅れちゃいました」
「そんなところだろうと思ってた……」
なおはサンドイッチをひとかじり。そこに座って、と言わんばかりに椅子を指さし、まざるはその指示通りに座る。
「枠島先輩、ということは……」
「ええ。オトギジャム、苺園まざるさん。顔くらいは見たことあるんじゃないかしら」
「あ、私がかっこつけて言おうと思ったのに」
「はあぁ〜!苺園さん、どうぞよろしく」
さやのが手を差し出すと、何のためらいもなくすぐに握手。なおは安堵と心配が同時に襲いかかってきて、少し混乱した。
紅茶を一飲みして一旦リフレッシュ。感情の整理をつけてなおが口を開く。
「それでまざるちゃん、砥川さんのことなんだけど」
「え?あ、いいんじゃないですか?」
即答。皿の上にあったお菓子をパクッと食べ、続ける。
「それに、協力者がいると動きやすいと思いますし」
「まぁ、そうね」
なおはサンドイッチを食べきると、空っぽになった皿たちを確認して立ち上がる。
「よし、じゃあ行きましょうか」
「え?どこに……あ!」
「え?なになに?」
一旦は怪訝そうな顔をしたまざるだったが、何かに気付いたような表情で。さやのは何のことやら分からないままで、まざるの顔を覗き込む。
「お・た・の・し・み」
「そんな渋るものでもないわよ……」
――――――――――
「と、いうわけで砥川さんが仲間になりました」
「おー、おめでたいね〜」
「よろしくお願いしまぁす」
到着したのは飯島探偵事務所。さやのはソファに座りニコニコとしている。
「あれがはるさんで、あそこにいるのがムネツグさん」
笑顔で手を振るはると、無表情のまま頷くだけのムネツグ。ちょっとした所作だが、彼女らがどういった性格であるのか分かりやすい。
「……得意なことは」
ムネツグはぬらりとさやのの方へ近付き、彼女を見下ろして言う。これでは驚いてしまうだろう、となおはムネツグへ視線を向ける。
「えーと、SNSの情報収集とかぁ、あとは聞き込みとか」
質問の意図を理解し、驚くほど冷静に、平然と答える。ムネツグはこくりと頷いた。
「なおもはるも俺も苦手な分野だ。なお、色々教えておいてくれ」
採用、と言わんばかりにぎこちないサムズアップを見せて、再び奥の方へと戻っていった。
「まざるちゃん!」
「うん、さやのちゃん!」
アハハハ〜と笑いながら、2人は手を繋いでグルグル回る。お互いのことを名前で呼んで、もうすっかり打ち解けたようだ。
「砥川さん、とりあえず私たちの目的について教えるわね」
眼鏡をクイッと上げる。肉片のことやムネツグの目的のこと、幸いさやのは要領がよく、ふむふむとスムーズに理解していく。
「なるほど……つまり私は肉片とかの情報を収集して、素早く皆さんに伝える、ってところですかぁ?」
「そういうこと。何かあったらすぐに教えて」
なおはさやのの肩をガシッと掴み、その目をじっと見る。
「先輩」
「あっ、ごめんなさい」
「いや、なんか出たみたいです」
「えっ」
さやのがなおにスマートフォンの画面を見せた。
「肉片だ」
数秒遅れてムネツグが奥の方からレーダーを持って出てくるが、先程まで騒がしかった彼女らの姿はなかった。
「……早いな」
事務所を急いで出たものの、3人はその前で一旦立ちどまる。
「えーっと、この路地は……あぁ、あの大きな病院の近くみたいです。ほら、学校の近くにある」
「あぁ、あそこかぁ!」
と、ポンと手を叩くまざる。2人はさやのの端末に写っているSNSの写真をじーっと見て、お互いの顔を見合わせる。
「危険だから砥川さんはここにいて」
「うんっ、何かあったらメッセージ送ってね!」
――――――――――
「何かとくっつく前に探さないと!」
「路地って言ってたわよね。全く骨が折れるわ……」
「これ以上情報はないみたいでしたし、地道にいくしかないですね」
…………沈黙の後、2人は間にいるもう1人の少女を見た。
「砥川さん、いつの間に……」
「てへ。来ちゃいました。でも、2人で探すより3人で探した方がいいじゃないですか?三人寄ればなんとやら、ですよ」
手分けして路地を探すが、それっぽいものは見つからない。
「まざるちゃん、そっち何かあった?」
「いや、ないです……。もしかしたら、もうどこかに逃げてたり……」
暗い場所や目立たないところ、くまなく探してもやはりいない。まざるの言う通り、もうここにはいないのか……と、なおがそっと俯いたその時、さやのの叫び声が響いた。
「あーっ!!」
「なにー?」
2人がさやのの方へ向かうと、道路に彼女を見下ろす影がひとつ。全身黒タイツのような人の影。右腕に装着された大型のカッターのような武器を見て、それがすぐに『肉片』であることに気付く。
「まざるちゃん、行くよ」
目を合わせ頷く。光の粒が2人を包んで、あっという間に煌びやか衣装にチェンジ。さやのは感動してしまって、目を輝かせながら拍手。
「わぁ〜!」
「わぁ〜じゃない!逃げて!」
「は〜い」
「ジャム、とりあえず広いところに誘導しよう」
「はいっ!」
肉片へ向かってソードが斬撃。顔はニヤけた口しかないので分からないが、おそらく注意がソードの方へ向いた。
(ここら辺だと……あそこに行くしかないかな)
ピョンピョンと飛び跳ねるソードを怪人が追いかける。数十秒の誘導の末、到着したのは大きな公園。たまたまか、避難したからなのか、そこには幸い誰もいなかった。
「よし、かかってきなさい!」
ファイティングポーズ。剣を煌めいた。肉片の右腕が動く。大きなカッターが彼女に迫る。
「はあっ!」
キィン!
鋭い金属音とともにカッターの刃がボロボロと崩れると、辺りの地面に突き刺さり砂が舞う。
ふふんと得意げな顔をするが、刃が急速に生え変わる。勢いをつけてもう一撃、右腕を振り上げる。
「危ないっ!」
桃色のバリアが割り込む。パリンと割れてしまったが、防御には成功した。鋭い刃たちは散らばることはなく、今も尚真っ直ぐ規則正しく並んでいる。
ソードは体勢を立て直して再び剣を構える。もう油断はしない。剣を構えて突撃するが、肉片の方は先程と違った構えをしている。カッターを前へ突き出したその構えを見て、彼女は瞬時に判断した。
「流れ弾に注意して!」
ヒュン!!
何かが射出された。あのカッターから刃が切り離され放たれたのだ。「もしかすれば使ってくるだろう」と彼女は想定していたが、まさか本当に使ってくるとは思わなかったようで。
瞬時に剣で弾くことでなんとか防ぎ、ソードが距離を詰めにいくが続けて2発目、3発目と射出された刃が彼女を襲う。防御に精一杯で、攻めるのが難しい。彼女がふと横を見ると、ジャムの姿が見当たらない。咄嗟に向き直ると肉片の死角から桃色の閃光。
「えいやあ!」
バリアを貼りながら、体中に電気を纏いながら体当たり攻撃。
気配を察知されたのか、ブン!と振られたカッターにバリアをかち割られ、攻撃がヒット。体中に纏っていた電撃オーラのおかげかダメージは最小限に抑えられたようだ。
「失敗しちゃった……」
「1人でダメなら、2人!私が防御するから、ジャムは攻撃頼んだわ!」
「はいっ!」
ソードが凛と剣を構え、その少し後ろでバチバチとジャムが電気を纏う。
「ソード、ジャム、2人の連携……これは見ものだなあ!」
物陰からひょこっと顔を出したさやのが、コソコソと呟いた。
前書き全然書けなかったので、後書きの方をちょっと書いてみようかな!?
なのでまざるちゃんのことをちょっとお話ししようと思います。
キャラクターの設定を考えた当初、まざるは『煮えてきたかも!』が決めゼリフの女の子だったのですが、いざ本編を書いたときにはそれを一切忘れていて、思い出したのは20話を書いたときくらいでした(泣)