勝利の旅人:星のカービィ×NIKKE   作:Misma

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14話:カイン、海へ漂う

 川から恐らくは海の方向へ、流されるがままの魚の姿。

 泳ぐのに役立つのか疑問な短いヒレは微塵も動かさず、特徴的なたらこ唇をだらしなく開いている。

 

「……………………」

 

「あ……」

 

 そのまま魚は目の前を通り過ぎて川下へ流されていく。

 アレだ。

 奇妙な沈黙のなか『カインは絶対に彼に違いない』という謎の確信が、指揮官にはあった。

 

「カインッ!」

「かいーん!」

 

 案の定、当たりだった。

 急いでリックとカービィの後を追い、マンボウに酷似した彼を川から引き揚げる。

 

「ていうか、魚を陸に揚げてよかったの?」

 

 とっくに川縁に寝かせた時になって、アニスがそんなことを言う。

 

「た、たぶん……大丈夫じゃ、ないか?」

 

 魚にしては鱗がない。さらに瞼までしっかり閉じている。

 プププランドの生物の分類は分からないが、リックたちも真っ先に陸に揚げようとしたので気にする必要はないのだろう。

 だが、それにしても全く動かない。

 

「……大丈夫、だよな……?」

 

 指揮官たちは息を飲み、そっとカインの口元に耳を寄せる。

 

「………………………………ぐぅ」

 

「いや寝てんのかーいっ!」

 

「わああああああ!? い、いいいいったいどちら様で──」

 

 カインはアニスの絶叫に飛び跳ね、腹びれだけで器用に立ちあがる。

 直後、指揮官たちを視界に入れるなり、

 

「あっ」

 

 再びその場に倒れ、ぴちぴちと飛び跳ね始めた。

 

「ボ、ボク、ただのお魚ですよ〜。身は大きくても美味しくないんです〜」

 

「なんと、それは残念……塩でも振って漬けておきましょうか」

 

「ひぃっ!?」

 

「ネオン。本気で怖がられてるわ」

 

 ネオンの肩をラピが引き下げたその横から、カービィが、青ざめて震えるカインへ駆け寄る。

 

「かいーんっ!」

 

 彼が「えっ?」とその丸い姿を認めると──

 元から丸い目玉を更に丸くして、すぐに身を起こした。

 

「カ、カービィ、カービィじゃないかぁ~! 無事でよかったよぉ~!」

 

「へへ。お前が一番ドンくせぇから、真っ先に飛んできてやったんだぜ。感謝してくれよ?」

 

「あ、リックも~! まったくヒドいこというなぁ~。ボクだっていろいろ頑張ってたんだよ~?」

 

 リックに対してカインが頬を膨らませる、やっと親友同士の再会らしい空気になった。

 地上でヒレをぱたぱたさせる魚に、指揮官は屈んで目線を合わせる。

 

「君がカインだな? 安心してくれ、私たちはカービィの仲間だ。一緒に旅をしている」

 

 そこでカインはほっとしたように胸をなでおろす。

 

「そうだったんですねぇ。いやぁ驚きましたよぉ、てっきり食べられちゃうかと……え、食べませんよね?」

 

 よっぽど先ほどの冗談が尾を引いているらしい。

 ラピがネオンをジロリと睨むと、彼女はおほんと咳払いをした。

 

「すみません。思わずボケ役魂が騒いでしまいました」

 

「お願いだから、話をややこしくしないでくれ」

 

 そうお願いしつつ、指揮官は新しい仲間にこれまでの事情を話すことにした。

 

* 

 

 この世界と自分たち、そして今までの経緯についての説明を聴くと、カインは驚きながらもなるほど、という風に頷いた。

 

「いやぁ~。そこまでして探していただいて、ありがとうございます~」

 

「えっと、カイン。さっきはどうして川を漂っていたんだ? 経緯を教えてくれないか」

 

「は、はい。まずボク、リックみたいにカービィを探そうとしてたんですが……食べ物を集めてるボクらの世界の人たちを見かけたんです。槍とか持ってたので、陰からこっそり見ただけですが」

 

「ここでもか。やはり、デデデ大王の手下だろうか」

 

 指揮官が呟くと、それにカインはすぐ頷いた。

 

「たぶんそうですね。みんな言ってましたよ。『大王さまに恩を返せ~』とか、『アレだけは大王さまに食わせるな~』とか」

 

「……!」

 

「へへん、やっぱりな」

 

「ぷゅっ!」

 

 カービィがムッとした顔で頬を膨らませる。

 リックの予想通り、食べ物を集めていたのは本当にデデデ大王の手下らしい。

 となると──当然デデデ大王も、この近くにいる。

 

「……それで、その後はどうした?」

 

「ええ、彼らはいったいどこから来てるんだろうって、水面に隠れながら後を追っていったんですが……」

 

 そこでカインは思い出すのも恐ろしいという風に口を窄め、胸びれを慌ただしく振りながら涙目でぷるぷる震え始めた。

 

「そ、そしたら、ちょうど川下であなたたちみたいな大きいヒトたちに見つかって、『今日の夕飯にしますか』とか言われて捕まりそうになったんです~!」

 

「……それはとんだ災難だったわね」

 

 アニスが思わず憐憫の視線を向ける。

 

「で、なんとか気を失ったふりで誤魔化したんですが、このまま海まで行こうとしてるうちにそのまま寝落ちしちゃったみたいで~」

 

「そこで寝れる度胸はあるのね!?」

 

 彼女の同情は秒で崩壊した。

 ……まったくもって、臆病なんだか呑気なんだか分からない魚だ。

 一方、指揮官はもう一つのことが脳裏に浮かんだ。

 

「しかし、この近くでニケと出会ったというのは気になる。カイン、爆発や銃撃のような大きな音を聞いたりはしなかったか?」

 

「いやぁ~、そんな覚えはありませんけど……どうしてですか?」

 

 指揮官はラピと視線を合わせる。彼女は意を汲んだのか、すぐはっきりと頷いた。

 

「同じ山中で活動していれば、両者が接触している可能性が高いということですね。平和的にしろ、暴力的にしろ」

 

「そういうことだ。だが、ひとまず最悪の事態にはなっていないようで安心した。だが、となるとこのきらきらぼしの反応は……」

 

 指揮官が目で合図してカービィに取り出してもらったきらきらぼしは、ますます強く光り輝いている。

 指揮官は両拳を握りしめた。

 

「……エデンにあるものではなく、デデデ大王の持つきらきらぼしに反応していると見た方がいい」

 

「ですが、デデデ大王がこの近くにいると知れたのは大きいです。きらきらぼしを分け与えた張本人に問いただせば、エデンの場所が分かる公算は大きいでしょう」

 

「ああ、そうだな。ここで引き返すわけにはいかない」

 

 ラピの言っていることは正しい。結果的には遠回りになっても、それを補って余りあるほど、デデデ大王から得られる情報は貴重なものだ。

 

「でもどうする? 手下から情報を辿るにしても、素直に『はーい、王様はあそこです』って教えてくれるとは思えないけど」

 

 アニスの言葉に唸っているところ、カインが片手を、もとい胸びれを挙げる。

 

「それならクーに会うといいですよ~」

 

「クー? そういえば、もう一人仲間がいたんだったか」

 

「そうです~。彼なら空を飛べますから、いろいろ知ってると思います~。よければ案内しましょうか? 探索で見つけた裏ルートがあるんですよ~」

 

「ありがたい。助かる……!」

 

 まさに、渡りに船。

 指揮官率いるカウンターズは、カインを案内人として先へ進むことにした。

 

*

 

 森林を行くうち、段々と木々が深くなってきた。

 アニスが少なくなってきた木漏れ日を見上げた。

 

「木も多くなってきたわ。本当にこっちで合ってる?」

 

「はい~。クーは眼がいいので、歩いてればあちらから来てくれると思いますよ~」

 

 その途上、ネオンがいきなり立ち止まり、赤縁の眼鏡を指でクイッと持ち上げた。

 

「むむっ! 私の火力センサーがビンビンに反応してますよ!?」

 

 こういう時のネオンの火力センサー、もとい勘は案外バカにならない。

 ラピが注意深く視線を巡らせて、指揮官の前に腕を広げた。

 

「20m前方正面の樹木、高さ5m。実のような物体を確認。それが、最低でもこの先100m以上は連なっています」

 

 問題の物体はすぐ見つかった。木の上部に、明らかに幹の太さと不釣り合いな大きな実がぶら下がっている。

 

「確かに怪しいな」

 

「あれ、地上の南方にある『ヤシ』って植物の実じゃなかった?」

 

「確かココナッツともいうわ。でも、植生からして見るからに不自然ね」

 

「……どうしたものか」

 

 未知の物体にカウンターズが迷う一方、

 

「ありゃりゃ、あんなの昨日まではなかったのにな~……でも、こっちがクーのいるエリアへの近道だし、どうやっていこっかな~」

 

 カインも明らかに戸惑ってはいたが、カウンターズの戸惑いとは少し毛色が異なる。

 一方のカービィはカインへパラソルを見せた。

 

「かいん!」

 

「あ、その手があったね。ほら、入りなよ~」

 

 何を知ってか、なんとパラソルを持ったまま、上を向いて口を開けたカインの口の中に飛び込んだ。

 

「え。なんでいきなり食べられてんの」

 

「ぁいっ!」

 

 アニスの困惑をよそに、そのままカービィは花瓶に差された花のごとく、カインに頬張られて上半身を出したままのんびり歩いていく。

 パラソルを差して行くその姿は、散歩しているようにしか見えない。

 そこへ待ち構えたように──ココナッツが、独りでに彼らの頭上へ落ちてきた。

 

「危ない!」

 

 咄嗟にラピがライフルを構えようとしたところで、リックが彼女の腰を叩いた。

 

「まーまー、見ときなって」

 

 彼女が、至極のんびりした口調に眉をひそめた直後。

 ココナッツが、大爆発した。

 爆音のあとに黒煙が立ち昇り、何もかも見えなくなった。

 リック以外全員が呆然とするなか、アニスが慌てて爆煙を払って駆け寄っていく。

 

「カービィ、カイン、大丈夫ッ!?」

 

「はぁいっ!」

 

 返事は早かった。顔に煤一つないカービィが、カインの口からぱたぱたとパラソルを持った手を振ってみせる。

 

「だ……大丈夫、みたいね」

 

「皆さん、ここはぜひ、先に行かせてください~」

 

 カインとカービィは、躊躇いもなく散歩を再開した。

 その後も、ココナッツが次々と降り注いでは爆音と爆風の嵐を巻き起こす。

 地獄のような雨の下、平然と傘を差して前進していくカインとカービィ。

 リックはカウンターズの前を先導しながら振り返る。

 

「ほらな、便利だろ?」

 

「うんうん、ほんっと便利。超~助かる!」

 

「そうですそうです! 火力を温存できるのは素晴らしいことです!」

 

 ラピはもう何も言わない。アニスとネオンはすぐ思いつけるような返答を返す。

 爆風から傘を盾にするとは、そもそも傘を盾にできるとは前代未聞だが、彼らのやることなすことに一々反応することはムダだと全員が悟り始めていた。

 

「それにしても、初めて知ったな。ヤシの実が落ちると爆発するものだったとは……」

 

「いやそれは絶対違うでしょ! 誰かが仕掛けた罠よ絶対っ!」

 

「ウホ。よく、気づいた」

 

 指揮官とアニスのやり取りを、低い声が遮った。

 

「え、いま言ったの、誰……?」

 

 全員が辺りを見回すうちに行きついたのは、頭上。

 木の上に、紫色の毛並みにジーンズを履いた猿のような生き物がいた。

 

「げげっ、ボンカース!?」

 

「ひぃ~!」

 

 リックが驚き、カインが怯えて飛び退いた。

 指揮官はボンカースと言われたその生き物を前に身構えた。

 

「……プププランドの者か」

 

「その通り」

 

 ボンカースは呟きながら飛び降りてきた。大地が少し揺れる。

 鋭い目つきに固く結んだ口許、ハンマーを担ぐ丸太のように太い腕。

 やはり身長こそ人間より少し低いが、なかなかに威圧感のある見た目だ。

 自然に、カウンターズの肩にも力が入る。

 

「悪いこと、言わない。ここでカービィ渡して、去れ」

 

 一帯に緊張が走る。

 さすがにここまで来て引き下がりたくはない。指揮官は両手を挙げる。

 

「なぜカービィを渡さなければならない? そして、君はなぜあの爆弾を仕掛けた?」

 

「答える義務、ない。用あるの、カービィ、だけ」

 

 ボンカースはにべもなく答える。それに対し、指揮官は彼を正面に見据え、

 

「さては、デデデ大王の差し金か?」

「……!」

「どうやらそのようね」

 

 ボンカースが眉を上げるのを、ラピは見逃していなかった。

 

「大王さまのこと、知って、ここに来た……お前ら、怪しい!」

 

 彼が太い指をぱちんと鳴らすと、一頭身の生き物たちがどこからかぞろぞろと出てきた。

 おおよそ、前回プププランドに迷い込んだ時に見た住民と似たような特徴を持っている。

 かなりの数の彼らを背後に従え、ボンカースはカインの口から顔を覗かせるカービィに改めて語り掛けた。

 

「カービィ、お前、騙されてる。早く、こっち来い!」

 

「なに言ってやがる! オレたちのこと知ってそう言ってやがんのか!?」

 

「そ、そうだそうだ~……」

 

 リックが声を張り上げ、カインはその背に隠れながら賛同する。

 

「むっ!」

 

 当然カービィは指揮官たちの陣営に立ったまま、顔をしかめて明確に拒否を示す。ボンカースの目つきが鋭くなった。

 

「騙されているとは、ずいぶんな言い草だ。どうやら彼は離れたくないようだが……どうする」

 

「無理やり、連れていく!」

 

 ボンカースはさっと手を挙げた。宣戦の合図だ。

 

「ブロントバード、いけ!」

 

 太眉で凛々しい顔に羽をもった一頭身の妖精とでもいおうか、そんな軍団が丸い手榴弾を持って押し寄せる。

 小型の爆撃機のごとく、彼らは中距離から一斉に爆弾を放り投げた。

 即座にカウンターズは前に出て対応。放り投げられた爆弾を次々と的確に撃ち抜いた。

 

「ラピ、爆撃班はそちらに任せる! 残りの2人は死角をカバー!」

 

「了解!」

 

「なるほど、抜かり、ない。ワドルディ、突撃!」

 

 次に来たのは、カービィと少し似た短い手足の生き物『ワドルディ』の群れ。

 いかにも人畜無害そうなユルい顔つきだが、槍を持っている時点で油断はできない。

 即座にアニスとネオンが指揮官とカービィを護る陣形を整え、引き金を──

 

「こ、怖いぃ……」

「うわ~ん、絶対無理だよ~」

「か、かかって……こい~っ……」

 

 ワドルディたちの士気はお世辞にも高いとはいえなかった。

 そんな彼らが、涙ぐましくもやる気を振り絞ろうとしている。

 

「ちょっ、ちょっとやめなさいって。そういうの反則! こっちが悪者みたいじゃない!」

 

「あんまりにもやりにくすぎます!」

 

 いつの間にか、彼女たちの引き金を引こうとする指は止まりかけていた。

 

「2人とも、惑わされないで! 彼らはデデデの手下に違いはない!」

 

「ダ、ダメだ、私には……」

 

「指揮官まで!」

 

 やはり、可愛さは正義ということか。

 だが、その横からカービィがカインの口から砲弾のごとく飛び出しつつ、傘を振りかぶった。一切迷うことなく一直線に。

 

「たぁっ!」

 

「わにゃ~っ」

 

 パラソルを剣のように薙ぐと、ワドルディたちはまとめて吹っ飛んで星屑となって消えた。

 それを見て、指揮官はプププランドで知ったかの地の理を思い出す。

 

「みんな、彼らが死ぬことはない! 一切の手加減はするな!」

 

「りょ、了解っ!」

 

 ニケたちの切り替えは早く、瞬く間に一頭身の軍団を星に変えていく。

 

「いてーっ!」「ひぇぇぇ~」「きゃーっ!!」

 

 彼らの身体に穴が開くことはなく、フッ飛ばされて跳ねたあと消えていった。

 

「カイン、こっちだ!」

 

「う、うん!」

 

「ぷぅやいっ!」

 

 カービィもリックとカインの間でボールのように投げ渡されながら、目にも止まらぬ傘(・)捌(・)き(・)で、次々に敵を薙ぎ倒しては爆弾も的確に防いでいく。

 ボンカースの横に、どこからか額に絆創膏を貼り付けたワドルディが涙目ではい出ていた。

 

「ボンカースさん、絶対無理ですよぉ~。特にあのニケの方々に、ぜんぜん近づけません~」

 

「おまえら、頑張れ! 数で、押す! 大王さまの、ため!」

 

 そう言って、ボンカースはニケたちの銃を指し示した。

 

「あいつらの、武器、いつか、使えなくなる。そこまで、粘れ!」

 

「ちっ、よく分かってんじゃないの!」

 

 自分たちの武器がいくら強かろうと、実質的に不死身の軍団相手にはジリ貧は必至だ。

 どうにかして、彼らの戦意を挫かねばならない。

 相手もラプチャーより遥かに小さく素早いせいで、ニケたちも感覚が狂っている。

 だが幸い、全体の士気は高くない。ならば、あのリーダーさえ何とかすれば──

 

「そこよっ!」

 

 アニスが指揮官の意図を汲んでか、狙いをボンカースへ切り替えロケットランチャーから弾頭をはじき出す。

 

「来ると、思った。ジャイアントスイング!」

 

 しかしボンカースはハンマーごと自身を独楽のように回転。横凪に振るうことで、爆風ごと弾き返した。

 

「ちょっ、そんなのありッ!?」

 

「コモ部隊、やれ」

 

 音もなく、3つ目のクモたちが一斉にカウンターズの目の前に降りてきた。 

 

「!?」

 

 彼らは口から糸を吐いて、ニケたちの武器を雁字搦めにした。

 

「何よこんなもの、簡単に──きゃっ!?」

 

 アニスが銃に絡まったそれを腕力で引きちぎろうとした瞬間、顔に糸を間髪入れず吐きかけられる。

 ラピとネオンも同じ目に遭い、終いには脚同士を絡ませて転倒させた。

 

「ネオン、脚が絡まっているわ!」

 

「ダメです! こっちの手がアニスの脇腹辺りに!」

 

「ああんもう、そこ触んないでよ!」

 

 それを目の当たりにしたリックとカインは思わず足を止めてしまった。

 

「おい、大丈夫か!?」

 

「待ってください、ボクが助け、うわーっ!」

 

 カインが転んだ原因は、足下に投げられたバナナの皮。

 指揮官が見上げると、ブロントバード部隊がいつの間にか爆弾をそれらに持ち替えている。

 ニケの一時的な無力化を確認するや、瞬時に戦法を変えたのだ。

 

「いつの間に……!」

 

「おい、カイン!?」

 

 隙をついて枝から飛び降りたワドルディたちが、2人まとめてネットを引っかけた。

 後に残ったのはカービィと指揮官だけだ。

 迂闊だった。ボンカースたちは予めこの地を知り尽くしてそれを活用した。

 つまるところ、指揮官たちは最初から負けたも同然だったのだ。

 

「カービィ。こいつら、助けてほしいなら、ついてこい」

 

 指揮官に、ワドルディたちから恐々とながら槍が突きつけられる。

 

「これが、役目。不届き者、捕まえる。言うこと聞かないなら、こいつら、痛い目、遭う」

 

 それを聞いて、指揮官はハッと目を見開いた。

 

「まさか……」

 

 ──カインが川下で会ったニケたちも、こうやって彼らに捕まったのか。

 

「ぷぃっ!」

 

 カービィは迷わずパラソルを振りかぶり、一直線にボンカースへ。

 だが当の大猿は、眉ひとつ動かさなかった。

 

「……知ってた。お前、そういうやつ」

 

 太い指が、頭上を差す。

 枝の上で待ち構えていたワドルディたちが、一斉に網を振りかぶろうとした。

 彼らが見つめるのは、カービィ。

 

「待て、カービィ! 罠だ!」

 

 指揮官が叫んだ瞬間、一陣の風が過ぎ去った。

 網を放とうとしたワドルディたちの目の前に、次々と羽根がダーツのように突き刺さった。

 

「わにゃっ!?」

 

 取り落とされた網が、カービィの目の前にばさりと落ちる。

 カービィがきょとんと立ち止まって見上げた先。

 

「フン、けっこう手間取ってるじゃねぇか」

 

 紫の毛並みを持つフクロウが、枝にとまってこちらを見下ろしていた。




カインの性格、割と本作ではアニメっぽいかも。なんかおどおどした話し方が個人的に似合うんですよね。ゲームでセリフがないのも大きいと思います。こういうキャラだけど、カインアイスとカインスパークはカービィ2で最強能力なんです……。

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