場は静寂に包まれた。陣の突然の行動に誰も理解が追い付かなかったからだ。対策委員会側からしても便利屋68は傭兵と一緒にこちらに攻めていたはずなのにその仲間を撃ったのだから当然として、便利屋68としては陣が撃ったことも驚きだった。しかし、どこか検討はついていた。陣が札を介してカヨコに聞いていたことは
「まだ、続けるのか?」
陣は『クズシ』を傭兵に向けて発砲して近づく。
「お前はもっと騒がしい奴だろう?乱入してくるかと思っていたぞ?」
陣は『イヌキ』で頭に向けて数発発砲してさらに近づく。
「なぁ。自分勝手に何を楽しもうとしているんだ?」
陣がさらに足を進めると倒れている傭兵を起点として白い光が広がった。その光は瞬く間にその場ににいる全員を包み込み、その後すぐに一帯は爆音が響き渡った。
『…い、…せい、先生大丈夫ですか?』
”…うっ、いったい何が起きたの?”
先生が目を開けると周りにはホシノたちが倒れていてその上には焦げた小さな紙が複数枚落ちていた。さらにその先の便利屋68の4人も倒れていてホシノたちよりも多くの焦げた紙が落ちていて、陣と傭兵の生徒が立っていた場所は大きなクレーターを作っていてそれ以外何も残っていなかった。
”アロナ、皆は無事なの?”
『はい。幸いなことにアビドス対策委員会の皆さんも便利屋68の皆さんもあの光に驚いて気絶してるだけで無事です。ただ、その爆発を起こした生徒さんと陣さんがどこにも確認できず、もしかしたらあの爆発に巻き込まれて…』
”そんな…”
先生はあまりにも命を落とした存在がいる状況に呆然とする。確かに先生から見て陣はあまり良い大人に見えなかったが急に命を落として良いような存在ではなかった。アビドスの生徒とは敵対していたが便利屋68の4人との関係は決して悪いものではなかった。それに、あの傭兵の生徒も陣が何かを知っているようだったが決して自爆して命を落とすような存在ではない。生徒の死という現実に先生の視界がぼやけ始める。
「はぁ。流石に見てられない。俺の降参だ。」
先生が顔を勢いよく上げると申し訳なさそうな顔をした陣がいた。少し髪の毛の毛先が焦げていたが無事な陣に思わず腕をつかんだ。それに対して陣は何も言わずに先生を見つめる。
”大丈夫なの?髪が少し焦げているけど…”
「俺は無事だ。本当はこんなことはしたくなかったんだが
”無事なら大丈夫だけど…、あの生徒は…”
「それは本人に聞いて欲しい。」
陣は目を鋭くし誰もいない場所に顔を向ける。
「いい加減に生徒の真似を辞めろ!今回は俺の負けで良いからさっさと姿を見せやがれ!」
「アハハ!そんな怖い目で見ないでよ~。ちょっとしたドッキリに対して怒りすぎじゃ~ん。」
いつの間にかぼろぼろの服を着たさっき陣に撃たれていた傭兵の
「いいね。いいね。いいね~。最高だよ。シャーレの先生。ほっ、本当に笑いが止まらないほどいいリアクションだよ。アハハ!やっぱ、ドッキリは最高だと思わない?陣。」
「…はぁ。誰かが死んだかと思うドッキリのどこが最高なんだよ。」
「絶望から安心の安堵の笑いが生まれるんだよ~。これを最高と言わず何が最高なんなのさ。」
「趣味が悪い。…とりあえず、先生。死者はおろかけが人もいない。精神的に苦しい思いを負わせたのは申し訳ないが一旦生徒をこの校舎の中に運んで良いか?この馬鹿のせいで全員気絶してしまって生徒は何も状況を分かってないだろう。やらかしたのはこいつだが同意してしまった俺は説明責任を負わなければならないだろうしな。」
”うん。分かった。陣が便利屋68の皆の事を大事にしているのは分かっているし。だけど、もうアビドス対策委員会の皆に手を出すのは辞めてくれない?”
「…アルに伝えておくし俺個人としては手を出さない。まぁ、もう今回の依頼も続行できないし…クライアントには誤魔化すか。アルの期待に応えたかったがあの子自身も少し苦しそうだったしなんて伝えるか考えておくか。」
”それじゃあ。みんなを手分けして運んで…”
「んー?そんな面倒な方法よりも簡単な方法があるよ。」
「…お前、
「えっ!?説明いるの?面倒だしあなたに任せたいんだけど…。」
「ちっ。何で俺がお前の勝手にやったことについて説明しないといけないんだ。面倒なら普通に運べ。」
「はぁ~。分かったよ。仕方ないな~。」
ぶつくさに文句を言いながらもその大人は先生と陣の方を見ながら片腕を上げる。その姿を見て陣は頭を抱えて溜息を吐き、先生はその行動に困惑していた。
「さぁ、奏でよっか。」
言葉を言い終えるとその大人は腕を指揮棒のように動かしながら笑う。先生が何をしているか尋ねようとするがその前に気絶していた生徒が立ちあがる。
”皆、大丈…”
『待ってください。先生。
アロナに指摘され先生は生徒の方を見てみると立ち上がった生徒のヘイローは消えたままだった。しかし、それだけで目は開いているし生徒たちはアビドス高等学校の方へ歩いていく。困惑して慌てている先生をよそに陣は冷めた目で見ていた。
「相変わらず読みにくい思考だ。…本当に面倒なことになりそうだし、こいつは本当に…」
”ねぇ。どうなってるの!?”
「…簡単に言うと催眠術のようなものだ。」
”催眠術?”
「そう。あいつの得意なことだ。正確に言えば違うのだけだが…まぁ、詳しく説明するのは今は辞めておこう。とりあえず、運ぶ手間は無くなったのは事実だしそこは感謝?しておけばよいのではないか?…催眠術を使うやつに感謝するとうのはおかしいことな気もするが…。そこは先生の判断に任せよう。」
”分かった。教えてくれてありがとう。”
「とりあえず、校舎内にいる生徒の一人も気絶しているしその生徒を起こすか。気付け薬は一応持っているし…。」
”本当に皆が怪我しなくて良かった。”
「…念のためにと思ってやったが正解だったな。」
”うん?何か言った?”
「あぁ、今後の説明について考えていたことが少し漏れてしまっただけだ。それより早く生徒たちを起こさないとな。」
陣はそれだけ言うとアビドス高等学校の方に向って走っていった。その陣の背中を追いかけるように先生も校舎に向かって走った。
「おそかったねぇ~。お二人さん。皆、とりあえず適当な席に座らせといたよ~。」
”???”
「お前は相変わらず好き勝手にやるな。…本当に突拍子がなさすぎる。」
「あぁ、そうだったね。先生は辛い物は好き?」
満面の笑みで先についていた大人は小皿に盛り付けていた
「おい。お前の行動のせいで先生が固まっているぞ。どうするつもりなんだ。」
「とりあえずなんか食べさせてみちゃえばよくな~い?何事も食べないと始まらないでしょ。」
「…とりあえず、生徒を起こすか。」
「OK~.Wake up!!!」
「なぜ、英語で…。」
無駄に発音の良いその大人の声と同時に片腕を振り上げると席に座っていた生徒たちのヘイローが輝く。意識が戻った生徒たちは自分達がなぜ教室にいるか驚き周囲に中華料理があることにさらに混乱していた。
「はいはい。注目~。驚いている皆~元気~。あたしは元気だよ~。」
「ちょっと、あんた誰よ!」
「おっ。元気がいいね~。そこの猫耳ちゃん。あなたの言う通り自己紹介とかしてなかったしそこから始めよっか~。」
その大人は一番前にある机の上に立ちポーズを決めながら生徒を見回して笑顔で宣言するかのように自己紹介を始める。
「あたしの名前は睦月 紫(むつき ゆかり)。普段はミレニアムでお世話になっている大人だよ~。あたしも勝手にあだ名付け呼べるからね。どう呼んでもらっても構わないよ~。あたしの指針は皆で笑顔になりながら楽しく過ごそう~。あっ、それとあたしも面白そうなことがあったら勝手に参加するからその時はよろしくね。ほらほら陣も陣もあたしみたいにじこしょうかいしよ。」
「私の名前についてはすでに知っている者しかいない。わざわざ無駄なことをするつもりはない。…というか、さっさと机から降りろ。その机はアビドス高等学校の物でもあるし、そもそも何で机の上に立つんだ。」
「もう。相変わらず真面目なんだから。ユーモアが足りないよ。ユーモアが。そんなんだから初対面の印象あたしたちと比べて悪いんでしょ。」
「お前なぁ。ユーモアにも限度があるというのが分からんのか?それともあれか、能天気なお前には周囲が不快に思う行為もユーモアなのか?」
「お~、ユーモアの欠片もない陣が言っても説得力がないねぇ~。もしかしてあたしのように生きれないことに対しての嫉妬でもしてる~。めっちゃ醜くて面白~い。」
「思ってもいないことを言うな。それに俺がお前のような生き方をしても気味悪がるだけだろ。」
「正解!!だってあんなに自分の生き方に対して執着してる陣が急に生き方を変えるんだよ。気味悪いというか不気味だし…何より超面白い。
「…趣味が悪い。俺から見ればお前のような生き方も大概だと思うがな。いっそ憐れみを感じるぞ。俺も周囲から見ればそうかもしれないが…。まぁ、類は友を呼ぶとも言うしそうなんだろうな。」
「アハハ!あなたがそんな運命的なことを言うなんて明日はこの星が終わっちゃうかもしれないねぇ~。どうせ滅ぶんなら爆破でもする?いい音を奏で笑顔で終わろうよ。」
「…そうだな。どうせ終わるんならそういうのも良いかも知れんな。俺的には終わるのなら静かに一瞬で滅んだ方が好みなんだが。爆破か…ふむ。星の中心に埋め込んで爆破するべきか…それとも、星の表面を覆いつくすように一斉に爆破させるか…。悩ましいな。まぁ、苦しみは負わない方が良いだろう。どうせ終わるなら希望も絶望も感じないように、な。」
陣と紫の雰囲気が変わらない。語っている様子は冗談を言い合ってるようにも見えるがあまりにも自然に話す内容はとても物騒で会話に入り込もうとしても誰も入りきれずにその話を続けていた。そんな様子を見て紫は噴き出す。
「ありゃりゃ。皆驚いてるね~。もしかして冗談を信じちゃってる?世界はまだ終わらないし心配しすぎだよ~。」
「それについては紫に同意だな。終わりが来るのはいつも突然。命が短い者にとってはそんなことを考え無いで生きた方が良いに決まっている。終わりに対して恐怖を抱き続けるよりも、な。」
「そうそう。そんなことより皆、せっかく作ったんだからあたしの中華食べてよ~。味は保障しちゃうよ。」
「本当だから少し腹立つな。味が良いからこそ。冷めてしまったら勿体ないと感じる。本当になんでこんなに…。」
「黙って味わって。」
「んぐっ!?」
陣の口にレンゲで掬っていた麻婆豆腐を紫は突っ込んだ。陣は笑っている紫を軽く睨みつけながらもレンゲで掬われた麻婆豆腐を咀嚼した。レンゲを持っていた手を離して手を裏に回して身体を揺らしながら紫は笑い続ける。そのすぐに後、食べ終えた陣は未だ身体を揺らし続ける紫を鬱陶しそうに押しのけ周りに目を向けた。意外そうに見る視線があり少し気まずくなった陣はどうでも良さそうな顔をしながら紫の中華料理を食べに行った。
「さて、陣も食べ始めたし皆も食べて食べて~。味は保障するよっ。質問は食べてから答えてあげるからねっ。」
紫は再度ここにいる生徒たちと先生に自分で作った料理を笑顔で勧める。その勢いに押されて皆で紫の作った料理を食べ始めた。いささか強引に勧めてくる紫に対して困惑を感じたり、反感を買ったりしていたがその料理は好評で美味しそうに食べている皆を何とも言えない表情で陣は見ていた。
今回で二人目の主人公の名前が出ました。ちなみに本当はパヴァーヌ編で登場させようと思っていましたがこのキャラクターがここで乱入しても何もおかしくないなと思って登場させました。他にも主人公同士の会話を書きたいという気持ちも結構ありましたが…。ちなみに主人公は三人登場させる予定で三人目もアビドスで登場させる予定です。次は主人公達自身についての質疑応答かも?
~視点と最初に書いているが同じ話で視点を変えたほうが良いか。
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変える
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変えない