龍の軌跡 第二章 魔法少女リリカルなのは編≪リメイク≫(凍結中) 作:ミステリア
何とかお盆休み中に投稿出来ました。
これも読者の皆さんと、私の斬魄刀の設定を使わせてほしいと言ってくれたとあるユーザーさんのお蔭だと思います。
では、どうぞ!
――龍一郎サイド――
士郎さんに教えを受けてから四日。つまりこの世界に来て一週間が経ち、その間にも鍛錬を続け、俺も段々とこの世界に慣れてきていた。
そんな俺は今――
図書館で日本地図を見ていた。
いや、何故!?と言いたくなるのは分かるが、これにはちゃんとした理由がある。
一応俺は引っ越してきたばかりという設定である為、海鳴市の細かい事をあまり知らなくても誤魔化せるのだが、流石に有名所やざっとした地理を知らないのは誤魔化すのが難しいと思ったからだ。
今はまだ問題はないが、来月頃には聖小に通う為、その時にうっかりぼろが出る可能性があるのだ。
だから今のうちに少しは地理を知っておこうと思い、家の近くにある大きめの図書館に来たという訳だ。
ちなみに俺は初めから図書館に行こうと思った訳ではなく、パソコンで(ぶっちゃけグー○ルアー○)調べようと考えていたのだが、自宅にパソコンが無く、小学生の姿でネットカフェに行くのは流石に拙いだろうと思いとどまった。
士郎さんに頼めばパソコンを貸してくれるとは思うが、何時までも頼りっぱなしはどうかと考え、最終的に図書館で調べようという結論に達したのだ。
(目の前は海で、少し山の方に入れば温泉・・・か。これで歴史的な建造物があれば、観光地として宣伝できそうだな。此処)
周りに人がいる為、声に出さずに心の中で感心しながら、俺は日本地図を元の場所に戻し、情報誌と数冊の小説。そしてボクシングの教本を手に取って、先程まで座って地図を見ていた場所に歩いていく。
「もぅ・・・ちょい」
(・・・・・・え?)
目の前に映るその情景に、俺は思わず歩みを止めて固まってしまう。
俺の視線の先。其処には、車椅子に乗った今の俺と同じ位の歳の、物凄く見覚えのある茶髪の少女が本棚に手を伸ばしていた。
しかしどうやら必死に手を伸ばしてはいるが、目当ての本に手が届かないらしく、伸ばす手の指先がプルプルと震えている。
普通ならば同情の念を感じて助けようと思うのだが、俺はこの状況に物凄く心当たりがあった為、思わず固まってしまっていた。
(まさか八神はやてとエンカウントするとは・・・)
そう。俺の視線の先にいる少女は、原作第二期『魔法少女リリカルなのはA´s』の主要人物にして、後の未来に夜天の王と謳われ、STSのメインステージである機動六課を立ち上げる存在。八神はやてその人であった。
(しまったな・・・家の近くにあるからって、碌に図書館の名前を見ずに入ったのは失敗だった。
此処って風芽丘図書館だったのかよ)
知らなかったとはいえ、アニメでも月村すずかと八神はやてが出会った場所に足を踏み入れてしまっていた己に対して内心舌を打ちながら、今の状況をどうしようか思案を巡らせる。
先程も言ったが、普通ならば同情して助けようと思うのだが、主要人物と関わることによって面倒な事態にならないとも限らないと、どうしても勘ぐってしまうのだ。
警戒しすぎだと思うのかもしれないが、これには事情がある。
実は先日。俺の中にエルフィからこの世界の魔導師に必要不可欠な器官であるリンカーコアが存在している事を告げられたのだ。
まぁ尤も、魔力量は主要人物達と比べたら遙かに劣るC位だったのだが、問題は其処ではない。
重要な事は魔力が有るという一点。
つまりA´sの時期になると、菟集対象として守護騎士達に目を付けられる可能性が非常に高いという事だ。
(どうする・・・今の時期ならヴォルケンリッターはまだいないから、睨まれる事はないから助けても問題は無い。
だけど、ここで助けて八神はやてに印象を植え付けると、後々面倒な事になる可能性も否定できないしな・・・)
人としての情と、危険を避けようとする本能の狭間で気持ちが天秤の様に揺れ動き――
(はぁ~~っ)
心の中で深い溜め息を一つ吐き、俺は足を前に出して歩みを進める。八神はやての方に。
(やっぱり、放っておくのは後味が悪いしな)
そんな言い訳じみた事を思いつつ、俺は八神はやての横に立ち、プルプルと震える指先がもう少しで触れそうな本を手に取り、「はい」と八神はやてに差し出した。
そんな状況に頭がついていけていないのか、八神はやては差し出した本と俺の顔を交互に見てやっと現状を把握したらしく「あ、有り難う御座います」礼を言って微笑みを浮かべる。
俺は「どう致しまして」と返して八神はやての横を通り過ぎ、先程まで座って地図を見ていた場所を目指して歩き――
「あっ・・・待って下さい」
出そうとして植〇佳奈ボイスに呼び止められた。
流石に無視して去る訳にもいかずに振り返り「何か?」と聞くと、彼女は僅かに頬を赤く染めて一冊の本を指差し、「その・・・この本も取ってくれないでしょうか?」としてきた注文に、俺は内心で何度目か知らない溜め息を吐き、指差していた本を取って手渡した。
――はやてサイド――
皆さん初めまして。八神はやていいます。
ごくごく普通の小学二年生相当の女の子です。
他の子と少し違うのは、一寸した病気で車椅子での生活を送っている事。
その辺の事情で学校を休学している事位です。
そんな私の趣味は、本を読む事。
まぁ、最初は学校に行って授業を受けれへんようになって、その遅れを少しでも何とかしようと図書館に行ったのが始まりなんやけど、今では本を読む事が楽しいです。
でも時々。必死に手を伸ばしても、目当ての本に手が届かない時に少し憂鬱になります。
そのほんの少しの差が、他の人との違いという『壁』として見せつけられている様な感じがして。
だけど、今日は違うた。
私と同い年位の見知らない男の子が、手に取れなかった本を取ってくれたからや。
正直、手を伸ばしている私に同情の目を向けてくれる人は結構おる。
せやけど目を向けてくるだけで、実際に動いて助けてくれる人は殆どおらんかった。
やから嬉しかった。
見た目は普通でちょう仏頂面でも、優しい子やと思った。
失礼かなと思っても、別の本も取ってくれるように頼んだのは、少しでも長くその子と一緒にいて優しさを感じたかったからや。
そんな私の我が儘を、その子は少し呆れた様に私を見とったけど、私が指差した本を手にとって膝の上に乗せてくれた。
「これで全部?」
「はい。有り難う御座います」
笑顔を浮かべてもう一度礼を言う私に、男の子は少しだけ微笑んで頷いた後に、私に背を向けて歩いて行く。
「あっ、待ってください」
あまり大きな声を上げると周りの人に迷惑やと思った私は小声で男の子を呼び止めたけど、聞き取れんかったのか、歩調を変えずにスタスタ歩いて行ってもうた。
慌てて車椅子の車輪を回して男の子の後を追いかけて本棚の間を抜けると、男の子は既に椅子の一番端っこに座って本を読んでいた。
私は男の子の座っている椅子の前にある机の横にまで近付いて行って、何を読んでいるのかチラリと見ると、情報報誌を開いとって、机の横には数冊の小説。そして格闘技の教本を横に置いて読んどった。
(どんなラインナップやねん)
流石に助けてくれた人にいきなりそれを言うんは失礼やと思い、喉元まで出掛かったツッコミを、私はなんとか飲み込んで声をかける。
「あの・・・」
「・・・何か?」
今度は耳に届いたようで、雑誌を一旦閉じて視線を向けてくれた男の子に、私はこの時点で特に聞きたい事も話したい事も無いのに、呼び止めてしまった事に今更気付いてもうた。
頭の中で何か話さなかんと思いながら「あ・・・その・・・」と、どもってからやっと口から出た言葉が――
「よ、よく此処に来るんですか?」
やった。
(なにやってんねん私)
と自分で自分にツッコミを入れて、ちょう自己嫌悪してまう。
「いや。この図書館に入ったのは、今日が始めて」
ツッコミ所満点の私の問いに、男の子はちゃんと答えてくれた。
「そうなんですか。あ、私八神はやていいます。数の八に神様の神。平仮名ではやてです」
(よしっ!なんとか自己紹介にまで持っていけた)と思わず内心でグッと手を握って、小さくガッツポーズをとってもうた。
「俺は吉波龍一郎。吉本の吉に波乗りの波。東洋の龍に一郎で龍一郎」
「龍一郎君かぁ・・・格好ええ名前やな」
素直な感想に、龍一郎君は「そうか?」と首を傾げた。
「友達とかに言われた事無いんか?」
意外に思って聞くと、龍一郎君は開いていた本を閉じて置いた後に、腕を組んで「う~ん」と唸る。
「覚えやすい名前だとは言われた事はあるけど、格好良いと言われたのは正直始めてだなぁ」
「そうなんや」と返して、私はフフッと笑いを零す。
そんな私に釣られたのか、龍一郎君も口の端を緩めて笑みを浮かべてくれた。
少し笑いあった後に、私は龍一郎君の持っている本に視線を移す。
「この町の情報誌?学校の課題とかで調べてるんか?」
「いや。この町に引っ越してきたばかりだから、右も左も分からないんだ。それでどんなお勧め所があるか調べようと思っただけ」
「そっかぁ。引っ越してきたばっかりなんか」
(どうりで龍一郎君の顔に見覚えが無い訳やな)
内心で納得した私は「ほんなら教えようか?私のお勧めの場所」と聞く。
「気持ちは有り難いんだけど、いいのか?」
問い返しに「ええよ」と頷く私に対し、龍一郎君は「でも、一緒に来ている八神の親御さんの確認もしていないのに、勝手に決めるのは拙くないか?」と申し訳なさそうに言う。
その気遣いからくる言葉に、私の心の奥に僅かな影が差す。
「それなら大丈夫や。私、一人暮らしやから」
「あ・・・っ。御免、俺・・・」
『しまった』という顔から、申し訳なさそうな表情になった龍一郎君に、私は「ええよ。気にしとらんから」と安心させる為に笑顔を向けて口を開く。
「それに家にはおらへんけど、親戚の叔父さんが時々手紙をくれるから、別に寂しないよ」
ほんの少しだけ嘘を混ぜて言う私に、龍一郎君はいきなり私の頭にポンポンと手を置いた。
「え?ちょ・・・何や?」
戸惑う私に、龍一郎君は「無理するなよ」と言って頭に置いた手を戻す。
「俺も今、両親がいないから何となく分かるんだ」
・・・え?
龍一郎君の口から出た内容に、思わず私は呆けてまう。
「何時もは気にならない部屋の広さを感じた時」
「寝床に入って、周りの一寸した物音や気配が気になった時」
「耳鳴りが聞こえる位に静かだと思った時」
龍一郎君の言葉の一つ一つが私の耳に入ってくる毎に、目が潤んでくる事が自分でも分かる。
「否応なしに感じるんだよな。この家には自分一人しかいないって」
いくら平日で、休日に比べて周りの人が少ないとはいえ、泣いたらあかんと自分に言い聞かせて止めようと思っても、荒れ狂っとる感情をとても止める事が出来へんかった。
「寂しいと、心細いと思うのは当たり前だ」
駄目や・・・もう・・・。
「俺もよく分かる。だから無理するな」
限界やった。
その言葉に、私の抑えていた感情が一気に解き放たれ、奔流が涙の形で目から溢れ出る。
そんな私の内心で起こる感情の嵐に気付いたのか、声が漏れて周りの人に注目されんように、龍一郎君が私を優しく抱きしめて、自分の胸を貸してくれた。
私はそれに甘えるように龍一郎君に倒れ込む形で胸に顔を預け、声を殺して泣いた。
(・・・もし兄ちゃんがおったら、こんなふうなんかもしれへんな)
心の奥に悲しみとは違う暖かさを感じ、ふとそんな事を思いながら、私は龍一郎君の温かさを肌で感じつつ涙を流し続けた。
――三人称サイド――
(ど、どうする。これから俺はどうすれば良いんだ!?)
八神はやてが龍一郎の胸で涙を流していたその時、当の龍一郎は声に出してはいないが、動揺しまくっていた。
(余計な事を言わなければよかったのかもしれないけれど、あの目を見たら放って置けるわけ無いし・・・それに今更こんな事を思っても、もう遅いしなぁ)
自分がした事に対する後悔は無いが、未来に対しての不安を感じる龍一郎は、内心溜め息を吐きながら、自らの胸の内で声を殺して涙を流しているはやての背を軽く撫でて落ち着かせる。
暫くの間そうしていると、やがて泣き止んだはやてが胸から顔を離し、気まずいのか車椅子を少し動かして後ろに下がり、視線を下に下げて俯いた。
「えっと・・・御免な。龍一郎君」
俯いたままで謝られた龍一郎は、何故謝られたのか得心がいかずに首を傾げてはやてを見る。
「その・・・服にシミを付けてもうて」
言い難そうに二、三度口を開きかけた後に絞り出した言葉に龍一郎はやっと納得したのか(あぁ)と内心合点を打った。
確かに胸の内で涙を流していた結果、龍一郎の服に無視できない位の大きさのシミが出来ていた。
普段家事をやっているからか、シミを取るのがどれ位手間がかかるのかを知っているのだろう。
それを知っているからこその陳謝だと見た龍一郎は、「別に気にしなくていいよ。大丈夫だって」と手をパタパタと振って気楽に笑う。
しかしそれでも「せやけど・・・」と引き摺るはやてに、龍一郎は「俺の方こそ御免」と謝り、続ける。
「折角お勧めの場所を紹介してくれるって言っていたけど、一度家に帰って着替えたら
だから御免。紹介して貰うのは、また今度になりそうだ」
突然謝った龍一郎に呆気にとられていたはやては、謝ったその意味合いを理解すると、困惑したように両手を振って返す。
「そ、そんな!それは私の所為やから龍一郎君が気にする事は無いよ!」
「それならおあいこだな」思わず声を大きくするはやてに、龍一郎は笑顔を浮かべてそう言った。
「八神はシミを付けちゃって、俺は色々と紹介してくれる好意を蹴ってしまった。それでお互い様って事じゃあ駄目かな?」
強引としか言いようがないが優しさのある理論に、はやては少し呆けた後に「ぷっ」と小さく吹き出して「そうやな。それじゃあおあいこっちゅう事で、この話はもう無しにしよな」と笑顔を見せてくれた。
龍一郎もそれに応えて「そうだな」と一つ頷き、「さて」と一言吐いて机の上に置いていた本を手に取り、それを小脇に抱えて立ち上がった。
「帰るんか?」
その行動を予測していたのか、動揺もせずに確認をするかの様に問うはやてに、龍一郎はコクリと首肯して口を開く。
「今日借りる本を返しにまた一週間後に此処に来るから、『もし』その時にまた会えたら、改めてお勧めの場所を教えてくれるかな?」
「ええよ。『もし』一週間後に会えたら、私のお勧めの所。紹介したげる」
お互いに一言加えて遠回しな約束を交わし――
「それじゃ、またな。八神」
龍一郎は敬礼をするかの様に軽く手を挙げて別れを告げ――
「うん。またな。龍一郎君」
はやてはニッコリと笑顔を浮かべて小さく手を左右に振る。
背を向けて歩いて行き、龍一郎の姿が小さくなっていくにつれて、はやての左右に振り続けていた手の振り幅は狭まっていき、やがて止まったその手をはやては膝の上に載せた。
だが、はやての別れの悲しみと再会の期待を綯い交ぜにしたその視線は、龍一郎の背中が見えなくなるまでずっと注がれていたのだった。
主人公がはやてに言った『寂しいと思う時』の状況は、作者が小学生の時に実際に感じた時の事を書きました。
小さい頃からかなり怖がり&怖いもの見たさだったので、夜に寝難くなるのが分かっていても学校の〇談とかを見ていました。
今となっては笑い話ですが、ド〇ミ&ド〇えもんズのロボット学校七不思議に出てくる工具の〇人を映画館で見たら、眠れなくなるくらいに怖かったです。