やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか 作:星乃 望夢
高級ホテルのティーラウンジ。
バルトフェルドが「会わせたい人物」を呼びに行き、席にはキラとアイシャの二人が残された。
「アイシャさん。どんな人を連れてくるんですか?」
「んー、ナイショ。お楽しみはアンディが戻って来てからね」
悪戯っぽく微笑んで口を閉ざすアイシャ。
キラはコーヒーカップを見つめながら、小さく息を吐いた。
もはや、世界の流れを読み切ることは不可能に近い。
ユーラシア連邦の大躍進。カナードやイングリットといった本来なら別の運命を辿るはずだった者たちの存在。
様々な要素や因果が絡み合い、スーパーコーディネイターの頭脳をもってしても「予測」には限界がきている自覚がある。
だから、バルトフェルドが誰を連れてくるのか、キラにはまったく想像がつかなかった。
消去法で言えば、プラントの急進派を抑えるために動いているであろうシーゲル・クラインの可能性が一番高い。
もし彼であった場合、キラは父親からの拳の一発くらいは覚悟していた。
「ふふっ。良い顔ね。立派な男の顔してるわ」
「そ、そうですか?」
不意に投げかけられた言葉に、キラは顔を上げた。
「ええ。女の責任を取る男の顔。今の貴方、とてもステキよ」
「あ、ありがとうございます……」
アイシャからの大人の女性としての賞賛。
素直に褒めてもらえるのは嬉しいのだが、その「責任」の根本にあるのが極めてシモい出来事であると自覚しているだけに、キラは素直に喜んで良いのか悪いのか分からず、困ったように視線を泳がせた。
「それで、どっちが気持ち良かった?」
「ブフッ! ゲホッゲホッ、エホッ、……なっ、なに言ってるんですか!?」
突然の爆弾発言に、キラは飲んでいたブラックコーヒーを見事に吹き出しそうになり、激しく咽せた。
「あら。身体の相性は大事よ? 特に貴方、結構好かれてるみたいだもの」
「そ、それは……っ」
「ふふっ。愛の駆け引きはまだまだね。それで? 何人の娘が居るのかしら」
「な、何人って、そんなこと、ないですし……!」
慌てて否定しようとするキラだったが、彼の脳裏には、どうしても数人の顔が浮かんできてしまう。
絶対的な信頼で結ばれているラクス。
全てを曝け出して身を委ねてきたイングリット。
そして、M1アストレイのテストパイロット三人娘──いつもスキンシップが激しくて距離感がおかしいマユラ、最近妙に積極的で然りげなく触れてくるジュリ、仕事以外の他愛もない会話が増え、時折頬を赤らめるアサギ。
「ふーん。モテモテね、貴方。5人も虜にしちゃってるなんて」
「な、なんでわかるんですか!? あっ……」
アイシャの的確すぎる指摘に思わず声を上げ、即座に自分の失言に気づいて口を押さえるキラ。
「ふふ。本当に素直で良い子」
完全に自分のペースに巻き込み、コロコロと笑うアイシャは、どこか愛おしそうにキラを見つめた。
「アンディも気に入ってるし、ウチの子にならない?」
「……お誘いはとても嬉しいですけど、僕にも世界で1番の愛情を注いで育ててくれた両親が居ますから」
からかわれつつも、アイシャの瞳の奥にある純粋な気遣いを感じ取ったキラは、少しだけ表情を緩めて、真っ直ぐに答えた。
養父母であるカリダとハルマ。彼らが注いでくれた愛情こそが、キラ・ヤマトという少年の根幹を支える一番の強さなのだ。
「あら、フラれちゃった。大事にするのよ、親のこと」
「はい」
バルトフェルドとはまた違った、母親や姉のようなアイシャの優しい言葉に、キラは胸が温かくなるのを感じながら、少しだけ冷めたコーヒーに口を付けた。
「それで、どっちが良かったの?」
「今の空気でそれ引っ張ります!?」
せっかくの温かい空気を台無しにする容赦ない追撃に、キラの情けない声が再びティーラウンジに響き渡るのだった。
◇◇◇
「君が、キラ・ヤマトか」
先程までティーラウンジの空気を支配していた南国特有の気怠い空気を、鋭利な刃物で切り裂くような声だった。
バルトフェルドが席を立ち、連れてきたその人物の姿を見た瞬間、キラは思わず息を呑んだ。
足音すら立てずに現れたその男は、陽光溢れるリゾート地のホテルにはおよそ似つかわしくない、仕立ての良いダークグレーの細身のスーツを、一切のシワもなく隙なく着こなしていた。
神経質そうに一糸乱れず撫でつけられた髪と、知性の塊であることを隠そうともしない鋭い眼光を放つ眼鏡。そのクリアなレンズの奥で、値踏みするように、あるいは解剖台の上の検体を観察するように、キラの全身を冷徹に射抜く視線。
知っている。いや、本来の歴史を知るキラにとって、彼を知らないはずがなかった。
だが、このオーブの地で、しかも『砂漠の虎』アンドリュー・バルトフェルドの紹介という、あまりにも奇奇な形で彼と相対するなど、歴史の改変を考慮しても「想定外にも程がある」事態だった。
「……アルバート・ハインラインだ。よろしく頼む」
そう。後に世界平和監視機構『コンパス』に所属し、設計局のトップとして辣腕を振るう男。比類なき頭脳を持ち、キラ・ヤマトという規格外の天才と、純粋な『メカニック畑の人間』として対等に専門的な議論を交わすことができる、世界でも数少ない、いや、唯一無二と言っていい人物である。
「キラ・ヤマトです。こちらこそ、よろしくお願いします……」
キラは、僅かな動揺を悟られまいと立ち上がり、丁寧に頭を下げた。
「ふむ。君が……あの『ティエレン』と、それに搭載されたTC-OSの開発者か。こうして直に会えるのは、技術者として光栄の至りだ。特に、あの紺色のカスタム機──高機動型ティエレンの解析は、控えめに言って僕の頭脳をもってしても中々骨が折れる代物だったよ。あれの基本設計からOSの構築まで、全てを組み上げたのは君一人かね? ならば君の脳神経の構造は一体どうなっているのか、設計図面よりも先にそちらの医学的な興味すら湧いてくるというものだ」
ハインラインは勧められた椅子に座るなり、挨拶の余韻すら切り捨てるような早口で、圧倒的な情報量の言葉を並べ立てた。
「た、タオツーを解析って……や、しますよね、普通……」
「ほう。『タオツー』というのか、あの機体は。外見上の特徴的なフォルムとスラスター配置からして、一品物の特注機であることは容易に推測できたがね。だが、データ上のシミュレーションにかけて、僕は己の目を疑ったよ。まさかエンジンの出力パラメーターに、あの空力特性を完全に無視した鉄塊を、大気圏内でも推力のみで自由飛行させるだけの異常な出力比も加えなければならなかったとは」
ハインラインは眼鏡のブリッジを中指で素早く押し上げ、さらに早口で、熱を帯びたように畳み掛ける。
「最初、僕が組んだ宇宙空間と地上環境での双方向負荷シミュレーター上では、機体のフレームが加速時のGと負荷に耐えきれず、稼働開始からわずか三秒で空中で自壊した。当然だ。アレを空へと飛ばした上で、急激なベクトル変更に耐えられる堅牢なフレーム構造の強化……装甲材質の変更か、あるいは特殊な応力分散機構でも組み込まれていなければ形とならない程の、狂気じみた改修が施されているのだから」
一切の淀みなく、機体の本質を丸裸にしていくハインラインの言葉に、キラはただ圧倒されていた。
「それに、だ。機体を操るパイロットの想定だ。ここが一番の問題だった。通常のコーディネイターの反応速度を当て込んでOSのフィードバックを設定しても、機体の異常な機動性に制御が追いつかず、即座に致命的なスピンを起こして墜落した。ザフト軍でも最上位のトップガン──赤服のエース級、いや、それ以上に比する途方もない数値を入力しなければ、正常な挙動値を割り出せないわけだ。つまり君は、兵器を設計するメカニックとして天才的であるだけでなく、それを実際に手足のように操るパイロットとしての能力も、文字通り『ずば抜けている』ようだ。……っと、少々早口が過ぎたが、僕のプロファイリングに何か問題はあるかな?」
キラは目を丸くし、半ば呆然としていた。
恐るべき分析能力。彼が解析したデータは、あくまで戦闘の断片的な記録や外部からの観測データに過ぎないはずだ。
しかし、ハインラインは間違いなく、自分が開発したティエレン全領域対応型のポテンシャルと、そこに込められた設計思想を「完全に理解している」者だけが発せる領域に到達していた。
「いえ、ありません。……まさか、宇宙でしか使っていない機体から、そこまで詳細に大気圏内の挙動までシミュレートしたなんて、信じられません。けど……もしかして、タオツーのデータは、既にザフトの最高評議会や国防委員会に……?」
自らが心血を注いで構築した技術。もしそれが、パトリック・ザラ率いる急進派の手に渡り、ザフトの巨大な工業力をもって量産されればどうなるか。戦局は完全にザフト側へと傾き、地球軍との泥沼の殲滅戦が加速し、さらに数え切れないほどの血が流れることになる。キラの顔から血の気が引き、明らかな焦燥と恐怖が浮かんだ。
「それに関しては安心してくれ」
ハインラインは、ボーイが運んできた冷たい飲み物やコーヒーには一切手をつけず、淡々と、しかし確かな意思を持って事実を告げた。
「僕は今、ザフトの正規軍とは異なる……『ターミナル』という組織の末端に関わっていてね。あの機体は、そこで使用する独自戦力のためのMSとして極秘裏に選定された。ザフト本国にすべてのデータを回せば、戦局は劇的に変わるだろう。だが……それは後々僕らの首を激しく絞めることになり、極めて面倒な事態になる。だから、評議会へ提出する報告書には、機体の外観と一般的な出力の途中経過までは載せてあるものの、OSの核心技術と機体構造の全容については『極度のブラックボックス化につき、現段階では解析不能』としておいた」
「そうだったんですか……。ありがとうございます」
キラは心底安堵したように、深く、長く息を吐き出して、ハインラインに対して深く頭を下げた。
もしあの機体のデータがザフトの正規軍に渡っていれば、自分は間接的に、そして不可逆的に、数万、数十万という命を奪う手助けをしていたことになっていたからだ。
「なに、易いものだ。情報操作など、プログラムの書き換えより遥かに単純な作業だからね」
ハインラインは僅かに目を細め、目の前の少年の「安堵」の質をじっと観察した。兵器の力が隠蔽されたことに、これほどまでに胸を撫で下ろす開発者。
「しかし、君のその反応を見るに……君は開発者としての『ジレンマ』を、深く理解しているようだ。自分の手で造り出した技術を、意図しない形で戦争の道具として使われたくはないという痛切な想い。……僕としても、その純粋な思想には大いに共感が持てる。我々技術者は、常にその恐怖と背中合わせだからね。刃を鍛えれば、それは必ず誰かを斬る」
ラウンジのBGMが、いつの間にか静かで叙情的なピアノの旋律に変わっていた。ハインラインの声のトーンが一段階低くなり、しかしその奥底に、技術者としての熱く重い業を帯びたものになった。
「だが、僕らが恐れをなして歩みを止めてしまえば、技術の進歩は滞り、それは世界の損失となる。そして現実問題として、どれだけ強固なプロテクトを掛けようと、どれほど崇高な平和の理念を掲げようと、一度世界に放たれてしまった己の技術を、他者が兵器として転用し、悪用するのを完全に防ぐ手立てはない。造った瞬間に、それは自分のものではなくなる。……その絶対的な『業』を、君はどうするつもりだ? このまま、自身の才能を呪いながら隠遁する気かね?」
それは、これから幾度となく直面するであろう、強大な力を生み出す者が逃れられない永遠の命題だった。
類い稀なる天才的な頭脳を持つからこそ、ハインライン自身もまた、その業の深さに苦悩し、葛藤し、それでも世界を前に進めるために、裏舞台で血を吐くような戦いを続けているのだ。
キラは、膝の上に置かれた自身の両手を見つめた。
数多の敵を撃ち落とし、友と殺し合い、そして、自分を愛してくれた少女の涙を拭い、抱きしめた手。血に塗れ、それでも誰かに温もりを与えようと足掻き続ける手。
「……技術そのものには、善も悪もないと、僕は想います」
ゆっくりと顔を上げたキラのアメジストの瞳が、ハインラインの鋭い眼光を、一切の揺らぎなく真っ直ぐに見据え返した。
「あるのは、それを使う人間の『心』だけです。だから僕は、自分の造った技術に対して、出来るだけの対処はします。……けれど、その全てに完璧な責任が取れるとも、世界を僕の望む通りにコントロールできるとも思っていません」
キラは一度言葉を区切り、自らの内に確固たる炎を灯すように、力強く断言した。
「それでも、僕は造り続けます。悲しむ人を減らすために。誰かが理不尽に泣かなくて済むように。僕が大切にしたいと願う人たちを、守れるように。……もし、僕の手からこぼれ落ちた技術が、誰かを不当に傷つける恐ろしい力に変わってしまったのなら、その時は、僕自身が真っ先に矢面に立って、その力と戦います。……それが、何かを生み出してしまった僕の、唯一の責任の取り方です」
静寂が降りた。
ティーラウンジの喧騒が遠のき、二人の間だけの時間が止まったかのようだった。
ハインラインはしばらくの間、瞬きすら忘れたように、あるいは未知の完璧な数式を目の当たりにした学者のように、キラの顔をじっと見つめていた。
やがて彼は、小さく肩を揺らし、ふっと口元を緩めた。それは冷徹な理論家が見せた、今日初めての「人間らしい」心からの笑みだった。
「……成る程。どうやら君は、ただの腕の立つ優秀な技術者というわけではないようだ。業を背負って泥を這う覚悟を、とうの昔に決めている。しかも、極めて強靭な意志でね」
ハインラインは短く息を吐くと、仕立ての良いスーツの胸ポケットから、厳重なロックが施された黒い一枚のデータメモリを取り出し、テーブル上を滑らせてキラの前に置いた。
「君のその言葉、しかと受け取った。ターミナルの技術部として……いや、アルバート・ハインラインという一個人の名において、君という特異点に最大限の投資をしようじゃないか。そこには、僕らが構築した最新の基礎理論と、ターミナルへのアクセスコードが入っている。好きに使いたまえ」
立ち上がったハインラインは、最後に一度だけ、不敵な笑みを残して背を向けた。
「オーブでの君の『仕事』、大いに期待しているよ、ヤマト君。またいずれ、議論のテーブルで会おう」
「はい」
こうして二人の天才は出逢った。
その行く末がこの世界に一体何をもたらすのか。
この時点では誰にも予測することなど不可能だった。
◇◇◇
「どうでしたか? ハインラインさんとは」
背後から掛けられた声に振り返ると、トレードマークである特徴的なピンク色の髪をすっぽりとフードで隠したラクスと、動きやすくも仕立ての良い黒のパンツスーツに身を包んだイングリットが歩み寄ってくるところだった。
イングリットは少しだけ頬を赤く染めながらも、その瞳にはもう迷いや怯えはなく、キラを守る『盾』としての凛とした強い光を宿して彼の斜め後ろにスッと控えた。
「うん。なんというか……かなり、びっくりしたよ」
キラは小さく息をつきながら、手元の携帯端末にハインラインから受け取ったデータメモリを読み込ませ、その中身を空間ディスプレイに展開した。
そこに表示されたのは、キラ自身が設計した『ティエレン全領域対応型』の図面──の、コピーではない。
ハインラインが観測データと外観のフォルム、そして断片的な出力数値からの逆算によって独自に組み上げた、もう一つのタオツーの設計図だった。
自分がゼロから描いたオリジナルとは、フレームの応力分散のアプローチも、スラスターの燃焼制御のコードも全く違う。しかし、最終的な『機能』と『出力結果』はピタリと同じ数値に行き着くように構築されている。
同じ頂を目指して、全く別の過酷な登山ルートを単独で踏破してきた天才の足跡を見るような、技術者として摩訶不思議で、そして痛快な感覚だった。
「それにしても、あの全領域対応型をそっちの組織でも造ってるなんて知らなかったよ。あの機体は──」
「ええ。ですが、そのままでは到底扱えません。誰一人として、キラの様にはいきませんから。ですので、OSの方でリミッターを掛けて運用しています」
ラクスの言葉に、キラは深く頷いた。
「うん。絶対にそっちの方が良いよ。アレは、普通の人間が乗ることを想定していない機体だからね」
カラーリングと外観こそ全領域対応型と同じに揃えられているが、キラが自身の専用機としてフルチューンした一点物のタオツーは、通常のパイロットが乗れば制御不能に陥って自滅するだけの『欠陥機』だ。
スーパーコーディネイターであるキラ・ヤマトの異常な反応速度と空間認識能力、そして操縦に耐えうる肉体があって初めて成立する、文字通りのバケモノである。
つまり、基本スペックの時点において、現在ザフト軍で次期主力として量産が進められている『ジンハイマニューバ2型』すらも遥かに凌駕する、ティエレンの最上位機種。
それがもし、リミッターを外した本来の性能のまま、ザフトの巨大な工業プラントで本格的に量産されていたとしたら。
(……プラントはきっと、その力で地球の完全制圧を可能にしてしまう)
キラはディスプレイの光を見つめたまま、思考の海へと深く沈んでいった。
もしザフトが地上を完全に制圧すれば、悲劇の最終兵器『ジェネシス』が地球に向けて撃たれる最悪の未来は回避できるかもしれない。
けれども、圧倒的な力で勝利したザフト軍が、おとなしく地球側を「統治」するだけで終わるだろうか。
血のバレンタイン──ユニウスセブンへの核攻撃で家族を焼かれた恨み辛み、そして泥沼化したこの戦争で溜まりに溜まった憎悪を抱えたコーディネイターたちが、力を持たない地球のナチュラルたちを報復として虐殺する未来だって、十分にあり得る。
だから、ザフトが完全勝利してはダメなのだ。
(かといって、地球軍が勝利しても……同じことだ)
大西洋連邦が主導する地球連合軍が勝利すれば、彼らは間違いなく核ミサイルを使用する。
『青き清浄なる世界のために』と狂信するブルーコスモスが軍の中枢で元気なままであれば、戦争に勝利したあと、プラントに住むコーディネイターたちを老若男女問わず根絶やしにするか、あるいは全てのコロニーを核の炎で焼き払うという暴挙に必ず出る。
戦争を終わらせたい。それは、キラも、ラクスも、心から願っている本当のことだ。
でも、どちらか一方が圧倒的な力を持って「一方的に圧勝する」と、その先には結局、形を変えた地獄絵図しか待っていない。
この世界は、その着地点が絶望的なまでに悩ましいのだ。
この狂った憎悪の連鎖を断ち切るには、最終的な決戦で世界が滅ぶような過ちをどちらかが、或いはどちらもが選択してしまった時。
横から圧倒的な力でぶん殴って「戦争そのものを強制終了」させなければならない。
だが、現状ではまだまだ戦力が足りなさ過ぎる。
モルゲンレーテで進めている機体開発も、オーブを真の『武装中立国家』として完成させるための道のりも、まだ道半ばだ。ハインラインという強力な協力者を得たとはいえ、世界を止めるには時間が足りない。
「……力はただ力。想いだけでも、力だけでもダメなんだ」
キラは誰に言うともなく、ポツリと呟いた。
ディスプレイの電源を落とし、顔を上げる。彼の瞳に迷いはなかった。
改めて思ったんだが、まさかウチのキラ君さては年上キラーか?
キラの周り取り巻いてる強火のファンガール()が皆年上じゃないか?
双子の姉()のカガリは除外するとして。
この双子のずりーところ。その場その場の自分達の状況とかメンタルとかでコロコロ姉弟兄妹を切り替える所。