天道は家で新聞を読んでいる。
ワームと戦った時のことが載っていると思っていたが、どうやらもみ消されたということらしい。
「お兄ちゃん、おはよう」
と、樹花がやってきて、食卓で朝ごはんを食べ始める。
「ここまで何も出ないということは、奴らもそれなりの組織力があるということか」
「なんのこと?」
「あ……退屈しのぎに株でもやってみようかと思ってね」
「お兄ちゃん、そういうの似合ってる」
「そうか? じゃあ、樹花の学校でも買い占めて、俺が校長でもやるか」
「それいい!」
ゼクトの会議室。
岬が加賀美に訊ねる。
「じゃあ、変身したのは、あなたじゃないというのね?」
「はい」
「誰なの?」
「それが、一度だけ見かけたやつで、その、なんていうか、とにかく変なやつで」
「変なやつ?」
岬は疑問符を浮かべる。
「我々ゼクト以外の者にライダーになる資格はない。いずれ探し出せ」
田所はそう口にすると、岬に伝える。
「ようやく本部からその資格者が派遣されてくる」
「ではベルトを持って接触ポイントに向かいます」
「いや、その前に行ってもらいたい場所があるんだ」
岬は田所の指示でその場所へと向かう。
男はワームと接触していた。
「カブトの資格者がネイティブとすり替わった?」
「そいつがお前を狙っている。気をつけるんだ」
「ああ、わかった」
忠告を受けた男は、ワームと別れて解散した。
高架下。
加賀美と岬が歩いている。
「変身したやつを探し出してどうするつもりなんでしょうか? まさか仲間にしようなんて」
「その価値があるなら十分あり得るわ」
加賀美はバツが悪そうな顔をする。
「最悪。でも待てよ? そしたら俺より下ができるってことか。そしたら俺、下っ端じゃなくなる、それいい!」
加賀美は笑みを浮かべる。
「問題なのは、そいつがゼクトの一員にならないと言った場合ね」
「どうなるんですか?」
「場合によっては、抹殺しなければならない」
「そんなこと赦されるんですか? この現代に? この日本で!?」
「私たちの任務には、それだけの重みがあるってことよ。あなたもそれを自覚して行動しなさい」
岬はそう言って加賀美のネクタイを直す。
そこへ、エンジン音と共に、一台のバイクが現れる。
カブトエクステンダーだ。
岬はカブトエクステンダーを受け取ると、車体の様子を確認する。
「すっげー。本部から来るって人がどれほどの人かは知らないけど、なんか勿体無いな」
加賀美はそう言って、スロットルを回してスキール音を立てる。
「もう生きなさい。バイトの時間でしょ」
岬はメットを被ってカブトエクステンダーに跨ると、走り去っていく。
一方、天道はひよりと加賀美が働くビストロ・ラ・サルの前に立っていた。
店の前にはひよりの自転車がある。
「ここか」
扉を開けて店に入る天道。
店内では外国人客がタバコの煙で他の客の子どもを困らせている。
ひよりは灰皿に水を入れ、タバコの火を消す。
「何してんだよ?」
イラっとする外国人客。
「けむい」
「けむいってことは。灰皿あるってことは、吸ってもいいでしょ!?」
「もういい」
ひよりは
入れ替わりに天道が外国人客の顔面にコップの水をぶっかけた。
「消すのは当然だ。そこにいる子どもが煙たがってたんだからな」
外国人客は天道の胸ぐらを掴み詰め寄るが、返り討ちを受けて逃げるようにして店から出て行った。
天道は外国語で「恥を知れ。消え失せろ」と呟くと、席についてひよりに注文をした。
「サバ味噌」
「え?」
「だから、サバ味噌」
「そんなのないよ」
「俺の鼻は誤魔化せない。たぶん、まかないで作ったやつだ」
竹宮がひよりに言う。
「ひよりちゃん、出してあげたら?」
その頃、岬は待ち合わせの空港にやってきていた。
携帯でカブトの資格者に電話をかけている。
携帯の呼び出し音と共に、工事中のトイレから別の呼び出し音が聞こえる。
不審に思った岬は、トイレの様子を確認する。
銃を構えながら、一つ一つ個室を確認していくと、蜘蛛の糸でぐるぐる巻きになった男性の遺体を発見した。
一方、天道はひよりのサバ味噌を食べている。
「赤味噌白味噌、信州味噌をブレンドしているな」
「……………………」
ひよりは無言で客の使った食器を片付けている。
「人が作った料理を食べて、この言葉を使うのはおばあちゃんに次いで二人目だ。……うまい」
そう言われ、ひよりは口を開いた。
「初めてだ。人のためにサバ味噌を作ったの」
「それは勿体無いな。俺より美味いサバ味噌を作れるんだ。自信持てよ」
「お前、変なやつだな」
「ひよりとか言ったな? 客に向かってお前呼ばわりはよくない」
ひよりは振り返って訊く。
「じゃあ、なんて呼べばいい?」
「おばあちゃんは言ってた」
天道はそう言って天を指差す。
「俺は天の道を往き——」
扉の開閉と共に天道の声がかき消される。加賀美がやってきたのだ。
「加賀美くん、今日遅番じゃなかったっけ?」
と、竹宮が言う。
「俺、一度でいいからひよりの作るサバ味噌が食べてみたかったんですよ」
「よう!」
天道の声に振り返る加賀美は、彼の食べているサバ味噌に気付き、残念そうな顔をする。
「ちょうどいい。お前に会いに来たんだ」
「え……?」
「ゼクトとか言う組織について話してもらおうか」
焦った加賀美は、天道を店の外へ連れ出す。
「外に出ようか」
天道は店の近くの公園で加賀美から事情を聞く。
「そうか。お前の裏の顔、店には内緒なのか」
「それよりなぜお前がライダーベルトを持ってる?」
「ゼクトについて知ってることを話せ。話はそれからだ」
「詳しくは言えないんだよ。でも信用していい。俺たちは命懸けでワームと戦い、平和を守ってる」
「それは正確じゃないな。言えないんじゃなくて、お前もよく知らないんじゃないのか? そして少なくとも、俺はよくわからんものを信用したりはしない」
天道はそう言って歩き出す。
「とにかく、俺たちの仲間になってくれ。頼む!」
この通りだ、と天道の背中に向かって頭を下げる加賀美。
天道は立ち止まって答える。
「わかった」
「本当か?」
「但し、俺の下につけ」
「なにい?」
天道は東京タワーを背に振り返る。
「当然だろう? 一番強いのは俺だからな」
加賀美は天道に歩み寄る。
「お前のため思って言ってんだぞ。それがわかんないのか!?」
天道は踵を返して歩きだす。
「その必死さで一つわかったよ。逆らえば俺は追われる。下手をすれば殺される。ゼクトとはそう言う組織だということがな」
「あいつ……」
加賀美の携帯が鳴る。
電話に出ると、田所から岬が向かった接触ポイントへ行くよう指示を受けた。
「何かあったんですか?」
「派遣された資格者が殺された」
「ええ? わかりました。すぐに行きます」
携帯をしまい、天道を目で追うと、その背後を男が尾行している。
尾行に気づいた天道は閉鎖空間へと誘い込む。
一方、加賀美は岬や田所と合流して殺害現場にいた。
「ワームは先手を打ったということですね。ベルトをすべき資格者が来るのを察知して」
「敵はそれだけ、恐ろしい相手ということですね」
加賀美は遺体を見て、天道を尾行していた男を思い出す。
(天道が危ない)
「いくら資格者とはいえ、生身ではワームに勝てない」
「変身すればワームのクロックアップにも対抗できるということですか?」
加賀美は天道の元へ走り出した。
「加賀美くん?」
岬が走り去る加賀美を目で追う。
「待ちなさい! 何するの!?」
加賀美はベルトを持って外に出ると、カブトエクステンダーで天道の元へ急ぐ。
(待ってろ天道! 今度こそ俺が!)
カブトエクステンダーを駆る加賀美の横をカブトゼクターが飛来する。
その頃、天道は閉鎖空間の階段を徐に降りていた。
後ろからは擬態された資格者が接近している。
扉を開け、わざとへ行き止まりへ誘い込む。
資格者の擬態は、天道の前に回り込んだ。
立ち止まる天道。
擬態はワームに姿を変える。
(ネイティブじゃないのか?)
天道は思った。
(いや、ワームに擬態したのか?)
「お前の考えていることはわかっている。この閉鎖空間なら俺は変身できない。だから、ここなら俺に勝てると踏んだ」
ワームは脱皮して成虫になる。
「だが、お前は俺の力を侮っている。俺が来いと思いさえすれば、やつは……来る!」
その時、地上では加賀美に向かってワームが数体迫っていた。
こちらのワームたちは本物ワームだった。
ゼクトに力を貸す加賀美を敵と認識したのだ。
「今度こそ俺はライダーになってみせる。そして貴様らを倒してやる!」
加賀美は天に手を伸ばした。
「さあ来い! カブトゼクター!」
だがしかし、カブトゼクターは加賀美に突進し、かわした彼を無視して地面を突き破って天道の手に収まる。
「なぜなら、俺は選ばれし男だからだ!」
変身、と天道はバックルにカブトゼクターをセットする。
仮面ライダーカブト・マスクドフォーム。
動揺している加賀美。
「なんでだ? なんで俺のところに来てくれないんだ!?」
加賀美に迫るワームを、カブトが銃撃する。
カブトを敵と認識したワームが一斉に攻撃をしかける。
カブトは銃撃でワームに応戦する。
攻撃をいなし、カブトクナイガンの刃でワームに反撃。
一体のワームが脱皮をした。
成虫ワームに擬態しているネイティブと、本物の成虫ワームがクロックアップでカブトを翻弄する。
(こいつら、やつらの手に落ちたのか)
壁にぶつかるカブト。
「天道、しっかりしろ!」
加賀美がカブトを庇ってワームの前に踊り出ようとするが、ワームに投げ飛ばされる。
カブトは加賀美に迫るワームに銃撃する。
「自分を犠牲にしてでも誰かを助ける。戦士には向かないタイプだな」
「うるさい。いいか? マスクドライダーシステムにはクロックアップに対抗する手段があるはずなんだ。それを探せ」
「知ってるよ」
「なにい?」
「悪いがベルトとは長い付き合いでね。この姿でどこまでやれるか、試していたんだ」
「じゃあまさか?」
カブトはゼクターホーンを左手で弾く。
稲妻の発生と共に、マスクドアーマーが浮き上がる。
ワームがカブトに向かって駆けった。
「キャストオフ!」
ゼクターホーンを展開。
{CAST OFF}
マスクドアーマーが弾け飛び、飛散したパーツがワームを弾いて粉砕し、カブトの顎のローテートを起点にカブトホーンが起き上がる。
{CHANGE BEETLE}
仮面ライダーカブト・ライダーフォーム。
「うわあ!」
カブトのパーツで吹っ飛ぶ加賀美。
ワームが超高速でカブトに迫る。
カブトはサイドバックルを叩く。
「クロックアップ」
{CLOCK UP}
クロックアップしたライダーフォームは、人間を遥かに超えるスピードで活動することができるのだ。
カブトが目にも留まらぬ速度でワームを乱打する。
連打を受けて怯んだワームは蜘蛛の糸を吐くが、カブトはカブトクナイガンの刃で糸をぶった斬る。
「は!」
ワームに飛びかかったカブトは、手にした刃を胸部に突き刺した。
{CLOCK OVER}
加賀美が地面に落下するのと同時に、ワームは爆裂霧散する。
火炎の中から、カブトの姿が現れる。
カブトは無言で加賀美を見る。
「あれが、カブト……」
カブトは走るカーキャリアに乗ってるワームに気づくと、カブトエクステンダーに跨って後を追う。
国道を駆け抜け、ワームに追いつくと、クロックアップでワームと格闘する。
戦いの影響で車がカーキャリアから落下し、後続車がそこへ接近する。
カブトは後続車から乗員を救出し、前方のクレーン車のクレーンに引っ掛けると、クロックアップが解ける。
ワームがクレーン車から飛び降り、更に道路の外側に出たカブトに対して、路上の車を落とす。
カブトが車をかわすと同時に、落下したそれが爆発をする。
倒した、そう思ったワームが安心して去ろうとすると、カブトが車の影で立ち上がる。
振り返るワーム。
カブトは三つのフルスロットルボタンを押して、ゼクターホーンを倒し、パワーをチャージして展開する。
「ライダーキック」
{RIDER KICK}
カブトは迫り来るワームの攻撃を受け流し、背後から接近する敵にカウンターの回し蹴りを叩き込む。
「はあ!」
爆裂霧散するワーム。
ワームを倒したカブトは、天を指差している。