やめてよね、僕が准将みたいに出来るわけないじゃないか   作:星乃 望夢

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PHASE-88 少女たちの戦場

 

 オノゴロ島の海岸防衛線。

 

 その最前列、無数のランドグリーズやラーズアングリフが砲火を上げる鋼鉄の防壁のド真ん中で、一際目を引く白銀の巨体がそびえ立っていた。

 

 キラ・ヤマト准将の専用機『シロガネ』。

 

 一発の銃弾も撃たず、ただそこにあるだけで自軍の士気を天元突破させ、敵に底知れぬ絶望を与える『絶対的な象徴』。

 

 キラは、そのシロガネのコックピットの中で、絶え間なく更新される戦術モニターを見つめながら、静かにシートへと深く腰を据えていた。

 

「うん。今のところ、防衛戦にまったく綻びはないね」

 

 キラの呟き通り、戦局はオーブ軍の完全なコントロール下にあった。

 

 最前線ではカナードのスーパーハイペリオンとアスランの赤いティエレンが、互いに競い合うように獅子奮迅の暴れっぷりで敵艦隊を物理的に解体している。

 

 海岸線からはティエレン、ランドグリーズ、ラーズアングリフによる未曾有の飽和砲撃が敵の接近を許さず、海に逃げた敵は水中戦仕様のM1が、空に逃げた敵はイカロス、BWS、シュライクの三種の翼が完璧に仕留めている。

 

 さらに、オーブの立地条件もこの一方的な防衛戦に味方していた。

 

 現在、オーブが防衛線を敷いているのは、オノゴロ島から見て北から東の方向のみである。それ以外の海域は、小規模な哨戒部隊を飛ばしているだけで済んでいた。

 

 なぜなら、ソロモン諸島に位置するオーブから見て、南にはザフトの『カーペンタリア基地』、北には『カオシュン宇宙港』が存在し、西側の海域は事実上、ザフト軍が完全に制海権を握っているからだ。

 

 ブルーコスモスの艦隊が、わざわざザフトの勢力圏を突っ切って背後から回り込んでくることなどあり得ない。

 

 後背を気にすることなく、正面からの敵だけに全火力を集中できる。

 

 目立った損傷機も一機としてなく、基地に戻ってくるのは弾薬と推進剤を補給するためのローテーション機体だけという、あまりにも完璧な「作業」のループが完成していた。

 

「……やっぱり、『ムラサメ』は必要かな」

 

 キラはモニターに映る空の戦局を見つめながら、静かに思考を切り替えた。

 

 現在空を制圧しているBWS装備のM1は、確かに強力だ。しかしそのシステムは『リ・ガズィ・カスタム』に似た方式であり、あくまで「モビルスーツが航空機的な運用をするための可変装備」という枠を出ていない。

 

一撃離脱や長距離侵攻には適しているが、純粋な『大気圏内における航空機』としての空力特性や、重力下での極限の空中格闘戦を追求するならば、やはり最初から「航空機に変形することを大前提とした専用設計の機体」──すなわち『ムラサメ』の存在が不可欠になってくる。

 

「カガリ」

 

 キラは通信回線を開き、管制センターにいる双子の姉に呼びかけた。

 

『なんだ、キラ。こっちは今、少し忙しいんだが?』

 

「ごめんね。でも、第13飛行試験部隊を空に上げてくれる?」

 

『は? 出すのかあれ? 今の戦力でも十二分に足りてる、別に出さなくても大丈夫だろ?』

 

 訝しむカガリのツッコミに、キラはコックピットの中で悪戯っぽく微笑んだ。

 

「うん。でも、むしろ今の防衛線が安定しているレベルだからこそ、どこまで大気圏内での空中格闘戦能力を持つか、実戦で試しておきたいんだよね。しかもシミュレーターの模擬戦じゃなくて、相手がこっちを本気で殺そうと躍起になっている『極上のテスト環境』なら、なおさらね」

 

『…………性格悪いなぁ、お前。相手は死に物狂いだぞ』

 

 呆れたようなカガリの溜息が通信越しに聞こえてくる。しかし、彼女もまた指導者として、そのデータの重要性を理解していた。

 

『わかった。BWS装備のM1の随伴を付けて出すぞ?』

 

「うん。お願い」

 

 図面を引き、実機のロールアウト一号機にはキラ自身がテストパイロットとして乗ったから、その基本スペックが狂ったように高いことは熟知している。

 

 だが、机上の計算とシミュレーションだけでは、本物の戦場に潜む『魔物』のデータは測れない。

 

 せっかく、大西洋連邦という大国が莫大な予算をかけて『元気よく動く高価な的』を大量に提供してくれているのだ。実戦の限界データを集めるには、これ以上ない好機であった。

 

 ──油断も慢心も、キラの中には一切ない。

 

 彼がわざわざ敵の波状攻撃を利用してまで新兵器のデータ取りを行っているのは、この程度のテロリストを相手に遊んでいるからではない。

 

 大西洋連邦の現有戦力との小競り合いなど、ただの通過点に過ぎないのだ。

 

 世界はまだ狂っている。この先、2年後、あるいは4年後に、今度こそ世界を二分するような真の破滅の危機が訪れたとき。

 

 その時に、自分の愛する人達と、この国を絶対に守り抜くための『刃』を、一日でも早く、一本でも多く研ぎ澄ませておかなければならない。

 

 シロガネのコックピットの中で、泣き虫で優しかったはずの若き准将は、遥か未来の焦燥を冷徹な合理性で塗り固めながら、狂信者たちが血を流す太平洋の空を静かに見つめ続けていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 オノゴロ島国防軍空軍基地。

 

 重厚な防爆扉に守られたその空間は、外で繰り広げられている血みどろの防衛戦の喧騒から切り離されたように静まり返っていたが、今、一本の通信がその静寂を熱狂へと変えた。

 

「はっ、了解しました。御厚意、痛み入ります。……喜べ諸君! 我らがヤマト准将閣下ならびに、カガリ・ユラ・アスハ最高司令官より、我が部隊への出撃の命が下った!」

 

 通信用のヘッドセットを外した部隊長が、振り返りざまに声を張り上げた。

 

 その言葉に、ハンガーで待機していた二人のパイロットが弾かれたように立ち上がる。

 

「本当ですか隊長!?」

 

「ああ。随伴としてBWS装備のM1部隊も付けてもらえるそうだ。完全なる実戦テスト環境の提供だ」

 

 パイロットたちの顔に、隠しきれない歓喜と武者震いが広がる。

 

 彼らは内心、今回の戦いで自分たちの出番など絶対に回ってこないだろうと諦めかけていた。

 

 何しろ、外の戦場はすでにイカロス、BWS、シュライクの三種のM1アストレイが完璧な防衛線を構築しており、未だデータ収集段階にある「試験機」をわざわざ引っ張り出す必要性など、どこにも見当たらなかったからだ。

 

 しかし、その常識をヤマト准将は覆した。いや、むしろ彼だからこそ、この千載一遇の『実戦という名の究極のテスト環境』を見逃すはずがなかったのだ。

 

 彼らの背後に鎮座する三機の真新しい白い機体──『ムラサメ飛行能力試験型』。

 

 それは、現在空軍の主力となっているM1アストレイのBWSから得られた莫大な飛行データをフィードバックし、ヤマト准将が「大気圏内航空戦力」として1から新規設計・開発した、次世代の可変型モビルスーツである。

 

 最大の特徴は、その極限まで洗練された大気圏内飛行形態への変形機構にある。

 

 BWSが「あくまでMSに無理やり翼を付け、大気圏内を飛べるようにした航宙戦闘機」であるのに対し、ムラサメは「純粋な航空戦闘機としての空力特性を極限まで追求し、必要に応じてMSにもなれる」という、全く逆のアプローチから設計されている。

 

 機体そのものが巨大な揚力を生み出すように計算され尽くした美しい翼と、空気抵抗を極限まで削ぎ落としたシャープなノーズコーン。

 

 それは重力という枷を完全に克服し、音速領域でのドッグファイトにおいて、スピアヘッドはおろかM1のBWSすらも過去の遺物とするほどの空戦能力を秘めていた。

 

「諸君、我々はこれより、栄えある『世界初のムラサメファイター』として、歴史の表舞台に上がる!」

 

 隊長は、鋭い眼差しで部下たちを見据え、誇り高く宣言した。

 

「ヤマト准将閣下が我々にこの機体を託された意味を忘れるな。我々の翼の誇りに賭け、世界中から雲霞の如く湧いてくる狂信者を、1人たりともオーブの土へ、あの双子の獅子の御前へと通すな!」

 

「「はっ!!」」

 

 力強い敬礼が交わされる。しかし、若きテストパイロットの一人が、ふと悪戯っぽい笑みを浮かべて口を開いた。

 

「しかし隊長、カガリ様が気を利かせて付けてくれた随伴のBWS部隊……果たして、俺達のムラサメのトップスピードに付いてこれますかね?」

 

「違いない。ムラサメはオーブ軍最新鋭にして最速の刃ですからね。恐らく、加速性能でも最高速度でも、先輩方が置いてきぼりを食うかと」

 

 冗談めかして笑い合う部下たちに、隊長は苦笑しながらも厳しく釘を刺す。

 

「調子に乗るな。いくら機体のスペックが上だからといって、護衛のBWSを置き去りにして突出するような真似は許さんぞ。今回の我々の最大の任務は、敵の殲滅ではなく『実戦テストデータの収集と持ち帰り』だ。もし功を焦って准将閣下の最高傑作に傷をつけ、機体を喪失でもしてみろ。始末書どころか、我々は一生便所掃除の刑だぞ」

 

「それは勘弁願いたいですな」

 

「仕方がありませんね」

 

「そういう事だ。ならば征こうか、ムラサメファイター! 我らが祖国の空へ、新しい風を吹かせに行くぞ!」

 

「「了解!!」」

 

 3人のテストパイロットたちは、真新しいノーマルスーツのヘルメットを被り、誇り高きムラサメのコックピットへと滑り込んだ。

 

 複雑な起動シークエンスが瞬時に完了し、ヤマト准将特製の最新型TC-OSが機体の全神経を掌握する。

 

 エンジンの重低音がハンガーを震わせ、機体各部のスラスターが蒼白いプラズマの炎を噴き上げた。

 

「ムラサメ隊、発進!」

 

 カタパルトから弾き出された三機の白い巨鳥が、オーブの空へと、その美しい後退翼を広げて舞い上がっていく。

 

 それは、旧時代の戦闘機に乗り込み、数の暴力だけで『聖戦』を気取る狂信者たちにとって、絶対に逃れることのできない新たな「翼」が解き放たれた瞬間であった。

 

 

◇◇◇

 

 

「ピンクだと!? ふざけた色を塗りやがって、遊びのつもりか!」

 

 凄惨な殲滅戦が繰り広げられるオーブの海上に、突如として現れた異質な機影。

 

 それは、重厚な緑や赤に彩られた防衛線のティエレン部隊とは一線を画す、戦場にはあまりにも不釣り合いな『桃色』に塗装されたティエレンであった。

 

 狂信のままに空を飛ぶスピアヘッドのパイロットたちは、そのふざけた色の機体を自分たちへの侮辱と受け取り、血で染め上げんとばかりに機首を下げ、殺到した。

 

 しかし、次の瞬間。彼らの常識は、文字通り空へと蹴り上げられることになる。

 

「なっ、飛ん──ッ!?」

 

 海面を滑るようにホバー移動していた桃色のティエレンが、スラスターを限界まで吹かし、重力という概念を置き去りにしたかのように一直線に空へと跳躍したのだ。

 

『ヒトツ!』

 

 コックピットの中で、ピンク色のハロが無邪気な電子音を弾ませる。

 

 跳躍と同時に放たれたティエレンの滑腔砲からの一撃が、すれ違いざまにスピアヘッドの機首を完璧に粉砕し、空中に火球を咲かせた。

 

「クソッ、なんであんな重てぇ鉄屑が空を飛べるんだ! 動きが他の奴らと違いすぎる!」

 

『フタツ!』

 

 敵の混乱など意に介さず、桃色の機体は空中でスラスターのベクトルを三次元的に切り替えながら、滑腔砲と同軸の12.7mm機銃を精密極まりない連射で撃ち放つ。

 

 回避起動を取るスピアヘッドの軌道を完全に「先読み」したかのような、一切の無駄がない射撃。

 

『ミッツ! ヨッツ! イツツ! ムッツ! ナナツメ!』

 

 ハロの無機質で明るいカウントダウンの度に、大西洋連邦の戦闘機が次々と撃ち落とされていく。

 

 しかし、7機目のスピアヘッドのパイロットは死に物狂いで操縦桿を引き、ギリギリで機銃の射線を回避した。

 

 片翼を吹き飛ばされながらも、なんとか体勢を立て直そうとする。

 

 だが、桃色のティエレンの胸部に備えられた30mm機銃が、まるで最初からそこへ逃げ込むことが分かっていたかのように、冷酷にそのコックピットを捉えていた。

 

 火を吹いた銃口が、7機目のスピアヘッドを完全にバラバラの鉄屑に変える。

 

『ナナツメ! ナナツメ! ナサケナイヤツ!』

 

「………………」

 

 激しいGと閃光が交錯する中、コックピットの台座に置かれているピンクのハロの言葉に返すこともなく、ラクス・クラインはただ静かに、冷たいほどに研ぎ澄まされた眼差しで操縦桿を握り続けていた。

 

 彼女の乗る機体は、ターミナルで開発されたティエレン全領域対応型をさらにフルチューンした『ティエレンタオツー』。

 

 コーディネイターのエースパイロットでさえGの負荷で操縦が覚束なくなるほどの機動力を与えられた専用機である。

 

 そして、そのバケモノを顔色一つ変えずに完璧に乗りこなしているラクス自身もまた、ただの「平和の歌姫」ではなかった。

 

(……見えます。あなたたちの動き、その殺意の向かう先が)

 

 世界を管理する『アコード』の女王として遺伝子調整を施されて生み出された彼女。

 

 その空間認識能力と情報処理能力は、人間はおろか、並のコーディネイターすら遥かに凌駕している。

 

 彼女の脳内には、敵の相対速度、風向き、スラスターの推進剤残量、そして次に行う回避機動のベクトルまでもが、まるで手にとるように可視化されていた。

 

 元来、彼女は性格的に争うことを好まない。平和の歌を歌い、対話によって世界を導くことを望んで生きてきた。

 

 けれども。

 

 あの優しすぎる少年キラ・ヤマトと心を通わせ、彼の背負う重圧と悲しみに触れたとき、彼女の心の中で「何か」が決定的に変わったのだ。

 

 ──彼が、あんなにも心をすり減らし、泥にまみれて世界を背負おうとしているのに。

 

 ──私だけが、安全な場所で綺麗なドレスを着て、平和の歌を歌っているなど……絶対にできない。

 

 彼女は誓ったのだ。

 

 平和の歌を歌い続けるために。そして何より、自分を愛し、自分が愛したあの人を、あらゆる理不尽な火の粉から守り抜くために。

 

 必要ならばこの手を血で染めてでも、彼と同じ戦場に立つと。

 

 本格的にMSの操縦訓練を受け始めた彼女の成長速度は、常軌を逸していた。

 

 アコードとして調整されたその遺伝子と神経系は、あっという間にラクスを「一級線のエースパイロット」すら凌駕する領域へと押し上げていた。

 

 ハロはもはや操縦の補助をする必要などなく、純粋な索敵やセンサー周辺の情報処理へと回されている。

 

「……彼を、彼が守ろうとするこの国を、悪魔などとは呼ばせません」

 

 ラクスは小さく、しかし絶対的な凍気を含んだ声で呟くと、タオツーのスロットルをさらに押し込んだ。

 

 桃色のティエレンが、再び海面を蹴って空を舞う。

 

 それは、狂信者たちが信奉する教義など、鼻で笑ってすり潰すような『女王の鉄槌』。

 

 争いを嫌うからこそ、一切の慈悲や手加減を持たない完全なる排除。

 

 美しい桃色の装甲を纏ったタオツーは、大西洋連邦の兵士たちにとって、死神の鎌よりも恐ろしい「絶対的な死の象徴」として、オーブの空と海を鮮血に染め上げながら舞い踊り続けていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 空を舞い、美しい死の軌跡を描く桃色のタオツーを追うようにして、荒れ狂う海面を凄まじい水飛沫を上げてホバー疾走する青い機影があった。

 

 ティエレンの究極系の一つ、あらゆる環境下での戦闘を可能とした『ティエレン全領域対応型』。

 

 そのコックピットの中で、イングリット・トラドールもまた一切の言葉を発することなく、しかしその瞳の奥には、氷のように冷たく、それでいて業火のように燃え立つ気炎を滾らせていた。

 

(悪魔、ですって……? 死の、商人……?)

 

 彼女の脳裏に、オープンチャンネルから漏れ聞こえる狂信者たちの罵声が響くたび、操縦桿を握る手にギリッと力が込められる。

 

 アコードのスパイとして送り込まれた、そんな惨めで、からっぽだった私を。

 

 彼は「心が綺麗だ」と言ってくれた。

 

 優しく抱きしめ、温もりを与え、そしてたった一人の一人の女性として愛してくれた。

 

 イングリットにとって、キラ・ヤマトという存在は、暗闇の底で見つけた『たった一つの光』であり、彼女の命そのものであった。

 

 彼のためならば、自分を縛り付けていた絶対的な同胞であるオルフェやシュラとだって、例え刺し違えてでも戦い抜く。

 

 それほどの覚悟と、狂おしいほどの愛を抱いている彼女の前で、その愛する人を侮辱するなど、万死に値する愚行である。

 

「私のキラを……汚い言葉で、呼ばないでッ!!」

 

 イングリットの殺意に呼応し、青いティエレンが海面を蹴り上げて大きく跳躍する。

 

 迫り来るスピアヘッドの編隊に対し、彼女は射撃すらもどかしいとばかりに機体を急接近させた。

 

 そして、右腕に構えた滑腔砲の銃身下部に備わる『放熱板兼カーボンブレード』を大上段から振り下ろした。

 

 すれ違いざまの荒々しい一撃。

 

 分厚いカーボンブレードの質量と鋭利な刃が、スピアヘッドの機首からコックピットごと叩き割り、空中の鉄屑に変える。

 

 さらに、背後に回り込もうとした別のスピアヘッドに対し、イングリットはティエレンの頑強な脚部を旋回させ、空中で強烈な蹴りを叩き込んだ。

 

 重量級の装甲による回し蹴りは、戦闘機の脆いフレームをひしゃげさせ、錐揉み回転させながら海面へと激突・粉砕させる。

 

「まだ、足りない……! あなたたちのその薄汚い命を全部すり潰しても、彼への侮辱の代償には足りないッ!」

 

 怒りに駆動する青いティエレンは、そのまま重力に任せて眼下の揚陸艇の甲板へと強行着地を果たした。

 

 着艦の衝撃で甲板がひしゃげ、積まれていたストライクダガーを、イングリットはティエレンの巨体で容赦なく押し倒した。

 

 仰向けに倒れ込み、もがくストライクダガー。

 

 そのコックピットブロックのど真ん中へ、イングリットは右手のカーボンブレードを一切の躊躇なく深々と突き刺した。

 

「ヒィィッ──!?」

 

 ダガーのパイロットが絶望の悲鳴を上げるが、イングリットの怒りはそれだけでは収まらない。

 

 ブレードを突き刺し、敵機を完全に縫い留めたその『ゼロ距離』の状態から、彼女は滑腔砲のトリガーを冷酷に引き絞った。

 

 至近距離から放たれた200mmの大質量弾が、ストライクダガーのコックピットブロックごと内部のパイロットを跡形もなく吹き飛ばし、揚陸艇の甲板に巨大な大穴を穿つ。

 

 その容赦のない、オーバーキルとも言えるインファイトの蹂躙劇に、周囲のブルーコスモス兵たちは完全に戦意を喪失し、後ずさることしかできなかった。

 

 静かなる激怒と共に敵艦隊を精密に解体し続ける、紅の騎士・アスラン。

 

 圧倒的な光の槍と盾で無敵の暴虐を撒き散らす、制御不能の化け物・カナード。

 

 アコードの神眼と絶技で優雅に敵を屠り続ける、桃色の女王・ラクス。

 

 そして、愛する者のために容赦なき怒りの鉄槌を下す、青き戦乙女・イングリット。

 

 この4人の規格外のバケモノたちは、オーブ国防軍という巨大な組織の正規の指揮系統からは完全に独立した『特務遊撃隊』として、戦場のあらゆる場所で暴れ回っていた。

 

 彼らが好き勝手に縦横無尽に動き回ることで、本来であれば大軍同士の激突によって必ず生じるはずの「防衛線の綻び」や「戦線の隙間」は、発生する傍から完璧に埋め尽くされていく。

 

 ただでさえ狂ったような火力とローテーションを誇るオーブ軍の正規防衛線。

 

 それに加えて、前線をかき乱し、敵の指揮系統を物理的に粉砕して回る4人の遊撃隊の存在は、ブルーコスモス艦隊にとって、もはや「戦争」ではなく「逃げ場のない処刑場」へと放り込まれたに等しかった。

 

 祖国を守るためのシステムと、愛する者を守るための個の暴力。

 

 その二つが完璧に噛み合った今のオーブは、間違いなく地球圏において最も恐ろしく、そして絶対に手を出してはならない不可侵の聖域と化していたのである。

 

 

 




感想欄を読ませて頂きながら、よくよく考えたらムラサメからZ系列を経由してモジュールブロック構造でリゼルにアクセス出来るなと気付いた次第。

ノーマルなら宇宙、大気圏内でもディフェンサーUNIT付ければ飛べるなと。

そういうわけでムラサメ飛行試験型の出番です。

いや最初実は言うと、ホワイトフレームじゃなくてムラサメ飛行試験型を出そうかと思ってたんですけど。

ヘリオポリス時点でムラサメはちょっとやり過ぎかなとガマンした次第。

SEED本編後直ぐの時系列でムラサメ飛行試験型は出てるから、イージス計画で次世代機開発も本腰入れてる筈であり、その為のランドグリーズやラーズアングリフ、そうした後出し言い訳の為のイージス計画。

だから大丈夫かなぁと。

あ、ちなみに忠犬シン公はSガンダムが控えてるから頑張れ。インパルスと同じ3機で合体するガンダムだから大丈夫さ。Ex-S?

取り敢えずムラサメ・ハミングバードは造るから行けるぞ。

Iフィールドの代わりにビームコートの上位版のABフィールドもあるし。

テスラ・ドライブ乗っけるのに小型化がまだ出来ないからってジガンスクード出したら流石にマズいすっかね?

角ばってて70mのスーパーロボットだからモジュールブロック構造に対応させやすく、ティエレンの親玉みたいな?

でもそうするとデストロイが赤子になるのがなぁ。

なんでか知らんが頭の中だと既にユーラシア連邦東側がチェルノみたいな単純にでっかいティエレン造ってる最中っね事になってるんですよねぇ。

小型高性能MSを目指すはずのMS開発史に真っ向から喧嘩を売る超大型特機の時代が来る?
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