龍の軌跡 第二章 魔法少女リリカルなのは編≪リメイク≫(凍結中)   作:ミステリア

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どうも、ミステリアです。

シルバーウィークなのに休日が今日までなので、急ピッチで何とか書き上げました。

さて今回の話なのですが、実はリメイク前の時から書こうと思っていた話です。

作者はとらハは知りませんが、やはり月村家と士郎以外の高町家を絡ませるにはこの話しか思いつかなかったので書く事にしました。

その為とらハを知っている人は違和感を感じるかもしれませんが、軽く流してくれると嬉しいです。

では、どうぞ!


第七話

――龍一郎サイド――

 

「あ゛ぁ゛~~・・・」

 

図書館で原作キャラの八神とエンカウントをしてから三日後の夕刻。

 

太陽が沈み西の空が暮れ残る頃、俺は家のリビングでうつ伏せの大の字になってだれていた。

 

というのも、先程までダイオラマ魔法球の中に入り鍛錬をしていたのだ。

 

入ったのが大体午後の三時頃で、魔法球の中に丸二日間入っていたから、今は大体午後の五時位の筈だ。

 

暦で見れば今現在は完全に春の為、日の出ている時間が特別短い訳ではないのだが、この位の時間で太陽が沈んでしまうのを見ると、やはりまだ完全に春とは言えず所謂初春といった所だなと思ってしまう。

 

「だらしないぞ。龍」

 

暮れ残りの空を見てだれている俺を見下ろし、いつものおさんどんスタイルに身を包んで、呆れを含んで言う相棒に、俺は「仕方がないだろう。さっきまで鍛錬をしていたんだから」と視線を動かして彼女の足だけを視界に捉えて返す。

 

まぁ確かに今の俺の姿だけを見ればエルフィの言うのも分からなくはないのだが、ダイオラマ魔法球の中の鍛錬がそれだけハードで、尚且つ精神的に凹む内容だったのだ。

 

なにしろ神の爺さんがダイオラマ魔法球に追加した機能である仮想の相手を選択して戦う事が出来る機能を使い、前の世界でも教えを受けた一角さんを相手に戦ったのだが、写輪眼を使った上に飛燕を解放しても一角さんには通じずにボコボコにされまくった。

 

更に言えばこの戦いで一角さんは、自らの斬魄刀である鬼灯丸を一度も解放することは無く俺を叩きのめした。

 

つまり今の俺では、一角さんの実力を全く引き出させる事が出来なかったのだ。

 

その事でかなりむきになってしまい、気付くとほぼ丸1日を一角さんとの戦いに当ててしまっていた。

 

結局一角さんに鬼灯丸を解放させる事は出来ず、今の自分の実力の低さをまざまざと見せられ、その現実に流石に凹んでしまう。

 

おまけにほぼ1日中戦い続けていた事によって凄まじいまでの筋肉痛に襲われ、ダイオラマ魔法球の中で軽い鍛錬と治療を兼ねた追加の1日を過ごしたのである。

 

そして外に出て今に至るという訳だ。

 

経緯を説明すると、エルフィはふうっと息を一つ吐いて口を開く。

 

「何故卍解を使わなかったのだ?」

 

「相手が始解もしていないのに、卍解が出来る訳ないだろう」

 

(それに、もし卍解しても始解させることが出来なかったら、流石に立ち直れないしな)

 

内心でそう付け加える俺の心情を悟ったのか、エルフィはやれやれといった様子で軽く首を左右に振って「これから夕食の支度をするのだが、手伝ってくれないか?」と話題を変える。

 

それが少しでも凹んだ気を紛らわせようと思う相棒なりの気遣いだと分かる俺は、「良いよ。何をすればいいんだ?」とまだ痛みが残っている筋肉を動かして立ち上がり、相棒に問う。

 

「そうだな。まずは『トゥルルルル・・・・・・トゥルルルル・・・・・・』電話に出て欲しい」

 

「了解」

 

狙ったようなタイミングで掛かってきた電話に出出しを挫かれ、がくりと肩を落として俺に電話の相手を任せ、キッチンの奥へ入っていく相棒に俺は「まぁ・・・頑張ってくれ」と生暖かい視線を送り、受話器を上げて電話にでる。

 

「はいもしもし。吉波で「龍一郎君!」・・・っ」

 

耳元で響いた聞き覚えのある声によって頭をハンマーで叩かれた様な衝撃を直接脳に受け、俺は反射的に受話器に近付けていた顔を離して、受話器を持っていない方の掌をこめかみに当てて、キーンと耳鳴りが響いている鼓膜とガンガンとする頭痛を少しでも和らげようとする。

 

そして頭痛と耳鳴りを振り払うかの様に掌を当てたまま軽く頭を振った後に、俺は受話器の向こう側にいる人に不機嫌さを匂わせる低い声で問う。

 

「どうしたんですか士郎さん?いきなり大声で?」

 

そう。電話先の大声の主は、一週間前に剣の手解きをしてくれた士郎さんだった。

 

今まで電話を掛けてくることはなかったので、戸惑いと疑問が頭を過ぎる。

 

「すずかちゃんと忍ちゃんが誘拐された」

 

「!!」

 

士郎さんの口から出たその一言に、耳鳴りも頭痛も一瞬で吹き飛んだ。

 

「恭也から連絡があった。パーティーの帰りに連れ去られたらしい」

 

「恭也さんは護衛じゃ無かったんですか?」

 

「勿論護衛だったさ。だけど僅かな隙を突かれて一瞬で連れて行かれたと恭也は言っていた。

師である俺が言うのも難だが、恭也はかなりの腕を持っている。にも関わらず連れ去られたという事は、相手がそこらにいるチンピラとは考えにくい」

 

「イレギュラーズの可能性もある。と士郎さんは考えているんですね?」

 

士郎さんが電話を掛けてきた内容を朧気に察し、考えているであろう内容を先んじて言う。

 

「あぁ。それで君に・・・というよりエルフィちゃんに、この件にイレギュラーズが関わっているのかどうかを調べてほしいんだ」

 

「分かりました。ちょっと待って下さい」

 

俺は一言言ってから受話器から顔を離し、キッチンの奥へ入っていった相棒を呼ぶ。

 

「エルフィー!」

 

「なんだ龍?電話は誰から「月村すずかと月村忍が誘拐された」何だと?」

 

ひょっこりと顔を出した相棒の問いを遮って言った俺の言葉に、エルフィの顔色が険を帯びた真剣なそれに変わる。

 

「相手は高町恭也の隙を突ける程の使い手らしい。イレギュラーズの可能性もあるからサーチを頼む」

 

「了解した」

 

エルフィは一瞬でおさんどんスタイルから、民族風の衣装に長い青髪を紫のリボンで束ねたいつもの格好に変え、集中力を高める様に目を閉じる。

 

するとエルフィの体全体が淡い光を帯びていく。

 

そして約十秒後。体を包んでいた光が消え失せ、エルフィは目を開けた。どうやらサーチが終わったらしい。

 

「見つかったか?」

 

俺の問いに相棒は首肯し、「海鳴市の一角にある廃ビルに捕らわれている2人を確認した」と淡々と口にする。

 

「イレギュラーズは関係しているのか?」

 

「いや。今回の事件にイレギュラーズは関わっていない」

 

あまりにあっさりと首を横に振った相棒に、俺は思わず訝しんで再び問う。

 

「本当に?」

 

「本当だ。2人を誘拐した者は単独犯。誘拐した理由も、個人の下衆な欲望からくるものらしいからな」

 

「下衆な欲望?」

 

エルフィの口から出た汚い台詞に、俺は鸚鵡返しに返してしまう。

 

だが相棒は問いに答えたくないのか「まぁ確認した結果、イレギュラーズが絡んでいないのは間違い無いのは確かだ」と話題を強引に戻す。

 

そんなエルフィに首を傾げながらも、俺は受話器を耳に当てて、その向こうで待っている士郎さんに相棒が調べてくれた結果を話す。

 

「もしもし士郎さん。エルフィに頼んで調べて貰ったんですが、この件にイレギュラーズは関わっていないらしいです」

 

「そうか・・・じゃあ龍君は今回は動かないのかい?」

 

「え?それは・・・・・・」

 

士郎さんの問いに、俺はすぐに答える事が出来ずに言葉に詰まってしまう。

 

確かに今回の誘拐事件にイレギュラーズが関与していないのならば、俺が動く必要はない。

 

凄腕の士郎さんと恭也さんの2人がいれば、余程の事がない限り大丈夫だろう。

 

だが。俺の頭に握手を交わした時の月村の笑顔が浮かび、無意識に握手をした手に視線を移す。

 

そして気付けば――

 

「俺も行きます。月村を助けに」

 

俺はそう口にしていた。

 

「いいのか龍君?俺だけじゃなく恭也や忍ちゃん。すずかちゃんに力を見せる事になるぞ?」

 

俺の覚悟を試しているのか、先程よりも明らかに声質を低くして威圧する様に問う士郎さんに、受話器越しにでも僅かに怯んだが、俺はしっかりと頷いて答える。

 

「笑って握手して、友達になってくれるって言ってくれた女の子を放っておくなんて俺には出来ませんよ」

 

「そうか・・・場所は分かるのかい?」

 

「それもエルフィが調べてくれました。海鳴市の一角にある廃ビルに2人はいるそうです」

 

俺の返しに受話器の向こうの士郎さんは「どうやら此方の掴んでいる居場所と同じみたいだな」と言う。

 

どうやら向こうも居場所を掴んでいたらしい。

 

でも、どうやって?

 

気になった俺は聞いてみる。

 

「そっちはどうやって2人の居場所を特定できたんですか?」

 

「携帯電話に内蔵されているGPS機能を使って場所を突き止めたんだ。ただ、携帯電話だけを奪ってその場に置いている可能性もあったから、君のお陰で確信が持てた。助かったよ」

 

「それは良かったです。では、俺も向かいます」

 

そう言って受話器を置き、俺は振り返って後ろにいる相棒と視線を交わす。

 

「行くのか」

 

「あぁ」

 

確認を含めた問い掛けに即答して頷き、相棒に道案内を頼む。

 

「エルフィ。2人がいる場所へ案内してくれ」

 

「少し待て。出る前に家の戸締まりは確認するぞ」

 

いきなりエルフィの口から出た家庭的な言葉に一瞬転けそうになるのをなんとか堪えた後に、俺は手早く家の戸締まりを確認して窓から身を踊らせ、霊子で足場を形成し、先に空を飛んでいくエルフィの後を追って空を駆けた。

 

 

 

                   ☆

 

――すずかサイド――

 

「・・・ぅ・・・うぅん・・・」

 

鼻を突く様なカビと埃の嫌な臭いに半ば無理矢理意識を取り戻される形で目覚めた私の目に入ってきたのは、生活感を全く感じる事が出来ない程に薄暗く殺風景な空間だった。

 

「確か・・・私・・・」

 

今置かれている状況の整理がつかない私は、まだ少しぼやけている中でも頭を巡らせる。

 

「すずか、気が付いたのね」

 

「お姉ちゃん?」

 

横から聞こえたお姉ちゃんの声に、私は声のした方に目を向けた。

 

薄暗い中でも分かる位に近くにいたお姉ちゃんの姿を見て、私の心に安心感が芽生える。

 

「此処は・・・えっ?」

 

お姉ちゃんに近付こうとした私は、今になって自分の体の違和感に気付いた。

 

お姉ちゃんに近付こうと手足を動かそうとしても全く動かすことが出来ず、手足首の皮膚に何かが食い込んで変な感触があった。

 

視線を自分の手足に向けると、其処には後ろに回されている両の手の手首と足首が縄の様なもので縛られて身動きが出来ないようにされていた。

 

それを見て私は自分の身に何があったのかを思い出した。

 

知り合いが主催のパーティーに招かれ、その帰り道に突然出て来た男の人達に攫われた事に。

 

「大丈夫すずか?怪我は無い?」

 

急に黙り込んだ私を心配してくれたらしく、私と同じ様に両手足首を拘束された状態でも気遣ってくれるお姉ちゃんに、私は「うん。私は大丈夫」と頷いて答える。

 

「でも・・・此処は何処なんだろう?」

 

「多分"ガチャッ"・・・っ!」

 

お姉ちゃんの言葉を遮る形で扉が開き、其処から金髪にブラウン色の目をした見知らない男の人と、その人を護る様に周りに立つ黒いスーツにサングラスをかけたガードマン風の男の人達が部屋の中に入ってきた。

 

「お目覚めは如何ですか?お嬢様方」

 

「そうね。場所が廃ビルの一室ではなくて、手足を縛られていなければ悪くはないと思うわ」

 

丁寧な言葉遣いではあるけど、どこか不気味さを感じている私を守ろうと、お姉ちゃんが前に出て皮肉を効かせて返す。

 

「それはすみません。しかし私の頼みを聞いていただく前に逃げられては此方としても困りますので、この様な待遇を取らざるを得なかったのです」

 

「頼み・・・ですって?」

 

眉をひそめて返すお姉ちゃんに、男の人は胸に手を当てて執事の様に一礼した。

 

「はい。あぁ、申し遅れました。私はヴァリア三世(ザ=サード)と申します。『死霊術士(ネクロマンサー)』や『人形遣い(ドールマスター)』とも呼ばれております」

 

名乗る男の人。ヴァリアさんに、お姉ちゃんは名乗りを返さずに鋭い視線を向ける。

 

「あなたの頼みがどんなものなのかは知らないけれど、こんな風に連れてこられて、私達が首を縦に振ると思っているのかしら?」

 

挑発気味に言うお姉ちゃんに、ヴァリアさんは小さく首を左右に振って口を開く。

 

「いえ。あな『ガタッ!バタン!!』おや?」

 

語り出したその声は、響いてきた派手な物音に遮られる形で止められた。

 

ドタッ!ガシャァン!!止めどなく響く音が耳に届き、その音の出所が私達の足元。つまり下から来ている様に感じた。

 

「流石と言うべきでしょうか・・・早いですね。もう来ましたか」

 

そう言ってヴァリアさんは懐から出した直方体の物――たぶんリモコン――古ぼけたテレビデオに向けた。

 

すると消えていた画面が点き、其処に映っているのを見て、私もお姉ちゃんも言葉を失う位に驚いた。

 

その画面には、今私達の目の前にいる男の人の周りにいるガードマン風の人達と全く同じ姿をした人達が、恭也さんと士郎さんの2人と戦っていた。

 

だけど私とお姉ちゃんが驚いたのはその戦いが凄いからじゃなく、恭也さん達が戦っているガードマン風の人達の人数だった。

 

服装も顔立ちも体格も殆ど同じ人達が、ざっと見ても3、40人はいる。

 

その異様を通り越して恐怖を覚える光景に、私は思わず「ひっ」と短い叫びを上げてしまった。

 

「ふむ・・・高町恭也と高町士郎の2人ですか。出来れば高町美由希も来て欲しかったですが、まぁ良いでしょう」

 

・・・えっ!?

 

画面を見て男の人の口から出た言葉に、私は殆ど反射的にヴァリアさんの方に顔を向ける。

 

「どういう事なの!あなたの目的は私達でしょう!?」

 

お姉ちゃんもその言葉に反応して声を荒げて問い詰める。

 

「何か誤解をしている様ですね。私の目的はあなた方だけでは無く、あなた方とあなた方を護る凄腕の剣士達なのです」

 

「なん・・・ですって」

 

私やお姉ちゃんだけじゃなくて、恭也さん達も目的!?

 

「一体・・・どういう事なの」

 

目の前にいるヴァリアさんの意図が全く掴めずにいる私とお姉ちゃんに、男の人は顎に手を当てて「ふむ、では一から説明しましょう」と一言言って語り出した。

 

「まず始めに、先程述べました私の異名。『死霊術士(ネクロマンサー)』や『人形遣い(ドールマスター)』という名は私の祖父によって生まれた異名なのです。

そしてその由来は、祖父が生涯をかけて作り出したある秘術によるものなのです」

 

私にはヴァリアさんの話と目的がどう繋がっているのか分からなかったけど、横にいるお姉ちゃんに視線を移すと、さっきまで訝しげだったお姉ちゃんの顔が見る見るうちに強張っていった。

「お・・・お姉ちゃん?」

 

「まさか・・・あなたは・・・」

 

私の呼び掛けにも反応せず、お姉ちゃんはヴァリアさんに恐怖を帯びた視線を向けて、唇を震わせて掠れた声を上げる。

 

「ほぉ、聡明ですね。もう見当が付いてしまうとは・・・」

 

感心したように言うヴァリアさんに、お姉ちゃんはキッと目線を鋭くして睨み付けて口を開く。

 

「正直、連れ去られる前に恭也と誰かが戦っている時から、引っ掛かりの様なものは感じていたわ。

そしてそれがハッキリとした違和感に変わったのは、あなたと一緒にこの部屋に入ってきたガードマンを見た時よ。

どちらも自分の意志で動いている動きじゃない。まるで別の誰かに動かされている動き方だった。

それであなたの話を聞いて、全てが繋がったのよ」

 

既に何かを確信しているお姉ちゃんの言葉に付いていけていない私は、ただ黙って2人の話を聞いている事しか出来なかった。

 

「では聞かせていただきましょう。あなたがその繋がった線の先に見出した祖父の秘術の正体を」

 

「私の推測に間違いがなければ、恐らくあなたのお祖父さんの作り出した秘術とは、人間の死体を人形の様に自分の意のままに操る術ね」

 

「――!っ」

 

お姉ちゃんの口から出た言葉に、私は声を失いヴァリアさんを見る。

 

パンッ・・・パンッ・・・パンッ・・・

 

「素晴らしい。それだけの情報と、僅かな私の話だけで私の祖父の秘術を暴くとは」

 

当の本人は動揺なんて全く無く、寧ろ嬉しそうにお姉ちゃんの言葉を肯定して、拍手を送っていた。

 

「勿論情報はそれだけでは無いわ。

戦っていた恭也が困惑した顔をしていたのも、違和感を感じる事の出来た一つよ。

尤も、その所為で私にも恭也にも隙ができて、私達は連れ去られてしまったけれど」

そういえば連れ去られる前に恭也さんが「なんだ・・・こいつ等は?」ってなんだか戸惑っていた様な・・・と誘拐されたショックで忘れていた記憶が、朧気にだけど甦ってきた。

 

でも私の心は晴れることはなく、逆に絶望に染まっていった。

 

私は察してしまった。今までのお姉ちゃんの話から、目の前にいる人が何故私達をだけでなく、士郎さんと恭也さんも目的だと言ったのかを。

 

自分の顔が青ざめていくのがハッキリと分かる。

 

お願いだから、察した考えが間違って欲しいと、恐怖で体が震えて歯がカチカチと鳴る。

 

そんな私を見て、ヴァリアさんは歯を剥き出しにして邪悪な笑みを浮かべ、「どうやら御二人共、私の目的に見当が付いた様ですね」と言った後に、まるで鳥が羽ばたくみたいに両の腕をバッと左右に広げた。

 

「そう!私の目的!それはあなた達2人!そして今下にいる剣士達を、祖父より伝わった秘術で私の人形にする事!」

 

「何故私達を!」

 

お姉ちゃんが目を吊り上げて怒りを帯びて叫ぶが、全く怯まずに目の前にいる人には『闇』を感じる程に暗い目で私達を見る。

 

「何故?これは可笑しな事を仰る。

知っているのですよ。貴女方は普通の人間などでは無い。

人有らざる者。吸血鬼なのだと!」

 

「「っ!」」

 

「この情報を知った時、私の心は震えましたよ!美しき吸血鬼の姉妹!

そしてその吸血鬼を護る凄腕の剣士達!

美と力!私の求める二つの芸術を体現する者が、東洋の小さな島国に存在する事に!!

正に私の最高傑作となる素材に相応しい!!」

 

当たって欲しくなかった考えが当たってしまい、私は恐怖と目の前の人を見たくなくて、目をギュッと瞑って前に出ているお姉ちゃんの背中に寄りかかった。

 

でもいくら目を閉じて私の中にあの人が入らないようにしても、利用手足を縛られている私の耳にはあの人の言葉が聞こえてしまう。

 

あの人が私の中に入ってきてしまう。

 

「狂ってる・・・あなたは狂っているわ!」

 

「よく言われますが、人ではない貴女に言われるのは少々気に入りませんね」

 

スウッと声が低くなり、私の体がビクッと一際大きく震える。

 

「まぁ良いでしょう。真の芸術というものは、理解されるのにかなりの時間を要すると言いますしね」

 

声色を戻してそう言い、クルリと踵を返して、私達から離れる形で数歩歩いてまた体の向きを変えて再び私達に向き直った。

 

「では、改めて聞きましょう。私の頼みを聞いていただけますでしょうか?」

 

「断るわ!」

 

意のままに操られる人形になるなんて絶対に嫌だ!

 

私は口には出さずに、拒否の言葉を言い切るお姉ちゃんの背中に体を預けて身を震わせ、全身で拒絶を表す。

 

「そうですか。無理矢理は好きではないのですが、仕方がありませんね」

 

パキンと指を鳴らす乾いた音が響くと共に、コツ・・・コツ・・・と徐々にこっちに近付いてくる靴の踏み鳴らす音が聞こえた。

 

「助けて・・・士郎さん・・・恭也さん・・・」

 

「無駄ですよ。秘術によって作られた私の人形には、痛覚は存在しない。

つまり腕を斬ろうと、頭を砕こうと動き、戦い続けるのです。

それが下には50体もいるのですよ。

流石の凄腕の剣士でも、手こずるのは必至。

最悪でも貴女方の内1人を人形にする時間は充分にあるのです」

 

そん・・・な・・・

 

私の心が絶望に染まっていく。

 

コツ・・・コツ・・・

 

足音が近づいてくる事に、私の中にある絶望が膨れ上がっていく。

 

コツ・・・コツ・・・

 

無駄なのは分かっている。それでもそうする他になかった。

 

コツ・・・コツ・・・

 

そうしなければ私の中にある絶望が、私を破裂させてしまうと思った。

 

私はその絶望を吐き出すつもりで、肺の中にある・・・違う。身体の中にある空気を全て声に変えて――

 

「誰か・・・」

 

――叫んだ!!!

 

「助けてえぇぇぇぇっ!!!!!」

 

ガシャアァァン!!!

 

私が叫びを上げてから間も無く、ガラスの割れる音が派手に鳴り響き、次いで『ズシャアァッ!!』と何かを物凄い勢いで引き摺る様な音が響いた。

 

その音が止み、さっきまで近づいてきていた足音も止まり、辺りが静寂に包まれる。

 

一体何が起こったのか。

 

それを知る為に、私は閉じていた目を開け、庇う様に前に出ているお姉ちゃんの肩から恐る恐る顔を出して覗くと――

 

其処には先週にたまたま出会い、握手をした・・・友達になってくれると言ってくれた男の子が、私達を守る様に背を向けて立っていた。

 




今回始めてルビを使いました。
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