「立派な事務所だな。」
陣は目の前の便利屋68の事務所を見て、少し感心していた。この少し前アルは依頼の犬が見つかったことをムツキ達依頼人に報告してから陣の事を紹介したいというので陣は準備が出来次第呼んでくれと外に待つことにしていた。陣はアルが報告している間、情報を洗い直していた。時折、扉越しにどのような会話が繰り広げられているのかを確認し、顎に手を添えて考え込んでいた。そして、ある程度時間が経つとまた観察を再開した。それを何度か繰り返していると
「入ってきてくれるかしら。」
「(まとまったのか。)あぁ。」
アルの呼ぶ声を聞いて陣は静かに扉を開けた。そこにはアル以外に四人いてその内の一人に目を向けた。
「この人がこの子を捕まえてくれたのよ。」
「あなたが、本当にありがとうございます。コロンを捕まえてくれて。」
「たまたまだ。それにお前がしっかり育てたから捕まえられたというのもある。」
「えっ、それはどういう。」
「?その犬がここまで警戒心なく私に近づいたのは大切にされていたからだろう。私は元々動物に好かれなくてな。警戒心が高い動物は私を見て逃げる。しかし、その犬は私を見て逃げぬどころか触っても大人しくしていた。その性格が元々そうだったとしてもお前が大切にしていたんだからその性格が維持されていた。違うのか?」
陣は首を少しかかげながらそう依頼人に問うた。それは何を当然のことを聞いているんだと行動で示していていた。その顔を見て依頼人は顔を赤らめた。そこまで褒められとは思っていたからだ。依頼人はふと陣の顔を見る。赤と青の綺麗なオットアイは依頼人をじっと見つめていた。依頼人は綺麗な銀髪とその瞳を見て見とれてしまいそうになるがふと我に返り思わず頭を軽く振りかぶった。その様子を陣は瞬きもしずに見ていた。否、それはもう見るというより観察しているようだった。依頼人は頬の赤みが消えぬうちに陣の方を向いて口を開いた。
「あの、その何かお礼がしたいんです。私の家族のコロンを捕まえてくれたお礼を。」
「そうか、なら君が思うオススメの店を教えてくれ。」
「えっ。」
依頼人は驚いた。そんなことを聞かれるとは思ってもいなかったからだ。その様子を観察しながら陣は答えた。
「私はこことは違う場所から来たからな。ここの事はほとんど知らない状態なんだ。店は調べれば分かるかも知れないがそれはハズレが混じっているかもしれないだろ。そんな情報よりもお礼としてオススメの店を教えてもらった方が確実だっただけだ。」
「そう、何ですか。でもそれって私じゃなくても」
「いや、お前が選択する店にハズレがなさそうだと思ったからだが?」
「それは、どうしてですか?」
「?その家族のコロンを見れば品が良いのは分かる。実際にお前のその髪や肌の状態が良く、服だって質の良いものかつ自分に合うものを選んでいるだろ?だから、期待値が高いそれだけだが。」
「…」
「(顔が赤い、羞恥か。少し言い過ぎたか?)すぐに教えてくれとは言わん。決めたらここに連絡してくれ。」
「…はい。」
依頼人は連絡先を受け取りありがとうございました。と言い便利屋を去っていった。慌てて扉を閉める様子を最後まで観察して陣は便利屋の方を向く。
「(待たせすぎたか?)すいません。時間を使いすぎてしまいました。」
「気にしないわよ。ここにいるのがわが便利屋68の社員の」
「やっほー。ムツキちゃんだよ。」
「ちょっと、ムツキ!」
「だってアルちゃん。こういうのって早く終わらせた方がいいでしょ?」
「それはそうかもしれないけど手順っていうものが大事でしょ。」
「えぇー。それじゃあさ。この人に聞けばいいじゃん。あなたはどう思う?」
「ふむ。確かに形式も大事だがそこまで堅苦しくなくても良いと思うぞ。それに私は知っているしな。」
陣の言葉を聞いてアルを除く三人の視線が厳しくなるがその視線を陣は気にも留めていない。
「だから、私が自己紹介しよう。私は嬰魔 陣。キヴォトスの外から来た。他に質問があれば自由にどうぞ。」
オットアイの双眼はアル達四人をじっと捉えていた。
依頼人のモブ生徒との会話が多くなってしまった。次は便利屋との本格的な対話です。雰囲気が少し悪くなりますが陣は何を思っているのでしょうか?
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