やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか 作:星乃 望夢
ユーラシア大陸を東西に分断するウラル山脈の東麓、見渡す限りに広がる荒涼たる大平原に、地鳴りのようなキャタピラ音とスラスターの駆動音が響き渡っていた。
「青き清浄なる世界のために!」
ブルーコスモスの狂信的な教義に染まり、極東のオーブを「テロ支援国家」として焼き払うべく東進を続けるユーラシア西側のブルーコスモス・シンパ部隊。
彼らは、ストライクダガーと、ティエレンのフレームを流用しながら外装をすげ替え大西洋連邦製OSを無理やり組み込んだ「アヘッド」の混成部隊を主力とし、リニアガンタンクや自走砲を伴った大軍勢を形成していた。
彼らは信じて疑わなかった。圧倒的な数と、ビーム兵器という先進技術を持つ自分たちこそが正義であり、行く手を遮る者などいないと。
しかし、彼らの進軍は、平原の只中で突如として停止を余儀なくされた。
朝靄が晴れた地平線の彼方。そこには、文字通り「緑色の鋼鉄の山脈」がそびえ立っていたのである。
「なんだ、あれは……っ!?」
ストライクダガーのコックピットで、西側の部隊長が絶望的な声を上げた。
彼らの視界を埋め尽くしていたのは、ユーラシア東側軍令部が誇る、陸戦兵科すべてを単一機種に置き換えた『ティエレン一本化ドクトリン』の完全なる体現であった。
最前列に陣取っているのは、両腕と両脚に合わせて4枚の分厚いシールドを構え、大地に深く根を下ろした『ティエレン長距離射撃要塞型』の壁。
その後方には、口径300mm・50口径という規格外の長砲身を天へと突き上げた『ティエレン長距離射撃型』が無数に並ぶ、圧倒的な要塞砲陣地が形成されていた。
ユーラシア東側の将兵──ウォッカと祖国をこよなく愛する「イワン」たちにとって、ティエレンは単なる兵器を超えた『神の賜物』であった。
『硬い! 強い! 安い! デカい大砲! むせ返るほど武骨な緑色!』
複雑な機構などいらない。小賢しい電子戦など知ったことか。ひたすらに分厚い装甲で弾を弾き、バカでかい砲弾を敵にぶち込む「歩く重戦車」。
それは、彼ら露助の男たちが魂の底から愛してやまない、ロマンと実用性の完全なる結晶だった。
陣形の中央、巨大な通信アンテナと頭部センサーブロックを増設した『ティエレン地上指揮官型』の中で、東側の猛将が片手にウォッカのスキットルを握りしめながら、全軍の通信回線をオンにした。
「同志諸君! 我らが救国の英雄、オーブのヤマト准将殿より、直々の電文が届いている!」
将軍の野太い声が、ティエレン部隊の全コックピットに響き渡る。
『勇敢なるユーラシアの雪熊同志諸君の奮戦と、吹雪の中の無事を祈る。我ら血を分けし鋼鉄の鉄人の歩みに砲火の勝利を!』
「「「「「ウラーーーーーー!!!!」」」」」
通信回路が割れんばかりの、地鳴りのような咆哮。
彼らにとって、この時期のウラルに吹雪などない。だが、英雄が「雪熊」と呼び、「吹雪」と言ったのなら、これから彼らがこの平原に「鋼鉄と硝煙の吹雪」を降らせるまでのことだ。
「さぁ、裏切り者の異教徒どもに、本物の『鉄』の味を教えてやれ! 砲撃開始!!」
将軍の号令と共に、平原が爆発した。
ティエレン長距離射撃型の300mm砲が一斉に火を噴く。
最大射程40kmから放たれた質量弾の雨が、美しい放物線を描いて西側部隊の頭上に降り注いだ。
着弾。ストライクダガーの極薄の装甲が紙切れのように消し飛び、リニアガンタンクが爆圧でひっくり返る。
ビームライフルなど届くはずもないアウトレンジからの、純粋な物理エネルギーによる一方的な蹂躙が始まった。
「ひ、退くな! 敵の砲撃をかいくぐって接近しろ! ビームライフルさえ届けば、あんな鉄屑ども!」
西側の指揮官が叫び、スラスターを吹かしてアヘッドと残存するストライクダガーが前傾姿勢で突撃を開始する。
だが、彼らがティエレンの防衛線まで残り数キロに迫った時、緑色の巨壁の隙間から、地を這うような猛スピードで「それ」が飛び出してきた。
「な、なんだあの小型機は!?」
全高わずか13.8m。ティエレンより一回り小さなサイズしかないその機体群──『フレック・グレイズ』は、ザフトのジンを凌駕する圧倒的な機動性と運動性で、雪崩のように西側部隊へと殺到した。
「小賢しい! 落ちろっ!」
アヘッドがビームライフルを連射する。緑色の光線がフレック・グレイズの肩部に直撃した──が。
「なっ……弾いただと!?」
ビームの直撃を受けたフレック・グレイズは、表面のナノラミネート装甲によってビームのエネルギーを完全に拡散させ、無傷のまま猛然と距離を詰めてきた。
彼らは、歩く要塞を守るための「随伴歩兵」である。
懐に潜り込んだフレック・グレイズは、90mmサブマシンガンでアヘッドの関節部を蜂の巣にし、そのまま跳躍して、手にした小型ハンドアックスをストライクダガーのコックピットハッチへ情け容赦なく叩き込んだ。
鋼鉄が砕け、オイルと血が噴き出す。
ビーム兵器を無効化された西側の量産機は、フレック・グレイズの群れによる泥臭い近接格闘の前に、次々と鉄屑へと変えられていった。
猟犬たちが敵陣をかき乱す中、ついに本命が動く。
背中に弾薬を満載したカーゴを背負う『ティエレン輸送型』から無限の補給を受けながら、『ティエレン地上型』の分厚い壁が、地鳴りを立てて前進を開始した。
「クソッ、本隊のお出ましだ! 撃て! 撃ちまくれ!」
西側のアヘッド部隊が、一斉にビームライフルを乱射する。
しかし、ティエレンの重装甲に施された耐ビームコーティングは、同じ箇所に3発連続で直撃を受けない限り剥がれない。西側の散発的な射撃など、文字通り「かすり傷」に過ぎなかった。
逆に、アヘッドの機体からは、すでに悲鳴が上がっていた。
ティエレンの完璧な重心バランスを崩し、曲面装甲と無駄なスラスターで着飾っただけの機体に、大西洋連邦の粗悪なOSが組み合わさった結果。荒れた平原を全力で走らされたアヘッドの股関節サーボモーターは、熱を吹き、文字通り焼き切れる寸前だった。
「ひぃっ!? 足が、動か……っ!」
バランスを崩し、前のめりに倒れ込むアヘッド。
その無様な姿を、ティエレンのコックピットから見下ろしていた東側の兵士たちは、ウォッカの匂いのする息を吐きながら冷酷にトリガーを引いた。
「偽物のツラ被ったヨロヨロが。俺たちの『鉄人』を語るんじゃねぇ!」
至近距離から放たれる200mm×25口径滑腔砲。
凄まじい反動と共に放たれた徹甲弾が、アヘッドの曲面装甲ごと機体を真っ二つに粉砕する。
逃げ惑うスピアヘッド戦闘機は、滑腔砲同軸の12.7mm機銃による精密射撃であっけなく撃ち落とされていった。
「バカな……! こちらは連合の正規軍だぞ!? たかが旧世代の実弾兵器の群れに、どうして……っ!」
西側の総司令官が乗る指揮官用アヘッドが、後方へ退却しようと機体を反転させた時だった。
ティエレンの群れの奥から、明らかに異質な、しかし紛れもないティエレンのシルエットを持った数機の機体が静かに歩み出てきた。
「あの機体……大砲を持っていない……?」
西側の司令官が疑問に思った次の瞬間。
ティエレンAL型の機体から、眩いばかりの光のドームが展開された。
ユーラシア連邦が「ハイペリオン」に搭載した絶対防御領域『アルミューレ・リュミエール』である。
「なんだ、あの光の盾は!?」
西側部隊がヤケクソで放った全弾が、光のドームに触れた瞬間に完全に弾き返される。
そして、無敵の盾を展開したまま悠然と進み出たティエレンAL型の両肩に装備されたビーム砲──『フォルファントリー』が、禍々しい光を収束させた。
「オーブの准将殿に、特大の戦果を届けてやれ」
東側指揮官の冷徹な一言と共に、極太のビームの奔流が平原を薙ぎ払った。
実弾と重装甲を愛する「鉄人」の群れの中から放たれた、絶対的なビームの暴力。
それは、大西洋連邦の狂信者たちのプライドを完全にへし折る、トドメの一撃であった。
光の奔流が収まった後、平原に残っていたのは、西側部隊の原型を留めない無数の残骸と、大地を焦がす黒煙だけだった。
対する東側の「緑色の鋼鉄の山脈」は、シールドに多少の焦げ跡をつけた程度で、誰一人として倒れることなく、その無骨な巨体を夕日に照らされている。
「西側部隊、全滅を確認。……ふん、他愛もない」
東側の将軍は、ホログラムモニターに表示された「敵反応ゼロ」の報告を一瞥すると、スキットルの蓋を開け、コクピットの中で豪快にウォッカをあおった。
「准将殿の祖国へ向かうダニの掃除は、これで完了だ! 諸君、我らが鋼鉄の鉄人と、オーブの双子獅子に敬礼!!」
「「「「「ウラーーーーーー!!!!」」」」」
ウラル山脈の東麓に、勝利の歓喜とウォッカの匂いが立ち込める。
狂信の十字軍は、極東へ辿り着くことすら許されず、ユーラシアの雪熊たちが操る「最強の鉄人」たちの前で、あまりにも惨めな敗北を喫したのである。
◇◇◇
国防軍中央管制センターの喧騒から三人の姿が消えた。
各方面への緻密極まる防衛指示、そして民間人の命を最優先とした超法規的な退避命令。
それらを息つく間もなく叩き出したカガリとキラは、訪れていた前代表ウズミ・ナラ・アスハに伴われ、束の間の休息を取るべく席を外したのだ。
主たちを見送った後の管制センターには、数秒の深く重い沈黙が降りた。
室内に詰めているのは、かつてウズミと共にこの国の守りを担ってきた歴戦の将官や、現場叩き上げの一佐たちである。
彼らの視線は、三人が消えた扉と、そして赤く染まりつつある絶望的な戦術マップとを交互に彷徨い、やがて誰からともなく、深く、熱を帯びた溜息が漏れた。
オーブ軍最高司令官大将カガリ・ユラ・アスハ。
最高軍事顧問准将キラ・ヤマト。
互いにまだ16歳という、およそ一国の軍隊の命運を託すにはあまりにも若すぎる双子の姉弟。
平時の軍隊であれば、彼らの階級は単なる政治的な「お飾り」や「特例」として処理され、実務は周囲のベテラン将校たちがフォローして回すのが常識である。
ましてや、カガリがオーブ国内で「跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘」として手を焼かれていた事は、軍の上層部であれば周知の事実であった。
そしてキラに至っては、士官学校の門すらくぐっていない、ヘリオポリスの工業カレッジ上がりという完全な「素人」の技術士官に過ぎない。
確かに彼が編み出したTC-OSや数々の兵器群が、オーブの軍事力を世界最強にまで押し上げたのは紛れもない事実だ。
だが、兵器を作る才能と、万の軍勢を指揮して人の生き死にを分かつ「将軍」としての才能は、全くの別物のはずであった。
しかし、彼らが先程まで見せていた姿はどうだ。
将軍とはどういう生き物なのか。その業と責務の絶望的なまでの重さを正しく理解し、最前線で血を流す部下たちへ「自分のために死んでこい」と魂を鼓舞する言葉を投げかける。
外敵に対しては一切の情け容赦を捨て、領海侵犯に対する警告ののち、それを無視する狂信者に対しては「即撃沈」の許可を冷徹に下す。
国内の絶対的な「盾」を、カガリが担う。
国外へ向けた無慈悲な「剣」を、キラが担う。
その阿吽の呼吸で繰り出される命令の数々は、まるで生涯を戦陣で過ごしてきた歴戦の老将すら凌駕する、恐るべき俯瞰的な視座に支えられていた。
今回オーブへと差し向けられているのは、統制の取れた正規軍ではない。
ブルーコスモスの教義に脳を焼かれた狂信者たちの寄せ集めであり、波状的かつ無軌道な散発的襲撃が予想される。
このような「セオリーの通じない狂人のパレード」に対しては、防衛側もまた迎撃ラインをその都度再構築し、臨機応変で対応するしかない。
それを指して「場当たり的で、指揮官として無能だ」などと嗤う者がもし軍内部にいるとすれば、それは戦術の大局すら見えていない己の阿呆さを自ら名乗り出るような行為である。
管制センターの将校たちは、キラの敷いたその「非効率に見えて最も確実な防衛陣形」に、ただただ舌を巻くしかなかった。
そもそも。
オーブの獅子の意志と血脈を正当に受け継ぎ、背中合わせで互いの弱さを補い合いながら。
『全世界を敵に回す』という、人類史上かつてないスケールの国難を眼前に突きつけられてなお、あそこまで落ち着き払い、気負うことなく淡々と指揮を取れる司令官が、この世界のどこに、どれ程居ようか。
最前線に立つ兵士たちの心理は、管制室の将校たちよりもさらに純粋で、そして熱狂的であった。
彼らは、キラ・ヤマトがもたらした恩恵に、最も直接的に預かっている当事者たちである。
自分が乗るM1アストレイの圧倒的な生存性。意のままに動く完璧なOS。彼のおかげで、オーブ軍の兵士たちは「理不尽に死ぬ確率」を極限まで減らされてきたのだ。
だからこそ、最前線の兵士たちはこの16歳の准将に対し、単なる上官への敬意を超えた、熱烈な支持を向けていた。
本人にその気は微塵も無くとも、オーブ軍内部に「ヤマト准将の非公式ファンクラブ」が自然発生的に組織されるのは、半ば必然の理であった。
「あの優しすぎる准将殿に、これ以上悲しい顔をさせるな!」「我々に命をくれた彼のために、今度は我々が命を懸ける番だ!」という、ブルーコスモスとは真逆のベクトルを持った、強靭で純粋な忠誠心。
そして、その忠誠の対象はキラだけではない。
かつての「跳ねっ返りのお姫様」が、今やオーブの真の『獅子の娘』として凛と立ち上がり、自らの軍服を泥に汚してでも国民の命を救おうと声を張り上げる姿。
その頼もしさに、通信機越しに感涙を流し、敬礼する者も少なくなかった。
血筋が良いから、あるいはカリスマがあるからといって、それだけで真に「将軍としての器」があるかといえば、話は別だ。
だが、その最も困難な「器」すらも備え持ち、冷徹に盤面を支配するキラ。
そして、今はまだ数歩先を行くその恐るべき弟の背中へ、不屈の闘志で追いつかんと足掻き、成長し続ける姉カガリの姿。
この二人が並び立っている限り、オーブの未来は絶対に安泰である。
この国のために戦い、この国のために、あの二人の盾となって死んでいこう。
強要された愛国心でも、洗脳された狂信でもない。
軍人としての真っ直ぐな矜持と共に、心の底からそう思える『真の司令官』たちの誕生。
それこそが、オーブ国防軍の将兵たちを根本から作り変えたのだ。
これから四方八方の海と空から押し寄せるであろう、何十万という圧倒的な敵の物量差。
しかし、オーブの地に立つ彼らの胸に、もはや微塵の怖気もなかった。
彼らはただ静かに銃の安全装置を外し、愛機のスラスターを温め、胸を張って迫り来る狂信の軍勢を待ち構える。
世界最強の兵器群と、最狂の頭脳、そして最高の士気を与えられたオーブ国防軍は今、この国難という名の巨大な坩堝の中で、文字通り「誰も手出しできない絶対の無敵軍」として、真の生まれ変わりを果たそうとしていた。
◇◇◇
オーブ本島から少し離れた海域に浮かぶ、アスハ家の私有地『アカツキ島』。
普段は波の音しか聞こえないその長閑な島の地下深くへと、分厚い岩盤を穿つようにしてエレベーターが下っていく。
「こんな所に……モルゲンレーテと同じような施設が……?」
到着した巨大な地下空間の威容に、カガリは驚きを隠せずに呟いた。
ウズミに連れられ、モルゲンレーテのエリカ・シモンズと共に訪れたこの極秘の地下格納庫。
アスハ家で育ってきたカガリでさえ、この足元にこのような物々しい施設が隠されていたことなど、今の今まで全く知らされていなかった。
彼らが歩みを進めた先。通路の最奥には、まるで何か強大な神を封印するかのように、巨大な隔壁が立ち塞がっていた。
「カガリ」
隔壁を前にして足を止め、ゆっくりと振り向いたウズミ・ナラ・アスハが、静かに、しかし深い響きを持って娘の名を呼んだ。
「はい。……お父様」
その声に応え、背筋を真っ直ぐに伸ばして父親を見据えるカガリ。
ウズミは、娘の双眸をじっと見つめた。そこにはもう、かつての無鉄砲で危なっかしい「跳ねっ返りのじゃじゃ馬娘」の姿はなかった。また、ただ守られてきた無力な「オーブの姫君」の弱さもない。
世界中を敵に回すという未曾有の国難を前にして、決して折れることなく、祖国の土と民草を守るために自ら死地に立つ覚悟を決めた、猛々しくも気高い『獅子の焔』が、その琥珀色の瞳の奥に確かな熱を帯びて揺らめいていた。
「……教える事は、未だ多くある。私がお前に残してやれた時間は、あまりにも短すぎた」
ウズミの言葉には、為政者としての冷徹さと、父親としての微かな悔恨が入り混じっていた。
「が、お前が自ら学ぼうとさえすれば、それは必ずやお前を愛し、支えてくれる人々から受け取る事が出来るだろう」
「はい」
カガリは力強く頷くと、隣に立つキラの手に、己の手をそっと重ねて強く握りしめた。
「私が守り、そして私に背負うべき覚悟を教えてくれるのは、彼です」という、無言の、しかし強烈な意志表示。
それを見て、ウズミは内心で(まさか血を分けた双子の弟に、これほどまでの執着と矢印を向けることになろうとは)と、頭痛の種を抱えるようなひどく複雑な思いを抱いたが、今は為政者としてその感情を深い胸の奥へと押し留めた。
「お前が……自らの手で、この国を護るための『力』を欲するなれば。その希求に応え、私はこれを贈ろう」
ウズミが視線を送ると、コンソールに待機していたエリカ・シモンズが静かに頷き、隔壁の最終ロックを解除した。
重々しい駆動音と共に、分厚い隔壁が左右へと割れる。
開かれた空間の奥──仄暗い格納庫の中に、スポットライトが突き刺さるように投射された。
そこに鎮座していたのは、闇を切り裂くように眩く、神々しいまでの黄金の光を放つモビルスーツ。
オーブの理念を体現する黄金の意志『アカツキ』であった。
だが、驚くべきはそれだけではない。
ここにアカツキが眠っていること自体は、キラは当然知っていた。
何しろ、その機体の根幹を成すTC-OSの専用調整と、ビームをことごとく反射する特殊装甲『ヤタノカガミ』の制御システムの構築を手掛けたのは、他ならぬキラ自身だったからだ。
しかし。
その黄金の機体のすぐ隣──まるでアカツキに寄り添い、対を成すかのように静かに佇むもう一機のモビルスーツの姿を捉えた瞬間。
「……えっ?」
オーブのあらゆるMSの設計と開発を掌握しているはずの「悪魔の技術将校」たるキラが、完全に予想外の事態に目を見開き、息を呑んだ。
そこにあったのは、アカツキの黄金の装甲とは対極をなす、冷たくも美しい、鏡面のように磨き上げられた煌びやかな白銀の装甲を纏った未知のモビルスーツであった。
「お父様……この、金色の機体は……? そして、隣の銀色の機体は……?」
カガリが、あまりの美しさと威圧感に魅入られたように呟く。
ウズミは、驚愕に固まる双子を見つめながら、静かに、遺言のように言葉を紡いだ。
「力はただ力。多く望むのも愚かなれど、無闇と恐れて厭うのもまた愚か。……が、祖国と民を想えばこそ、その過ぎたる強大な力もまた、お前たちの正しき意志と共にあるだろう」
ウズミは、その鋭い視線をキラへと向けた。
『お前が一人で背負おうとしてきた泥と血の因果を、私もオーブの代表として共に背負おう。お前が世界を敵に回してでも作ろうとした平和を、この機体と共に守り抜け』という無言のメッセージ。
それを受け取ったキラは、自身の目が僅かに潤むのを感じながら、深く、力強く頷き返した。
「守る為の剣──今、それが必要だというのならば、これを執れ。お前たちが、為すべき事を為す為ならば」
「……必ずや」
カガリは、黄金の機体を見据えながら、自身の魂に誓うように力強く宣言した。
「必ずや、この戦に勝ち、祖国と民を守ってみせます。お父様の、このオーブの理念と共に」
「ありがとう御座います、ウズミ様」
キラもまた、自身が乗るべき白銀の機体を見上げながら、ウズミへと深く頭を下げた。
「僕も……この国を、そしてここに生きる人たちを守ろうと思う志は、ウズミ様と同じであると想っています」
「うむ……」
ウズミは一歩、カガリとキラの前に進み出た。
そして、これが最後になるかもしれないという密かな覚悟を抱きながら──その大きく温かい両手を、二人の若き将軍の頭の上に、同時にそっと乗せた。
「ならば、この『アカツキ』と『シロガネ』と共に……オーブの未来を、そなたら二人に託す」
父の手の温もり。
それは、決して折れないオーブの理念の重さであり、同時に「必ず生きて帰れ」という、一人の親としての切実な祈りでもあった。
黄金の意志と、白銀の理念。
オーブの獅子が遺した二振りの究極の剣は、今この瞬間をもって、未来を切り開く若き双子の獅子たちの手へと、確かに託されたのであった。
◇◇◇
冷やりとした静寂に包まれたコックピットの中で、キラ・ヤマトの指先がコンソールのキーボードの上で目にも留まらぬ速さで踊っていた。
流れていくモニターに、幾重ものコードが滝のように表示されては消えていく。機体の神経網であるTC-OSを、自らの反射速度と技量に同調させるための最終調整。
コックピットのモニターやコンソールのレイアウトは、隣の『アカツキ』やオーブ軍の主力機『M1アストレイ』、もっと言ってしまえば、その技術の源泉であるGAT-Xシリーズと全くの同規格であった。
だが、この白銀の機体──『シロガネ』が内包するポテンシャルは、量産機とは次元が違う。
アカツキの設計とヤタノカガミのシステム構築を自らの手で手掛けたキラだからこそ、一目で理解できた。
このシロガネは、本質的にはアカツキの「色違い」の双子機である。
X100系フレームを採用し、背部には戦況に応じて換装可能な『ストライカーパック』のプラグが備わっている。
装甲表面に施されているのは、アカツキの黄金とは対を成す、鏡面のように磨き上げられた白銀のナノスケール・ビーム反射コーティング装甲だ。
(……ウズミ様は、ずっと前から覚悟を決めていたんだ)
キラは、操縦桿を強く握りしめた。
このシロガネは、アカツキの完成後にウズミが極秘裏に追加建造を指示していた機体だった。
カガリの「盾」となる黄金の意志がアカツキならば、この白銀は、いずれオーブの十字架を共に背負うであろう一人の少年のための「剣」。
平和を愛するオーブの獅子が、それでも万が一の破滅の時を見定め、それを託すに相応しい少年の存在を得たからこそ用意した理想を貫く刃であった。
モニターの隅で、機体システムが『ALL GREEN』のサインを点灯させる。
「カガリ、行ける?」
隣のハンガーで待機する黄金の機体へ、キラは静かに通信を開いた。
『ああ。……行くぞ、キラ』
通信機の向こうから返ってきたのは、迷いを完全に振り切った、オーブを統べる獅子の娘の力強い声。
「うん」
キラが短く応えた瞬間。
地下格納庫の天頂を覆っていた分厚い隔壁が、地響きを立てて次々とスライドしていく。差し込んでくる一条の光が、地下の闇に眠っていた黄金と白銀の装甲を眩いばかりに照らし出した。
リニアカタパルトの電磁誘導音が、限界まで甲高く跳ね上がる。
「カガリ・ユラ・アスハ、アカツキ、行くぞ!!」
「キラ・ヤマト、シロガネ、行きます!」
二つの強大な推力が爆発し、地下空間の空気を震わせた。
一瞬深く身を屈めた二機のモビルスーツは、次の瞬間、重力の楔を解き放たれたかのように、開かれた天窓から一直線に大空へと飛び立った。
青空を切り裂いて舞い上がる、太陽の如き黄金と、月の如き白銀の翼。
アカツキ島から飛び立った二つの光は、海峡を瞬く間に越え、戦火の足音が迫るオノゴロ島の上空へと舞い降りた。
その時のオノゴロ島は、まさに決死の撤退戦の最中であった。
M1アストレイ部隊が民間人を運び、沿岸部では無骨な緑色のティエレン部隊が、迫り来る見えない敵の大軍を迎え撃つべく鋼鉄の壁を築き上げている。
恐怖と混乱、そして極限の緊張感に包まれていた大地。
しかし。
上空の雲を切り裂き、輝かしく眩い光を放ちながら降臨した二機のモビルスーツの姿に、その場にいたすべての者の目と心が、一瞬にして奪われた。
「見ろ……! 空に……!!」
「黄金と、白銀の……モビルスーツ…」
避難を急ぐ人々の足が止まり、頭上を仰ぐ。
誘導を支援していたM1のパイロットたちも、沿岸警備で砲身を構えていたティエレンの屈強なパイロットたちも、モニター越しに放たれる神々しいまでの光に息を呑み、言葉を失った。
絶望的な物量で押し寄せる狂信の軍勢を前にして、この国が用意していた絶対的な『二振りの剣』。
その美しさと圧倒的な威圧感は、理屈を超えて人々の心に「希望」という名の強烈な楔を打ち込んだ。
そんな喧騒と熱狂の中。
避難民を運ぶ、一機のM1アストレイの巨大な手の平の上。
「キレイ……」
冷たい金属の掌に座り込み、空を見上げていた黒髪の幼い少女が、魅入られたようにぽつりと呟いた。
「お兄ちゃん……キレイだね」
その小さな手を、決して離すまいと強く握りしめていた赤い瞳の少年──シン・アスカは。
本来ならば、戦火の逃避行の末に、降ってくる爆発の中で愛する家族を失い、絶望のままに戦争を憎悪する運命にあったはずのその少年は。
妹の温もりを右手に感じながら、空に浮かぶ太陽と月の光を眩しそうに見つめ返した。
「ああ……」
少年の瞳に、黄金と白銀の光が焼き付く。
それは、彼からすべてを奪う死神の業火ではなく、彼ら弱き民草を理不尽な暴力から守り抜くために、自ら世界を敵に回す覚悟を決めた者たちが放つ、絶対的な庇護の光。
「……アレが、俺たちの国の守り神なんだな」
赤い瞳の少年の呟きは、スラスターの轟音にかき消されることなく、たしかにオノゴロの風に乗って溶けていった。
ただ純粋な憧憬と感謝だけが、次代を担う少年の胸に静かに、そして力強く芽吹いた瞬間であった。
いやね、最初はアカツキにカガリが乗って、湾岸線の最前列でエレガントにドーバーガンの砲口に両手を添えて佇むトールギスへキラを乗せようともかなり悩んでたんですよ。
でも、全世界が敵に回った絶望的な状況の中で、民間人も軍人も、理屈抜きにして黄金の意志を持つ守護神だけでなく、白銀の理想を貫く戦神まで揃って並び立てば、問答無用で、「あ、これ勝ったわ」って思える演出と、絶望的なまでの兵力差相手にも立ち向かう中の人的な補正も込めれば白銀ってのも悪くないなと。
まぁ、なんか恋愛原子核の因果とかもくっついて来そうなのは最早諦メロン。
しっかしユーラシア東側はホントにこの世界で1番良い空気吸ってそうだなぁ。
ホント、ただティエレンをブチ込んだだけで意図しない、でも多分必然的だった化学反応だとしても、こんな事に鳴るなんて思わねぇもん。
元々ユーラシアと大西洋連邦はライバルでいずれ来たる日に向けて特務部隊Xとかで独自MS開発してるから、大西洋連邦に対する牽制とか対立構造と、あの世界の実情からジャンク屋組合からティエレンを買っても不思議じゃないだろうと思って持たせた結果。
まさかこんな露助色強くって、内紛も辞さない勢いで恩人の為ならば一応は同じユーラシア陣営に砲弾ブチ込むティエレン教軍隊になると誰が予想出来るんだ?
これホントわざとそうしたわけじゃない。世界情勢的に勝手にこんなふうに育ってしまった理由わかんない集団。
これユーラシア東側だけで大西洋連邦と真正面からガチンコ勝負しても多分落ちないぞ。
それどころかティエレンが頑丈過ぎてファウンデーションショック起きるのか?
ファウンデーション立ち上げるの多分無理じゃない?
いくらフェムテク装甲でも300mm50口径徹甲弾の飽和砲撃と直撃受けたら壊れるよな?
さらばだファウンデーション。我らの鍛冶司る1つ目の鉄人が放つ戦場の女神の砲火と火薬の味を知らん若造共に、このユーラシアの大地は決して渡さんよ。
↑てな展開になっても俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!!
良かったな、イングリット。一人勝ち大勝利UCだぞ?
ただ頭の中にあるプラント√でも技術提携とはハニトラ的にオルフェによって送られてきそうなのどうしてなのかな?
一応プラントだからジャン・キャリーとかハインラインとか、コートニーとかシホとかの技術屋部隊組んで色んな事しようかと思ってるけど。
やっぱり初手で自分自らやってくるビビょ湯浮かばないオルフェは何なんだろうね?
ああ、スマン、イザーク。
多分プラント√だとシホをキラがNTRしてるかも知らんが、士官学校で同室になったキラの面倒全部見ることになるだろうから、今のうちにヨロシク言っとく。
ちなみにアークエンジェルの行方は、ビクトリア基地防衛戦後にマスドライバーで宇宙へとあがって、月基地に帰還後、ザフトがメテオストライクを行えないようにデブリベルトを哨戒していたりしてますね。
あくまでも物語の視点の重点をキラとかその周りに置いておかないと物語が追いつかないので、ご了承ください。
ホントはパーティでフレイ出そうと思ってたんだけど、サイの婚約者なのはそのまま、まぁ親から言われてキラと仲良くなって来てねと言われてそのままの意味で受け取ってグイグイ仲良くなろうとするけど、カガリとイングリット、あとアスランとカナードが居るし。
そうでなくともサイも居るなら止めようとするし、自分よりもキラに肩入れするから仕事と私、どっちが大事なの!って言えば、サイなら「今は」仕事って答えるけど、その今はって部分ちゃん受け取れなくて拗ねてギクシャクする微妙な空気になってフレイは去って、苦笑いしながらキラに謝るサイっていう。
あのアスランに甘え倒した総集編のシメに入れるのなんか締まらないと思って断念しました。