今回は三人称視点です。
「大丈夫か?アル。」
先ほどまで話していたのがアビドスの生徒でこれから襲撃を仕掛ける相手だということを教えられたアルはショックを受けていながらも依頼を為そうと雇った傭兵がいる場所に四人と一緒に向っていた。そんな様子を見ていた陣は心配を顔に少し出して声をかけた。
「えぇ、大丈夫よ。にしてもなんて偶然なのかしら、まさかあの時に会話をしていたのがアビドスなんて。」
「(偶然とはいうが可能性は高かったんだよなぁ。まぁ、特徴を伝えていなかった俺のミスか。)…本当に大丈夫そうか?今ならアビドスの者たちに伝えて依頼主を騙すよう演技することも可能だが。」
「それは駄目よ。大物クライアントからの初めての依頼なのに私情で騙すようなことなんてアウトロー以前に人として駄目な行為よ。」
「…それもそうだな。
「?陣、あなたも傭兵を雇ってたの?」
「雇ってないぞ。」
「あれ、でも陣おばあちゃんさっきこいつらって…」
「あぁ、それはこいつらの事だ。そういえば、紹介してなかったな。」
陣は歩みを止めずに便利屋の四人の方を向き、背負っていたスナイパーライフルと懐からハンドガンを取り出した。四人はまだよくわかっていない様子だったが陣はそれに構わず、少し嬉しそうに話し始めた。
「いくつかの依頼やアル達と戦った経験を元にアップデートした。と言っても良いかな。それがこの二つの武器、ハンドガンの『クズシ』とスナイパーライフルの『イヌキ』だ。」
「武器に名前を付けるのは分かるんだけど、なんで人のように扱っているの?」
「そうしないと後々面倒なことになるからだ。」
「面倒なこと?武器を人のように扱わないと何かまずいのかしら。」
「まずいということもないんだがな。これは俺が特別なだけな気がするが、俺が自ら名付けた武器は後々意思を持つことが多いんだ。」
「…へ!?(武器に意思ってどういうことなの!?あの言い方からして陣は複数持っているの?)」
「(やっぱり反応が良くて面白いな。)それで、人のように扱うのは名を与えられて意思を持つのならそれは人と同じであると考えているからだ。それに、これには基本的にメリットしかないからな。」
「メリット…ですか?」
「あぁ、武器の耐久力が大幅に上がることが多い。もっと言うと、武器が根性で攻撃に対して耐えることもあるんだ。」
「武器が、根性?」
「意思を持った影響だな。壊れてたまるか、という強い意志が武器の耐久を大幅に上げているんだ。」
「本当にメリットしかないの?メリットしかないなら何にでも名前を付けそうだけど。」
「デメリットは確かにあるが雑に扱ったら攻撃されるぐらいだぞ。特に問題でもない。それと名前を付け過ぎないのは必要が無いからだ。たくさん名前をつけて使わないなんて武器を使用する者として駄目だろ。(それに必要最低限にしないと手入れの時間とか膨大になるしな。それぞれの成長について俺も知りたいし、一つ一つの時間をあまり減らすと詳しく知れないかもしれない。それに俺が名前を付けてきた数も今じゃ膨大だしなぁ。今回、名付けたのは別の目的もあるが…。)」
「へぇ。それって私達も出来るの?」
「あっ、あー…それは…うん。出来るかもしれないが…いや、神秘もあるしあるいは…」
「難しいことなのかしら。」
「いや、あくまで意思を持つことがあるのは多いだけだし、そういう話はこっちで聞いたことないからな。こいつらも意思を持つかは確定してないし、その上でアル達が持つ武器が意思を持つかどうかは分からないんだ。まぁ、アル達の武器を見ている感じ手入れもしっかりしているから心のなかでそう思うぐらいはやってみたらどうだ。結果はどうなるか分からんが物をよく見て大切に扱うのは悪いことではないからな。」
陣の言葉を聞いてアルは少し期待を込めながら自分の
「少し遅くないか?」
傭兵の一人がアル達に対して不満気に呟く。その発言に対してハルカが殺気立つがアルはハルカをなだめて傭兵達の方に向く。少し罪悪感を表に出しながらも傭兵達の方に向いて軽く謝罪をして、アビドスに向かうことになった。その時、陣はある傭兵の方を向いていた。
「少し良いですか?」
「ん?なんだ。」
「ここにいる皆さんは知り合い同士ですか?」
「…確かに一緒に仕事をしてきた奴もいるが初めて見る顔もいるなぁ。」
「…あの生徒とは知り合いですか?」
「…ん?あいつとは前の依頼で一緒に行動したことがあるが…それがどうしたんだ?」
「いえ、それなら良いのですが…それってミレニアムかトリニティの近くの依頼ですか?」
「えっ…あぁ。確かにミレニアムの方で依頼があったが、どうしてそんなことを聞くんだ?」
「…いえ、ありがとうございます。貴重な情報を得れました。」
陣は少し頭を下げ、話していた傭兵にチップを握らせた。傭兵は思わず陣の方を見るがそれに対して人差し指を口に当てて、目で圧をかけながら黙らせた。アビドスに向かう陣はまるで能面な表情だったがそれをこの場で見た者は誰もいなかった。
アビドス高等学校の前ではセリカが便利屋を見るなり怒りをあらわにしていた。
「誰かと思えばあなた達だったのね。少しサービスしたのにこの恩知らず。」
「うっ、それは…ってサービス?あのラーメンって何かサービス受けていたの?」
「あっ、やっぱり。」
「そうだな。何も言ってはいなかったが多めに盛ってくれてたぞ。まぁ、粋な計らいってやつだな。ここで、それについて言及するのは無粋な気もするが…。」
「あはは、その件はごめんね。でもこっちも仕事だからさ。」
「残念だけど、公私ははっきり区別しないと。受けた仕事はきっちりこなす。」
「…なるほど。仕事っていうのは便利の事だったんだ。」
「もう!学生なら健全なアルバイトもあるでしょうし、そちらの大人は普通に働けばよいでしょう?」
「ん?それは無理だ。」
「なぜですか!」
「こちらで使えそうな身分証を持っていないからな。外から来たことは前に伝えたはずだが…今はそんなことどうでも良いか。それに私はこの便利屋という居場所気に入っているんだ。」
陣はそう話しながら『クズシ』を取り出しノノミの頭と胸部に発砲した。
「っ!?ノノミちゃん!」
それに警戒していたホシノが反応してノノミの前で盾を構えるとほぼ同時に金属音が響き渡る。発砲した陣本人は顔色を変えなかったが周囲は少しざわついた。いの一番に焦りながらアルが陣の方に顔を向ける。それと対照的に陣はいつも通りの表情でたんたんと警戒し続けるホシノを見つめていた。
「まぁ、そんな簡単に当たってはくれないか。」
「ちょっ、ちょっと陣。」
「あぁ、すまん。アル社長。不意討ちには失敗してしまった。次は成功させるつもりだがあの盾を構えているピンクの少女はこちらが受け持って良いか?あの少女に傭兵をいくらあてがっても無駄だと思うからな。」
「そんなに強いの?」
「そうだなぁ。俺と戦った時のアル達よりも今の状況だったら強いな。」
「そう…。陣、あなたは勝てるの?」
「とりあえず負けることは無いとだけ断言しよう。」
「…助けが必要ならすぐに呼びなさい。」
「あぁ、その時が来るのなら頼るとしよう。」
陣はアルからホシノの方に目を向ける。陣の目は何も変わっていないがホシノの目は険しさを増していた。
「…それにしても真面目なんですね。会話の途中に撃たれると思いましたが…。私はあなたの大切な後輩に攻撃したんですよ?」
「…あなた達の目的は?」
「?それを答えてあなたは信じるんですか?大体察しているから校門の前に集まっていたんでしょう。それに私が答える義理もないですしね。っで、あなたはどうするんですか?無益な会話を続けるんですか?私はそちらでも良いですよ。アル社長たちの活躍も見れますし、あなたが行動しないだけで私達の依頼の成功率が跳ね上がりますからね。」
「そう。ならちょっと痛い思いをしてもらうよ。」
そうして、ホシノと陣の戦いが始まった。ホシノは言葉を終えると同時にショットガンを構えるがそれよりも早く陣が『クズシ』の引き金を引く寸前なのを確認し即座に盾を構えて乱射した。直後、ホシノの盾を持つ腕に衝撃がわずかに走るが特にひるむこともなかった。放たれ続けているショットガンの弾を陣は冷静に避け続けながら『クズシ』の引き金を引き続け、ホシノの乱射が少し収まった瞬間に懐から催涙弾をいくつか取り出して投げつけた。ホシノは空中に投げられたそれを全て撃ちぬいて両者の間に催涙ガスがあふれだした。
「っ!」
ホシノは目を軽く見開きそれが催涙ガスだと気づくと届かない場所にバックステップをする。次にどのような行動をするのか警戒しながらショットガン構えてすぐに発砲としようとするが、催涙ガスはホシノの身体を包み込もうと迫っていた。迫る催涙ガスに気を取られてしまったホシノに対して陣は『イヌキ』を構えて引き金を引いた。放たれた弾丸によりホシノの眉間を正確に捉えてその場から数メートル吹き飛ばされた。
「思っていたより硬いが…もう少し威力を上げてみるか?」
砂埃が舞う中少し痛そうにしているがそれだけなホシノを陣は少し感心しながら『イヌキ』の改良を考えていた。
「随分余裕だねぇ。おじさんちょっと本気出そうかな。」
「本気?
陣はホシノの発言に訝しみながらも苛烈になっていく攻撃を避け続ける。その中で『イヌキ』から『クズシ』に武器うぃ切り替えて戦闘を続けた。陣の放つ弾丸も先ほどの一撃からホシノは警戒し避けたり、盾で弾いたりとほとんど当たることもなくなっていった。
「なかなか手強いわね。」
『まぁ、強く無かったらたった5人で学校を維持できるわけないだろうからな。』
アルが想像以上に手強いアビトス対策委員会の驚き思わず零した呟きに
「本当に便利だね。これ。」
『この札は元々こういう時用に作成した物だからな。それとムツキ爆弾をもう一回投げてくれ。おそらく撃ち落とされるが、撃ち落とそうと相手は爆弾に目を向けるからな。そこをハルカとアルが攻撃してくれ。攻撃をしやすいよう傭兵を上手く使い死角を生み出す立ち位置を指示するのはカヨコが判断してくれ。』
「えぇー、ちょっと指示が適当すぎない?」
『すまん。こちらも
「はい。アル様の勝利のため死ぬ気で頑張ります。」
ムツキが陣の言った通り同じ場所に爆弾を投げるが前衛にいたシロコが撃ち落とす。それをカヨコが見てアルとハルカに指示を飛ばした。傭兵と一緒にハルカがシロコに突っ込みアルはアビドス対策委員会から見て死角が出来るところに移動してハルカと傭兵に当たらないように狙う。
”シロコ後ろに下がって。3時の方向からアルが狙ってる。ノノミはこっちに来ている傭兵を蹴散らして、セリカはシロコと協力してハルカを抑えて”
「はい。お仕置きしますよー。」
「ん。セリカ。」
「うん。絶対あいつらの好きにはさせないんだから。」
ノノミのマシンガンの掃射により傭兵達は何人か倒され、倒されなかった傭兵も足を止める。その中でいくつか銃弾に当たりながらハルカは足を止めない。ショットガンを乱射しながら鬼気迫る表情で迫ってくるハルカに対して厄介そうな表情を二人は見せるがそれと同時にアルのいる方向に目を時々向けて注意している。その為、アルも避けられないようなタイミングでなかなか撃てずある種の膠着状態に陥っていた。
『…予想していた展開でもあったがどうやってアルの場所が分かったんだ?場所的に先生から見えない筈だが…先生には俯瞰して戦いを把握できる能力を持っているのか?普通の人間に見えた気がしたが勘違い?いや、どちらかと言えば何かしらの道具でそれが出来るようになっているのか?厄介だな。』
「珍しいね。動揺してるの?」
『動揺はしてない。ただ、先生の可能性に興味が湧いてしまってな。先生がいなければこの連携で倒せなくても優勢な状況に持って行けたが…愚痴を言っても仕方ないな。もう少し陰湿に攻めるとしよう。アル、あの飛んでいるドローンを狙って撃ち落としてくれ。アビドス対策委員会の攻撃手段を減らす。可能であればシロコもしくはセリカの行動を制限できるよう二人の身体に当たるようにするか、足元の近くに堕ちるようにしてほしいが出来るか?アル。』
「えぇ、それぐらい簡単に出来るわ。」
『流石だな。…カヨコに少し聞きたいんだが
「怪し動き?会ったこともない人しかいないけど、傭兵の中に私達の事を恨んでる組織の組員でもいるの?」
『あぁ、違うんだ。俺が何となく嫌な予感がするだけだ。気にしすぎかもしれないが
「
『そういうやつらだったらまだ良いんだが…。まぁ、この件に関しては俺個人の問題だと思ってくれ。気のせいの可能性の方が高い筈だ。…うん、すまん。考えても無駄なことを教えてしまった。今は依頼に集中しないとな。』
「そう。…この依頼が終わったら私たちに説明よろしくね。」
『っ、あぁー。…そう、だな。必要なことだよな。あぁ、説明すると約束しよう。いずれ関わって来るのは確定しているし知っといた方が良いしな。…うん。』
カヨコ達はいつもと違いものすごく歯切れの悪い様子の陣に対して困惑しつつも、目の前のアビドス対策委員会の相手に対処し続けた。一方、ホシノは普段ののほほとした様子と違い苛立ちが現れ攻撃も苛烈になっていく。陣はその様子を見ながら攻撃が途切れている隙に足元へ手榴弾や催涙弾を転がしたり、わざと自分の足元に落として顔面に当たるように蹴り飛ばしたりしていた。これらに反応して避けるホシノに合わせて『クズシ』でショットガンを持っている手や目を正確に狙い撃っていた。何度かこの攻撃を受けてホシノは痛みを感じながらも対応し始めれて慣れてきたころだった。見計らったように陣は偽物も混ぜて、それに騙されれば距離を詰めて『イヌキ』の銃床で首に当たるように振りかぶる。それに対してホシノは少し慌てながらも間に手を挟んで防ごうとしたが防ぎきれずに吹き飛ばされた。陣は飛ばされ体制が立て直される前に『イヌキ』で追撃した。
「…頑丈過ぎませんか?キヴォトスの生徒の耐久力を軽視し過ぎましたかもしれませんが神秘というものは奥深いものですね。」
「余裕そうだね。そろそろおじさんの攻撃にも当たって欲しいんだけど、ケチな大人なんだね。」
「もう少し凝った攻撃をしてくれれば当たるかも知れませんよ?さっきから攻めが雑になってませんか?当たらなくて苛つくのは仕方ありませんがどれだけ驚異的な攻撃も当たらなければ意味はありません。もっと工夫して攻撃しましょう。まぁ、その攻撃にも当たる予定はありませんが。」
「…。本当に苛つかせる大人だね。」
再度、ホシノが陣の投げる手榴弾を撃ち抜きながら攻め始めるようとするとアビドス高等学校の鐘が鳴った。
「…差しでの勝負はここまでにしておきましょうか。」
「…は?」
言い終えると同時に陣はホシノにさも当然のように背を向け便利屋68と他のアビドス対策委員会が戦っている場所に走り出した。その光景を見たホシノは軽く固まってしまったがすぐに背を向ける陣にショットガンを発砲しながら追いかけた。
「アル社長どうする?」
「陣!?聞いて傭兵がもう定時ってことで帰っちゃうのだけれど…」
「そうだな。これだけの傭兵がいれば勝てると思ったんだが…なかなか上手くいかないもんだ。まぁ、相手もなかなか消耗してるし働きは十分にやってくれたから結果は十分だが。」
「どっどうしましょう。まだ、こっちも余力がある。けど、あなたが戦っていた子もいるし…。」
「…」
ふとした拍子に陣は顔をしかめる。アルは今まで喋っていた陣が黙ったことでに違和感を覚えていたがそれだけホシノが加わったアビドス対策委員会の強さは相当なものなんだと不安を表に出さずに繕った。しかし、陣は黙ったまま何も攻撃しようとしなかった。アルを始めとしてカヨコやムツキ、ハルカも陣に話しかけたが何も話さずに顔をしかめたままなので困惑し始めた。
「ん。動きが止まっている。今が攻撃のチャンス。」
「待ってシロコちゃん。何か罠を仕掛けているかもしれないからすぐに攻撃するのは良くないよ。それにあっちも困惑しているみたいだし。」
「ホシノ先輩?そんなにヤバい相手なの?いつもの先輩らしくないけど。」
”とりあえず傭兵も帰ってるみたいだし、皆は直ぐに動けるようにしていて。”
「ねぇ、陣おばあちゃん?もしもーし。…どうするアルちゃん?凄い表情のまま固まっているけど…。」
「そっそうね。どうしましょう。」
「とりあえず、この場から一旦安全な場所に引っ張らない?」
「それなら私が陣副社長をお連れします。」
「お前だな。」
「え?」
急に動きだした陣は冷めた目でアビドス対策委員会と戦う前に会話した傭兵を『イヌキ』で撃ち、その撃たれた傭兵は派手に吹き飛ばされ倒れた。
色々あって遅れてしまいました。驚きなのはブルアカでゲヘナ編が2章分、オデュッセイア編が1章分更新されるとは…。今回、戦闘の決着をどうするか悩みに悩んだ結果こうなりました。ちなみに陣は自分の武器の名前は深い意味を持たせず、分かりやすく呼びやすいという考えからこのような名前を付けて呼んでいます。次は依頼を達成かも?
~視点と最初に書いているが同じ話で視点を変えたほうが良いか。
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変えない