マエストロに目をつけられた。   作:アルカンテナ

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番外編part2、薬指解釈派:マエストロ・イサンの物語

無機質な照明が照りつける審査室の中。品評会が行われる日。

審査を待つ者達が、自らの作品を床に並べ、その前に立っていた。

皆、恐怖で震えている。それも当然…ここにいる者は、今回が最後の機会であるのだから。

子供は、その者達に作品の評価を言い渡していく。

 

 

「ふむ…君の作は粗がちなりさは著けれど、あらはさまほしき物はめでたし。ゆくすゑ性も鑑みて 、B+なり。」

一人、何も感じないかのように頷き

「あさまし。 落第なり。」

一人、刃を防ごうとした刀ごと頭を割られ。

「少々良さはあるにはあれど、凡作。……落第なり」

一人、胸を貫かれその場に倒れ。

「はあ、作なしなりや?評なし。落第なり。 」

一人、逃げ出そうとし首を刎ねられ…

 

子供は、無慈悲な宣告を続ける。

人の命など芸術の価値の前には塵同然とでも言うように。

 

そして、気付けば、無機質な白い部屋は、赤く染まっていった。

子供は、まるで何事もないかのように最後の審査対象の前へと足を運ぶ。

 

「ふむ……奇抜なる案ながら鑑賞者が置きていかるるがなし。その上、粗がちなりさもあらず。…A+」

 

気弱な少年は、子供に黙ってお辞儀をした。

きっと、凡作であれば今や彼の頭は肉片になっていただろうね。

 

「子を殺さむことにならで…我も安心せり。」

それを見て、子供が静かにそう言った時。

 

警報が響いたんだ。

 

「…招かざるまらうどならむや?」

 

「招かざる客ならば、私が相手をします。お父様の手を煩わせるわけには…」

子供の部下の一人は自分が行くと言ったけど…

 

「いや、我自ら応えむ。丁度やらまほしき事もある故。…いみじき振る舞ひする者ならざらば、我てづから話す価もあらむうし…」

子供は部下の提案を断り優しく微笑むと、一人で部屋から出ていったんだ。

 

(イラスト変更)

……

展示室に確かに招かざる客達は居たけど…

 

「なんだお前は!!失せろ!!」

…招かざる客達は、子供が思うより遥かに酷い立ち振る舞いだったんだ。

 

「よくこそ、観客の殿ばら。かくて、初めて。このあとりえの館長にし理想の巨匠…イサンなり。」

 

「!」

「お頭ぁ…コイツァ…」

「ああ、分かってる。首を持ち帰れば粛清の命令は取り消されるだろうな。」

「掛かれ!」

 

「気の疾き者どもになありそ…少しは物語を聞きてもらひたき。」

 

子供はそう言うと、絵具を硬化盾で切りかかって来た一人の刀を軽くいなしたんだ。

薬指の使う絵具の用途は単なる絵画の材料としてだけではなくて…戦闘に扱うものでもあるんだ。

 

「なっ。」

切り掛かった一人は弾き飛ばされ、ただ驚く。

 

「かかる事するは少し芸術につきて話しし後にてもありぬべからずや。話すと言ふとも、契りなしの唐突なる観覧故にうることは少なけれど…」

 

「お頭、どうします。」

話をやめない子供に、招かざる客の一人はお頭に命令を仰ぐ。

 

「はっ、まあ話を聞いたら満足してくれるかもしれねぇし、聞くだけ聞こうか。」

お頭、と呼ばれる者が戦わない姿勢を見せると取り巻き達も次々に刀を鞘に戻した。

 

「耳を傾くるばかりにもかたじけなし。早速ではあれど、この絵を見させむや。其方らには、どう見ゆる?」

 

子供は、その行動に感謝しながら巨大な絵を見せ問うんだ。

 

「はあ?白紙…」

「なんもねぇじゃねえか」

 

客達は困惑した。

それもそのはず、その絵には何も書かれていなかったのだから。

 

「この絵の白紙なるは…いまだ描きたりすらあらぬ故。かくて、この絵の筆…かくてくさはひとなるは」

 

子供は、静かに微笑んだ。

そして、一言をそっと呟いた。

 

「其方なり。」

 

 

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