勝利の旅人:星のカービィ×NIKKE   作:Misma

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9話:王と王

「……」

 

 銀髪のニケは朝日の眩しさの中に目を細め、昨夜の夢を思い出していた。

 

「……指揮官」

 

 遠く離れたところにいる、大切な人の夢だった。

 長い銀髪を傾け、頭に巻いた包帯に手を当てる。

 柔らかく包み込まれるような感覚が、まだ残っているような気がした。

 

「マリアン、どうしましたか?」

 

 凛とした声にはっと顔を上げると、朝日が降り注ぐ古城の食卓が視界に飛び込んだ。

 それは、見慣れた『王国』の風景。

 黄金の巻き髪の女性が、ワイングラスを片手に最奥の王座に座っている。

 

「あっ、クラウン。ごめんなさい」

 

 一方、隣に立つ三つ編みの背丈の低い少女が腰に手を当てて不機嫌な顔をしている。

 

「まったく。王が話しかけられているときによそ見とは!」

 

「チャイム、良いのです」

 

 甲高い声で説教をしかけた少女チャイムは、女性の声に「ははっ」と頭を下げる。

 

「マリアン、悩み事があるのなら何でも言ってください。王は、民のためであればいかなる時でも力を貸すことを惜しみません」

 

「ありがとうございます。実は、昨日見た夢のことを思い出していました」

 

「あなたをここに預けた指揮官の夢ですわね」

 

「っ……よく分かりましたね」

 

「顔を見れば分かりますわ」

 

 クラウンは慈母のように柔らかくマリアンに笑いかける。

 そう。彼女が見た夢は、大切な人に頬を撫でられ抱きしめられる、とても素敵なものだった。

 

「そいつの夢を見たということは、前に駄々をこねたように、やはり内心ではアークに帰りたいのではないのだ?」

 

 チャイムの問いに、マリアンは苦笑いして首を振る。

 指揮官と別れてから毎日ワガママを言っていた日々が、今では懐かしい。

 

「いえ。むしろ指揮官のためにもっと強くなりたいと思える、幸せな夢でした」

 

 チャイムはマリアンの答えを聴くと、どこか心配そうだった表情を引っ込めて、

 

「……それなら、私から言うことは何もないのだ。これからもクラウン王国の民として存分に胸を張るとよいのだ!」

 

「はい!」

 

 マリアンは改めて、この2人が自分の隣にいてくれることに感謝する。

 

「ふふ、さっそく今日は、クラウンとチャイムのため腕によりをかけましたよ!」

 

 マリアンは鍋を取り出した。途端に、2人は嬉しさのあまりか一斉に黙り込む。

 今日の朝ごはん当番として腕によりをかけた、本日の王国のブレックファーストは──

 毛虫のだんご、セミの幼虫のソテー、ヘビ酒、クモとムカデの炒め物、木の根と葉のサラダ。

 

「どうですか、2人とも!」

「……」

「……」

 

 クラウンの額に汗が滲み、チャイムが視線を逸らす。

 

「こ、これは、とても……」

 

「どど、独創的、なのだ……」

 

「そうでしょう? ほら、冷めないうちに食べてください。特に幼虫のソテーは、スノーホワイトの直伝ですよ!」

 

 湯気の立つ皿を勧めると、クラウンは笑みを貼り付けたまま席から腰を浮かせた。

 

「れ、れれ、例の件もありますし、一通り城周りのパトロールを終わらせてからにします。チャイム、先にお食事を取ってください」

 

「お、お嬢様、と~~んでもございません! そんな危険な役目は私めにお任せして、どぉ~ぞごゆるりと」

 

 皿を押し付け合う2人を見て、マリアンの胸中に悲しい予感がよぎった。

 

「……もしかして、こういう料理、好きじゃないんですか?」

 

「!」

 

「あ、あのー。違うのだ、これは。つまりはだな……」

 

 チャイムは狼狽えて視線を彷徨わせる。

 一方のクラウンはじっと目を瞑ると、やがて瞼を静かに開いた。

 

「マリアン、何を言っているのです。私はあなたのお料理、毎回楽しみで仕方がありませんわ」

 

「お、お嬢様!?」

 

 チャイムがばっと視線を跳ね上げる。それにクラウンは誇り高く微笑んだ。

 

「チャイム。後は頼みましたよ」

 

「うう、お嬢様、先ほどは申し訳ございません! 不肖チャイムはあなたという王をもって、本当に幸せ者でございました……!」

 

 秘書は、強敵へ向かう主君を涙ながらに見送った。

 クラウンが、幼虫をフォークに突き刺す。

 震える手でまだ蠢くソレをその口に入れようとした──

 その時だった。

 鋭い突風が、空間を揺らした。

 

「!」

 

 音速を超える一つの影が、城のすぐ外を駆け抜けたのだ。

 窓に張られていた板が吹き飛ばされ、暴風が室内を荒らし尽くす。

 机の上のものがすべて薙ぎ倒されるなか、チャイムとクラウンは共に机の下へ滑り込んだ。

 少し離れていたマリアンも、柱の陰に自ら身を隠す。

 

「あっ、我々の朝食がめちゃくちゃに!」

 

「ほっ……ではなくて大変ですわ! マリアン、怪我はありませんこと?」

 

「だ、大丈夫です……また来たみたいですね」

 

 秘書と一緒に四つん這いで出てきた王に、マリアンは頷いてみせると割れた窓の外を睨んだ。

 翼を広げて去っていく影は、数秒後には早くも空の青色とまじりあって消えていった。

 チャイムが身を乗り出して窓枠に手をかけ、歯軋りする。

 

「ぐぬぬぬ、今回も姿すら見られずじまいなのだ!」

 

「相変わらず、とっても速いですね……」

 

 ただでさえ老朽化した城の壁面には、刃物で刻まれたような傷が刻まれていた。

 チャイムはため息をつき、窓を背にして腕を組む。

 

「しかしやはり、ラプチャーにしてはおかしいのだ。初の襲撃からこれだけ経っても、増えるのはラプチャーではなくその残骸……」

 

「そうですね。あの流れ星の落ちた日から何かが変わったような、そんな気がします」

 

 この襲撃が始まったのは、一際流れ星が酔っぱらったように落ちたあの日から。その嵐は、毎日必ず吹いてくる。必死の修繕も追いつかず、城は傷ついていく一方だ。

 

「……」

 

 2人の議論を聴きながら、クラウンは、じっと静寂の戻った朝空を見つめた。

 

「御覧なさい、ちょうど今日は、雲一つない()()ですわ。いっそこちら側から、あの犯人を追ってみてはどうでしょうか」

 

 王の提案は民たちを驚かせた。

 ──二重の意味で。

 

「なるほど、その手がありますね! ですがクラウン、いまは朝じゃ……」

 

「お、お嬢様! ()()の青空を天体の色で比喩なさるとは、日に日に語彙力がうなぎ登りでございます~!」

 

 チャイムが光速のフォローを入れる。

 クラウンは「あっ」と声を漏らしたが、すぐ右上に視線をそらして咳払いを一つ。

 

「そ、そうです。空は宇宙と繋がっているという()()ですわ。おほほほほ……」

 

 王の言い間違いの多さは相変わらずだった。

 

 

「かなり遠くまで来ましたわね」

 

「お気をつけください、お嬢様。この先は高低差の関係上、城の望遠鏡では様子が確認できない地域でございます」

 

 王及び民2名は、敵を追って5kmほど遠くまでやって来た。

 マリアンとチャイムの手にはマシンガン。不意打ちにもいつでも撃てるよう、引き金に手が添えられている。

 クラウンも槍のような武器「ユア・マジェスティ」を手にしている。槍とはいっても外装は近未来的であり、穂先には銃口が覗いていた。

 

「お、お嬢様! 集落らしきものが!」

 

 崖下に、建物がぽつぽつと並んでいる。

 

「まさか、アークがラプチャーから地上を……」

 

 マリアンは、自身の予想を内心で否定する。

 あのような壁ひとつない集落など、すぐラプチャーに破壊し尽くされてしまう。よっぽど世間知らずな人間でなければ、あんなものを建てるわけがない。

 チャイムも疑問を抱いたのだろう、双眼鏡を取り出して覗き込み、眼下の集落へピントを合わせた。

 

「以前にはなかったものですわね。チャイム、何が見えますか?」

 

「はい。一見しましたところ、どうにも人間が住むには小さすぎ……んっ!?」

 

 チャイムが声を漏らしたあと、しばらく呆気にとられ、震える手で双眼鏡を下ろす。その顔はすっかり青ざめていた。

 

「……チャイム?」

 

「お、おお、お嬢様、どうかご自身の目でご覧くださいませ! 私もニケとなってからいろんなものを見ましたが、こればかりは全く見たことがございません!」

 

 差し出された双眼鏡を、クラウンが覗く。

 

「……えっ!?」

 

 と、途端にチャイムと同じように声をあげた。

 さすがに王としての矜持か、彼女は双眼鏡から顔を上げていったん静かに息を吸う。

 

「……マリアン。覚悟してご覧なさい」

 

 神妙な顔で双眼鏡を手渡されたマリアンは、唾を飲んでレンズの向こう側を覗いた。

 問題の光景は、すぐに鮮明に映った。

 鏡餅のような顔、一つ目の化け物、足のついた石、雪だるま、剣士、2足歩行のクワガタ──

 ファンシーな姿である以外いっさい統一性のない生き物たちが、家を建てている。

 

「……」

 

 マリアンは、呆然としたままレンズから目を外した。

 眼下にある光景をどう理解すればいいのか、わからない。

 

「お、お嬢様! ここはいったん、王城に戻って情報を整理した方がよろしいかと! 例の化け物も、あの村と関係があるやもしれません!」

 

「そ……そうですわね。今後、身の()()()をよく考えなければなりませんわ」

 

 3人が踵を返すまでに、長い時間はかからなかった。

 

 

「お〜お~。ずいぶんデッケェ城じゃねぇか」

 

 城に帰ってきた3人が見たのは、城門を見上げる人物、もしくは生き物の背中だった。

 それはふさのついた帽子の冠に白襟の赤いガウンを羽織っており、背の真ん中では青いVサインが鮮やかに自己主張している。

 

「ボロっちぃが、少なくとも吹き飛ばされはしなさそうだな。そうらよっ……と」

 

 振り上げられた右手の黄色いグローブが手にするのは、頭ほどの大きさがある木槌。

 見るからに使い込まれたそれを手にする腕が、力を込めんと唸り出した。

 

「待て、貴様ッ! 我らの王城に何をするつもりなのだ!?」

 

「……んん?」

 

 謎の人物は、チャイムの叫びにゆっくりと振り向いた。

 その珍妙な姿に、ニケたちは言葉を失った。

 顔面積の約半分を占領する楕円形の目。嘴とも唇ともつかない分厚い口。赤と黄のギザ模様を縫い付けた腹巻で覆った太鼓腹。

 背丈は多く見積もってもチャイムの背よりも低いが、横の長さによる貫禄がサイズ差を感じさせない。

 

「チャイム……あれは、なんでしょう」

 

「わ、私もはっきりとは知りませんが、風の噂で、地上にあれと似た『ペンギン』なる生物がいると聞いたことがございます」

 

「ペ……ペンギンは喋りますの?」

 

「い、いえ〜〜、私も詳しくは……」

 

「おい、どーしたー? 何か用があるんじゃねぇのか?」

 

 ペンギンのような生き物は、クラウンたちに遠慮なくズカズカと歩いてくる。

 マリアンとチャイムはぎょっとするが、クラウンは彼女たちに微笑むと一歩前へ。ペンギンのような怪生物を真正面から捉え、優雅な所作でお辞儀をした。

 

「私はクラウン。この城の主であり、王国の王です。あなたのお名前、そして王国に来た理由を教えていただけますか?」

 

「はぁ? 王国ゥ?」

 

 ペンギンは質問に答えるよりも先に、クラウンたち3人とボロボロの城、そしてそれら以外目立ったものがない草原を見渡して鼻を鳴らした。

 

「ハッ。お嬢ちゃんたち。王様ごっこしたいんなら、城くらい綺麗にしたらどうだ?」

 

 その一言で、チャイムの額に血管が浮かんだ。

 

「き、貴様! 王の面前で不敬なるぞッ! 今すぐ発言を取り消すのだ!」

 

「チャイム。落ち着くのです」

 

 クラウンは、怒鳴るチャイムを静かに諭した。

 

「言葉が通じるならば争う必要はありません。自らの足でここに来た以上、ペンギンさんも、きっとこのクラウン王国の民となりたいのでしょう」

 

「……はっ、なるほど! さすがはお嬢様、素晴らしきご慧眼でございます!」

 

「ん、なにぃ? 民、だと?」

 

 目尻をぴくり、と険しく動かしたペンギンに、チャイムは腰に手を当てて厳めしい顔で説明する。

 

「うむ。ここで王の恩恵を受けた者は皆、クラウン王国の民として加護を受けるのだ。貴様がもし助けを必要とするのならば、我らが王はいつでも力に……」

 

「……ふ……ぷぷ……」

 

「……?」

 

「ははは、がぁーっはっはっはっはっはっはっはー!」

 

 ペンギンの大きな口から、豪快な笑い声が炸裂した。

 

「な、なにがおかしい!?」

 

「オレ様を民呼ばわりとはずいぶん舐められたモンだな。じゃあお嬢ちゃんのお望み通り、質問に答えてやろう!」

 

 ペンギンは地面に叩きつけたハンマーの頭に足をかけて見得を切り、誇らしげに自身の顔を親指で示してみせた。

 

「よぉ~~~~く覚えとけ。このオレ様こそは、プププランドで一番偉い『本当の』王様、デデデ大王だ!」

 

 マリアンとチャイムは、その生き物の口から飛び出した奇妙な名前にさらに混乱した。

 

「デ、デデデ……大王……?」

 

「貴様、次はいったい何を言い出すのだ!? そんなふざけた名で騙そうとしても、お嬢様の目は誤魔化せ……」

 

「あら、『太陽』。なんとも情熱的で素晴らしい名前ですわね」

 

「はぁ?」

 

 デデデが眉間に皺を寄せるが、クラウンは一時も笑みを崩さない。

 それを見たチャイムが、急いで王の耳に側立てる。

 

「お嬢様ー! ヤツは不遜にも、お嬢様と同じ『王』を名乗っているのですー!」

 

 クラウンはハッと息を呑むと、冷や汗を取り繕うように口をパクパクさせた。

 

「あっ、わ、分かっておりましたわ。今のはちょっとした小粋な()()()()というところで、おほほほほ」

 

「おい、それ言うならジョー……」

 

「とと、とーにーかーくー! ここはクラウン王国! 貴様がどこの国のだれであろうと、我らの恩恵を受ければ、この瞬間から民となるのだー!!」

 

「……いったい何なんだこいつら……」

 

 必死にぶんぶんと手を振るチャイムに、デデデ大王は逆に困惑の表情を浮かべる。

 一方、マリアンだけは静かに、この未知の人物に対して警戒心を募らせていた。

 

「その大王とやらがさっきはハンマーを振り上げて、この城に何をしようとしてたんですか?」

 

「あー、ちょうど寂れたボロ城を見つけたもんで、改築して住めるようにしようと思ったんだが。もしかしてお前らのか?」

 

 至って軽い一言にマリアンは、紅い瞳を沈黙のうちに怒りに染める。

 

「……そうです。私たちの、大切な家です」

 

「ふーん」

 

 デデデ大王は城を見渡すうち、何かを閃いたようにニヤリと笑うと、ビシッとニケたちを指差した。

 

「よーし。この城、今日からオレ様に貸せッ! お前らは、オレ様直々の家来にしてやるッ!」

 

「え……?」

 

「はああああ!?」

 

 チャイムが素っ頓狂な声をあげる。

 

「オレ様がそこのポンコツなお嬢ちゃんに代わって、この王国もどきを王国らしくしてやるのさ。オレ様の部下たちも入れて、ボロいところを直してや……」

 

「駄目です!」

 

 マリアンの鋭い叫びが、デデデの言葉を遮った。

 

「得体の知れない相手に、なんでいきなり家を明け渡さなきゃいけないんですか!?」

 

「渡せとは言ってねぇぜ。ただしばらく借りるってだけ……」

 

「口先だけなら何とでも言えます!」

 

 ──また、大切なところを奪われたくない。

 かつて彼女が、カウンターズといた前哨基地という居場所を、アークの人間たちから追われた時のように。

 

「ここは、この城は、私たちのものです! あなたがそれを軽んじるのならば、一歩たりとも城のなかに入らせはしません!」

 

「マリアン、よく言ったのだ! デデデとやら。いまさっきの言葉が本気ならば、必ず……必ず、その発言を後悔することになるのだ!」

 

 チャイムがマリアンと並んで睨むと、デデデ大王は、不機嫌そうに扁平足を踏み鳴らした。

 

「ケッ、まったく。いい提案をしてやってるのに、ずいぶん融通の利かん奴らだ!」

 

 デデデ大王は、指を咥えて口笛を吹いた。

 しばらくして、地平線の向こうから振動が伝わってきた。

 すると、あの小さな生き物たちが津波のように押し寄せてきたではないか。

 たちまち彼らはデデデ大王の後ろに並び立って、3人のニケたちに対面した。

 

「!」

 

「フフン。これでもまだ、オレ様が大王じゃないと思うか?」

 

 彼らの手には槍や爆弾が握られ、中には身体そのものが砲で出来たような輩もいる。

 それを見たクラウンの眼光が、初めて鋭くなった。

 

「……デデデ大王、でしたか。もし、我々がその要求に応えないとすれば……あなた方は、私の民に何をするおつもりですか?」

 

「なぁに。あんまりにも礼儀を知らないので、ちょいとばかし痛い目に遭ってもらうだけさ」

 

「そうですか。そこまでして我を通すというのなら……私も民を護る王として、それなりにお応えせねばならないですわね」

 

「ほぉ。やるかい?」

 

 喧嘩を買われたと受け取ってかデデデ大王はニヤリと笑い、ハンマーの柄を両手で握って見せる。

 チャイムとマリアンも、マシンガンの引き金に既に手をかけていた。

 

「マリアン、構えるのだ!」

 

「言われずとも!」

 

 先頭に立つクラウンも『ユア・マジェスティ』を構え、穂先の奥にある銃口に光を溜めようとした、その時。

 

「あーっ、ストップストップー!!」

 

 一本の槍が、クラウンとデデデ大王の間の境界線に突き刺さった。

 青いバンダナを巻いた、口がなく手足の短い生き物が急いで駆けてきた。

 

「お、バンワド。遅かったじゃねーか」

 

「大王さま! ボクが食料調達に行ってる間に、いったいぜんたい何があったんですかーッ!」

 

 すぐに彼はクラウンたちの前に出て、ぺこぺこと何度も頭を下げた。

 

「いや、ホンットすみません。ウチの大王さまが、そちらにご迷惑をおかけしたようで」

 

「迷惑なんかかけてねーぞ。ただ、こいつらがオンボロな城に住んでてあんまりに哀れだったから、オレ様直々に引き受けてやると……」

 

「それを迷惑っていうんですよ~っ!」

 

 部下にたしなめられる王様を前に、呆気に取られるニケの面々。

 バンワドと言われた部下は、地面から引き抜いた槍で、デデデ大王のハンマーをぺしぺしと叩く。

 

「大王さま、ひとまずハンマーを下げましょ。変に無茶なことしたら、またカービィに勘違いされてぶっ飛ばされますよ?」

 

「むー……それもそうか。ほら、お前ら。帰っていいぞー」

 

 デデデ大王はいとも簡単に得物を下げた。部下たちも指示に従い、がやがやと雑談しながらその場を去っていく。不平不満を垂れる者は一切いない。

 危機はいったん去ったとみてクラウンが槍を下げると、チャイムとマリアンも、戸惑いながらもそれに倣う。

 

「ど、どうやら、話が通じるヤツがいてよかったのだ」

 

 チャイムの声を聞くと、バンダナを巻いたデデデの部下は振り返り、槍を立てて礼儀正しく姿勢を正した。

 

「あ、自己紹介が遅れましたね。ボク、デデデ大王の部下のバンダナワドルディと言います。長いので、バンワドとお呼びください」

 

「み……見た目、そのままですね」

 

 最もいきり立っていたマリアンですら、この呆気ない幕切れでは気の抜けた感想しか出てこなかった。

 

「あのー、皆さん。こんな出会い方で恐縮なんですが、よろしければ、ボクと大王さまだけでも事情を話させてもらえます?」

 

 マリアンとチャイムは目線を合わせる一方、クラウンはややあってから頷いた。

 

「……ええ。どうぞ、こちらへ」

 

 特に断る理由もない。クラウンは異邦人たちを先導して正門を潜っていく。

 かくして、二大勢力衝突の危機はひとまずここに去った。




「王と王が出会ったら……」ていうのが、この小説書こうとしたきっかけの一つ。
王可愛いよ王。ニケで最初の推し。あの見た目であの性格というのがたまらん。

執筆活動の大きな励みとなりますので、ご感想や評価、いつでもお待ちしています!
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