キラ・ヤマトになってしまった…   作:星乃 望夢

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PHASE-76 フレック・グレイズ

 

 重厚なデスクを挟み、二人の絶対者が向かい合っていた。

 

 一人は、オーブの獅子たる前代表首長、ウズミ・ナラ・アスハ。

 

 大西洋連邦と極秘裏に接触し、中立コロニー・ヘリオポリスにおいて『G兵器』の開発を独断で推し進めたサハク家の暴走。その結果として招いたザフト軍による襲撃と多数の被害者への政治的責任を取る形で、代表首長の座を弟のホムラに譲った。

 

 だが、それはあくまで表向きのポーズであり、彼が依然としてオーブという国家の巨大な舵取りを担っていることに変わりはない。

 

 そしてもう一人は、オーブの影の軍神たるサハク家当主、ロンド・ミナ・サハク。

 

 宇宙ステーション『アメノミハシラ』を根拠地とし、オーブの軍政と諜報のすべてを掌握する漆黒の女王。

 

「他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、他国の争いに介入しない」

 

 オーブの掲げる三つの基本理念。中でも「他国の侵略を許さず」という、最も困難で血生臭い理想を、圧倒的な技術力と政治的駆け引きをもって絶対のものへと変えようとしている存在。

 

 その修羅の道を切り拓いている一人の少年の階級は、依然としてモルゲンレーテ所属の『技術三尉』に留まっていた。

 

「……ウズミ。そろそろ、あの少年に相応しい『座』と『階級』を与えるべきではないか?」

 

 ミナが、切れ長の瞳を細めながら切り出した。

 

 彼女にしてみれば、現在のキラ・ヤマトの「技術三尉」という階級は、底辺の極みであり、彼の存在価値に対する侮辱にすら等しかった。

 

「彼が我が軍と国庫にもたらした功績を考えろ。TC-OSによる莫大な外貨獲得。各種アストレイ部隊の強化オプション、水中戦や早期警戒システムの構築。そして極めつけは、万が一ティエレンが敵に回った際の対抗策としての、ドーバーガンとリニアレールガンの配備だ。……これらの功績だけでも、佐官──いや、将官のバッジを与えてもまだ安すぎる」

 

 ミナの言葉は真理だった。

 

 実のところ、キラに対する昇進の話は過去に一度持ち上がっていた。

 

 しかし、そのタイミングが悪すぎた。ヘリオポリスでザフトの襲撃に巻き込まれ、民間人の友人たちを守るためにやむを得ず地球軍の艦『アークエンジェル』と行動を共にし、ティエレン全領域対応型を駆ってザフトの正規軍と幾度も交戦したという事実。

 

 中立国オーブの軍人が、他国の軍艦に乗って他国の軍隊と交戦したとなれば、深刻な国際問題に発展する。

 

 そしてさらにキラは「彼らはモルゲンレーテのMSテスト小隊に所属しており、やむを得ぬ専守防衛の拡大解釈のもとで自衛戦闘を行った」という形に書類を書き換え、アークエンジェル運行を手伝った友人達の身分を法的に守る事でさしたる国外批判も受けず事なきを得た。

 

 しかし、その書類偽装の疑いが軍内部の保守派から指摘されたため、彼の昇進はほとぼりが冷めるまで一度見送られることとなったのだ。

 

 だが、あれから約半年が経過した。

 

「ただの優秀な技術屋として格納庫に引き籠もっているだけならば、三尉でも一向に構わん」

 

 ミナは、ウズミを真っ向から見据えた。

 

「だが、お前も知っているだろう。彼はあのムルタ・アズラエルとサシで交渉のテーブルに就き、TC-OSのライセンス契約書にサインさせたのだぞ。さらには、各国の軍拡競争の未来を予見し、世界規模のパワーバランスを計算して『必要な時に、必要な陣営に、必要な兵器』をばら撒いている。……あれはすでに、極めて高度な『政治的判断』を行っている証拠だ」

 

 ミナの眼光が鋭さを増す。

 

「世界全体を俯瞰し、政治将校としての立ち回りすら完璧にこなせるあの才能を、いつまでも一介の士官の階級に押し留めておくなど、軍事組織としても国家としても『損失』以外の何物でもない。権限を与えよ、ウズミ。彼が己の裁量で、より自由に世界を動かせるだけの力を」

 

 正論であった。

 

 もしキラが将官クラスの権限を持てば、彼はオーブの外交や軍事調達において、いちいち上層部の承認を待つことなく、より迅速に、より的確に世界平和への布石を打つことができる。

 

 だが。

 

 オーブの獅子たるウズミ・ナラ・アスハは、深く息を吐くと、その重々しい首を横に振った。

 

「……ならん。これ以上の階級と権限は、あの少年には与えられんよ」

 

「……何故だ? 保守派の目など、私がとうに潰してある。まさか、彼が力を持ちすぎてオーブを乗っ取ることでも恐れているのか?」

 

「馬鹿を言うな。あの子がそんな野心を持つはずがないことなど、お前が一番よく知っているだろうに」

 

 ウズミは顔をしかめ、胃のあたりを軽く押さえた。

 

「ミナ。あの子は……キラ・ヤマトという少年は、強すぎるのだよ。頭脳も、才覚も、そして何より『優しすぎる責任感』がな。今でさえ、あの子は『オーブの国防』という、本来ならば我々大人が背負うべき重すぎる意思と業を、その細い肩に全部背負い込んでしまっている。……徹夜で兵器を造り、外国の要人と渡り合い、自分の造った力で人が死ぬ未来に怯えながら、それでも世界を守るために泥を被っているのだ」

 

 ウズミは、かつて見せたような鋭い眼光ではなく、一人の父親のような、痛ましげな瞳でミナを見つめ返した。

 

「これ以上、階級という名の『枷』を与え、あの子に国家の『政』まで背負わせてみろ。優しすぎるあの子は、オーブの罪も、世界の業も、すべてを一人で抱え込んで、いつか心ごと潰れてしまうぞ」

 

 ウズミの言葉に、ミナはわずかに息を呑んだ。

 

「階級が低いままであれば、万が一の失敗や暴走の責任は、最終的に我々『大人』が被ってやることができる。……私やお前が上にいる限り、あの子には好きなようにオモチャを造らせ、好きなように世界と交渉させてやればいい。責任は、我々が取る。それが、あの子を利用して国を保っている我々の、せめてもの『立つ瀬』というものだ」

 

 沈黙が降りた。

 

 為政者としての効率と実利を重んじるミナにとって、ウズミの言葉はひどく甘く、感傷的に聞こえた。

 

 だが、同時に。ミナ自身もまた、アメノミハシラの閨で、己の胸にすがりついて泣くように甘えていた少年の無防備な姿を知っている。

 

「……フッ。甘いな、ウズミ。まるで父親の顔だぞ」

 

 ミナは小さく鼻で笑うと、組んでいた足を静かに組み直した。

 

「だが……まあ良かろう。お前の言う通り、責任という重荷で彼を押し潰してしまっては元も子もない。あの少年には、これからも『平の技術士官』という隠れ蓑を羽織らせたまま、世界という盤上で思う存分、好きに踊らせてやろう」

 

 ミナは、妖艶に微笑んだ。

 

「オーブの表の責任は、お前が背負え。……裏の汚れ仕事と、万が一の時の逃げ道は、私が用意してやる。あの子はただ、その類稀なる頭脳と優しさで、我々に『明日』を造り続ければよいのだ」

 

 オーブの光と影。

 

 二人の絶対者は、一人の少年のために、世界で最も過保護で、最も強固な『見えない盾』を構築していくのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

 大西洋連邦におけるブルーコスモス派の最大拠点にして、難攻不落の地球軍総司令本部『ヘブンズベース』。

 

 ロード・ジブリールを筆頭とする地球軍上層部が顔を揃えたその冷え切った戦略会議室で、彼らは来たるべき「青き清浄なる世界」を実現すべく、着々と軍備を整えつつあった。

 

「遅い! 数が全く足りておらん! ともかくMSの数を揃えろ!」

 

 ジブリールのヒステリックな怒声が響く。

 

 無理もない。ヘブンズベースが現在稼働できる生産ラインは、戦時急造品である『ストライクダガー』のものしかなく、高性能なダガーシリーズや北アメリカの巨大な生産拠点は、全て政敵であるムルタ・アズラエルに独占されていたからだ。

 

 ストライクダガーのラインだけで、プラントを焼き払うための大部隊を早急に揃えることなど物理的に不可能であった。

 

 ヘブンズベースの生産ラインをこれ以上増築するにも限界がある。

 

 ならば、必然的に彼らの目は「外」──アズラエルの手が届いておらず、かつ、そこら中にMSのパーツがゴロゴロと転がっている「ユーラシア連邦」の大地へと向けられることとなった。

 

 だが、ここでブルーコスモスの狂信的な教義が壁となる。

 ユーラシアに転がっている無尽蔵のMS……すなわち『ティエレン』は、憎きコーディネイターが設計し、コーディネイターが作ったOSで動いている鉄屑である。

 

 そんなものを「清浄なる地球軍」の主兵装として使うなど、彼らの歪んだプライドが絶対に許さなかった。

 

 しかし、その問題は「二つの欺瞞」によって鮮やかにクリアされることとなる。

 

 一つは、難航していた「純大西洋連邦製ナチュラル用OS」がどうにか実用化に漕ぎ着けたこと。

 

 そしてもう一つは、ジブリールとユーラシア連邦内のブルーコスモスシンパ将官の伝手を使い、極秘裏にユーラシアで開発されていた「ある新型機」のデータを丸ごと接収したことである。

 

 それは元々、ユーラシア連邦がキラの私有する『ティエレン全領域対応型』の圧倒的な性能を目指して開発していた、次世代のティエレンであった。

 

「中身のフレームはそのままで良い。だが、見た目だけは徹底的に変えろ! コーディネイターの作った鉄案山子に乗るなど言語道断だ!」

 

 ジブリールの鶴の一声により、その機体は「全くの新規開発MS」として改造を施されることとなった。

 

 パテントの回避と、ブルーコスモスのちっぽけな自尊心を満たすためだけに、装甲の形状は徹底的に変更された。無骨で角張ったティエレンの装甲を取り払い、代わりに丸みを帯びた曲面装甲を採用。

 

 武装はティエレン特有の滑腔砲を捨て、ストライクダガーの標準装備であるビームライフル、ビームサーベル、そしてシールドを持たせた。さらに機体各部にスラスターを増設し、重力下でも宇宙でも運用可能な汎用性を強引に付与したのである。

 

 もし、オーブにいるあの天才技術者が、細かな外見の偽装を剥ぎ取ったその丸みを帯びたシルエットと、機体に名付けられたコードネームを見たならば。

 

 「偶然の一致にしては、全く笑えない冗談だ」と、歴史の皮肉に頭を抱えたことだろう。

 

 その機体の名は『アヘッド』。

 

 別次元において、ティエレンの系譜の果てに生まれ、世界を強権的に統治する独立治安維持部隊の主力となった機体と同じ名を持つその赤銅色のMSは、コズミック・イラの世界において「ブルーコスモスの主力量産MS」として奇妙な誕生を遂げた。

 

 頭部の意匠と表面装甲こそ異なるものの、中身を開ければ関節駆動から何から全て「ティエレンのフレーム」である。

 

 そのため、ユーラシア連邦のどこにでも転がっているティエレンのパーツをそのまま流用でき、徹底したモジュールブロック構造によって組み立てや整備性は異常なほど高かった。

 

 また、丸みを帯びた傾斜装甲を採用したことで、本体重量はオリジナルのティエレンから劇的に軽量化されている。

 

 実弾に対する絶対的な防御力は低下したが、その分、増設スラスターと軽量化による「高い機動性」を獲得。耐ビームコーティングの技術はそのまま転用されているため、ビーム兵器に対してもそれなりの耐性を保持している。

 

「素晴らしい。野蛮なコーディネイターが作った鉄屑を、我々『純粋なナチュラル』の技術とOSで、より優れた機動兵器へと昇華させたのだ!」

 

 ヘブンズベースの格納庫にズラリと並び始めた、赤銅色のアヘッドの大群。

 

 それを見下ろしながら、ジブリールと将官たちは満足げに頷き合っていた。

 

 結局のところ、見た目とOSをすげ替えただけで、彼らが乗っているのは憎きコーディネイターが心血を注いで設計した傑作フレームそのものである。

 

 しかし、彼らは「独自改修と純正OSによって、コーディネイターの機体を超えた」という欺瞞に満ちたちっぽけな自尊心を満たしながら、ユーラシアの地から際限なく送られてくるパーツを組み立て続けた。

 

 部品調達の容易さと整備性の高さというティエレン最大の長所を悪用し、ジブリール陣営はアズラエルの妨害をすり抜けながら、着々と、そして爆発的な速度で『狂信の軍団』の数を増やしていくのだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「こんな無茶苦茶な要求を叶えられるモビルスーツなんて、あるわけないじゃないか……!」

 

 オーブの地下開発室で、キラ・ヤマトは送られてきた依頼書を前に、本気で匙を投げたくなった。

 

 依頼主は、かつて彼が「自衛用民生MS」としてティエレンを提供した相手──ジャンク屋組合であった。

 

 彼らからの通信は、半ば悲鳴のような切実さを帯びていた。

 

『ティエレンに代わる、新しい自衛用MSを作って欲しい』

 

 理由は皮肉なものだった。ティエレンがユーラシア連邦の主力量産機として採用され、大量に出回った弊害として、海賊や盗賊にブルーコスモスのテロリストにまで広く使われ始めた結果、「ティエレンの形をしている」というだけで、宇宙では問答無用でザフトの正規軍から攻撃を受けるようになってしまったのだ。

 

 販売元であるジャンク屋組合には各方面から批判が殺到し、彼らの安全な業務すら脅かされる事態に陥っていた。

 

 その上で、彼らが提示してきた要求スペックは以下の通りである。

 

 宇宙でザフトの『ジン』と遭遇しても、互角に逃げ回れる・渡り合えるだけの高い機動性。

 

 戦場に普及し始めた高出力ビーム兵器への耐性。

 

 それでいて、実弾防御力の極端な低下は抑えること。

 

 コスト削減のため、既存のティエレンの生産ラインを極力流用できること。

 

「ジンと同等の機動性を持たせて、ビームも実弾も防げて、しかもそのままのラインで造れって……そんな魔法みたいな機体、どうしろっていうんだよ」

 

 頭を抱え、愚痴をこぼすキラ。だが、ジャンク屋組合の仲間たちが困窮し、命の危機に晒されているのを見捨てることなど、この優しすぎる少年にできるはずがなかった。

 

 彼は深く、重い溜息を吐き出すと、コンソールに向かい合い、新たな図面を引き始めた。

 

 ──そして、彼はある種の「開き直り」の境地に達していた。

 

 自分が世界中に兵器をばら撒く『死の商人』であるという業。

 

 それを否定せず、むしろ利用して世界のパワーバランスを強引にコントロールする。あわよくば、プラントがこの新しい機体の有用性に目をつけ、買ってくれないだろうかとすら打算的に考え始めていたのだ。

 

 数日の不眠不休の末、キラ・ヤマトという特異点の頭脳は、またしてもコズミック・イラの常識を覆す一つの解答を導き出した。

 

 自衛戦闘民生用MS『フレック・グレイズ』の誕生である。

 

 フレック・グレイズの設計コンセプトは、ティエレンの強みをあえて完全に「反転」させることにあった。

 

 「実弾には恐ろしいほど耐え、ビームにはそこそこ耐え、機動性は劣悪」というティエレンの重装甲主義を捨て去る。

 

 代わりにフレック・グレイズが目指したのは、「実弾にそこそこ耐え、ビームには恐ろしいほど耐え、機動性もバッチリ」という、宇宙空間や乱戦に特化した軽量・高機動コンセプトである。

 

 最大の技術的ブレイクスルーは、その装甲材質にあった。

 

 キラは、ティエレンに施した耐ビームコーティング技術の中から自分が使用する全領域対応型のフェムト単位での耐ビームコーティング技術を応用。

 

 装甲表面にナノ単位で多重積層させることで、ティエレン以上のビーム耐性を持つ『ナノラミネート装甲』を開発し、実装したのだ。

 

 これにより、機体を軽量化しつつも、高出力のビームライフルの直撃すら易々と弾き返す、驚異的な対ビーム耐性を獲得した。

 

 無論、無敵ではない。

 

 ナノラミネート装甲は熱エネルギーの拡散には絶対的な強さを誇るが、物理的な大質量の衝突──すなわち、キラ自身が開発した『ドーバーガン』の実体弾や『リニアレールガン』による超電磁加速の運動エネルギーの前には、装甲ごと陥没し、破壊されてしまう。

 

 故に何処の陣営に出回ってもオーブは対処法を既に持っているという状態にする。

 

 フレック・グレイズのもう一つの際立った特徴は、その「サイズ」にあった。

 

 コズミック・イラにおける標準的なMSが全高18メートル前後であるのに対し、フレック・グレイズは全高13.8メートルという、一回り以上も小柄な体躯として設計された。

 

 この小型化には、複数の明確な意図が込められている。

 

 機体を小さくすることで被弾面積を極限まで抑え、小回りを利かせてジンとも渡り合える高い運動性と機動性を確保。

 

 構造フレームを徹底的に簡略化し、ティエレンと同じ「モジュールブロック構造」を採用。機体が小さくパーツ群もシンプルなため、ティエレンの生産ラインを流用しての大量生産が容易となった。

 

 そして何より、キラが意図的に仕込んだ「テロリスト対策のセーフティ」としての役割である。

 

 機体が小さくて軽いということは……大口径や反動の強い武装を『物理的に扱えない』ということだ。

 

 重機としての役割も兼ねていたティエレンとは違い、フレック・グレイズはあくまで純粋な自衛戦闘用である。

 

 だが、軽量で小柄なこの機体に巨大なバズーカやミサイルを撃たせれば、反動で自らが吹き飛ぶ。

 

 つまり、万が一この機体が海賊やブルーコスモスの狂信者たちに奪われ、テロに利用されたとしても、「彼らは大火力の兵器で街を大規模破壊することができない」のだ。

 

 正規軍やジャンク屋組合が運用する分には、軽量なビームライフルや小口径のマシンガン、あるいは近接用の実体剣を持たせれば、十分に自衛火力は維持できる。

 

 コンソールに完成した、独特の頭部センサーと洗練された曲線を持つ13.8メートルの小さな機影。

 

 それは、世界中に戦火をばら撒く運命を背負ってしまった少年が、民間人を守りつつ、無秩序な破壊の連鎖を物理的な制約によって抑え込もうとした、優しくも狡猾な「死の商人」としての意地だった。

 

 こうして、新たな自衛戦闘民生用MS『フレック・グレイズ』の図面は、ジャンク屋組合のもとへと送られた。

 

 その驚異的なビーム耐性と高い運用性が、やがてオーブのみならず、宇宙のパワーバランスを再び塗り替える新たな一手となることを、キラはこの時すでに確信していた。

 

 

 

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