やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか   作:星乃 望夢

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PHASE-65 帰国の兄妹

 

「戻ったか、ギナ」

 

 底冷えのする静寂に包まれた、オーブ連合首長国の軌道ステーション『アメノミハシラ』。

 

 漆黒の宇宙空間に浮かぶその巨大な構造物は、表向きはオーブの宇宙開発拠点とされているが、事実上はオーブ五大氏族の一つ、サハク家が管理・運営し、秘密裏に独自の軍備を蓄えるための巨大な軍事要塞であった。

 

 薄暗いVIP区画のラウンジで、ワイングラスを傾けながら弟の帰還を出迎えたのは、サハク家の現当主であり、その類まれなる美貌と冷徹な頭脳でオーブの闇を支配するロンド・ミナ・サハクである。

 

「戻ったぞ、ミナ。我が半身」

 

 重厚な自動扉の向こうから、姉と瓜二つの容貌を持つ弟、ロンド・ギナ・サハクが、傲岸不遜な笑みを浮かべながら足音高く歩み入ってきた。その身には、地上戦の焦げ臭い匂いと、微かな血の匂いが染み付いているように感じられた。

 

「しかし、随分と遅い帰りだな。アフリカの砂漠で、野良犬どもと戯れるのに時間でも取られたか?」

 

 ミナはグラスの縁を指でなぞりながら、冷ややかな視線を向ける。

 

「文句はあのキラ・ヤマトという少年に言うと良い」

 

 ギナは肩を竦め、忌々しげに、しかしどこか愉快そうに鼻で笑った。

 

「ウズミの娘を見つければ、直ぐ様オーブへ帰還し、この宇宙へ上がってくると思っていたのだがな。しかし……まぁ、良い。あの小娘の動向を監視し、護衛しつつ泳がせたお陰で、こちらも有益なデータは十分に取れた。……私の『天』の完成を急ぐとしよう」

 

 ギナの瞳に、野心と嗜虐的な光が宿る。

 

「『天』への改修プランに必要なパーツの組み上げと調整は既に終わっている。あとは、お前が持ち帰った最新の戦闘データを元にOSを最適化し、本体に組み付けるだけだ。技術班には不眠不休で作業に当たらせている」

 

「それは重畳だ。流石は私の半身、話が早い。……ならば、パーツの組み付けが終わるまで、少し休ませて貰うとしよう。地上での砂埃と、有象無象の血の匂いは、どうにも私の肌には合わんのでな」

 

 ギナはラウンジのソファへと身を投げ出し、長い足を組んで目を閉じた。

 

「……次は無いぞ、ミナ。ウズミのやり方に従い、あの少年を泳がせておくのは今回が最後だ」

 

「良いとも。お前の望むようにするがいい。……だが、次は私自らが出向くとしよう。地上での情報収集と戦闘、ご苦労だった、ギナ」

 

 ミナは弟の言葉に静かに同意しながらも、その瞳の奥に、ギナには見せない複雑な思惑の光を揺らめかせていた。

 

 ロンド・ギナ・サハクと、ロンド・ミナ・サハク。

 

 この美しき双子の姉弟は、「オーブ連合首長国を世界の覇者とする」という、強烈で巨大な野望を共有している。その目的において、二人の結束は絶対的なものだ。

 

 しかし──ミナの内心は、既に弟とは決定的に異なる方角を向き始めていた。

 

 オーブの理念である『中立』という名の欺瞞。それを打ち破るための覇道。

 

 かつてはミナも、ギナと同じように「圧倒的な武力による他国の支配と破壊」こそが、その覇道に至る唯一の手段だと信じて疑わなかった。

 

 だが、あの少年──キラ・ヤマトとの出会いが、彼女の価値観に決定的な亀裂を生じさせたのだ。

 

 あの少年が放った、悲壮なまでの決意と、常軌を逸した狂気じみた野望。

 

 一人の少年が、世界そのものを敵に回し、そのすべてを背負い込んででも平和を取り戻そうとする、あまりにも傲慢で、あまりにも純粋な自己犠牲の覇道。

 

 ミナは、その少年の狂った野望に、自身の魂が共鳴するのを止めることができなかった。

 

 そして、彼に同調し、同じ路を往くと、その胸の奥底で固く決意してしまったのだ。

 

「民を愛し、国を守る」

 

 それこそが、サハク家が本来持つべき矜持であり、オーブという国が真に覇権を握るべき大義である。

 

 支配欲と破壊衝動のみで動くギナの道は、いずれ必ずあの少年と衝突し、破滅を呼ぶだろう。

 

(ギナ……私の愛おしい弟。お前の選ぶ道は、力による世界の蹂躙。だが、私が選んだのは、力による世界の『庇護』だ)

 

 手段は同じ「力」であっても、その先に見据える景色が決定的に違う。

 

 いずれ必ず、自分たち双子は決定的な決裂を迎え、道を違える時が来る。ギナがキラ・ヤマトと決定的に対立したその時、自分はどちらを選ぶのか──いや、どちらを切り捨てるのか。

 

 答えは、既に彼女の中で出ている。

 

 グラスに残った紅いワインを一息に飲み干し、ミナは眠りについた弟の寝顔を、氷のように冷たく、そしてどこまでも哀れむような慈愛の眼差しで見下ろしていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 オーブ連合首長国、モルゲンレーテ社地下格納庫。

 

 広大な地下空間には、高度にシステム化されたクレーンの駆動音と、技術者たちの慌ただしい足音が反響していた。

 

 秘密裏に搬入された巨大なカーゴベイから、砂漠の死闘を潜り抜けたサンドカラーの『ティエレン高機動B指揮官型』と、異形の『蒼いブレードバクゥ』が次々と降ろされていく。

 

 そしてその隣のハンガーでは、ユーラシア連邦の誇る最高機密──『ハイペリオン』が、特務部隊Xの整備班たちに囲まれながら厳重に固定作業を受けていた。

 

 カナード・パルスは、腕を組みながらその光景をキャットウォークから冷ややかに見下ろしていた。

 

 本来であれば、キラ・ヤマトをこのオーブへと無事に帰還させた時点で、自分たちの護衛任務は完了となるはずだった。

 

 しかし、先程ユーラシア連邦軍上層部へと通信を繋いだ結果、返ってきたのは予想外の命令であった。

 

『現在、ビクトリア基地はザフトの大規模降下部隊による攻撃を受け、防衛戦を展開中である。特務部隊Xは現状を維持。引き続きオーブにてキラ・ヤマトの護衛に努めよ』

 

(……ふざけた命令だ)

 

 カナードは内心で毒づいた。

 

 祖国の重要拠点がザフトの猛攻に晒されている防衛戦の最中なのだ。戦力として考えるならば、絶対的な光波防御帯を持つハイペリオンと特務部隊Xを大至急呼び戻すのが、軍としての正しい判断のはずである。

 

 だが、カナードにはユーラシア上層部の浅はかな思惑が完全に透けて見えていた。

 

(キラ・ヤマトと同世代である俺を傍に置くことで、オーブの懐深くに食い込もうという腹だろう)

 

 他国の正規軍の特務部隊を、中立国家の、それも最高機密の塊であるモルゲンレーテの深部へ招き入れるなど、通常では絶対にあり得ない。それが許可されたということは、オーブ側も「ユーラシアの最新鋭機のデータと引き換えに、自国の施設を使わせる」という暗黙の取引に応じたということだ。

 

 上層部の狙いは、キラを籠絡し、ユーラシアへ有益な技術情報や、あわよくばモルゲンレーテの最新技術そのものを持ち帰らせることにある。政治屋どもの泥臭い腹の探り合い。

 

 カナードにとって、そんなものはどうでもいい事だった。

 

 ただ一つ、彼の心をざわつかせている事実がある。

 

 これからキラ・ヤマトが、元代表首長である『オーブの獅子』ウズミ・ナラ・アスハと直接面会するというのだ。

 

(……スーパーコーディネイターの、完成品)

 

 カナードは、自らの内に長年巣食ってきたその呪いのような言葉を反芻した。

 

 やはりこの男は、ただの技術士官などではなく、生まれた時から国家の中枢に極めて近い立場にいたのだ。暗く冷たい研究所の檻の中で、廃棄される恐怖と痛みに耐えながら生きてきた「失敗作」の自分とは、あまりにも住む世界が違いすぎる。

 

「──カナード」

 

 背後から、ひどく穏やかな声がかけられた。

 

 振り返らなくともわかる。殺意を研ぎ澄ませて地獄を見てきたカナードに対し、微塵も警戒心を抱いていない、その間の抜けた足音。

 

 カナードが険しい顔で振り返ると、そこにはモルゲンレーテの制服に着替えたキラが、少しだけ困ったような、しかしどこか嬉しそうな微笑みを浮かべて立っていた。

 

「……気持ち悪いツラで俺を見るな。俺の目的は、お前を倒して自分の方が優れていると証明することだ。忘れたとは言わせんぞ」

 

 凄んでみせるカナードだったが、かつて彼を支配していたような「ドロドロとした純粋な殺意」は、どうやっても言葉に乗せることができなかった。

 

 なぜなら──この男が、自分を明確に「兄」と呼び、自らを「弟」の位置に置いたという事実が、カナードのコンプレックスを根底から狂わせてしまっているからだ。

 

「わかってるよ。でも、今は味方同士でしょ?」

 

 キラはカナードの威嚇などどこ吹く風で、トテトテと隣に並び立ち、キャットウォークの手すりに寄りかかった。

 

「……あのさ、カナード」

 

「なんだ」

 

「そんな顔してちゃ、疲れたりするだけだよ? ……僕のお兄さんなんだから、ここでなら肩の力を抜いても誰にも文句言わせないし、させないから」

 

「なっ……!」

 

 カナードは言葉に詰まり、顔を真っ赤にしてキラを睨みつけた。

 

 『僕のお兄さん』。

 

 そのたった一言が、カナードの胸の奥を強烈に、そして信じられないほど甘く抉ってくるのだ。

 

 この「完成品」は、本気なのだ。

 

 今の今まで自分に明確な殺意と憎悪を向けてきた男を、一切の疑問も持たずに「兄」として受け入れている。それどころか、自分が「弟」であるという立場を都合よく利用し、カナードの攻撃的な態度を柳に風と受け流しながら、生優しく甘えてきている節すらある。

 

「き、貴様……っ! 調子に乗るなよ! 俺を誰だと思っている!」

 

「うん。僕の、たった一人のお兄さん」

 

「~~~ッ!! この、バカにしているのかお前は!!」

 

 牙を剥いて怒鳴り散らすカナードに対し、キラはふふっと小さく笑い、「じゃあ、行こっか」と背を向けて歩き出した。

 

 憎むべき相手。殺すべき敵。そのはずなのに、なぜ自分はあの背中を撃とうと思えないのか。

 

(……狂っている。俺も、あいつも)

 

 『キラ・ヤマトの護衛に努めよ』と本国から正式に命令されている以上、彼がウズミに会うというのなら、必然として己もその「護衛」として同行しなければならない。

 

「カナード! 早く早く!」

 

 遠くから、無邪気な声でキラが手を振ってくる。その後ろには、腕を組んでカナードを値踏みするように睨んでいるカガリの姿もあった。

 

「……チッ、言われずとも分かっている!」

 

 カナードは忌々しげに舌打ちをすると、重い足取りで歩き出した。

 

 自分がこれから、スーパーコーディネイターの完成品の『身内』として、オーブの獅子のテリトリーのど真ん中へと踏み込まされるのだという数奇な運命に、そして『お兄さん』と呼ばれる事の言い表せない気恥ずかしさに彼は頭を抱えたい衝動を必死に抑え込みながら、キラの後を追った。

 

 

◇◇◇

 

 

「ご苦労だったな、キラ・ヤマト。些か寄り道のある旅だった様だが」

 

 オーブ連合首長国、行政府の奥深くに位置する執務室。

 

 重厚なデスク越しに、オーブの獅子ウズミ・ナラ・アスハは深く響く声で労いの言葉をかけた。

 

「はい。でも、意味のある旅だったと、そう思えます」

 

 真っ直ぐにウズミの目を見返し、淀みなく答えるキラ。

 

「そうか」

 

 ウズミは静かに頷き、目の前に立つ少年の顔を改めて見つめた。

 

 当初の予定ならば、アフリカの砂漠でレジスタンスごっこに興じているバカ娘を連れ戻すだけの、ほんの1週間程度で終わるはずの任務だった。

 

 それが、気付けば丸一ヶ月という長い時間が経過していた。

 

 だが、その一ヶ月という空白は、オーブにとって決して無駄な時間ではなかった。

 

 キラが発つ前に遺していった設計データとTC-OSを基盤に、オーブの国防戦力は着実な飛躍を遂げている。

 

 M1アストレイの大気圏内航空用装備である『シュライク』への改修。さらなる高機動戦闘を可能とする『イカロスユニット』と『BWS』のテスト運用および量産化。

 

 そして、少数ながら高高度迎撃拠点防衛兵装として『アリュゼウスユニット』の生産にまで漕ぎ着けていた。

 

 この短期間での異常とも言える戦力拡充は、ひとえにキラ・ヤマトという規格外の頭脳が齎した遺産と経済効果のおかげである。

 

 予定を大幅に超過し、数々の死線を潜り抜けてきた末の帰還。

 

 古の言葉に『男子三日会わざれば刮目して見よ』とあるが、ウズミの目に映るキラの姿は、まさにそれだった。

 

 一ヶ月前にこの国を旅立った時よりも、その顔つきにはより深く、重い責任を帯びた精悍な表情が宿っている。それでいて、以前のように今にも張り詰めて糸が切れてしまいそうな、あの痛々しく危うい気配は綺麗に消え失せていた。

 

(己の成すべき事を見定め、その重圧を正しく背負う覚悟を決めたか……)

 

 ならばその長旅もまた、この若者を真っ当に成長させるための良き試練だったのだろうと、ウズミは厳格な顔の裏で密かに安堵した。

 

 だが、ウズミにとっても完全に計算外だった事がある。

 オーブが国家としてユーラシア連邦と政治的な技術提携を結んだとはいえ、まさかそれに前後する形で、ユーラシアの最高機密であるMS開発『特務部隊X』を丸ごとオーブへと連れ帰ってくるとまでは思っていなかったのだ。

 

 ウズミの鋭い鷹のような視線が、キラの斜め後ろに立ち、油断なく周囲を睨みつけている長髪の少年へと向けられる。

 ユーラシアの特務部隊を束ねる、牙を剥いた狼のように荒んだ空気を纏う少年。

 

 ウズミはその少年の顔立ちと、そこから発せられる強烈な意志の光に、目の前に立つキラ・ヤマトとの「影」をピタリと重ね合わせた。

 

 髪の色も長さも、纏う雰囲気もまるで正反対だ。だが、骨格の造り、瞳の奥に宿る深い紫の色、そして何より、常人を遥かに凌駕するその存在の根源的な気配。

 

 かつてメンデルにおけるユーレン・ヒビキの狂気の末路を間接的に知る立場にあるウズミは、その瞬間に直感的にすべてを悟った。

 

 この少年が何者であり、どのような地獄を経てここに立っているのかを。

 

「……ユーラシアの特務部隊の随伴、感謝する。我がオーブへようこそ」

 

 ウズミの低く重い声が、探るようにカナードへと向けられる。

 

 その浅からぬ視線の意味に、自分という存在の根源を完全に見透かされたような感覚を覚えたカナードは、不快そうに眉を顰め、チッと小さく舌打ちをした。

 

「勘違いするな、オーブの獅子。俺は上からの命令で、コイツをここまで運ぶという任務を全うしたに過ぎん。護衛の任が終われば、さっさと帰還させてもらう」

 

 棘のあるカナードの言葉。しかし、それを聞いたキラは困ったように苦笑し、ウズミに向かって堂々と、そしてどこか嬉しそうに告げた。

 

「ウズミ様。こちらはカナード・パルス。……ユーラシア連邦の軍人であり、僕の『兄』です」

 

 その一言が落ちた瞬間、執務室の空気が微かに揺れた。

 

 ウズミはわずかに目を見開き、そしてすぐに深く、全てを理解したように息を吐いた。

 

 スーパーコーディネイターの完成品と、その陰で産み落とされた失敗作。本来であれば血で血を洗う殺し合いの果てにしか交わらぬはずの二人が、今、こうして『兄弟』として並び立っている。

 

「……そうか。兄、か」

 

 ウズミの口元に、微かな、しかし確かな笑みが浮かんだ。

 

 キラ・ヤマトがこの一ヶ月の寄り道で得た最も大きな成果。

 

 それは新たな技術でも、他国との軍事同盟でもない。

 

 キラが放っていた張り詰めた気配が消えた最大の理由が、この荒ぶる少年を自らの「兄」として受け入れたことにあるのだと、浅からぬ事情を察した。

 

 政治的なしがらみも、国家間の思惑も関係ない。

 

 ただ、過酷な運命に翻弄された二人の少年が、不器用ながらも血の繋がりという絆で互いの魂を補完し合おうとしているのだ。

 

 ならば、オーブの獅子としてではなく、一人の大人として、彼らのそのいびつな絆の行方を見守る度量を持たねばなるまい。

 

 

◇◇◇

 

 

 静寂が支配する執務室。キラとカナードが去った後、ウズミ・ナラ・アスハの視線の先には、数々の戦火を潜り抜けてきた愛娘の姿があった。

 

「カガリ……」

 

 その声は静かだが、鋼のような厳しさを孕んでいた。

 

 呼ばれたカガリが歩み寄る。かつてのように反発することも、言い訳を探すような目配せもしない。ただ、自分の未熟さが招いた結果と向き合う覚悟を決めたように、まっすぐに父親を見つめていた。

 

 次の瞬間、乾いた音が室内に響いた。

 

 鋭い音が響くと同時に、カガリの顔が横へと大きく弾かれた。頬に走る熱と痛み。しかし、彼女は倒れることも、手で顔を庇うこともせず、そのままじっと耐えていた。

 

「それが、己の無謀が招いた代償だ」

 

 ウズミの言葉は、ただの叱責ではなかった。

 

「お前が私情で戦場へ赴き、行方を眩ませたことで、どれだけの人間が翻弄されたと思っている。オーブの行く末を危うくしかねない程の行動の責。お前は、一人の娘ではない。オーブという国家の意志を背負う者の一人なのだ」

 

 かつてならば、カガリはこの理不尽な暴力を──否、理不尽に感じたであろう愛の鞭を前に、烈火のごとく怒り狂っただろう。なぜ殴るのか、私にも言い分はある、と。だが、今のカガリは違った。

 

「……申し訳、ありませんでした」

 

 震える声で、しかし明確に彼女は謝罪を口にした。

 

「自分の身勝手で、キラに……皆に、多大な負担をかけました。……お父様が、私のことでどれほど苦慮されていたか、想像もしていませんでした。……私が……私が、未熟だったせいです」

 

 その言葉には、言い訳の余地など欠片もなかった。

 

 彼女の瞳は、痛みに堪えながらも、自らの過ちを正視している。その瞳の奥に宿る光を見て、ウズミは胸の内で小さく溜息をついた。

 

(……ああ、確かに成長している)

 

 かつて、この娘は「自分の正義」だけで世界を測っていた。だが、戦場という地獄で自分の行動が他者の運命を変えてしまう重みを知り、自分の命が自分だけのものではないことを痛感したのだ。

 

 以前のカガリであれば、殴られた衝撃で憤怒に顔を歪めたはずだ。だが今の彼女は、痛みを自分の責任の重さとして受け入れ、それを糧にしようとしている。

 

「……顔を上げろ、カガリ」

 

 ウズミは娘の顎を軽く持ち上げ、その瞳を覗き込んだ。そこには、迷いではなく、オーブの未来を託された者としての小さな、しかし揺るぎない意志の炎が灯り始めていた。

 

 それは、まさに「オーブの獅子」の意志を継ぐ者の目だった。

 

「今回は、この一撃で勘弁してやろう。だが、二度目はないと思え。お前の背負うべきものは、砂漠の砂よりも重く、かつ剣よりも鋭いのだ。……その重みを、これからは決して忘れるな」

 

「はい……お父様」

 

 カガリは深く頭を下げた。その姿は、跳ねっ返りの少女の面影をどこか残しながらも、確実に次の時代へと踏み出す為の、一人の若き指導者の気配を纏い始めていた。

 

 ウズミは彼女の肩を強く抱きしめると、窓の外に広がる、輝くオーブの海へと視線を向けた。

 

 世界はまだ混迷の只中にある。だが、この娘と、そしてあの少年たちがいれば。

 

 オーブという国は、そしてこの世界は、少しだけ希望ある未来へと辿り着けるのかもしれない。

 

 

 

 




早く次の戦いを書きたかったのですが、一応時系列的にここに入れないと話がややこしくなるので一旦箸休め。

さーて次はザフト起死回生オペレーション・スピットブレイクの時間だ!

まぁた泥臭い戦いを見せることになるが、また次回もこの小説に付き合ってもらう!

ジブリールの飲むアラスカのコーヒーは苦い…。




陸戦メカ大好きなのはガノタだから08小隊好きやろ?と思うそこの貴方。

確かに08小隊大好きで、0083の超作画の宇宙戦も好きですけど、序盤の陸戦も好きです。サイサリスに押されて負荷が掛かるゼフィランサスの足首から飛び散るスパークなんか大好物です。

でも陸戦メカが好きなルーツは、08や0083を観るよりも遥かに前に、日曜日朝10時くらいにやってたガサラキのTAなんていうカッコいいロボットをちっちゃい時に見ちゃったからですね。

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