青春に現れる異物たち   作:無幻館

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今回も三人称視点です。


作戦の前にとりあえず

方法が決まり四人と陣の距離が縮まった後、陣はアルから便利屋事務所の紹介をされていた。

 

 

「生活スペースはこの奥なのか。」

「えぇ、そうよ。あなたの部屋はここよ。」

 

 

その部屋は誰も使っていないのか少し埃をかぶっていたが人が普通に生活できる部屋だった。そこで陣は首を傾げた。

 

 

「(最悪、生活スペースはどうにもできるから部屋が無くても良かったが、ある分には活用させてもらおう。だが、)この部屋は本来どんな目的で使う予定だったんだ?それぞれの生活スペースはあるだろうし物置にしては広すぎる。(武器の整備でもするのか?)」

「えっと、それは…」

「くふふ、それはアルちゃんが事務所は広いほうがいいって言って決めたから部屋が多くなっただけだよ。だから、何も置いてないの。」

「なるほど。見栄えを張りたかったのか。」

「二人とも違うわよ!これは依頼を多く得るためよ。」

「(そういうことか。)事務所がしっかりしていれば依頼人からの心象は良くなる。だから、金をかけたわけだな。(ただ、少しかけすぎなような。ここの立地も悪くないし依頼の数も多くなるからそれは間違っていない。支出と収入の割合が合っていればの話だが…)」

「なるほど、そんな考えがあったとは…流石です。アル様。」

「勿論よ。ハルカ。(そのことも考えていたけど、せっかくの事務所なんだから大きい方が良かったとは言えるわけないじゃない。)」

「はぁ。だから、この事務所の家賃もそれなりに高いからお金がないんだけどね。」

「なるほどな。(計画が成功した後の事も考えないとな。)」

 

 

陣は改めて四人に目を向ける。四人は一見元気そうだが陣は何かに気づいたのか溜息をついた。その行動に四人はムッとしたが、

 

 

「十分に食べれてないな。君たち。」

 

 

呆れながら陣は指摘した。実際、四人は金銭的に余裕がなく昨日は何も食べてなく、今回のペット探しの依頼で得たお金で数日分のカップ麺を買おうとしていた。

 

 

「(まだ、食べ盛りの子供たちを飢えさせるのも忍びないし、使うか。)今から、見るものは口外厳禁な。」

 

 

陣は何もない空間を指でなぞり、そこに手を突っ込む。何をしようとしているか分からず四人は困惑するが、陣の手首から先が消えた。その光景を見て思わず誰かが悲鳴を軽く漏らすが陣はそれを気にもせずもう片方の手を突っ込み大きめの鍋を取り出した。四人は何もない空間から鍋が出てきたことに驚くが陣は次にカセットコンロを取り出した。

 

 

「何が食べたい?四人とも。」

「へっ?」

「お腹すいているんだろう?アル社長には感謝しているからな。さっさと作れるものとして鍋をしようと思ったんだが鍋は嫌いか?」

「嫌いじゃないけど…」

「良いの?」

「遠慮するな。計画の前にお腹がすいてパフォーマンスに支障が出たら困るからな。」

「くふふ、ムツキちゃんはお肉いっぱい食べたいなぁ。」

「鶏肉でも、豚肉でも、牛肉でも好きなものいっぱい食べて良いぞ。食べたいんならジビエもあるぞ。」

「わぁ、本当にありがとう。アルちゃんは何食べたい?」

「えっと、私は…じゃなくて、どういうことなの!?何もないところから鍋やガスコンロは出てくるし、食糧も出せるってどういうことなの!?」

「(説明するのが難しいな。)落ち着け。それは食べている途中にそれは話す。そんなことより何を食べたいんだ?」

「えぇ…じゃあ、牡蠣とかホタテも良いかしら。」

「(魚介か。)分かった。牡蠣とホタテだな。それ専用の鍋も出すか。」

 

 

そう言うと陣は直ぐに鍋とカセットコンロをもう一セット取り出した。それに加えクーラーボックスもいくつか取り出した。

 

 

「四人ともまだ食材を出すから準備を始めてくれないか?私も食材を出し終えたら手伝うがから。」

「えぇ。分かったわ。(とりあえず、今のところは何も分からないけど今は陣の好意に甘えましょう。)」

 

 

四人は陣の行動に困惑を残しつつも鍋の準備に取り掛かった。ハルカとムツキが食材を運びアルとカヨコは野菜を食べやすいサイズに切っていった。四人は陣が出してくれた食材の多さに困惑しつつも久しぶりにまともに食事が出来ることに喜んでいた。まもなく全ての食材を出し終えた陣も準備に参加した。

 

 

「ずいぶん手際がいいんだね。(魚が丸々入っていたのは驚いたけど、あっという間に捌くなんて。)」

「まぁ、料理人や漁師もしていたことがあるからな。大体何でも捌けるぞ。」

「本当に色々やってるのね。(私も料理がある程度は出来るけど、本当に早いわ。これを機にもっと料理を学ぼうかしら。そのためにはまず便利屋の経営を安定させないと…)」

「(表情が少し暗くなったが)大丈夫か、アル社長?」

「!?えっえぇ。大丈夫よ。どうしたの陣?」

「大丈夫なら良い。(気にしすぎだな。)」

 

 

アルは陣の返事にそんなに表情が出ていか?と困惑していたがカヨコも何となく気づくレベルでしか表情は出ていなかった。陣はそんなアルを横目に見ながら着々と準備を進めていた。答える気が無さそうな陣をアルは何なのよもう思いながら準備を黙々と進めていった。そうしている内に食材の準備を終えて鍋にそれぞれ別の出汁を入れて火をかけた。5人はアルを上座に座らせた後、それぞれの具材を入れて鍋を完成させた。

 

 

「アル社長、音頭を」

「えぇ、そうね。便利屋の新しいメンバーである陣の加入を祝って乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」

 

 

お茶の入ったグラスを掲げたアルに合わせて四人はそれぞれグラスを掲げた。楽しい食事が今始まった。




今回はだいぶほのぼの?している話になってると思います。良かったね便利屋の皆。もう飢えることはないよ。作者は料理をあまりしないので描写が曖昧なのは許してください。


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