龍の軌跡 第二章 魔法少女リリカルなのは編≪リメイク≫(凍結中) 作:ミステリア
TINAMIで投稿されていたmake51さんの『魔法少女リリカルなのは ダメ人間の覚悟』がハーメルンでも見れるようになり、狂喜乱舞したりとアップダウンの激しい今日この頃のミステリアです。
まずは一言・・・すいません!気付けば一ヶ月以上オーバーしての投稿となってしまいました!
というのも、前回の話で『この物語の中で主人公にこの台詞は言わせたい!』と思っていた台詞を書いてしまったので、前話を書き終わった時点でどこか満足してしまった気持ちになり、書くのが遅れてしまいました。
本当にすいませんでした。
では、どうぞ。
――龍一郎サイド――
「く・・・っ・・・・」
刀の切っ先を向ける俺の闘気に押される様に、金髪の男はバラバラになったガードマンを流し見て、少しずつ後退りを始めた。
まぁ今まで自分の側が圧倒的に優勢だと思っていたら、いきなり使った妙な力で一気に手勢を減らされたのだ。
精神的に掻き乱された上に、いきなり出現した日本刀の切っ先を向けられれば、怯むのも納得はできる。
(さて・・・どう動く)
男に切っ先を向けたまま、俺はバラバラになったガードマンから一滴も血が流れていない光景に、例えではなく本当に人形にされてしまっているという事実に悲しみの視線を送りながらも、意識は外さずに相手の出方を伺う。
「ぐ・・・っ!お前達!2人でその餓鬼を倒し、女2人を連れて来い!1人は私に付いて来るんだ!」
がなり立てる口調の割に冷静な指示を出し、ガードマンを連れて遁走をはかる男に、俺は内心舌を打つ。
(此奴等を完全に戦闘不能にするには時間が掛かる。なら・・・)
俺は方針を決め、向かってくる2人のガードマンに刀を向け、オリジナルの斬魄刀を解放する。
「
俺の呼び掛けに応え、斬魄刀の刀身の中間部分が、吉良副隊長の持つ斬魄刀。侘助の様にグニャリと曲がりだした。
だが、吉良副隊長の侘助と同じように直角に二度折れ、カタカナの『ク』の字の様になる事は無く、刀身の切っ先が針の様に細長くなりながら、弧を描く様にカーブしていく形状に変化していき、最終的には綾瀬川五席の斬魄刀『瑠璃色孔雀』が拗ねた形態。『藤孔雀』の刃が分かれずに1つなっている様な形となる。
ショテル
元は盾を構えた敵に対して、その盾を避けて構えた者を攻撃する為に作り出された攻撃に重きを置いたエチオピア産の刀剣だ。
その刀身を右下に下げて下段に構え、俺は瞬歩で向かってくるガードマンの1人に肉薄し、左に切り上げる剣を一閃が男の体を捉えた。
しかし、まともに一太刀を入れたにも関わらず、男の身体には傷一つ付く事は無く、ガードマンは接近した俺に反撃とばかりに拳を振るう。
だがその振るわれた拳は俺に当たる事無く、空を抉るのみに終わった。
別に俺が避けた訳ではない。その証拠に、俺は斬撃を放った場所から一歩も動いてはいない。
しかしガードマンの拳は外れたのだ。
まぁそれは当然といえるだろう。
なにせ、俺の立つ場所と全く違う所に拳を振るったのだから。
そう。これこそがこの斬魄刀『蜃気楼』の能力。
実はこの斬魄刀は斬月や蛇尾丸。鬼灯丸のような直接攻撃系の斬魄刀に見えるが、実はその能力は藍染の『鏡花水月』や平子隊長の『逆撫』に近い能力なのだ。
その能力は『刀身を身体に当てた相手に、視覚による幻覚を見せる』事。
だから斬撃を受けたガードマンは見当違いの場所を攻撃しているのだ。
とはいえ、実はこの幻覚を幻覚だと認識するのは、冷静になればかなり簡単だったりする。
なにしろ幻覚をかけれるのは視覚1つのみの為、残りの五感。触覚・嗅覚・聴覚・味覚は幻覚にかかってはいないのだ。
だから頭を冷やして冷静になれさえすれば、違和感に気付くのはさほど難しくはない。
だが、今目の前にいるガードマンは話が違ってくる。
なにしろ金髪の男が自分の命令を聞くように作り上げた、自我のない存在となっているのだ。
視覚とは違う感覚を感じても、それを違和感として感じること事態が出来なくなっている為、気付きはしない。
というより、『気付く』という事自体が出来ないといった方が正しい。
(・・・)
見当違いの場所に拳を振るうガードマンに憐れみの視線を送った後に、俺は此方に向かってくるもう一人のガードマンに懐に再び瞬歩で入り込み、蜃気楼を一閃。
もう一人のガードマンも幻覚の世界へと送り込む。
「ふぅ・・・」
明後日の方向に拳を振るい、蹴りを放つガードマン達を見て息を吐き、月村達の元に駆け寄る。
「待たせたな。ちょっと待っていてくれ。今縄を切る」
そう言って蜃気楼を脇に置き、オケアヌスの輪からカッターナイフを取り出し、なるべく肌を傷つけないように月村の両の手首を纏めて縛っている縄を鋸のように少しずつ切っていく。
そんな俺に対し、月村は若干目を潤ませてどこか嬉しそうに「うん・・・有り難う」と返し、忍さんはやはり俺を警戒しているのか、どこか固い声で「一つ、聞いても良いかしら」と言ってきた。
「何か?」
「君はこの件が終わった後、どうするつもりなの?」
曖昧なその問いの内にある忍さんの本心に、俺は彼女のその目を見て気付く事が出来た。
(俺についての全てを話すのか、それとも何も言わずに去るのかを見極めたいって所か。
月村がいるから、疑いを表に出して聞けない。
だから曖昧な感じで聞いたという訳か)
自分達を助けてくれた者に対して疑いの気持ちを抱かなければならない。
そんな暗い部分を妹に気取られたくないと思い聞く姉に、俺は(大変だなぁ)と同情を抱きながら返す。
「全部を話すつもりなので、後で貴女の家にお邪魔させて貰おうと思っていますよ」
そう言った俺の言葉が予想外だったのか、忍さんは目を丸くして驚いていた。
だがやがてその表情を真面目なそれに変えて、「それなら、さっき逃げた男を追って」と告げた。
「あの男を逃がせば、きっとまた何かを仕掛けてくる可能性がある。それなら今この場であの男を絶対に捕まえなければいけないわ。
私達ならもう大丈夫。だから貴男はあの男を追い掛けて」
――それに、貴男の事は後で家で全部話してくれるんだから、逃げないでしょう――
そう目で語り、さり気なく俺に釘を刺してくる忍さんに、俺はフッと口の端を上げて苦笑し、「分かりました。ただ2人だけを残していくのは少し不安なので、『俺』を1人置いていきますね」と返す。
「え?」と俺の言葉の意味が理解できずに反応に困っている2人を余所に、俺は印を十字に組み、影分身の術を発動。
ボワンという独特の破裂音と共に、煙を伴ってもう1人の俺を出現させる。
「じゃあ、2人の護衛は頼んだ」
「おう」
手を挙げて気楽に応える分身体の俺に頷き、俺は目を丸くし、顎が外れんばかりに口を開けて呆けている2人に背を向けて、金髪の男が開け放って出て行った扉の向こうへと駆けて行く。
途中で2人の女性の驚愕の叫びが聞こえた様な気がしたが・・・・・・恐らく俺には関係の無い・・・事だろう・・・多分。
☆
――三人称サイド――
「はっ・・・はぁっ・・・」
闇に包まれているビルの一角。外にある非常階段からカン!カン!と靴が金属板を踏み鳴らす音を響かせ、荒い息遣いを吐き、金髪の男性。ヴァリアはガードマンを引き連れて駆けていた。
「くそっ、何なんだ・・・あの餓鬼は」
先程目の前に現れた少年。龍一郎の異質さを思い出し、忌々しそうに吐き出す。
まだ冬の寒さが残る外気によって吐息が白くなるのが、ヴァリアの苛立ちを更に増長させ金属板を打つ靴の音が徐々に大きくなっていく。
「くそっ!あの餓鬼さえ・・・あの餓鬼さえ来なければ・・・」
非常階段を下り終え、地に足を着けると同時に怨瑳の声を上げる。
「どうやら、『彼』は上手くやってくれたらしいね」
「!!」
突然前からかかった第三者の声にヴァリアの顔が強張る。
「だ、誰だ!」
がなり立てるヴァリアの視線の先にある闇の向こうから、2人の男性がその姿を現した。
「高町士郎に、高町恭也だと・・・何故此処に」
掠れた声を漏らすヴァリアに、恭也が一歩前に出て鋭く睨み付ける。
「やはり俺達の事は予め調べていたか。貴様が黒幕だな」
「そんな事はどうでもいい!何故ビルの中で戦っていた貴様等が此処にいるのかと聞いているんだ!!」
確信を含んだ問いと共に殺気混じりの視線を投げる恭也に怯んでいる己を誤魔化す様に怒鳴るヴァリアの言葉に、士郎はピクリと反応し「成る程。俺達の動きを監視カメラ辺りで見てはいたが、『彼』の登場に動揺してカメラの映像を確認する事が出来なかった・・・といった所か」と納得の様子を見せて頷いた後に、淡々とした口調で続ける。
「確かに俺達はビルのエントランスで戦っていた。だけどずっとその場で戦っていた訳じゃない。
途中で引いたんだ」
「なっ・・・何!?人形共は貴様等を追わなかったのか!?」
喚くヴァリアに対し、士郎は「人形・・・か」と哀しげな目をして呟いたが、直ぐに目の色を剣士のそれへと戻した。
「最初に『其れ』と戦った恭也の話と、実際にエントランスの中で自身で戦い、戦っている相手が自我も痛覚もない存在だと確証する事が出来た。
だから俺は恭弥に撤退を提案した。
自我がないのであれば、命令された事以外の行動は出来ないと思ったからだ」
「な・・・っ!」
狼狽していたヴァリアの動きが止まり、その口から出た驚愕の呻きが、士郎の推論が当たっている事を物語っていた。
「ビルから出た時点で俺と父さんを追わなかった所を見る限り、おそらくお前の命じた内容は『上の階に行こうとする者を倒せ』だろう。
自我を持たせなかったのが災いしたな」
士郎の言葉を恭也が引き継ぎ締める。
「っ・・・ぐ・・・っ!だが何故だ。何故引くという選択を取った・・・」
自らの痛恨のミスを指摘され、ヴァリアは悔しさに歯噛みし、唸る様に問う。
「途中で窓ガラスが割れた音がしたから、連絡通り『彼』が上の階に直接入ったと思ったからだ。
だから一度引いて、黒幕が外に出てくるのを待っていたという訳さ」
「随分と信用している様だな・・・あの餓鬼が返り討ちに合うとは考えなかったのか?」
ヴァリアの言葉に、ビルを出る際に士郎から龍一郎の事を『彼』とか『頼りになる助っ人』としか伝え聞いていない恭也が「あの餓鬼?」と怪訝な反応をして小首を傾げたが、一先ず目の前にいるヴァリアを捕らえる事が先だと思い、思考を切り替える。
「全然。『彼』なら大丈夫だと思っていたよ」
言い切って足を一歩前に出す士郎に、ヴァリアは押される様に苦渋の表情をして反射的に一歩下がるが、やがて顔を歪めて邪悪な笑みを浮かべた。
「そうか・・・なら!」
手元にある手摺りを利用して大きく飛び退き、ガードマンに指示を出す。
「其処にいる二人の男を倒せ!」
叫ぶと同時に、ヴァリアは足の指先に力を込め、一気に駆ける事が出来るように準備をする。
(という事は、まだエントランスの中には人形共が大勢残っている。
此奴で少しでも2人を抑えて、その隙にエントランスに行けばなんとかなる!)
ヴァリアはそう思っていた。だが、その考えは――
ザンッ!!
ガードマンの身体に走った一閃の輝きと共に響いた斬撃音によって脆くも崩れ去る事となった。
ガードマンは士郎と恭也の立つ位置とはまるで違う方に顔を向け、歩みを進め、何もない明後日の所に拳を穿ち、蹴りを放つ。
「な、何をしているんだ!早くこの2人を「無駄だ」っ!」
士郎とヴァリアには聞き覚えがあり、恭也には聞き覚えの無い第三者の声が、ガードマンに叫ぶヴァリアの声を遮った。
その声に反応し、恭也が警戒を露わにして構えるが、その夜の闇の先にいる者の正体を知る士郎が手を挙げて息子を制する。
そしてカンッ・・・カンッ・・・と非常階段を踏み鳴らし、闇の中から右手に斬魄刀・蜃気楼を携えた少年。龍一郎が姿を現した。
「子供・・・だと?」
恭也が思わずといった様子で呟く。
まぁ、目の前に現れた存在が末の妹と同じ位の少年なのだから、そう反応するのも無理もないだろう。
「やぁ龍君。忍ちゃんとすずかちゃんの2人に付いているかと思っていたけど、こっちに来たんだね?」
「そうなんです。最初は士郎さん達が来るまで2人の護衛をしようと思っていたんですが、忍さんから
朗らかに問う士郎に、気軽に返す龍一郎。
そんな場違いな雰囲気を出す2人に全く着いていけずに呆然とする恭也とヴァリアを余所に、2人の会話は続いていく。
「でも大丈夫かい?2人をそのままにしておくのは少し危険だと思うよ?」
「御心配なく。ちゃんと影分身体を置いてきたので、何かあっても大丈夫ですよ」
「それなら良いけど、いいのかい?見せても?」
「もう遅いですよ。後で忍さんの家で、全部話す事を約束してしまったので」
「自業自得だね」
「まぁ、後悔はしていませんよ」
「それなら良「動くなあぁっ!!」」
満足げに頷く士郎の言葉に割り込み、ヴァリアが何かを握り締めた手を掲げて吠えた。
「貴様等全員動くな!動けばこのビルごと破壊するぞ!」
「爆破すれば、これだけビルの近くにいるお前もただでは済まないぞ」
冷静に指摘する恭也に、ヴァリアは明らかに
正気だとは思えない程に目を血走らせて「うるさいっ!!」と叫び、手に持っているボタンを見せつける。
「いいか貴様等!まずは武器を捨てろ!特に餓鬼!まず貴様から先に捨てるんだ!!」
がなり立てるヴァリアに言い聞かせても無駄だと悟ったのか、龍一郎はふうっと息を一つ吐いた後に、右手に携えた蜃気楼が空気に溶け込むように姿を消した。
それを見たヴァリアは勝利を確信したように破顔し、「さあ!お前達も武器を捨てるんだ!」と恭也と士郎に顔を向ける。
だがヴァリアは気付いていなかった。
蜃気楼が姿を消す前に、龍一郎の唇が小さく、しかし確実にこう動いていた事に。
――――卍解――――と
やっと二本目のオリジナル斬魄刀を出す事が出来ました。
蜃気楼の設定は、無印前が終わり(あと一話で終わらせる予定)無印に入る前に、この世界での主人公設定と一緒に投稿する予定です。
お楽しみに。
あと、今話でヴァリアを追い詰めた時の士郎と恭也に『わざわざ敵に向かってこんなに丁寧に説明するはずがない!』と違和感を覚える読者の方も見えると思いますが、どうかご了承ください。
何しろ説明をナレーションにすると、龍一郎がヴァリアに追い付くのがあまりにも早すぎると思ったので・・・。