龍の軌跡 第二章 魔法少女リリカルなのは編≪リメイク≫(凍結中)   作:ミステリア

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どうも。お久しぶりです。ミステリアです。

まずは一言。ほんっっっっとにすいませんでした。

前話を投稿してから間もなく、敬愛していた祖父が亡くなり、同じ屋根の下で暮らしていた親しい人間の初めての死に少なくないショックを受け、完全に書く気持ちが折れていました。

しかしこうして一応・・・仮でも復活が出来たのは、長期間間が空いてもこの物語のお気に入り登録を削除せずにいてくれた読者の皆さん。

そして私に再び『書いていこう』と思わせてくれたお気に入りの作者の皆さんの物語のお蔭だと思います。

今後も不定期ではありますが更新はしていくつもりです。

どうぞ温かい目でこの物語を見守って下さい。

では、どうぞ。


第十五話

――龍一郎サイド――

 

高町に『魔法を知っている一般人』という印象を植えてから数日。

 

俺は前と変わらずジュエルシードの事件になるべく関わろうとはせず、高町が封印する所をただ見ていた。

 

神社の一件以降、町に木の根が張り、プールでの騒動が起こりはしたが、依然としてイレギュラーズの姿はおろか気配すら察知できずにいた。

 

神の爺さんが俺をこの世界に送り込んだから、この世界にイレギュラーズがいるのはほぼ間違いはないと思うのだが、此処まで相手側のアクションが無いと『本当にこの世界にいるのか?』という考えが頭を過ってしまう。

 

とはいえ、此方側が大きな動きをしてしまえば、イレギュラーズ側や管理局に気取られる可能性が高くなる為、迂闊に動く事はできない。

 

結局は力を溜めつつ、我慢比べの持久戦を続けていくしかないと結論付けるしかないのだ。と頭では分かってはいるのだが、些かならずストレスが蓄積されていく。

 

そんな袋小路に迷い混んだ様な気分で悶々としている俺は今、いつもシャドーボクシングをしている公園で――

 

赤い長髪で、口から時折見せる牙を思わせる様な八重歯が特徴的な、どこか見覚えのある長身の女性と対峙していた。

 

はい。どこからどう見てもアルフです。

 

何故こうなった!?とツッコミを入れる人がいるとは思うが、先に言おう。俺は悪くない。・・・多分。

 

というのも、実はいつものようにロードワークで公園まで走っていき、シャドーボクシングをしていたら、草むらの奥に発動していない状態のジュエルシードを見つけたのだ。

 

そのいきなりな展開に『えっと・・・どうしよう』と頭がフリーズしてしまい、すぐに行動に移せなかった俺に、畳み掛けるように後ろから「それを渡して下さい」と非常に聞き覚えのある声がかかった。

 

頼むから違っていてくれと無駄な祈りをしながら、恐る恐る振り返ったその先には、予想通りに長い金髪をツインテールにした少女。フェイト・テスタロッサと人間形態のアルフが険しい目をして俺をロックオンしていた。

 

まさかこの状況でエンカウントするとは思っていなかった為に、固まってしまった頭を数テンポ遅れで

必死に回転させ、どうにか何事もなく済ます手を模索する。

 

目当てはジュエルシードなのは間違いない。

 

だがジュエルシードを渡せばそれで済むかというと、首を傾げてしまう。

 

何故ならば向こうは、俺に魔力があるのを感づいている可能性があるからだ。

 

当然魔力の無い一般人よりも警戒のレベルは上がっているだろう。

 

そんな相手に『はい。どうぞ』とすんなりジュエルシードを渡したら、なにか裏があるのではないかと変に勘繰られる可能性がある。

 

ならばどうしようかと頭を悩ませている間に、テスタロッサとアルフに『渡して下さい』『渡せ』と何度も言われ続け、元々溜め込んでいたストレスに、考えを巡らせる事を何度も阻害された苛々が起爆剤となり『渡しても良いけれど、条件がある』と言ってしまったのだ。

 

その条件とはアルフと徒手空拳でスパーリングをする事(スパーリングと言ったら頭上にクエスチョンマークを浮かべていたので、素手の模擬戦と言い直した)。

 

いや・・・何故と言われても。苛ついていて、つい言ってしまったのもあるが、他にも理由が無い訳でも無かった。

 

一つは子供状態での自分の力を把握したかったからだ。

 

実戦とほぼ変わらない模擬戦が出来るダイオラマ魔法球は確かに良いのだが、相手が桁違いにレベルの高い人達ばかりの為、力が落ちている子供状態で戦えば瞬殺されるのは目に見えている。

 

更に言えば、子供状態での戦闘方法は基本的に徒手空拳なので、相手は夜一さんか砕蜂隊長位に絞られてしまうのだ。

 

この二人相手に子供状態で戦うのを想像してみて欲しい。自殺行為に等しいという事が分かるだろう。

 

もう一つの理由は、魔導師の実力を知りたいと思った事。

 

厳密に言えばアルフは魔導師ではないが、それでも第一期、二期を通して前線で戦える位の実力を持っている。

 

つまりアルフの実力を知る事で、他の魔導師達の実力を全てではないが、ある程度は図る事が出来るのだ。

 

そういった思惑もあり、俺はアルフにスパーリングを提案したのだ。

 

其れをアルフが了承し、現在に至っているという訳である。

 

「フェイト。合図は頼むよ」

 

「うん。・・・でもアルフ」

 

「分かってるよ」

 

自らが負ける事など微塵も思ってもいないことが分かる笑顔でテスタロッサと二、三言話し、アルフは俺にキッと鋭い視線を向ける。

 

そして身体を半身にして戦闘体制をとるアルフに対し、俺はいつものオーソドックススタイルではなく、ガードを固めてどっしりと重心を下げ、体制を低くしたインファイトスタイルをとる。

 

身体が小さい今の俺の状態では、懐に入った後に引くヒットアンドアウェーよりも、その小ささを利用して常に懐の中に入り込み、小さなスペースで拳を振り切れるインファイトに徹した方が良策だと考えたのだ。

 

そんな俺を、アルフは口の端を緩めて見下ろす。

 

明らかに自分が格上だと思っているようだ。

 

確かに其れを否定はしない。

 

パワーもスピードも今の状態の俺よりも、アルフの方が上なのは間違いないだろう。

 

だが、それはそのまま勝敗に結び付くわけではない。

 

有利不利に分けられはするが、それだけだ。

 

互いの緊張感が高まり、ピリピリとした空気が肌を指す。

 

そして――

 

俺とアルフ。双方の視界に入る位置でありながらも、適度に離れたテスタロッサが手を上げ、開始の合図を出した瞬間。

 

ザッ!

 

地を蹴り、アルフが一気に俺へと迫る。

 

右の拳を腰溜めに構え、突進の勢いを乗せた全力の一撃を放とうとする。

 

一方俺は動かずに、アルフが俺の一足跳びの間合いに入るまで待つ。

 

そしてあと数歩近付いたら、アルフの突進に合わせて一気に懐に入り込もうと、蹴り足に力を込め――

 

ズザアァッ!!

 

響いたのは、俺の足が地を蹴る音ではなく、何かが大地と擦れあい急制動をかけた音。

 

その音をたてた本人。俺の間合いのギリギリ一歩外で突進を止めたアルフは、急ブレーキをかけた事で発生した薄い土煙の中で、自分のした行動が理解出来ないといった表情を浮かべて立っていた。

 

 

――三人称サイド――

 

「はぁっ・・・はぁっ・・・」

 

大きく肩で息をしながら、アルフは自らの行動に。そしてその行動の引き金となった己の本能に戸惑いを感じていた。

 

主である少女。フェイト・テスタロッサも、己のパートナーの突然の行動に目を丸くしている。

 

『一撃で決めてやる』向き合った時、アルフは内心で余裕の笑みを浮かべてそう思っていた。

 

なにせ対峙している相手は、自らの主人。フェイトとさほど変わらない歳の少年。しかも主人にはある強大な魔力も感じず(微量な魔力は感じたが)、武器たるデバイスも持たない。あまりにも非力な存在だったからだ。

 

だが実際に一撃を当てようとした瞬間、身体中の毛が逆立つ様な感覚が走り、ほぼ反射的に。そして強引に足を止めた。

 

アルフの感じた感覚。それはこれまでに幾度も感じていた覚えのあるもの。だが、そんなことはあり得ないと、アルフは首を左右に振ってその考えを振り払う。

 

何故ならば、その感覚を今まで感じた時は全て、強大な敵と対峙した時。又は自らの身に命に関わる程の危機が迫った時だったからだ。

 

そんな筈はない。目の前にいるのは、魔法も使えないただのガキんちょだ。己にそう言い聞かせ、アルフは無理矢理止めた足を動かし、再度龍一郎に向かって突進する。

 

だがアルフは知る由もない。警告を発した本能は正しいという事を。目の前で相対している少年は、その力の全てを解き放てば己など歯牙にもかけない程の力を持っている事を。

 

戸惑いや不安を強引に捩じ伏せ、アルフは突進の勢いを乗せて、腰だめに構えていた拳を龍一郎に向けて一気に突き出――

 

ダンッ!

 

そうとした刹那。今まで微動だにしなかった龍一郎が地を蹴り、一瞬の内にアルフの懐に入り込む。

 

「っ!?しま・・・っがぁっ!」

 

驚愕に目を見開くアルフの上げかけた声を、腹に突き刺さった龍一郎の右ボディブローが、強制的に呻き声に変える。

 

肺から空気が抜け、瞬間的に足が止まる。その隙を逃さず、龍一郎は更に左右のボディブローを連打する。

 

「が!・・・ぐっ」

 

ズンッと腹部に重く響く拳撃を受け、アルフは『このままでは不味い』と察して後方に下がろうと足に力を入れる。だが――

 

「なっ!?」

 

自らの身体の異変に気付き、驚愕に目を見開く。

 

動かそうとした足の、自分の身体の一部とは思えない程の不自然な重さ。意思を総動員させて動かしても、普段とは比べ物にならない鈍い動き。

 

今まで感じたことの無い。身に覚えの無い自分の体に起こった謎の現象に、アルフの脳内で『なんで』が乱舞する。

 

足は動かず、頭はパニックになり、硬直状態となったアルフに、龍一郎の右脇腹を抉るリバーブローがクリーンヒットした。

 

「・・・っ!」

 

声にならない苦痛の呻きを上げ、アルフの身体が『く』の字に折れ曲がる。

 

子供姿の龍一郎とほぼ同じ位置にまでアルフの顔が下がり、その頭部に拳を叩き込む絶好の好機となる。

 

だが龍一郎はその好機に手を伸ばさず、再度アルフにリバーブローを打ち込んだ。

 

「・・・ぇ・・・」

 

強制的に肺から吐き出された空気と共に沸き上がる嘔吐感を飲み込み、歯を食い縛って視線を上げ――アルフは自らの身体に大量の冷水を浴びせられた様に感じた。

 

例えではなく、本当に己の心臓が一瞬止まったと思えた。

 

何故ならば、アルフは見てしまったのだ。自らを追い詰めている(見た目は)少年の目を。

 

そして始めて、自らの主とさほど歳の差も無く、際立った魔力も感じなかった少年に、心の底から恐怖を覚えたのだ。

 

その目から感じ取ったものは、自らを追い詰めた事による歓喜や愉悦といった『喜』ではなく、幾度もの強打を受けても今だに倒れない事に対する苛立ちを含めた『怒』の感情でもなかった。

 

それは正しく『無』。

 

一切の感情を感じ取れないその目に、アルフは心底恐怖したのだ。

 

まるである一つの命令を果たす為に、淡々と作業を行っていく機械のようなその目を、生者である相手が。それもまだ幼いといって差し支えない少年が自らに対して向けているという事に、アルフは牙がカチカチと鳴る程の恐怖を感じた。

 

『こいつはヤバい』

 

今アルフは、自らの本能が鳴らした警告に従わなかった事を後悔していた。

 

がきんちょ。魔法が使えない。そう侮っていた自分を恥じた。

 

相手は己を上回る強者だ。

 

そんな相手を下に見て、無謀にも戦う事を選択してしまった。

 

――どうやって逃げる!!――

 

アルフの頭はそれしか無かった。

 

ザッ!

 

地を蹴る音に、アルフの身体がビクリと反応する。

 

無論恐怖からくる反応だ。

 

腹部に強打の連打を受け、足を止められたアルフは正にまな板の上に乗せられた鯉も同然。

 

左右に動かれれば付いていく事は出来ない。

 

それはアルフも充分承知していた。

 

だからせめて視界には捕らえようと、目線を動かして龍一郎の後を追う。

 

だがその動いた先は、右でも左でも、そして前に踏み込んだ訳でも無かった。龍一郎の動いた先は――後方だった。

 

龍一郎は後ろに飛び退いて間合いをとったのだ。

 

此れにアルフは目を見開いて驚愕を露にする。

 

それも当然だ。何故ならば龍一郎が今まで一方的に優位に立てたのは、懐に入り込む事で相手の長所を封じ、自らの長所を完全に引き出したからこそ出来た事。

 

故に距離を開けるという行為は、自らの首を絞める行為に他ならない。

 

更に龍一郎の不可解な行動は、此だけでは終わらなかった。

 

上げていた両の腕をダラリと下げて、半身だった体勢をアルフに対して完全に向かい合わせた。つまり、構えを解いたのだ。

 

今の今まで己を圧倒していた龍一郎の突然の行動に、アルフの顔色が戸惑いと不安と恐怖によって綯い混ぜとなる。

 

そんなアルフを余所に、龍一郎は別の方に視線を向ける――自らの主。フェイトの方へ。

 

「(フェイトに何を!?)――っ!?」

 

腹部によって受けた重いダメージは、アルフから主の元向かう足だけでなく、届ける声までも奪っていた。

 

パクパクと口を開閉する事しか出来ない己に、アルフは自らの無力さに対して怒りすら覚えた。

 

そして一拍遅れて龍一郎の視線に気付いたフェイト は、数歩後ろに下がり、自らの武器にして相棒でもあるデバイス。バルディッシュの待機状態に触れ、警戒を露にする。

 

そんなフェイトに委細構わず、龍一郎はポケットの中に手を入れ、放り投げた。

 

――ジュエルシードを。

 

「え?あ・・・わわっ!?」

 

突然の状況に理解出来ないといった様子でいながらも、危なげにジュエルシードを受け取ったフェイトは、「あの・・・何で」と聞く。

 

「いや何でって、始めに言った通り、素手の模擬戦をしてくれたから渡した。それだけなんだけど」

 

「・・・あ」

 

あっさりと返した龍一郎の言葉に、フェイトは思わずといった様子で声を漏らした。

 

そう。これは始めからジュエルシードをかけた『決闘』でも、勝敗を分かつ『勝負』でもない。

 

龍一郎が出した条件は『素手の模擬戦に付き合ってくれればジュエルシードを渡す』というもの。

 

既にフェイト(正確にはアルフ)は、龍一郎の出した条件を満たしているのだ。

 

だから龍一郎はジュエルシードを渡した。それだけの事なのである。

 

しかし、先程まで心底恐怖していた使い魔とその主人は、そう簡単に切り替える事が出来る筈もなく、二人揃って警戒や戸惑いといった様々な感情がごっちゃとなりフリーズ状態となってしまう。

 

そんな二人に長々と言葉をかけて納得させるのは、かなりの手間だと判断した龍一郎は・・・。

 

「有り難う。お蔭でいい感触が掴めた。それじゃあ!」

 

頭を一つ下げて無理矢理ぶった斬り、固まったままの二人に背を向けて遁走し、後にはただ固まっている一組の主従が残るのみであった。

 

因みに二人がフリーズ状態から脱する事が出来たのは、龍一郎が去ってから更に10分程の時間を有した後の事であった。

 

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