Muv-Luv OPERATION:LAST KISS 作:ババンババンバン
佐渡島は、かつて私が幼い頃を過ごした大切な故郷だった。
潮風の匂いが漂う港町の景色も、冬になれば一面を白く染め上げる雪景色も、祭りの日に聞こえてくる賑やかな笑い声も、今となっては遠い昔の出来事のように感じる。
だが、そんな穏やかな日常は、突如として日本へ侵攻してきたBETAによって、あまりにも呆気なく壊されてしまった。
街は蹂躙され、大地は無残に掘り返され、人々が暮らしていた場所は、奴らにとっての“資源採掘場”として変わり果てていった。
逃げ惑う人々の姿も、燃え上がる街並みも、何もできず立ち尽くしていた自分の無力さも、今でも鮮明に覚えている。
あの日から数年が経ち、私は戦術機整備員として再び佐渡島の前へ立っている。
今の私は、ただ遠くから故郷が奪われていくのを見ているだけの子供じゃない。
この戦いで、故郷を取り戻すんだ。絶対に。
AD.2004.01.17
【日本帝国/佐渡島沖・連合艦隊海域】
空は、まだ暗かった。
夜明け前の極寒の海上には、日本帝国軍、第三帝国軍、ロシア軍、統一中華戦線軍、そして討伐艦隊による無数の艦影が並んでいる。
国も思想も異なる大艦隊。
本来ならば決して交わることのない戦力が、今この瞬間だけは“佐渡島ハイヴ攻略”という目的のため、一つの海域へ集結していた。
各艦の甲板上では、整備員たちが最後の確認作業を行い、戦術機母艦では衛士たちが次々と愛機へ搭乗していく。
誰も無駄口を叩かない。
空気そのものが張り詰めていた。
その中央海域。
最上級大型巡洋艦【最上】、艦橋内。
巨大スクリーンには、赤黒く染まった佐渡島全域の戦況図が表示されている。
地表を埋め尽くすBETA反応。
地下深部へ広がるハイヴ構造。
そして、各所へ表示された超重光線級出現予測ポイント。
数値を見るだけで胃が痛くなるような戦況だった。
小沢久彌提督が静かにモニターを見つめている。
その隣では、香月夕呼が腕を組みながら険しい表情で戦況図を睨んでいた。
「各国艦隊、配置完了」
「AL弾装填率九八パーセント」
「国連宇宙総軍、軌道爆撃準備完了」
「第六軌道降下兵団、降下待機状態へ移行」
次々と報告が飛ぶ度、艦橋内の緊張感がさらに増していく。
やがて、通信士が顔を上げた。
「全軍、戦闘準備完了しました」
「うむ...」
目の前の戦況モニターへ映し出された佐渡島を見つめながら、小沢久彌提督は静かに息を吐いた。
「今でも、佐渡島を奪われたあの日の夢を見ることがある」
低く呟かれたその言葉には、長年胸の内へ押し込めてきた苦味が滲んでいた。
「BETAによって故郷を蹂躙され、何もできず撤退するしかなかった……あの時の無力感は、今でも忘れられん」
モニターの向こう側には、赤黒い脅威反応に覆われた佐渡島。
かつて人々が暮らしていた土地は、今やBETAの巣窟へと変わり果てている。
「……まさか、再び生きてこの目で佐渡島を見る日が来るとはな」
「つくづく、人生というものは分からん」
宇宙から飛来してきた“討伐艦隊”。
その存在が現れてから、絶望しかなかった戦況は、少しずつだが確かに変わり始めていた。
小沢が静かに思索へ沈んでいた、その時。
艦橋内スピーカーから、ジェイド・ロスの声が響き始める。
『――全軍へ』
艦橋内だけでなく、海上に展開する全艦隊、待機中の戦術機部隊、さらには軌道上の降下兵団にまで、ジェイド・ロスの声が通信回線を通して響き渡る。
『諸君らの多くは、これまで防衛戦を戦ってきた』
『故郷を守るため。仲間を逃がすため。生き残るため』
『撤退し、失い、奪われ続ける戦いだったはずだ』
『この戦いは、決して容易なものにはならない』
『諸君らの中には、帰れない者もいるだろう』
『だが、それでも前へ進まなければ、人類に未来はない』
ジェイドは一度だけ言葉を切る。
そして、静かに続けた。
『だからこそ――勝つ』
『諸君らは、絶望へ抗い続けてきた兵士だ』
『ならば今日、その戦いに終わりへの一歩を刻もう』
艦橋内で、小沢が静かに目を細める。
夕呼は腕を組んだまま、小さく口元を緩めていた。
『これより、
『全軍、戦闘開始』
次の瞬間、佐渡島沖に展開した連合艦隊が一斉に砲門を開いた。
夜の海を切り裂くように、無数の砲撃閃光が佐渡島へ向けて放たれる。
五軍による一斉砲撃。
放たれたAL弾は、空を埋め尽くすほどの物量となって佐渡島へ降り注いでいく。
佐渡島全域から、無数の光線級レーザーが迎撃のため天へ伸び、青白い閃光が夜空を裂きAL弾へ次々と着弾する。
レーザー照射を受けたAL弾は高熱によって瞬時に気化。
濃密な重金属雲を発生させながら、光線を大きく減衰させていく。
「効果確認!」
「光線級照射出力、低下しています!」
艦橋内へ緊迫した報告が飛ぶ。
さらにその直後、夜空の遥か上空。軌道上から、流星のような無数の火線が大気圏へ突入を開始した。
国連宇宙総軍による軌道AL爆撃。
陸、海、空三方向からの飽和攻撃によって、佐渡島周辺は一瞬で火と煙に包まれた。
「重金属雲、拡散開始!」
「レーザー減衰率上昇中!」
「超重光線級反応、現在地下深部にて停滞!」
「よし!まだまだ撃ち続けろ!」
小沢が叫ぶ。
後方海域、ヨルムンガンド級【ハーヴェスト】艦橋内にて、次々と飛び込んでくる戦況報告を聞きながら、ジェイドは静かに目を細めていた。
「重金属雲、拡散確認」
「光線級照射出力、想定値まで低下しています」
オペレーターの報告を聞き終えると、ジェイドは短く頷く。
「フェイズ2へ移行!」
「――ヨルムンガンド級【スターダスト】へ、エーギル級【ケルピー】の降下を開始せよ」
その命令が発せられた直後、夜空の彼方から、巨大な影が海上へ向け降下を開始した。
決戦兵器を搭載した艦が、大気圏突入時の摩擦熱によって艦体表面が赤熱化し、まるで流星が海へ落ちてくるかのような光景が広がる。
各国艦隊の将兵たちが、思わず息を呑んだ。
これより、人類は未知の決戦兵器を戦場へ投入しようとしていた。
────やがて
「突入角安定!」
「対熱フィールド正常!」
「着水ポイントまで残り九〇秒!」
スターダストがケルピーの盾になるように降下。
スターダスト内部では、オペレーターたちが慌ただしく状況確認を続けていた。
艦体全域が激しく振動する。
大気圏突入による凄まじい負荷だ。
だが、それでも艦は減速しながら確実に海面へ接近していく。
一方、その後方を降下するケルピーは、艦体各所の外付姿勢制御ノズルを噴射しながら海面着水準備へ移行していた。
「着水まで三〇秒!」
その瞬間、再び複数の光線級レーザーが夜空を貫いた。
重金属雲によって威力は大きく減衰している。
だが、それでも完全に無力化されているわけではない。
青白い光条が、降下中の【スターダスト】を捉える。
「敵光線照射確認!対レーザー蒸散膜により損耗率10%!」
艦橋内へ緊張が走るが、ジェイドは表情を変えない。
「問題ない。降下を継続しろ」
そして、巨大な水柱を巻き上げながら、スターダストが艦隊の前部へ着水した。
数秒遅れて、ケルピーもまた海面へ降下。
海上へ轟音と白波が広がっていく。
「【スターダスト】、【ケルピー】着水成功!」
「よし、フェイズ3だ!ケルピーから決戦兵器を展開!」
ついに、人類側は“切り札”投入段階へ到達した。
◇◇
ケルピー艦内。
警告灯が赤く点滅する中、巨大格納ブロックの隔壁がゆっくりと開放されていく。
《Combat system online》
《BIDE WEAPON standby》
低く不気味な駆動音が艦内へ響いた。
生物にも機械にも見える漆黒のの流線型フレーム。
そして、機体各部へ脈動するように走る赤紫色の発光ライン。
蒼白い冷却光に照らされながら、“それ”が姿を現す。
討伐艦隊が封印していた決戦兵器。
各国艦隊のモニターへ、その姿が映し出される。
「...なんだ、あれは...」
誰かが思わず呟いた。
次の瞬間、機体後部スラスターが蒼白く点火。
ジェリコ・トランペットは、赤黒い二機のフォースを伴いながら、まるで重力そのものを拒絶するかのようにゆっくりと浮上を開始した。
海面すれすれを滑るように飛翔しながら、ジェリコ・トランペットはゆっくりと佐渡島正面へ機首を向ける。
その異形の機体を、各国艦隊の将兵たちは息を呑んでいた。
《Wave cannon system active》
《Energy charge started》
ジェリコ・トランペット周囲の空間そのものが微かに歪み始める。
赤紫色の粒子光が砲身周囲へ渦を巻きながら収束し、海面へ無数の波紋を広げていく。
《Charge rate 30%》
《50%》
《70%》
増大していくエネルギー反応に、この様子をモニターしていた夕呼は思わず息を呑む。
「チャージするだけで、周辺空間へ重力異常反応なんて末恐ろしいわね...」
その時、佐渡島全域で砲撃を生き延びた無数の光線級反応が一斉に活性化する。
狙いをAL弾ではなく、重金属雲の奥から、青白い照射光が次々とジェリコ・トランペットへ伸びる。
敵もまた、この兵器を“脅威”として認識したのだ。
────だが
周囲へ浮遊展開していたフォースが、それら全て真正面から受け止めて無力化していく。
ジェリコ・トランペットは止まらない。
《90%》
《Wave cannon ready》
機体前方の砲口が、ゆっくりと佐渡島ハイヴ中央部へ固定された。
ジェイドが静かに命令を下す。
「撃て」
世界が、白く染まった。
轟音すら置き去りにする超高出力エネルギー奔流が、一直線に佐渡島へ放たれる。
海面を抉り、空気を焼き裂きながら放たれた波動砲は、重金属雲すら強引に吹き飛ばし、そのままハイヴ地表構造物へ直撃した。
巨大な地表構造物が内側から引き裂かれるように爆散し、岩盤とBETA群がまとめて宙へ吹き飛ぶ。
衝撃波が海面を叩き、連合艦隊へ巨大な波を発生させた。
波動砲による破壊は地表だけで止まらない。
地下深部へまで一直線に貫通し、ハイヴ内部構造を強引に抉り裂いていく。
モニター上で、佐渡島地下反応図が一気に変化した。
「地表構造物、大規模崩壊確認!」
「ハイヴ外殻に巨大破孔発生!」
「地下縦坑ルート露出しました!」
各艦橋内へ、驚愕混じりの声が飛び交う。
そして、立ち昇る爆煙の中心。
そこには――
ハイヴへ続く、“人類がこじ開けた侵入口”が存在していた。
誰も、すぐには言葉を発せなかった。
あまりにも現実離れした光景だったからだ。
これまで幾度となく攻略作戦が立案され、その度に莫大な犠牲を出しながらも傷一つ満足に付けられなかった佐渡島ハイヴ。
その外殻を――たった一撃で破壊した。
「...ば、バカな!」
ロシア軍司令部。
誰かが震える声を漏らす。
第三帝国軍司令部では、将官たちが呆然と立ち尽くしていた。
統一中華戦線軍でも、参謀たちが言葉を失っている。
そして横浜基地戦術指揮所。
そこへ、オペレーターの叫び声が響いた。
「地表構造物崩壊確認!!」
「侵入口形成されています!」
「地下縦坑への接続反応あり!」
その瞬間、張り詰めていた空気が、一気に爆発した。
「やったぞ!!」
「穴を開けた!!」
「本当にハイヴをぶち抜きやがった!!」
歓声。
怒号。
悲鳴のような興奮。
各国艦隊通信回線が、一瞬騒然となる。
無理もない。
これまでの人類にとって、“ハイヴ外殻を正面から破壊する”など夢物語だったのだ。
小沢提督ですら、思わず目を見開いていた。
「...これが、討伐艦隊の力...」
夕呼もまた、僅かに息を呑む。
理論上可能だとは理解していた。
だが、実際に目の当たりにすると話は別だった。
そして海上。
戦術機母艦甲板では、待機していた衛士たちが歓声を上げていた。
「見たかよアレ!?」
「マジで吹き飛ばしやがった!」
「行ける、行けるぞ!!」
今までの戦いとは違う。
押し返されるだけでもない。
耐えるだけでもない。
人類が初めて、“BETAの巣を破壊した”のだ。
その事実が、兵士たちの心へ凄まじい衝撃と熱狂を与えていた。
ジェイドは静かにモニターを見つめながら、短く告げる。
「全軍、上陸準備を開始しろ」
ジェイドの命令と同時に、連合艦隊全域へ警報が鳴り響いた。
《全上陸部隊、発進準備》
海上各艦が、一斉に慌ただしく動き始める。
戦術機母艦では、待機状態だった機体群が次々とカタパルトへ移動。
整備員たちが怒号を飛ばしながら最終確認を進めていく。
「兵装ロック解除!」
「跳躍ユニット出力正常!」
「着艦用安全装置解除完了!」
格納庫内へ、金属音と警報音が鳴り響く。
その一方。
佐渡島方面では、崩壊した地表構造物内部から無数のBETA反応が噴き出し始めていた。
破壊された外殻から、怒涛の勢いでBETA群が溢れ出してくる。
「敵前衛群、大量出現!」
「海岸線へ向け進行開始!」
だが、それを見た各国艦隊司令官たちの表情に、先程までの絶望はなかった。
むしろ――戦意が宿っている。
「全艦、対地砲撃継続!」
「上陸部隊の進路を確保しろ!」
海上から再び無数の砲火が佐渡島へ降り注ぐ。
AL弾、通常徹甲弾、ロケット弾。艦砲射撃によって海岸線のBETA群が次々と吹き飛ばされていく。
日本帝国軍戦術機母艦【国東】。
カタパルトへ並ぶ戦術機部隊の前で、衛士たちが最後の確認を終えていた。
武の乗る不知火もまた、発進位置へ固定される。
『全機、最終安全装置解除』
『作戦領域へ侵攻を開始せよ』
武は深く息を吐く。
モニターの向こうには、黒煙を上げる佐渡島。
そして、その奥に広がるBETAの大群。
恐怖がないと言えば嘘になる。
だが、それ以上に。
今の彼らには、“行けるかもしれない”という感情があった。
「...やってやる」
武が小さく呟く。
「帝国軍戦術機部隊、発進!!」
轟音と共に、日の丸を背負う不知火達が夜明け前の空へ射出された。
◇◇
佐渡島沖。
砲煙と黒煙に包まれた海上を、無数の揚陸艇と戦術機部隊が突き進んでいく。
艦隊による艦砲射撃は未だ継続中。
海岸線へ砲弾が降り注ぐ度、BETA群が爆炎の中へ吹き飛ばされていく。
だが、それでも数が減らない。
破壊されたハイヴ外殻内部から、次々と新たなBETAが溢れ出してくる。
「突撃級接近!」
「横っ腹を突け!」
通信回線へ怒号が飛ぶ。
上空を高速で飛翔していたジェリコ・トランペットが急旋回。
周囲へ展開されていた赤黒い二機のフォースが前方へ高速移動すると、迫り来る突撃級の群れへ正面から拡散ビームを放った。
放射状に広がった高出力光線は、突撃級の重装甲外殻ごとまとめて貫通し、その巨体を次々と爆散させていく。
さらに、なおも押し寄せてくるBETA群に対しても、フォースは自律的に機動。
空間を縦横無尽に飛び回りながら放たれるビームによって、接近してくるBETAを片端から薙ぎ払っていった。
「道が開いた!」
「今だ、上陸するぞ!!」
先頭を走る日本帝国軍揚陸艇が、ついに佐渡島海岸へ到達。
直後、前面ハッチが勢いよく開放された。
「帝国軍第一陣、突撃!!」
轟音と共に、戦術機部隊が一斉に飛び出す。
各国の戦術機群も次々と続き、海岸線へ降り立っていく。
着地と同時に跳躍ユニットを噴射。
戦術機たちは砂浜を抉りながら前進し、そのままBETA群へ突撃した。
「撃てぇぇぇぇ!!」
36mm突撃砲が、火を噴く。
砲弾の嵐が、先頭の突撃級群をまとめて吹き飛ばした。
だが、その奥からさらに無数のBETAが迫る。
海岸線は一瞬で地獄へ変わった。
それでも、誰一人として止まらない。
なぜなら今、人類は初めて“奪われた土地を取り返すため”に前進しているのだから。
「上空安全域拡大しています!」
連合艦隊側オペレーターたちの声にも、僅かに興奮が混じる。
その隙を逃さず、各国上陸部隊が一斉に前進を開始した。
「帝国軍前進!」
「第三帝国軍右翼展開!」
「統一中華戦線軍、左翼支援開始!」
「パトロクロス隊、支援砲撃開始!」
砂浜を埋め尽くす戦術機群。
その後方では、戦車部隊や機甲歩兵も次々と上陸を開始している。
「地下反応急増!」
「来ます! 地下坑道から大型種反応!」
轟音と共に地面が隆起し、砂浜を突き破って巨大な要塞級が姿を現した。
咆哮にも似た重低音を響かせながら、その巨体が前線部隊へ向け衝角を振り上げる。
まともに受ければ、戦術機ですら一撃で叩き潰されかねない質量攻撃。
だが――
「すぅ───っ...ここっ!」
珠瀬壬姫の不知火が僅かに静止。
次の瞬間、放たれた36mm砲弾が衝角の付け根を正確に撃ち抜いた。
衝撃によって軌道を逸らされた要塞級の一撃が、武たちの機体を掠めるように空振る。
「タケルっ!」
「応ッ!!」
鎧衣美琴の声と同時に、武の不知火が跳躍。
二機は珠瀬が生み出した一瞬の隙へ迷いなく飛び込む。
長刀が閃いた。
高速機動の勢いを乗せた斬撃が、要塞級の重装甲を真正面から切り裂く。
交差するように振り抜かれた二撃目によって、巨大なBETAの躯体が真っ二つに裂けた。
黒い体液を撒き散らしながら、要塞級が崩れ落ちる。
再開したばかりで、当然、事前にまともな連携訓練など行えてはいない。
それでも三人は、まるで長年組み続けてきたかのような呼吸で次々と迫るBETA群を屠っていく。
「やるじゃねぇか! あの国連と帝国軍の連中!」
「俺たちも負けてられるか! 各機、前進速度を上げろ!」
武たちの見せる鮮やかな連携戦闘に感化され、各国軍の衛士たちも次々と攻勢を強めていく。
砲火がさらに激しさを増し、上陸部隊全体の突撃速度が一気に加速した。
激戦の末。
ついに連合軍は、佐渡島沿岸部一帯の制圧に成功していた。
海岸線各所には簡易防衛陣地が急速展開され、後続部隊の上陸も続々と開始されている。
撃破されたBETAの残骸が積み重なる浜辺を、戦車部隊や補給車両が走り抜けていった。
「橋頭堡確保完了!」
「第一安全域、維持成功しています!」
「光線級反応、依然減少傾向!」
横浜基地戦術指揮所へ、各戦線から次々と報告が届く。
その報告を聞いたジェイドは、小さく頷いた。
「...フェイズ4へ移行する」
巨大スクリーンへ、新たな戦況図が表示される。
そこには、ハイヴ地下深部へ向かう複数の侵攻ルートが映し出されていた。
ジェイドは静かに告げる。
「第六軌道降下兵団、降下開始」
地球低軌道上。
待機していた無数の降下ポッド群が、一斉に分離を開始した。
大気圏突入で機体外殻を灼熱の炎が包み込み、流星群のような光が夜空を切り裂いていく。
そして同時刻。
討伐艦隊所属特殊部隊――ウォー・ヘッド隊、およびゴースト・タッチ隊も作戦行動を開始していた。
『ウォー・ヘッド隊、およびゴースト・タッチ隊。亜空間潜航開始』
次の瞬間、機体周囲の空間が歪み始める。
陽炎のような揺らぎと共に、機体そのものが徐々に透明化していった。
通常物理法則から半ば逸脱した状態となった両部隊は、そのまま佐渡島ハイヴへ向け高速侵攻を開始する。
BETA群は反応できない。
向かう先は、崩壊した地表構造物に穿たれた巨大破孔、縦坑。
そこへ、ウォー・ヘッド隊とゴースト・タッチ隊が一切減速することなく突入した。
空から降下してくる第六軌道降下兵団を迎撃すべく、地上の光線級群が一斉に照準を上空へ向ける。
だが、低空を疾走する一機のパトロクロスが、戦車級群を飛び越えるように高速接近した。
滑るように飛行しながら、一気に光線級群の懐へ飛び込む。
次の瞬間、両翼部ミサイルポッドが一斉展開。
至近距離から放たれたミサイル群が、光線級の頭部を次々と吹き飛ばしていく。
さらに、爆炎を突き抜けたパトロクロスは、瞬間的に人型形態に変形し高出力ビームソードを形成。
蒼白い光刃が閃く度、光線級の巨体がまとめて両断され、黒い体液を撒き散らしながら崩れ落ちていく。
完全な奇襲だった。
その直後、空より降下してきた第六軌道降下兵団の衛士たちも、着地と同時に36mm砲弾を周囲へばら撒きながらBETA群を制圧。
『シューティングスター、突入する!』
大気圏突入直後。
さらに着地と同時にBETA群との連続戦闘を行った直後だというのに、その機動には一切の鈍りが見られない。
極限状態によって体力を大きく消耗しているはずの衛士たちは、それを微塵も感じさせない操縦技量で、そのままハイヴ内部へ突入していく。
第六軌道降下兵団は、光線級群による迎撃を受けることなく、ほぼ無傷のまま降下に成功。
さらに、亜空間潜航を維持したウォー・ヘッド隊とゴースト・タッチ隊も、損耗ゼロの状態でハイヴ内部への侵入を完了していた。
人類史上例を見ない、ほぼ万全な状態でのハイヴ内部侵攻が今、始まった。
この小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
果たして彼らは、佐渡島を取り戻せるのか...引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
もし、
・「ここの設定は原作と違う」
・「この描写は少し不自然かもしれない」
・「誤字脱字がある」
など、お気付きの点がありましたら、ぜひ遠慮なく教えていただけると嬉しいです。
感想やご指摘をいただけるだけでも、とても励みになります。
これからも少しずつ頑張って書いていこうと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
◇◇
戦闘機 B-XX1A 【ジェリコ・トランペット】
ジェリコ・トランペットは、有り余るバイドエネルギーを波動砲へ転用することで成立した、“決戦型”次元戦闘機である。
装甲材から内部構造、武装に至るまで、その大半がバイド体によって構成されており、通常兵器というより半生体兵器に近い存在となっている。
コックピット内部は特殊なバイド液で満たされており、搭乗者の脳波を機体へ直接伝達することで、機体そのものを身体の一部のように操作可能。
これにより、常識外れの機動性と反応速度を実現している。
最大の特徴は、超高出力波動砲を極めて高精度な精密砲撃として運用できる点にある。
本来なら都市一つを消し飛ばしかねない超火力を、必要最小限の範囲へ収束・制御し、狙った箇所のみを正確に破壊することが可能。
一方で、武装は波動砲のみ。下手に実弾兵器やミサイルを搭載すれば、波動砲発射時に発生する莫大なエネルギー干渉へ耐え切れず、兵装側が先に破壊される危険性がある為である。
近距離での交戦はフォースや随伴機へ任せ、自らは“最重要目標を破壊すること”だけへ全性能を集中している。
その極端な性能構成から、ジェリコ・トランペットは“敵を殲滅する”のではなく、“戦場そのものを破壊する”ために生み出された決戦兵器なのである。
搭載武装:
ジェリコのラッパ(長距離波動砲)×1門
ブラック・フォース×2機
ジェリコ・トランペットに随伴する半自律型支援兵装。攻撃、防御、迎撃を同時に担う。
レーザー弾種
┣スキャッターRAY:広範囲へ粒子状レーザーを拡散照射する対群体レーザー。
┣スピアーRAY:大型種や重装甲目標を貫通する高出力収束レーザー。
┗メッシュRAY:網状にレーザーを照射する近接防御・迎撃用レーザー。