キラ・ヤマトになってしまった…   作:星乃 望夢

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PHASE-102 人の涙

 

「全く、面倒だな……パーティなら、この前やったばかりだろうに」

 

 オーブ連合首長国代表首長としての正装──威厳と気品を兼ね備えた紫のジャケットに身を包んだカガリ・ユラ・アスハは、鏡の前で窮屈そうに首元を緩めながら、深く重いため息を零した。

 

「アレは僕のオーブ軍准将就任の披露パーティで、今回のはカガリの代表首長就任と、何より『終戦記念』を兼ねたパーティだからね。趣旨が全く違うよ」

 

 苦虫を噛み潰したような顔をする双子の姉に対し、純白の軍装を隙なく着こなしたキラ・ヤマトが、苦笑交じりに襟の歪みを直しながら宥めるように言った。

 

 その声音には、姉の苦悩を理解しつつも、立場上避けては通れない現実を受け入れさせようとする、為政者としての冷静な響きが含まれていた。

 

「だからって……! オーブの民草の皆は、先の攻防戦で家を焼かれ、まだまだプレハブの仮設住宅や地下シェルター暮らしを強いられているんだぞ!? なのに、トップである私がこんな贅沢なドレスや正装に身を包んで、外国の賓客と酒を飲んで談笑している暇なんて、本当はないはずだ!」

 

 カガリの声には、怒りよりも深い自責と焦燥が滲んでいた。

 

 彼女にとって、政治とは民と共に泥にまみれ、同じ苦しみを分かち合うことであり、安全な高みからシャンパングラスを傾けることではない。国民が不便を強いられている今、このような華やかな宴を開くこと自体が、彼女の持つ強固な道義心と激しく衝突していたのだ。

 

「……そういうカガリだからこそ、民草の人々も分かってくれるよ。君が誰よりもオーブの民を想い、復興のために血の滲むような努力をしていることは、皆が一番よく知っている」

 

 キラは穏やかに、だが確かな力強さを持って姉の言葉を肯定した。

 

 実際、今回のパーティは単なる祝賀会ではない。この場には、全世界規模の巨大国際プロジェクト『アーカディアンプロジェクト』の発足式典という、極めて重要な外交的意味合いも含まれていた。

 

 通常、国家元首の就任式、終戦の祝賀、そして世界的プロジェクトの発足式典は、それぞれ別々の格式高い式典として開催されるのが国際社会の常識である。

 

 だが、それをあえて一纏めにして開催し、莫大な開催費用を極限まで抑えるという離れ業をやってのけたのは、カガリの後見を務め、影から彼女を支え続ける前代表首長、ウズミ・ナラ・アスハの辣腕であった。

 

 ウズミからしても、現在のオーブ国民にこれほどの不便を強いている状況下で、華美なパーティなど開いている場合ではないと心底思っていることは、カガリにもキラにも痛いほど理解できていた。

 

 もしこれが、単なる『カガリ・ユラ・アスハの代表就任式』だけであったならば、ウズミは確実に「国の復興状況を鑑みて」と無期限の延期を宣言していただろう。

 

 だが、現実はそれほど単純ではない。

 

 一年半に及んだ凄惨な殲滅戦争に終止符を打った『停戦協定』による終戦の祝賀。

 

 さらに、大国を巻き込み、世界の復興と平和の礎となる『アーカディアンプロジェクト』への各国の投資と協力の確約を取り付ける場。

 

 そして何より──この混迷の時代において最強のカードの一つとなった『白銀の英雄』キラ・ヤマト准将と、新興国家ファウンデーション王国の王女イングリット・トラドールの正式な婚姻発表。

 

 これほどまでに巨大で、世界のパワーバランスを左右する政治的思惑が複雑に絡み合ってしまった以上、国際的な来賓を大々的に招き入れ、オーブの健在ぶりと絶対的な影響力を世界に向けて誇示しないわけにはいかないのだ。

 

 それは、為政者として国を守り抜くための、冷酷なまでに切実な外交上の防衛線であった。

 

「……イングリットとのこと。頼むぞ、キラ」

 

 カガリはふと声を落とし、弟の顔を真っ直ぐに見つめた。

 

 先だって、ファウンデーション王国が建国と同時に、世界中へ向けて一方的に突き付けた『イングリットとキラの婚姻』という強引なプロパガンダ。

 

 それは、彼らアコードという存在が自らの優位性を示すための政治的暴力であった。

 

 だが、キラはそれを逆手に取り、この終戦の舞台で「正式なもの」として受け入れる。

 

 それによって、イングリット・トラドールという一人の少女は、ファウンデーションの血塗られた野望や、作られた『アコード』としての呪縛から完全に切り離され、オーブの庇護下において真の意味で「解放」されることとなる。

 

「うん。これは僕が選んだ道だから」

 

 キラの瞳に迷いはなかった。

 

 彼は、この婚姻が持つ政治的影響力の大きさを誰よりも理解しながら、同時に一人の少女の魂を救済するための手段として、その重責を一身に背負う覚悟を決めていた。

 

「このパーティは、ただの宴じゃない。……世界を縛り付ける鎖を完成させ、イングリットの明日を取り戻し、オーブが二度と誰にも侵略されない強固な礎を築くための、絶対に負けられない『戦い』なんだ。だから、カガリ。どうか、今日はオーブの気高き獅子として、堂々と彼らの前に立ってほしい」

 

 弟からの静かで熱を帯びた言葉に、カガリは小さく息を吸い込み、そして力強く頷いた。

 

「分かっている。……私はオーブの代表だ。お前だけに、泥も重荷も背負わせはしないさ」

 

 先ほどまでの気鬱な表情は消え去り、そこには世界を相手に一歩も引かぬ、若き君主としての覚悟が宿っていた。彼女は自らの手でジャケットの襟を正し、鏡の中の自分を鋭く見据える。

 

 偽りの理想郷の皮を被り、世界の狂気を刈り取る剣を隠し持ちながら、平和という名の絶対的な支配体制を敷くための、絢爛豪華にして最も残酷な外交の舞台。

 

 オーブの双子の獅子は、互いの存在を背中で感じ合いながら、祝宴の広間へと静かに、そして力強く歩みを進めていった。

 

 

◇◇◇

 

 

「ファウンデーション王国宰相、オルフェ・ラム・タオと申します。本日は新興国家ファウンデーション王国を代表いたしまして、オーブの至宝たるキラ・ヤマト准将閣下と、我が王国の誇り高き王女イングリット・トラドールの、輝かしき婚姻の締結に際し、心からの祝辞を述べさせていただきます」

 

 豪奢なシャンデリアの光が乱反射するオーブ迎賓館のメインホール。

 

 各国の首脳や軍の重鎮、世界を牛耳る財界のトップたちが談笑する華やかな喧騒の中で、その一角だけが、まるで真空に放り出されたかのように張り詰めた空気を帯びていた。

 

 滑らかで完璧な発声、寸分の狂いもない洗練された礼儀作法、そして誰もが目を奪われる金髪と彫刻のように端正な容貌。

 

 キラ・ヤマトの前に進み出たその若き貴公子は、まさに「作られた完璧な存在」を絵に描いたような少年であった。

 

 オルフェ・ラム・タオ。

 

 『アコード』と呼ばれる新人類の中でも、さらに彼らを束ね、絶対的な指導者となるよう設計された最上位者。

 

 すべての人類を遺伝子適性によって強制的に職業と役割へ振り分ける『デスティニープラン』──その狂気にも似た徹底管理社会を根底から統治し、世界を導くという重すぎる役割を、生まれたその瞬間から背負わされた存在である。

 

 それは、莫大な資産と一人の狂気的な科学者のエゴによって「人類最高のコーディネイター」として生み出され、否応なく世界の争いの中心へと引きずり出されたキラ・ヤマトの出生の業と、あまりにも似通っていた。

 

 極限の遺伝子工学技術の産物であり、設計者の身勝手な理想と世界の絶望の生贄となった、二人の哀しき最高傑作。

 

「ええ。心温まるお言葉、ありがとうございます。タオ閣下。遠路はるばるオーブまでお越しいただき、イングリットも喜んでいると思います」

 

 キラは穏やかな、それでいて底知れぬ深みを帯びた微笑を浮かべ、外交辞令として完璧なトーンで返答した。

 

 白の軍装に身を包んだその姿には、弱冠16歳にして大国を手玉に取る『死の商人』としての凄みと、すべてを受け入れる聖者のような静謐さが同居している。

 

「……オルフェ、とお呼びください、キラ」

 

 オルフェは、その完璧な笑顔の裏にわずかな、しかし強烈な自負と傲慢さを潜ませながら、一歩だけキラへと距離を詰めた。

 

 彼の中で渦巻いているのは、本来ならば自分と結ばれるはずだった「運命の女王」ラクス・クラインの隣に立つこの男への、底知れぬ優越感と、それと矛盾する激しい敵対心である。

 

 スーパーコーディネイターなど所詮はアコードを生み出す過程の産物、「旧型の失敗作」に過ぎない。

 

 自分こそが世界を導く者なのだと、彼はそう信じて疑っていなかった。

 

「イングリットが貴方の伴侶となる以上、我々ファウンデーションとオーブは強固な血の盟約で結ばれ、そして私と貴方はすでに兄弟も同じ。……であれば、このような場であっても、堅苦しい他人行儀は不要です。どうか、気安く呼んでいただきたい」

 

「うん。……じゃあ、そうさせてもらうね、オルフェ」

 

 キラは一切の躊躇なく、ごく自然な動作で右手を差し出した。

 

 新興国家宰相と、武装中立国家の最高軍事顧問。

 

 世界の命運を握る若き二人の天才が、数多のカメラのフラッシュとVIPたちの視線が突き刺さる中、静かに握手を交わした。

 

 ──だが、二人の掌が触れ合ったその瞬間。

 

 物理的な接触という極めて原始的な行為をトリガーとして、目に見えない、しかし絶対的な『認識の奔流』が弾け飛んだ。

 

(……見せてもらおうか。旧世代の失敗作、その浅ましい思考の底を)

 

 アコードの最上位者であるオルフェは、接触と同時に、生来の能力である精神感応を最大限に研ぎ澄ませた。

 

 キラ・ヤマトの深層心理、隠された弱さ、恐れ、そしてラクスへの執着。

 

 それらを強引に読み取り、精神的な優位に立って相手を支配下に置くための、目に見えない絶対的な暴力。

 

 それが彼らアコードが世界を支配する源泉たる『読心』の力であった。

 

 だが、それはキラにとって完全に『織り込み済み』の奇襲であった。

 

 キラは精神の閉心を張ることなく、むしろ底なし沼のようにその精神の扉を大きく開け放ち、オルフェの意識を深部へと誘い込んだのだ。

 

(……え……?)

 

 オルフェの完璧な笑顔が、ほんの一瞬だけ凍りついた。

 

 彼が読み取ったのは、恐れでも、弱さでも、あるいは計算高い謀略でもなかった。

 

 そこにあったのは、宇宙の深淵にも似た圧倒的な静けさと、血の滲むような修羅道を歩み続ける男の『揺るぎない覚悟』。

 

 そして何より、オルフェ自身が全く想定していなかった、莫大で高密度な精神波の逆流であった。

 

 今のキラ・ヤマトは、ただの「作られた天才」ではない。

 

 あの血のバレンタインの悲劇から今日に至るまで、彼は同じくアコードの資質を持つプラントの歌姫、ラクス・クラインと日常的に『クロッシング』を行い、その能力を無意識のうちに限界まで鍛え上げてきた存在なのだ。

 

 他者の心に無断で踏み込もうとする傲慢な精神。

 

 すべてを受け入れ、その上で相手の業ごと叩き潰そうとする強大な精神。

 

 極めて優れた精神感応能力を持つアコード同士が、警戒を解いた状態で直接手を触れ合えば、そこを媒介として強烈な精神の共鳴と激突が引き起こされるのは、物理法則のように当然の帰結であった。

 

 現実の時間は一秒にも満たない。

 

 だが、その刹那の精神領域において、オルフェの脳髄に叩き込まれたのは、ラクスやカガリ、キラを心から受け入れ、愛する者だからこそ知り得た──「本来この世界が歩むはずだった、もう一つの歴史の虚憶」であった。

 

 それは、血と炎と、絶望に彩られた地獄の光景。

 

『アスラァァァァァァァン!!!!』

 

『キラァァァァァァァァ!!!!』

 

 互いに大切なものを奪い合い、憎悪の炎に焼かれ、親友同士が本気の殺意を向けてコクピットの中で刃を交えた鮮血の記憶。

 

『俺にだってわかっているさ。戦ってでも、守らなきゃならないものがあることくらい!』

 

『一緒に探しに行こうよ。それをさ』

 

 一度は憎しみで殺し合いながらも、それでも再び平和のために手を取り合った、傷だらけの少年たちの誓い。

 

 そして、その虚憶の中でキラが対峙し、ぶつけられた、狂気に満ちた大人たちの呪詛と慟哭。

 

『高い金を出して買った夢だ! 誰だって叶えたい。誰だって壊したくはなかろう!』

『だから挑むのか! それが夢と望まれて叶えるために!』

『人は何を手に入れたのだ! その手に、その夢の果てに!』

『知りたがり、欲しがり! やがてそれが何の為だったかも忘れ、命を大事と言いながら弄び殺し合う!』

『何を知ったとて! 何を手にしたとて変わらない!!! 最高だな、人は……!』

『そして妬み! 憎み! 殺し合うのさ! ならば存分に殺し合うがいい! それが望みなら!』

 

『私にはあるのだよ! この宇宙でただ一人、全ての人類を裁く権利がな!』

『私のではない! これが人の夢、人の望み、人の業! 他者より強く! 他者より先へ! 他者より上へ!』

『競い! 妬み! 憎んで! その身を喰いあうッ!!』

『私は結果だよ。だから知るッ! 自ら育てた闇に食われて、人は滅ぶとなぁ!!』

 

『知れば誰もが望むだろう! 君の様になりたいと! 君の様でありたいと!』

『……故に許されない。君という存在も!』

 

『僕は……それでも僕は! 力だけが、僕の全てじゃない!』

 

『それが誰に分かる。何が分かる。分からぬさ! 誰にも!』

『これが定めさ! 知りながらも突き進んだ道だろう!』

『正義と信じ、分からぬと逃げ、知らず! 聞かず! その果ての終局だ! もはや止める術など無い!』

『そして滅ぶ! 人は! 滅ぶべくしてなぁ!』

 

『そんな、あなたの理屈!』

 

『それが人だよ、キラ君!』

 

『違う! 人は、人はそんなものじゃない!』

 

『っは! 何が違う! 何故違う!』

『この憎しみの目と心と! 引き金を引く指しか持たぬ者たちの世界で! 何を信じる、何故信じる!』

 

『それしか知らないあなたが!』

 

『知らぬさ! 所詮人は己の知る事しか知らぬ!!』

『まだ苦しみたいか。いつかは、やがていつかはと! そんな甘い毒に踊らされ、一体どれほどの時を戦い続けて来た!』

 

『最早止める術はない! 地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる争いの狼煙となる!』

『人が数多持つ予言の日だ!』

 

『それだけの業、重ねてきたのは誰だ!? 君とてその一つだろうが!!』

 

『それでもっ、守りたい世界があるんだぁぁぁぁぁ!!!!』

 

 それは、単なる戦乱の記憶ではない。

 

 人間の業すら生温い、世界そのものの途方もない業をたった一人で背負ってしまった、キラ・ヤマトというちっぽけな少年の、魂が千切れるような嘆きと、血を吐くような苦悩であった。

 

 さらに、虚憶は続く。

 

 絶望を乗り越えた先で、再び訪れた世界の危機。人々に役割を強制する『デスティニープラン』を巡る、もう一人の為政者との対話。

 

『やめたまえ、やっとここまで来たのに。そんなことをしたら、世界はまた、元の混迷の闇へと逆戻りだ』

 

『そうなのかもしれません。でも、僕たちは、そうならない道を選ぶこともできるんだ。それが許される世界なら』

 

『だが誰も選ばない。人は忘れる、そして繰り返す。こんなことはもう二度としないと、こんな世界にしないと、一体誰が言えるんだね? 誰にも言えはしないさ。君にも、無論彼女にも。やはり何も分かりはしないのだからな』

 

『でも、僕たちはそれを知っている。わかっていけることも、変わっていけることも、だから明日が欲しいんだ! どんなに苦しくても、変わらない世界は嫌なんだ!』

 

『傲慢だね…。さすがは最高のコーディネイターだ…』

 

『傲慢なのは貴方だ! 僕はただの一人の人間…この世界で生きる一人の人間だ! どこもみんなと変わらない! ラクスだって! でも…だから、貴方を討たなきゃならないんだ! それを知っているから!』

 

『だが君の言う世界と、私の示す世界。皆が望むのはどちらかな? 今ここで私を撃って、再び混迷する世界を、君はどうしようというんだ…!』

 

『覚悟はある…僕は戦う!』

 

 怒涛のように流れ込むその膨大な記憶の奔流の中で、オルフェは完全に打ちのめされていた。

 

 守りたい世界のために、戦ってでも守りたい者のために、ボロボロになりながら抗い続けた想い。それが、キラ・ヤマトという人間の本質だった。

 

 そして、その圧倒的な虚憶を持つからこそ──目の前の現実におけるキラ・ヤマトは、一度は世界に絶望し、暗い片隅で震えていたのだ。

 

 けれども、もう一人の母と慕う大切な人が、安全な場所から祈っているだけでは死んでしまったから。

 

 本当は誰も殺したくないし、誰かに代わって欲しいと泣き叫びたかったけれど、自分が「キラ・ヤマト」という存在だから。

 

 逃げてしまえば世界が滅んでしまうから。

 

 やるしかないから、自ら泥を被り、死の商人となり、悪魔に魂を売ってでも、守りたい世界のために出来ることを精一杯やり続けた。

 

 その流した血と涙の果てが、今、自分の目の前で静かに微笑んでいる『白銀の英雄』の姿なのだ。

 

(……私は、何という傲慢を……)

 

 オルフェは、精神の奥底で己の愚かさに戦慄した。

 

 自分と同じく、愚かな世界と人々に対して、彼は「人類は導かれねばならない」と見下し、運命を強制することでしか平和は訪れないと信じていた。

 

 人を信じ切ることを諦め、役割という名の鎖で世界を縛ろうとしていた。

 

 だが、キラ・ヤマトは違った。

 

 敵である大人に己の傲慢さを指摘され、絶望の淵に立たされながらも、それを猛省し、もう一度「人を信じる」という、最も困難で傷つく道を選んだ。

 

 ただ母アウラに言われるまま、役割という運命のレールを進むしかなかった自分。

 

 「お前がラクスと結ばれ、世界を導くのだ」という作られた目的に縋り、それ以外の愛の形を知らず、他者を見下すことでしか己の価値を証明できなかった自分。

 

 己の与えられた残酷な運命に抗い、本来あるべきだった破滅の世界の足跡を自らの手で捩じ曲げ、新たな平和の世界を構築するに至った、自分たちに劣っているはずのアコードの「失敗作」。

 

 その「失敗作」という認識すらも、母アウラの、キラを生み出したユーレン・ヒビキに対する傲岸な憎悪からくる、愛情という名の『洗脳』でしかなかったという残酷な真実。

 

 その軛から、いち早く解放された者がいる。

 

 キラ・ヤマトを懐柔し、監視するためにオーブへと送り込んだはずの、自身の右腕──イングリット・トラドール。

 

 彼女はすでに、キラの底知れぬ無償の愛に触れ、作られた役割から解放され、真の自己を確立している。

 

 そしてキラ・ヤマトは、カガリ・ユラ・アスハから、そしてオルフェが「自分と結ばれるべき運命の女」と盲信していたラクス・クラインからさえも、条件のない、絶対的な『無償の愛』を注がれているのだ。

 

 私は、私は……、私は──。

 

 役割をこなすことでしか価値を見出せず、愛されるためには世界を導く資格が必要だと思い込んでいた、哀れな操り人形。

 

 間違った選択肢を選ばされ続け、誰よりも愛情を渇望しながら、その手に入れ方を知らなかった男。

 

(私にも……その無償の愛を、向けようというのか……?)

 

 クロッシングの激しい光芒が収束し、現実世界に意識が浮上したその瞬間。

 

 オルフェは、まるで崩れ落ちる体を支えるように、無意識のうちにキラの腕を強く引いていた。

 

 周囲のVIPたちやカメラマンから見れば、それは「ファウンデーションの宰相とオーブの英雄が、新たな血の盟約を結び、互いの親交を深めるための熱い抱擁」にしか見えなかっただろう。

 

 だが、そのオルフェの手が掴むキラの純白の軍装──その背の皺が、まるで泣きすがる子供のように強く、震えながら引き絞られていることが分かるのは、当人のキラとオルフェだけだった。

 

「私に……私にも、その資格があるというのか……っ」

 

 他者に聞こえぬほどの微かな、しかし絞り出すような掠れた声。

 

 完璧な仮面が砕け散り、役割という重圧に押し潰されそうになっていた一人の無力な少年が、初めて他者に助けを求めた瞬間だった。

 

 キラは、腕の中に崩れ落ちそうになるオルフェの背中を、優しく、包み込むようにポンと叩いた。

 

「ラクスも言ってたじゃないか。……必要だから愛してるわけじゃない、愛してるから必要なんだ。愛されることに、資格なんてないんだから」

 

「……くっ、ぅぅ……っ……」

 

 オルフェの肩が、小さく、しかし激しく震えた。

 

 それは、同じ業を背負いながらも過酷な運命に抗い続けた先達に対し、運命のレールを盲目的に歩むことの愚かさを教えられ、ようやく己の呪縛から解き放たれて迷子になった少年が零した、心からの嗚咽であった。

 

 華やかな祝宴の中心で、誰より愛情を渇望していた孤独な神の代行者は、かつて見下していた「失敗作」の温もりの中で、静かに、しかし確かに人としての産声を上げたのである。

 

 

◇◇◇

 

 

 華やかな音楽と、権力者たちの欲に塗れた喧騒が響く迎賓館のメインホール。

 

 そこから分厚いガラス扉一枚を隔てただけの夜のテラスは、まるで別世界のように静寂に包まれていた。

 

 頬を撫でる南太平洋の潮風が、熱気を帯びた身体を優しく冷ましていく。

 

 そのテラスの出入り口には、二人の男が左右の柱に背中を預け、腕を組んで無言の番人を務めていた。

 

 一人は無二の親友にして最強の盾となったアスラン・ザラ。

 

 もう一人は、今はその呪縛から解き放たれて裏から彼を支える『兄』、カナード・パルス。

 

 出生の業に振り回された彼らもまた、中にいる有象無象の政治家たちなどよりも遥かに、テラスで語り合う二人の少年の抱える痛みを理解できる者たちだった。

 

 彼らはあえて立ち入らず、ただ絶対的な守護者としてそこにある。

 

「私は、愚かだったな。ああでもして、己の失態と無知を見せつけられなければ、己の過ちすら気づけない、滑稽な道化だったとはな」

 

 夜空に浮かぶ星々を見上げながら、手すりに寄りかかったオルフェが、自嘲の笑みを浮かべてぽつりと零した。

 

 完璧な宰相としての仮面はそこにはない。

 

 あるのは、母親の引いたレールの上を全能の神だと錯覚して歩いていたことに気づかされた、一人の迷える青年の素顔だった。

 

 彼が信じていた「役割」は、キラから流れ込んできた膨大な『虚憶』──無数の血と涙、そして人間の持つ泥臭いほどの強さと業の前に、あっけなく瓦解してしまったのだ。

 

「でも、良いんじゃないかな」

 

 隣に並び、同じように夜の海を見つめていたキラ・ヤマトが、夜風に髪を揺らしながら穏やかに応えた。

 

「間違えて、その失敗に気づくことが出来て。反省して、痛みを抱えながら己の糧としてまた歩みだす。……間違えることすら許されない役割に縛られるんじゃなくて、失敗から学んで変わっていけるのは、人間が持つ大人の特権だよ」

 

 それは、己に課せられた運命をただこなすだけの『デスティニープラン』という静止した世界には絶対に存在しない、生きた人間の特権。

 

「フッ……大人の特権、か。私も君も、そこまで老け込んでいるつもりはないだろう? まだ十代の若造だ」

 

 オルフェは少しだけ目を細め、自らの端正な手を見つめた。

 

 作られた完璧な肉体。

 

 老いなどまだ遠い先にあるはずの容貌。

 

「どうかな。互いに、精神年齢は四十路くらいになってるし」

 

「……」

 

 キラのその冗談めかした、けれど決して冗談ではない言葉に、オルフェは思わず息を呑み、そして小さく吹き出した。

 

 無理もない。

 

 クロッシングによって共有されたあの記憶の中で背負った絶望と諦観と。「それでも」と言い続ける意志の総量を思えば、すでに人生を二度三度とやり直したような疲労が魂に刻み込まれている。

 

「確かにな。我々の魂はすでに擦り切れかけている。だが、幸いにして身体は若さに溢れているつもりだ。まだまだ無理は効く」

 

「油断すると、すぐ身体に出るよ? ここ最近、各国の狸たちの相手のせいで、ストレス性の抜け毛とか出てくるようになったし。この前なんて、換毛期でもないのに、朝起きたら枕に信じられないくらい髪が……」

 

 キラが本当に疲れた顔で頭を撫でながら愚痴をこぼすと、オルフェはついに堪えきれず、腹の底から声を上げて笑った。

 

「くくっ、あははははっ! 世界をその歳で背負おうというのだ。それはさもありなん、というものだろう。いっそオーブの最高軍事顧問が若ハゲになれば、世界も少しは君の抱える重圧に気づいて同情するのではないか?」

 

「あ、ひっどいなぁオルフェは。僕がハゲたら、イングリットもラクスも泣くよ、絶対。カガリに至っては『私のせいか!?』って胃に穴を開けそうだし」

 

「ならば、私がファウンデーションの誇る最新の医療技術を提供しよう。アコードの宰相肝煎りの『毛根再生プロジェクト』だ。アーカディアンプロジェクトの金でやればいい」

 

「それは流石に、アスランに怒られるよ。でも、受け取っておくよ。毛根治療は人類が血眼になってお金を出す分野だからね」

 

 夜のテラスに響く、年相応の少年たちの他愛のない笑い声。

 

 そこには、コーディネイターを超えた新人類だの、人類最高の存在だのといった重苦しい肩書きは一切なかった。

 

 もしも出会い方が違えば。もしも親たちの歪んだエゴや憎悪が存在しなければ。

 

 彼らは共に笑い、共に悩み、時には諍いを起こしながらも、背中を預け合える無二の親友になれていたかもしれない二人だったのだ。

 

 本来の歴史では永遠に交わることのなかった平行線は、一人の少年が修羅の道を歩んででも手繰り寄せた『運命の改撃』によって、今こうして確かに交わっている。

 

 世界を呪うかもしれなかった強大な業を共有し、互いの痛みの底の底まで触れ合ったからこそ、わだかまりは溶け、その関係は急速に、そしてごく自然に、長年連れ添った悪友のような温かさを帯びていくのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「母上のことだが」

 

 オルフェのその一言で、テラスを包んでいた和やかな空気は一変し、夜の海風が急に冷え込んだかのような静寂が落ちた。

 

「うん……」

 

 キラは短く相槌を打ち、微かに視線を伏せた。

 

 彼の心の中にも、あの『虚憶』の最後に刻まれた、アウラ・マハ・ハイバルという存在の断末魔が焼き付いている。

 

「おそらく、私が何を言ったところで無駄だろう。私と君の力を合わせ、精神の奥底にどれほど世界の破滅の真実や『虚憶』を直接叩き込んだとしても、あの方は絶対に自らの過ちを認めはしない。あれは改心や説得が通用するような、生半可な代物ではないのだ。ユーレン・ヒビキに対する嫉妬、そして己こそが至高であるという狂気に等しい積年の怨念……。それが、あの方を形作っている唯一の柱だ。それを折れば、あの方の精神は崩壊する」

 

 オルフェは手すりを強く握りしめ、波打つ暗い海を見つめた。

 

 その横顔には、かつて絶対的な庇護者として崇拝していた母に対する愛情や未練は、すでに微塵も残されていなかった。

 

「……私の見た記憶の最後で、母上は死の間際、燃え盛る艦のブリッジで『やっと、この子供の身体から解放される』と……そう思いながら死んでいった。世界の頂点に立つという野望に憑りつかれ、若返りの副作用で醜く縮んだその小さな体に、自ら永遠に縛り付けられていたのだ。……いっそのこと、あれ以上罪を重ねる前に引導を渡し、死なせてやった方が、母上にとっても唯一の救いであり幸せなのだろう」

 

 それは、宰相としての冷徹な政治的判断であると同時に、母から受けた呪縛に対する、オルフェなりの最後の「情け」であった。

 

 母アウラは、自らが創り出したアコードを「世界の統治者たる新人類」と位置づけ、彼らにデスティニープランによる絶対的な支配を強制しようとしていた。

 

 しかし、その根幹には致命的な矛盾と欺瞞が横たわっている。

 

 遺伝子によってすべてが決定される完璧な社会制度を提唱しながら、アウラ自身は「アコードの母」という特権的な地位に君臨し続けようとしていたのだ。

 

 自分は優秀な科学者というただの旧人類に過ぎないにもかかわらず、「生み出した恩と絶対的な愛情」という名の洗脳を施すことで、アコードという神々のさらに上に立ち、世界を我が物顔で支配しようと企む。

 

「……自分が提唱する遺伝子管理社会において、己だけは例外として君臨し続ける。その姑息さと身勝手さは、今思えば滑稽を通り越して吐き気すら催すよ。そして何より愚かだったのは、そんなあの方の薄っぺらい野望に気づきもせず、ただ与えられた『役割』と『愛』に縋り付いていた私自身だ」

 

 オルフェの声には、激しい自己嫌悪と底知れぬ怒りが混じっていた。

 

 あれほど絶対視し、すべてを捧げて愛した母への思い。

 

 だが、その愛は「真実の親子の絆」などでは断じてなかった。

 

 外の世界の残酷さも、人間の愚かさや美しさも、何一つ知ることを許されず、ただ「お前は世界を導く特別な存在だ」という甘い言葉で箱庭の中に閉じ込められ、飼い慣らされていたに過ぎない。

 

 自分は神でもなんでもない、ただのアウラの復讐と承認欲求を満たすための便利な「道具」であった。

 

 その残酷な真実に気づいてしまった今、オルフェの心の中でアウラに対して抱いていた愛情や尊敬の念は、とっくの昔にマントル層を突き抜けて地球の裏側まで到達するほどの大暴落を起こし、完全なる失墜を遂げていた。

 

「だから、私は決断する」

 

 オルフェは、冷たく研ぎ澄まされた眼差しでキラを振り返った。

 

「母上が世界を巻き込み、ファウンデーションの民草すらも核の炎で焼き払って世界を征服しようという狂った野望を抱いていると、大々的に弾劾する。私が自らの手で、あの方の罪を暴き、玉座から引きずり下ろし、排する。……そうしなければ、ファウンデーション王国の未来はない。そして何より、私やイングリットたちアコードが、真の意味で人として自由になることは永遠にないのだから」

 

 それは、母殺しの宣言であった。

 

 しかし、そこに悲壮感はない。

 

 あるのは、一人の為政者として国を守り、かつて自分と同じように縛られていた同胞たちを解放するための、断固たる決意だけだった。

 

「……僕たちも、全力でそれを支援するよ」

 

 キラは、オルフェの背負った重すぎる決断の痛みをその身に引き受けるように、静かに、しかし力強く頷いた。

 

「君が背負う泥は、僕やアスラン、カナードも一緒に被る。……それが『ソレスタルビーイング』という、旗を持たない剣の役割でもあるんだから。ファウンデーションの民草を傷つけず、アウラ個人の狂気を断ち切るために、オーブの力もターミナルの情報網も、すべて自由に使ってくれ」

 

「……感謝する、キラ」

 

 オルフェは目を伏せ、短く礼を言った。

 

 生まれながらの運命を強要された者たちが、互いの業を許容し、世界の呪いと親のエゴを断ち切るために初めて真の同盟を結んだ瞬間であった。

 

 テラスの奥から漏れ聞こえる空虚な祝宴の音楽を背に、二人の若き指導者は、来たるべき「神殺し」の夜明けに向けて静かに牙を研ぎ澄ませていた。

 

「でもね。デスティニープランも、決して悪いことばかりじゃないと思うんだ」

 

 夜の波音が響くテラスで、キラがふと思い出したように口にしたその言葉は、かつてその計画の完全な遂行者として生み出されたオルフェにとって、思いもよらない響きを持っていた。

 

「……どういう意味だ?」

 

 オルフェは目を瞬かせ、聞き返した。

 

 あの狂気に満ちた『虚憶』の中で、キラ・ヤマトはギルバート・デュランダルが提唱したデスティニープランを「人は変われる」という意志のもとに真っ向から否定し、撃ち破ったはずだった。

 

「アレを『強制的に世界に施行して、人類を絶対的に従わせようとする管理社会システム』にするからダメなんだ。個人の自由意志を奪うから、反発が生まれるし、人は絶望する」

 

 キラは手すりに肘を突き、夜空を指差すようにして言葉を続けた。

 

「でも、人は誰だって迷う。『自分がどんな能力と適性を遺伝子に持っているのか』『何が出来て、何が出来ないのか』『どんな仕事が向いているのか、向いていないのか』。……その答えを知りたがっているのも事実だ。だから、強制ではなく、自分を知り、未来を選ぶためのひとつの指針――『自己実現のための職業斡旋システム』として希望者に提供するのなら、あれは人類にとってとても有用で、優しい仕組みになると思うんだ」

 

「……っ」

 

 オルフェは言葉を失い、ただキラの横顔を見つめた。

 

「自分に向いているものを知った上で、それを選ぶのも自由。あえて向いていない夢に挑戦するのも自由。……選択肢を奪う鎖としてではなく、迷った時に足元を照らしてくれる『光』としてなら、デスティニープランの根幹にある技術は、間違いなく人々を救う手段になる」

 

「……なるほどな。そのようなこと……私は、考えもしなかった」

 

 オルフェの胸の内に、静かな、しかし劇的なパラダイムシフトが巻き起こっていた。

 

 母アウラから「世界を統治するための絶対的な支配システム」としてしか教えられず、それを施行することこそが自らの生きる意味だと盲信させられていたオルフェ。

 

 彼の頭の中には、デスティニープランを「ただの便利なツール」として大衆に寄り添わせるなどという発想は、欠片も存在しなかった。

 

 オルフェは知っている。

 

 キラの『虚憶』の中で、本来のキラ・ヤマトは、デュランダルを討ち、デスティニープランを否定した後も終わることのない混迷と争いの火種を前に、深く絶望していた。

 

 「やはりデュランダルを討たず、デスティニープランが施行された世界の方が平和だったのだろうか」「自分は間違っていたのではないか」と、自らの選択の重圧に押し潰され、追い詰められていたのだ。

 

 しかし、目の前にいる『死の商人』であり『白銀の英雄』たるキラ・ヤマトは違った。 

 

 彼は、その絶望の底から這い上がり、綺麗事だけでは世界を救えないと悟った。泥を被り、大国を脅し、使えるものは悪魔の資金力ですら容赦なく利用する道を選んだ。

 

 その結果が、この「デスティニープランの平和的・実用的利用」という発想の転換である。

 

 絶対的な支配の道具を、人を生かし、迷いをなくすための「社会保障システム」へとリサイクルしてのけたのだ。

 

(……同じ『虚憶』という凄惨な絶望を共有しようとも。彼はそれをただ嘆くのではなく、次の時代を創るための『素材』として使いこなしている……)

 

 その点において、キラ・ヤマトは間違いなくオルフェの遥か先を行く、圧倒的な『先達者』であった。

 

「……君は、本当に底知れないな。恐ろしい男だ」

 

 オルフェは、憑き物が落ちたような清々しい笑みを浮かべて、降参するように両手を挙げた。

 

「世界を支配する究極のシステムを、ただの『便利な就職支援サービス』にまで貶め、いや……昇華させてしまうとは。あの人や母上が聞いたら、卒倒するだろうな」

 

「あはは。でも、そっちの方がみんな幸せになれると思わない? ……それに、ファウンデーションの持つその解析技術は、アーカディアンプロジェクトの推進にも絶対に必要になる」

 

「あぁ。そうだな。……私のアコードとしての能力も、そのシステムも、もう世界を縛るためには使わない。人が人として、自由に明日を選ぶための手助けとして使おう」

 

 オルフェは、夜空の星から視線を外し、再び真っ直ぐに前を見据えた。

 

 その瞳には、かつてキラを見下していた傲慢な光はもうない。あるのは、一人の未熟な為政者として、この白銀の先達から多くを学び取り、自らの血肉としようとする、純粋で力強い渇望だった。

 

「キラ。私にはまだ、世界のことや人間の心の機微について、学ぶべきことが山ほどあるようだ」

 

 オルフェは姿勢を正し、今度は自ら、キラへ向けて右手を差し出した。

 

「だが、いつまでも君の背中ばかりを見ているつもりはない。……いずれ必ず君に追いつき、そして共にこの世界を支える。ファウンデーション王国宰相として、いや……一人の人間として、約束しよう」

 

 キラは少しだけ驚いたように目を丸くした後、嬉しそうに微笑み、その手をしっかりと握り返した。

 

「うん。期待しているよ、オルフェ」

 

 それは、作られた二人の天才が、与えられた運命という呪縛を完全に葬り去り、自らの意志で「世界の明日」への道を歩み始めた者たちの絆が育まれた瞬間だった。

 

 

 




最初はね?虚憶を見せられたら恐れ慄きまやかすな!!とカテジナさんみたいになる予定で描いてたのに、なんだからいつの間にか2人が大学生の親友スレみたいな流れが頭に出来ちゃったよ。

良かったなオルフェ、イングリットに続けて1抜け2抜けの大勝利UCの仲間入りだぞ。

あと残って引き抜けそうなのはシュラかなぁ。

強い奴と戦わせてやるから付いてこいといえばホイホイ付いてきそうでもある。

母親への愛情より闘争心優先しそうなところあるし。

他の4人はなんというか、どう引き抜けば良いのか分からんのよねぇ。

今回のオルフェとキラのクロッシングはオルフェとキラのアコードとしての能力の高さが生んだ交通事故みたいなものだし。

キラも虚憶を無闇矢鱈に開示する気もない基本的に隠してる秘密だからねぇ。

なんてたってあのアスランにだって教えてないんだよ?

良かったなオルフェ、アスランより特別枠の席に座れたぞオルフェ。

まさかオルフェの事で1話まるっと使うとは思わなんだ。
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