龍の軌跡 第二章 魔法少女リリカルなのは編≪リメイク≫(凍結中) 作:ミステリア
今現在ネタが思いつく思いつかない以前に、書く気自体が殆ど湧かないという過去に類を見ない程のスランプに陥っています。
でもたとえ遅くても、少しづつでも書いて投稿していこうと思っています。
どうか温かくお見守り下さい。
では、どうぞ。
――龍一郎サイド――
「流石に凄い魔力だな」
「確かに。魔力量のみならば、龍を圧倒的に上回っている」
ビリビリと大気を震わせる程の魔力を文字通り肌で感じ取り、思わず呟く俺に相棒が同意する。
今俺達は近くの家の屋根の上で、高町が魔法少女として覚醒しているその場を見下ろしていた。
イレギュラーズが出てきた時に、直ぐに割って入れるようにする為だ。
え?結界の中に入って呑気に見下ろしていたら、もし猫姉妹達が来ていたら不審に思われるんじゃないかって?
心配ご無用。ちゃんと手は打ってある。
実はエルフィに頼んで、自らを中心に半径2メートル程のドーム状認識阻害型結界を張って貰ったのだ。
この範囲結界の中に入れば、魔力や気配を始めとする全ての感知に一切引っ掛からなくなるという優れものだ。
おまけに家には影分身体を残している為、猫姉妹が俺の魔力が消えたと不審に思う事も無い。
多様性豊富な影分身様々である。
「それにしても、イレギュラーズの動きが全くないな。原作通りと言ってしまえばそれまでだが」
「それは我も不審に思っている・・・む。高町なのは向こうに行くぞ」
相棒の言葉にイレギュラーズの動向を考えるのに意識を向けていた俺は「え?」と視線を元に戻すと、高町は既にバリアジャケットを身に纏い、飛び掛かってきた思念体をプロテクションで弾き飛ばし、スクライアを抱えて再び駆け出していた。
俺は「やばっ!」と少し焦って、相棒の手を掴んで屋根伝いに移動し、十字路の中心で目を閉じて立ったまま集中している高町を視界に捉えると足を止めた。
そんな俺から一拍遅れて、再生を終えた思念体が高町目掛けて一直線に道路を疾走し、一気に跳躍。
そして先程弾き飛ばされた事を警戒してか、自らの身体を槍の様にして高町に伸ばす。
だが高町は焦ること無く手にした杖。レイジングハートを思念体に向け、プロテクションを発動。
障壁を展開し、槍を受け止め消滅させる。
それが意外だったのか、動揺を露にして動きを止める思念体。
その隙を突き、高町は呪文を詠唱。桃色の光の帯を思念体に巻き付かせて動きを封じ、一気に封印した。
「何事もなく終わったな」
「そうだな」
ジュエルシードをレイジングハートの中に入れるのを見て呟く相棒に、俺は難しい顔をして同意し、「エルフィ。念の為に高町の元にも直ぐに転移が出来るようにしておいてくれないか?」と不安を捨てきれずに頼む。
そんな俺にエルフィはふっと口の端を緩め、「心配か?」と心情を理解しているであろうにも関わらず聞いてくる意地悪な相棒に対し、俺はそっぽを向いて唇を尖らせ、「懸念材料は出来るだけ消しておきたいんだよ」とぶっきらぼうに返す。
自分でも分かりやすいと思える反応をする俺に、エルフィはツッコミを入れずに、微笑ましいと言わんばかりの笑みを浮かべて「了解した」と答え、スッと高町に掌を向ける。
肉眼では視認する事は出来ないが、俺には高町に特殊なラインを繋いでいることが感覚的に分かった。
「取り敢えず、高町なのはの半径10メートル以内にイレギュラーズが近付けば分かるようにした。直ぐに転移出来るよう設定もな」
俺は一仕事終えた相棒に「有り難うな」と礼を言い、「ご、ごめんなさーい」と謝りながら駆けていく高町を見下ろしていた。
☆
翌日。朝のトレーニングを終えてシャワーを浴び、朝食を食べて登校する。
そんな昨日の夜に起こった非日常的な出来事など無かったかの様に、いつもと全く変わらない日常が流れていく。
まぁ、授業が始まる前にバニングスとすずかとの話をしていた時、高町が明らかに何か隠していますと言わんばかりに盛大に顔をひきつらせていたり。
それから授業中にも時折悲しげな顔をしながら、ツインテールがピコピコ動いていたりもしていた事に『考えている事が表に出すぎだ』と内心ツッコミを入れつつ時は流れ、その日一日の授業が終わる。
「さて・・・と」
小さく声に出して己に気合いを入れて席を立ち、俺は相棒に心話を送る。
[エルフィ。イレギュラーズの反応はあったか?]
[相変わらずだ。欠片程の気配も感じられぬ]
その声色で、難しい顔をしているであろうことがよく分かるが、敢えて其処には触れずに教室を出て、歩を進めながら続けて問う。
[そうか・・・じゃあ、ジュエルシードのある神社までの案内を頼めるか?]
[介入するつもりか?]
意外そうに問い返す相棒に、俺は[言っただろ?あくまで俺は『魔力はあるが魔法は使えない。でも一応の事情は知っている一般人』というポジションでいくとな。
その位置を確立させる為に、神社で発動するジュエルシードの一件を利用するだけだ]と返し、[まぁ高町に嘘をつくのは、少し罪悪感があるがな]と付け加えた。
[・・・そうか]
フッと口の端を緩めている表情をしているのがなんとなく分かる声で返してくる相棒に、俺は靴に履き替えながら唇を若干尖らせて[で、場所は何処なんだ?]と再度問う。
そんな俺を宥めるかの様に[そう不貞腐れるな。案内はする]と言う相棒に、俺はこれ以上反論してもはぐらかされるかからかわれ続けるだけだと思い、[じゃあ頼む]とだけ口(心)にした。
[そういえば、今は高町なのは達と行動を共にしていないのか?]
丁度校門を出た位で、ふと思ったのか聞いてきた相棒に、俺は[あぁ]と短く答えて続ける。
[夕飯の材料の買い出しがあるから、今日は別行動だって昼休みに言ってある]
[神社で顔を会わせる高町なのはに訝しく思われないか?]
[まだタイムセールが始まるまでに時間があったからと言えば、納得すると思うぞ]
[まぁ確かに、そう言われれば筋は通るか・・・龍。其処の角を左に曲がって少し歩けば石段が見えてくる。其処を上がれば目的地だ]
納得の意を見せた後の道案内に、俺は[了解]と返して角を左に曲がる。
すると視界の端に、既に石段らしきものが見えてきた。
「成る程・・・彼処か」
[そうだ]
小さく出した声に、相棒が応答する。
天へと続いているのかと思う程の石段を前にし、俺はこれから起こる事に覚悟を決め、大きく息を吸った後に石段を上っていく。
一歩一歩踏みしめ、石段の中頃まで上ったその時。なんの前触れもなくそれは起こった。
キィン!
「っ!」
頭の奥に直接響くその音を『感じる』と同時に、俺は今まで踏みしめていた脚を一気蹴り、一息の内に石段を駆け上がっていく。
[龍。ジュエルシードが発動したぞ]
[分かってる!それより、高町達が此処に着くまでどれ位掛かるか分かるか!]
[二人共かなり近い所にいた故に、直ぐにこの場に着くだろう。速ければ2、3分。遅くとも5分位といった所だ]
[それ位足止めすれば良いって訳だな]
[力を使う気か]
若干咎める様な口調で聞く相棒に、俺は[いや]と即座に否定し[一応考えはある]と自信を込めて言い切ると同時に石段の最後の一段を上がる。
そこで俺の視界に入ってきたのは、ある意味予想通りの光景だった。
境内から本社へと続く石畳に気を失い倒れた女性。そしてその女性を『魔犬』と呼ぶに相応しい存在が見下ろしていた。
『魔犬』は気を失った女性から石段を上がってきた俺に対象を移し、身を屈めて鋭い牙を剥いて「ヴヴヴ・・・」と唸り声を上げ、殺気を向ける。
だが俺は常人ならば腰が抜けてしまいそうなその殺気に欠片も動じる素振りも見せずに、相手との目線を会わせる形で睨みながら身体を斜に向けた。
別にポーカーフェイスでも何でもない。ただ慣れてしまっただけだ。
実はすずか達を助けたその翌日から学校に入るまで、俺は夜に眠り始める時間帯にダイオラマ魔法球に入り、朝起きる時間帯になるまで鍛錬をして魔法球から出てくるというサイクルで約二週間を過ごしたのだ。
つまり大体人間の平均睡眠時間分(約8時間)として計算すると、8×14で112日。
大体の3ヶ月半を鍛錬の時間にあてて自らを鍛え上げたのだ。
お蔭で血継限界関係無しに全忍術・幻術が使用可能になり、獣魔術の一日の使用回数は13~15発まで増え、写輪眼もまだ万華鏡は解放されてはいないが、本来の姿に戻りはした。
更に徒手空拳で戦うレパートリーを増やすべく、神威の拳の呼吸法を習得して技も幾つかは使えるようになった。
切り札の卍解の制限時間は現在約二分。奥の手の虚化は現在70秒にまで伸ばす事が出来た。
当然ここまで力を上げる為に、ダイオラマ魔法球に追加された機能である仮想の相手を選択して戦う事が出来る機能を使いまくり、文字通り死ぬかと思うほどの戦いを何十回としてきたのだ。
それに比べたら、目の前にいる『魔犬』が放ってくる殺気など、そよ風に等しかった。
閑話休題。
取り敢えず俺はまず、俺は睨み合ったままで間合いを保ち、『魔犬』を中心に円を描く様に時計回りでゆっくりと移動していった。
いくらなんでも、気を失った女性を挟んだ状態で奴と向かい合うのは危険だからだ。
俺の動きに追従する様に身体の位置を動かす『魔犬』に片時も目を離すこと無く移動し、その身体の位置を右に90度程動かした俺は脚を止めて、オーソドックススタイルのファイティングポーズを取り、戦闘体勢をとる。
何故目を合わせたままで、極力ゆっくりとした動きでいるのか。それは敵意や警戒心を抱いた動物と相対した時に最も心掛けねばならない事だからだ。
犬に限らず大抵の動物は目と目を会わせることで、己と相手との力を計ろうとする。
もしも其処で相手のプレッシャーに負けて逃走を図ろうとすれば、相手は即座にそれを察して襲い掛かってくる可能性が非常に高い。
ゆっくりとした動きを心掛けているのもそれに起因している。
急激に動けば、それに反応して相手の動きを誘発させてしまうおそれがあったからだ。
有名な所だと熊に出会った時の対処法である"決して目線を反らさずにゆっくりと後退りする"という方法がそれに当たる。
[龍。もう間もなく高町なのはがこの場に来るぞ]
相棒からの心話に俺は『魔犬』との睨み合いを続けたままで、表情を変えずに[了解だ]と返す。
それとほぼ同時に、俺が心話に気を逸らしているのを察したのか、相対している『魔犬』が重心を前に移動させ、すぐにでも地を蹴って駆け出せる体勢を作り出していた。
(させるかよっ!)
『魔犬』の意図を読み、俺はもう少しこの睨み合いの状態を維持させるべく、『魔犬』のその瞬間を待つ。
そしてそれは程無くやってきた。
『魔犬』が俺に突進しようと、脚に力を込めて一歩踏み出したのだ。
刹那。
――ボッ!!
「ッ!!」
唐突に響いた重い風切り音に『魔犬』は"ビクッ!"と反応した後に、何かに怯えるかのように二の足を踏んでその場に留まった。
(よし。なんとか上手くいったな)
策が成功した事に、俺は内心で安堵の息を吐く。
俺がやった事はただ一つ。『魔犬』が踏み出してくるそのタイミングで右のストレートを放っただけだ。
当然拳が当たる距離ではなく、放った拳は空を穿ち風切り音をたてるだけで終わった。
だがこれには2つの意図があり、それによって『魔犬』の動きを止める事に成功したのだ。
一つ目の意図。それは威嚇だ。
自らの力を誇示する事で、対峙する相手に自らが驚異だと知らしめると同時に、二つ目の意図の相乗効果を促したのだ。
そして二つ目の意図。それが相手の警戒心のレベルを急激に引き上げる事。
風切り音から伝わる威力を見せることで、もし今の一撃を先程突進した時にカウンターで受けたらどうなっていたか。
それを相手に意識させて恐怖心を植え付け、警戒心を引き上げさせる事で、攻勢に出ることを躊躇させる。
しかしこの効果はあくまで一時的な物に過ぎない。
だが一時的な物で充分なのだ。
何故ならば、俺の耳は。感覚は既に捕らえていたのだ。
石段の方から徐々に近付いてくるその気配と――
[龍――]
足音を。
[来たぞ]
「ふえぇっ!龍君!?」
鳥居の方から聞き覚えのある驚きに満ちた声が上がり、俺と『魔犬』は示し会わせた様にそちらに顔を向ける。
其処には、目を丸くして驚愕を露にする高町なのはと、その傍らに同じく驚きの感情を表に出すフェレット。ユーノ・スクライアの姿があった。