やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか   作:星乃 望夢

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PHASE-83 オーブの力

 

「じゃ、あと頼むな、キラ」

 

「うん。……そっちもお願い、カガリ」

 

「ああ。任せろ」

 

 短い、しかし絶対的な信頼の交歓。

 

 その言葉を残し、眩い黄金の装甲を夕日に輝かせながら、カガリが乗ったアカツキはゆっくりと推力を上げて宙へと舞い上がり、オノゴロ島にある国防軍中央管制センターへと帰投していった。

 

 国内の防衛陣形と、何より逃げ遅れた市民の最終避難状況を統括するためだ。

 

 遠ざかる黄金の光を、キラは静かに見送った。

 

 視線を下ろせば、彼が搭乗する機体──鏡面のように磨き上げられた白銀の装甲を持つ『シロガネ』が、大地に突き立てたシールドに両手を添えるようにして、静かに、しかし圧倒的な威圧感を持って聳え立っている。

 

 その神々しくも静謐な姿は、まるでこの島と民草を守り抜くことを誓う騎士のようであった。

 

「……准将殿! ヤマト准将殿!!」

 

 ふと、喧騒から自分を呼ぶ声が聞こえ、キラは視線を落とした。

 

 地下の巨大シェルターへと続く避難経路。

 

 荷物を抱え、疲れ切った足取りで歩みを進めるオーブの市民たちが、シロガネの足元に立つキラの姿を見つけ、次々と立ち止まっては手を振っていた。

 

 M1アストレイの機動力と、兵士たちの誘導によって、市民の退避は予想以上のペースで進んではいるものの、やはり突然の他国からの理不尽な侵略宣言に、彼らの顔には隠しきれない疲労と死の恐怖が色濃く張り付いていた。

 

 それでも、彼らは自国の若い『英雄』に向かって、祈るように手を振るのだ。

 

「……」

 

 キラは、少しだけ目を伏せた後、顔を上げて柔らかく、ひどく優しい笑みを浮かべ、彼らに向かって手を振り返した。

 

 自分が作ってきた兵器が、どれほどの命を奪ってきたのかを知っている。

 

 自分の手が、どれほどの血と泥に塗れているかも知っている。

 

 だが、そんな自分の作り物の笑顔と手を振る仕草一つで、今まさに明日をも知れぬ恐怖に怯えている彼らの心から、ほんの数パーセントでも焦りや不安が消え去り、「あのヤマト准将がいるなら大丈夫だ」と安堵してくれるのならば。

 

 こんな風に笑みを浮かべることも、手を振ることも、本当に安いものだった。

 

「……どうして僕は、こんなところまで来てしまったんだろう」

 

 キラは、シロガネの冷たい装甲に背を預けながら、誰に聞かせるでもなくぽつりと呟いた。

 

 夕日を浴びる白銀の機体は、彼の呟きを吸い込むようにただ沈黙している。

 

 始まりは、あの悲劇だった。

 

 地球軍による、農業プラント『ユニウスセブン』への核攻撃。

 

 血のバレンタインと呼ばれるあの日。自分は地球軍の軍事ネットワークの奥底までハッキングし、情報をザフトに流すという、発覚すれば一発で命を消されるような危険極まりない真似までして、どうにかして凶行を食い止めようとした。

 

 ……だが、結果は変わらなかった。

 

 遠く離れた安全な場所から祈っているだけでは、あるいは情報を流して他人の行動に期待するだけでは、この狂った世界の悲劇は決して止められない。

 

 大切な人が宇宙の塵になっていくのを、ただ見ていることしかできない。

 

 その冷酷で絶望的な真実を、自分は骨の髄まで理解してしまったのだ。

 

 だから、自分にやれることを、自分が一番得意な「機械いじり」の延長で、ただ精一杯やって来た。

 

 OSを作り、兵器の概念を引っくり返し、大人たちを脅迫し、使えるものはなんだって使って、ただ足掻いてきた。

 

 その結果が。血のバレンタインからわずか一年半も経たないうちに。

 

 自分が、このオーブ連合首長国の『国防軍最高軍事顧問・准将』という、他国の生殺与奪すら握る化け物のような権力の頂点に立っているという現実である。

 

「本当に……僕ってバカみたいだな」

 

 キラは自嘲気味に息を吐き出した。

 

(……まぁ、でも)

 

 こうして最前線に機体と共に立っている方が、遠く離れた司令部に引き籠っているよりも、確実に現場の兵士たちの指揮と士気は爆発的に跳ね上がる。

 

 それに、後方の管制センターには獅子の娘として完全に覚醒したカガリと、彼女を補佐するウズミの側近たち、オーブの優秀な軍幕僚たちがしっかりと陣取っている。

 

 敵の侵攻ルートの予測、防衛ラインの多重構築、そして開戦の火蓋が切られた後の初期対応。

 

 その全てにおいて、もはや自分が手を出さずとも機能するという所までは整えておいた。

 

 だからこそ、これからの国内の守りに関しては、完全にカガリに任せきりにしても大丈夫なのだ。

 

「カガリが頑張ってくれてるんだから……僕くらい、こうして陣中見舞いっていう名目で、少しはサボらせてもらってもいいよね」

 

 このキラ・ヤマトという少年は、世界を裏から操る悪魔の頭脳を持ちながらも、その本質は「極度の面倒くさがり屋」である。

 

 自分がこれ以上働かなくて済む、怠けるためのシステム構築には、血反吐を吐くような一切の努力と犠牲を惜しまない。

 

 そして、自分が手放しても大丈夫だと判断した領域においては、他人に甘えられる所はとことん甘え倒し、全ての責任を丸投げすることに、欠片ほどの躊躇もない。

 

「さて……」

 

 キラは夕闇が迫る太平洋の彼方へと視線を向けた。

 

 あの方角から、やがて教義に狂った無数の羽虫たちが、この平和な祖国を焼き払おうと殺到してくるのだ。

 

「殴って来るなら、殴り返される覚悟を持たなくっちゃね」

 

 そう呟き、キラは少し邪悪な笑みを浮かべていた。

 

 

◇◇◇

 

 

『キラー!』

 

 夕闇が迫りつつあるオノゴロの海岸線。

 

 海風と避難民の喧騒が入り交じる中、ふと頭の真上から降ってきた聞き慣れた声に、シロガネの足元にいたキラは目を丸くして顔を上に向けた。

 

『こらっ、トール! 今は准将殿でしょうが!』

 

『あいてっ! ちょ、ミリィ蹴るなよ! 変なところに力入って、バランス崩して落ちたらどーすんだよ!』

 

 ドカッ、というくぐもった打撃音と、和気あいあいとした痴話喧嘩が外部スピーカーから響き渡る。

 

 上空から轟音と共に鋼鉄の翼を広げて降りてきたのは、オーブの防衛ラインに配備されている無骨な緑色の機体群とは明らかに毛色の違う、サンドカラーに塗装された異形のティエレンだった。

 

 ホバー移動を可能とする脚部ユニットを持つ『高機動B型』の機体をベースにしながら、背部には時速300kmでの滑空を可能とする『高機動A型』のジェットエンジン内蔵型大型翼を装備させた特装機──『ティエレン高機動C指揮官型』。

 

 素直に高機動A型をそのまま使わない理由は、頭部のセンサーモジュールブロックと、両肩に強固なシールド兼用通信アンテナと、索敵用の高精度センサーモジュールが増設された『指揮官型』の重装備を、少しでも機動力を殺さずに運用するためである。

 

 そして、この特装機が採用しているのは『縦列複座式』のコックピットだった。

 

 現在、メインパイロットとして操縦桿を握るトール・ケーニヒが前席に座り、その後ろの一段高くなったオペレーターシートにミリアリア・ハウが座って、機体のセンサー管制や周囲の部隊の通信統括を行っている。

 

 かつてユーラシア連邦の地上指揮官型を設計した際、前線でのデータ処理量の多さをカバーするために参考として用意したこの複座システム。

 

 古い時代の戦闘ヘリや、あるいは『士魂号』や『チェルミナートル』のように、パイロットの真後ろやや上方にオペレーターが鎮座するレイアウトだ。

 

 だからこそ、今のトールとミリアリアのように、大昔の戦車長が運転士に指示を出す際に軍靴で頭を蹴っ飛ばしていたみたいな、極めて物理的で理不尽な「ツッコミ(後頭部への蹴り)」をコックピット内で直接お見舞いするという、アレな連携行動も出来なくはない構造になっている。

 

 重力に逆らうように強力なホバーの逆噴射をかけ、シロガネの傍らにサンドカラーのティエレンが着地した。

 

 巻き上がる砂塵を腕で防ぎながら、キラは親友たちのやり取りに、思わず頬を緩ませた。

 

「どうしたのーー! トール、ミリィ!」

 

 キラが両手を口に当てて上空のコックピットに向かって叫び返すと、トールが苦笑いを含んだ声をスピーカーから返してきた。

 

『ごめんごめん! なんかさ、海岸線に布陣してるランドグリーズ隊の連中がさ。俺たちをもう少し前に出させてくれ!って、通信回線でガンガンせっついてきてるんだよ!』

 

 ランドグリーズ──。

 

 それは局地戦用重砲撃戦仕様機動兵器である。

 

 その設計思想は、現代のMS開発のトレンドを真っ向から否定するほどに極端であった。

 

 最大の恩恵であるはずの「ビーム兵器」を機体から一切排し、主武装を多連装ミサイルランチャーや、背部の巨大なリニアカノンといった、信頼性と面制圧力に優れる「実弾兵器」のみに限定。

 

 バッテリー出力をビーム兵器に回さない分、その余剰電力を分厚い直線構造を多用した重装甲の保持と、高度な『対ビームコーティング』、そして周囲の誘導兵器を無力化する『電波妨害装置』の稼働に全振りしているのだ。

 

 結果として誕生したのは、機動力こそM1アストレイに劣るものの、足を止めての拠点防衛や、正面からの撃ち合いにおいては無類の強さを発揮する「動く重トーチカ」であった。

 

 持前の重装甲と対ミサイルジャマーで実弾やミサイルを無力化し、分厚いコーティングでビームすら弾き返す。

 

 地球連合軍のストライクダガーやアヘッドがどれほどビームライフルを撃ち込んできても、傷一つ負わずに歩みを進め、圧倒的な実弾の弾幕で敵を粉砕する。

 

 重装甲と大火力、そして極限まで高められた生存性。

 

 そのコンセプトは間違いなくティエレンの系譜を色濃く感じさせるものだが、ランドグリーズは最初から「正規軍の純然たる戦闘用兵器」として、モルゲンレーテの高度な技術力をもって開発されている。

 

 現在、オノゴロ島の防衛線にはティエレンも多数配備されている。

 

 だが、TC-OSの特許こそオーブが握っているものの、『ティエレン』という機体そのものの基本フレームや設計の権利は、あくまで中立の民間互助組織である「ジャンク屋組合」に帰属しているのだ。

 

 そのどちらの開発にも深く関わったキラが、現在オーブの最高軍事顧問たる准将という立場を利用すれば、ティエレンの全権利をオーブの国家権力で引っこ抜いてくることなど、造作もないことだった。

 

 しかし、キラは絶対にそれをしなかった。

 

 海賊に怯え、宇宙のゴミを拾いながら必死に生きる彼ら組合員たちの命を守るための「自衛用民生MS」として、無償でジャンク屋に渡した希望の設計図。

 

 それを、自分が軍の偉い人になったからといって「開発者は僕なんだから、権利を返して貰うね」などという阿漕な真似は、キラの倫理観と矜持が許さなかったのである。

 

 だからこそ、キラはティエレンの権利をジャンク屋組合の貴重な資金源としてそのまま残し。

 

 その上で、オーブ国防軍という正規軍の予算と技術力をフルにつぎ込み、ティエレンの「長所」だけを抽出し、より高性能で、よりオーブの国情──島国での防衛戦に特化した上位互換の重装甲機体『ランドグリーズ』を新たに一から設計・開発したのである。

 

『ランドグリーズ隊の連中、ヤマト准将がわざわざ陣中見舞いに降りてきてくれたのを見て、完全にテンションがおかしくなってるのよ! 「准将殿の御前に、異教徒どもをこれ以上近づけるわけにはいかん!」って!』

 

 ミリアリアが、モニター越しに呆れたような、しかしどこか誇らしげな声で報告を続ける。

 

 正規軍のプライドと、獅子の双子への厚い忠誠心を併せ持つ、オーブの誇る重装甲の要塞部隊。

 

 彼らが最前線で一歩も引かずに壁となる覚悟を決めているという事実は、開戦を目前に控えたこの状況において、何よりも心強い報告であった。

 

「わかった! ランドグリーズ隊はポイント更新、海岸線で直接防衛ラインを構築! でも、その後ろのラーズアングリフ隊は絶対に動かないように言って! アレまで前に出ちゃったら、ティエレンの要塞型と仕事が完全に被っちゃうから!」

 

『了解! ──こちらデザート1、アイフリッド03を経由して各機へ発信。ランドグリーズ隊はポイント更新、海岸防衛線を展開、同位置にて待機! なお、ラーズアングリフ隊は現状維持、配置を死守せよ。オーバー』

 

 ミリアリアの凛とした声が、即座にティエレンの通信アンテナから、オノゴロ島全域の防衛ネットワークへと暗号化されて一斉に吹き抜けていく。

 

 ラーズアングリフ──。

 

 ランドグリーズの上位機種として、モルゲンレーテの奥深くでキラが設計したその機体は、背部に折りたたみ式の巨大な大口径砲『フォールディングソリッドカノン』を装備した、まさに歩く超長距離要塞砲であった。

 

 その圧倒的な面制圧力と射程は、ランドグリーズを遥かに凌駕する。

 

 だが、それほどの決戦兵器であるラーズアングリフ隊までが血気盛んに海岸線まで前に出てきてしまっては、今まさに湾岸線の強固な陣地に文字通り根を張っている、オーブ国防軍仕様の『ティエレン長距離射撃要塞型』の仕事が完全になくなってしまうのだ。

 

(せっかくみんな『准将殿のために鉄の壁になるぞ!』って張り切ってくれてるのに、身内の最新鋭機に手柄を全部横取りされたら流石に可哀想だし、不公平だよね……。うん、そこは我慢してもらおう)

 

 ちなみに、現在このオーブ本島に配備されている無骨な緑色のティエレンたちは、ユーラシア連邦から横流しされたものでもなければ、強奪したものでもない。オーブ政府がキラの仲介の元、民間組織であるジャンク屋組合から「正規の国防軍装備」として正当な対価を支払って買い付けた、由緒正しいオーブの防衛戦力であった。

 

 だからこそ、オーブのティエレン乗りたちもまた、正規のオーブ軍人として凄まじいプライドと、開発者であるキラへの熱狂的な忠誠心を抱いているのだ。

 

ミリアリアからの通信が届いた瞬間、前線の空気は爆発した。

 

「聞いたか! ヤマト准将からの直接命令だ! ポイント更新、海岸線に『絶対防衛の盾』を築くぞ!」

 

「准将殿が俺たちの戦いを見ていてくださるんだ! オーブを焼こうとする狂信者どもを、砂浜に一歩たりとも足を踏み入れさせるな!!」

 

 重量級のランドグリーズの群れが、ビームレスの代わりに限界まで高められた出力を駆動系に回し、ズシン、ズシンと地鳴りを立てて砂浜へと前進していく。

 

一方、その後方で待機を命じられたラーズアングリフ隊のパイロットたちは、フォールディングソリッドカノンをいつでも展開できるよう構えつつも、コックピット内で「ちぇっ」と悔しそうに舌を鳴らしていた。

 

「あーあ、准将殿は本当にお優しいな。俺たちのカノン砲で水平射撃をやれば、連合のイカれた船なんて一発で消し飛ばせるのに」

 

「バカ言え、前線で壁になってるティエレンの野郎どもの面子を守ってやったんだよ。アレは『民生機の意地を見せてみろ』っていう、准将殿なりの粋な計らいさ」

 

 そのラーズアングリフ隊のさらにすぐ隣。

 

 両腕と両脚に計4枚の巨大な肉厚シールドを文字通り「ハの字」に構え、大口径300mm砲を太平洋に向けて固定していた『ティエレン長距離射撃要塞型』のオーブ軍パイロットたちは、通信を聞いてコックピット内で安堵の溜息を吐き、次いでオーブ特産の冷えたフルーツジュースをグッとあおった。

 

「ハッ、見たか最新鋭機のヒヨッコども! 准将殿は、俺たちのこの『鉄人の壁』を誰よりも信頼してくださっているんだ!」

 

「おうともさ! ジャンク屋の兄貴たちから買ったこの緑色の頑丈さを、連合のすまし顔したダガーどもに骨の髄まで教えてやる! 狙軸固定、いつでも撃てるぞ!!」

 

 高機動C指揮官型のコックピットの中。前線の配置完了を示す光点がネットワークマップ上に綺麗に整列していくのが見えた。

 

『相変わらず、お前の命令一つで軍隊のテンションが180度変わるな、キラ』

 

 トールが呆れたように、けれど誇らしげに無線越しに笑う。

 

「そんなことないよ……。みんながオーブを守るために頑張ってくれてるだけさ」

 

 キラは、白銀に輝くシロガネの強固な装甲に再び背を預け、ふぅ、と小さく息を吐いた。

 

 

◇◇◇

 

 

 陸軍の「鉄人」や「要塞」たちが海岸線で血気盛んに砂を蹴り、今か今かと砲身を熱くしてウズウズしているのなら。

 

上空と前線基地の滑走路を支配するオーブ国防空軍の面々は、さらに輪をかけて苛烈な闘争心をたぎらせ、手ぐすねを引きながら狂信者たちの艦隊の到着を待ち構えていた。

 

オノゴロ島上空には、すでに幾重もの絶対防空圏が構築されている。

 

彼らが背負うのは、ヤマト准将の悪魔的な頭脳とモルゲンレーテの技術力が結実した、大西洋連邦の航空戦力を過去の遺物へと変える『翼』の数々であった。

 

 現在、気が晴れているのは『シュライク装備』を懸架したM1アストレイのパイロットたちだ。バックパックのフライトユニットに大推力の大型ローターを装備したこのマイナーチェンジ仕様は、純粋な空力特性と揚力を活かした滞空能力に優れている。

 

 彼らは今、カガリ代表の超法規的な命令の下、民間人の避難誘導と物資輸送という最も尊い任務に就いていた。巨大なマニピュレーターで避難用バスを掴み上げ、限界までローターを回転させて安全圏へとピストン輸送を繰り返す。

 

「俺たちが一往復するごとに、この国の未来が一つ繋がるんだ!」

 

 直接敵を撃つことはなくとも、背中にオーブの民の命を背負い、汗だくになりながら操縦桿を握る彼らの誇りは、最前線の戦闘部隊に決して引けを取るものではなかった。

 

 一方で、空戦迎撃に特化した部隊のハンガーは、出撃の時を待ちわびるパイロットたちの殺気と、ジェットエンジンの甲高いアイドリング音に満ちていた。 

 

 その主力となるのが、機体そのものに追加ユニットを装着し、強引に空を飛ばすフライトアーマータイプ『イカロスユニット』である。

 

 機体の後腰部に備えられた大型ジェットエンジンと、背部フライトユニットの莫大な推力による直線番長的な加速。

 

 それに加え、両肩にマウントされたバッテリー内蔵のショルダーアーマースラスターが、大気圏内とは思えない変態的な三次元姿勢制御を可能にする。

 

 脚部装甲は軽量化のために標準のままで露出しているが、パイロットたちに不安はない。なぜなら、彼らの正面には連合軍の常識を覆す絶対の盾、『ビームリフレクター』が装備されているからだ。

 

「ビームなんざ、そよ風と同じだ。リフレクターを展開して正面から突っ込めば、余程のドジを踏まない限り絶対に落とされねぇ!」

 

 攻撃面においても隙はない。主兵装のロングビームライフルは次世代のEパック方式を採用しており、大出力でありながら驚異的な継戦能力を誇る。

 

 しかし、現場のパイロットたちの間でより高い信頼を集めているのは、副兵装としてマウントされた『リニアレールガン』であった。

 

 大気による減衰や熱拡散が避けられないビーム兵器よりも、マッハを優に超える速度で敵の装甲を物理的に粉砕する実体弾の方が、この湿度の高い海上の戦場では遥かに殺傷能力が高いという、実戦から導き出された結論である。

 

 「モビルスーツの窮屈な二足歩行なんざ、地上を這いずる虫のやることだ。空ってのはな、速度と風を支配した奴が勝つんだよ」

 

 そう豪快に笑い飛ばすのは、『BWS装備』を駆る飛行隊の面々である。彼らの多くは、モビルスーツ台頭によって一時は戦場から駆逐されかけた元戦闘機乗りたちを中心としている。

 

 BWSは、M1アストレイを航空機へと変貌させる簡易可変システムだ。

 

 機首先端に睨みを利かせる大口径ビーム砲、バックパックに内蔵された多連装ミサイルランチャー、ハイパービームサーベル兼用ビームキャノン。 

 

 人型での複雑な白兵戦や歩行制御は少し苦手でも、超音速のドッグファイトや一撃離脱戦となれば、彼らは文字通り水を得た魚となる。

 

 早期警戒迎撃機として最前線に配置された彼らは、連合の艦載機や空戦モビルスーツ部隊の鼻っ柱をへし折り、最初に血祭りにあげるという名誉ある仕事を任されていた。

 

 そして、オーブ空軍の奥の院。滑走路の最深部にて、巨体を震わせながらただならぬプレッシャーを放つごく少数の怪物たちがいた。

 

 イカロスユニットの原型にして、そのすべての進化の頂点に君臨する究極のヘビーウェポンシステム『アリュゼウスユニット』である。

 

 全身の追加装甲を高価な耐ビームコーティングで守られ、さらに独自の対ビームバリアを展開する。

 

 その分厚い複合装甲は、ビームを無効化するだけでなく、実弾の直撃すら耐えうる異常な物理的強度を誇る。

 

 それほどの超重量でありながら、規格外のプラズマジェットエンジンが叩き出す莫大な推力により、超高速機動を実現した「空飛ぶ重要塞」だ。

 

 簡易可変機構を展開して飛翔するその姿は、美しくも禍々しい鋼鉄の白鳥にして化け鳥と呼ぶに相応しい。

 

 その真の恐怖は、TC-OSと完全にリンクした火器管制システムにある。

 

 全身のコンテナから放たれる無数のミサイルは、ヤマト准将が直々に組み込んだ自動追尾モードにより、発射された瞬間に各々が完全に独立した三次元の最適軌道を描き、回避不能の飽和攻撃となって敵へと殺到する。

 

 さらにビームキャノンとM1本体の手持ち火器が連動し、単機で一個艦隊を沈めうる火力を有していた。

 

 多機能かつ超大型ゆえに、生産コストは高く、整備班が毎日血の涙を流すほど整備性も劣悪。

 

 そのためごく少数の生産に留まっているが、その戦力比は狂っている。

 

「ジンが10機で束になってかかってきても、こいつが1機いれば余裕でお釣りが来る。連合の部隊なら、数十機まとめてスクラップにしてやるさ」

 

 パイロットがそう豪語する通り、このアリュゼウスの鎧を纏ったM1アストレイは、すでに戦術兵器の枠を越え、戦略兵器の領域に足を踏み入れていた。

 

「全機、迎撃の最終フェーズへ移行! 狂信者どもの船影を捉え次第、地獄を見せてやれ!」

 

 管制室からの号令と共に、オーブ空軍のパイロットたちはバイザーを下ろし、操縦桿を力強く握りしめた。

 

 陸軍がどれほど海岸線で待ち構えていようと、空軍の彼らには明確な一つの確信があった。

 

 青き清浄なる世界などという狂った教義に脳を焼かれた連合の大艦隊が、祖国オーブの土を踏むことなど絶対にあり得ない。

 

 彼らが上陸の歓声を上げる前に、その艦隊のすべてを夜の太平洋の真っ暗な底へと叩き沈め、完膚なきまでに殲滅しきれるという、揺るぎない自信がそこにあった。

 

 

 




ティエレン高機動型のAとBの掛け合わせだからCで良いかなって安直な名前のティエレン高機動C型。エンジン変えれば宇宙も行けるからトールはずっとティエレン乗りかなぁ。まだ全領域対応型っていう上も控えてるし。

オーブはTC-OSの権利持ってるけど、ティエレンの権利はジャンク屋組合。

だから単純に似たようなコンセプトの機体あるかと考えたら居たわってのでランドグリーズとラーズアングリフに来てもらいました。

そんなことせずにティエレンで良いって?

やぁ、国防予算も外から買ってくるより自国生産の方が良いでしょ?

ようやく今のオープン通常編成を見せられたから、次はようやく開戦かな?












うーん、自己防衛としてこれから気に入らないこととかあればそれを改善する意見と一緒にご意見板の方に書いて貰っても良いかな?

正直創作意欲に冷水被せられてゴッソリ書く気が無くなるんだよねぇ。

過去に更新止めて筆折った作品もそう言うケース多いんでウチ。
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