勝利の旅人:星のカービィ×NIKKE   作:Misma

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16話:CASTLE CROWN

「……て」

 

 チャイムは突然の侵入者を前に、立ち竦んだまま叫んだ。

 

「敵、敵、敵襲なのだぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁ!!!」

 

 ピンクボールは、無理やり作った入口から凄まじい速度で駆けだした。

 現在、チャイムの手に武器はない。

 

「ひっ」

 

 反射的に箒ではたこうとするが、相手はスライディングでその下をすり抜ける。

 マリアンはヘレティック由来の能力としてマシンガンを宙から生み出すが、すぐには撃てない。

 迂闊に撃てば、大切な城を傷つけてしまう。

 

「ラプチャーにしては小さすぎますし、あれはいったい……」

 

 ピンクだまはニケたちを一切無視して、城へ一直線に歩いていく。

 

「クラウンの下に行かせるわけにはっ!」

 

 流石にまずいと、照準をピンクだまに合わせようとした、その瞬間だった。

 

「行くぞ! 作戦通り、ニケを確認次第、即座に保護しろ!」

 

「了解!」

 

「え……?」

 

 後に続いて、マリアンにとっては馴染みのある声が響いた。

 振り返った瞬間に目と目が合う。相手の動きも同時に止まった。

 

「マリアン」

「指揮官」

 

 喧騒と土煙のなか、2人の間の空気だけは時間が止まったようだった。

 

「マ、マリアン……マリアンなのか!?」

 

 指揮官が、何度も呼びかける。

 マリアンが震える両手を恐る恐る差し出すと──

 すぐに彼女の身体は、指揮官の両腕のなかにしっかりと抱き止められた。

 

「貴様ぁっ、マリアンに何を……っ!?」

 

 チャイムは第二の侵入者に箒を振りかざそうとしたが、その光景の前にあんぐりと口を開けた。

 

「指揮官! 突撃の最中に、いったい何を……ッ!?」

 

「誰よそのニケ……え? う、嘘でしょ!?」

 

「ず、ずいぶん姿が変わったみたいですが……まさか、マリアンなんですか!?」

 

 銃を持って突撃しかけていたカウンターズでさえ、立ち止まる。

 そこにいたのはかつての自分たちの家族であり、しばらくは顔を見ることのないはずの存在だったからだ。

 

「ラピ、アニス、ネオンッ!!」

 

 マリアンも、忘れようもない3人の名前を立て続けに呼んだ。

 すぐに彼女たちはマリアンの下へ集まる。

 

「ホ、ホントに、みんな、なんですよね。偽物とかじゃなく」

 

「ごめんなさい。私も正直、その可能性を考えてしまったわ」

 

 ラピと顔を合わせたアニスとネオンはいったん咳払いすると、真剣にマリアンを見つめる。

 

「ずばり。下着を着るのは……」

 

「服の上から、それとも下から!?」

 

 突然の問いに、マリアンは一瞬顔を赤らめるが──

 

「上から……でしたけど、今は、ちゃんと下です!」

 

「本物だ!!」

 

 指揮官の叫びとともに、カウンターズは今度こそ4人全員でひしと抱き合った。

 すぐ、指揮官はマリアンの両肩を強く掴んだ。

 

「マリアン! 早くここから逃げるんだ!」

 

「え? なんで……なんで、逃げなきゃいけないんですか?」

 

 困惑顔の彼女を前に、指揮官は歯噛みする。

 

「クソッ。まさかデデデのやつ、洗脳を……!? とにかく、今は外に出よう。詳しい話はそこで……」

 

「ちょっと指揮官、待ってください。言ってる意味が分かんないです!」

 

 両者のやり取りを見ていたチャイムはやがてはっと目を見開いて、

 

「まさか貴様ら、マリアンの……!?」

 

「うおおおおその方たちに手を出すなあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 チャイムの呟きは、幾百の喧騒で遮られた。

 ラピが、指揮官の肩を引き寄せた。

 

「デデデの手下です!」

 

 一頭身の輩が次々に飛び出してくる。

 最前線のカービィは戦士の顔となって、迫り来るデデデ軍団を見据えた。

 その背後から、爆速の砂煙が迫る。

 

「いくぞ、カービィ!」

 

「むっ!」

 

 真っ先に金髪の格闘家『ナックルジョー』たちの蹴りが左右から炸裂するも、その時既にカービィの姿はなかった。

 リックがカービィを背負い、駆け抜けていたのだ。

 

「ふん、おせぇおせぇ!」

 

 爆走するリックの背中でカービィは木槌を振り回し、視界に入る者全てを殴り飛ばしながら敵陣真っ只中を突き進んでゆく。

 

「……」

 

 マリアンとチャイムは、ただただその光景に圧倒されていた。

 腰の高さほどもない小さなピンクボールが、迫り来る大量の軍勢を次々と空の彼方へ吹っ飛ばしていく。

 英雄か悪魔のような暴れっぷりだった。

 

「かかれー!」

 

 何十体ものワドルディたちが長槍を持って、包囲陣形で突進を仕掛けるも、

 

「頼むぜ、カイン!」

 

 リックは鼻でカービィを持ち上げ、迫り来る槍の雨を飛び越えると同時に放り投げる。

 ちょうどその先、庭園の水路をカインが急いで泳ぎながら、口を開けて待っていた。

 丸い口の中に、まんまるな体がすっぽり収まる。

 

「い、いくよ、カービィ!」

 

「ぽよ!」

 

 カインは目一杯頬を膨らませると、大砲のように勢いよくカービィを吐き出した。

 

「ごく・だいしゃりん!」

 

 カービィはその速度のまま体を捻り、自らが独楽のように回る砲弾と化す。

 その生きた弾は、爆走して敵陣を掻き乱すリックの上空、彼へ爆弾を落とそうとしたブロントバードたちを蹴散らしつつ、クーの爪に受け止められた。

 

「よっしゃ、じゃあ大暴れと行くか!」

 

「ジャイアントスイング!!」

 

 クーは羽を広げるとそのまま回転、ボンカース戦で見せたような動く竜巻と化し、その下のカービィの木槌により残った航空部隊を次々と殲滅していく。

 

「マリアン、怒ら……ないんだな」

 

「は、はい。昨夜、城の工事中に爆発が起きて、あの方たちの何人かが消し飛んじゃったんですけど……」

 

 マリアンが指差した先。消滅したはずのワドルディが、庭園の植え込みからひょっこり顔を出し、頭を振って、また槍を拾って駆け戻っていく。

 

「すぐ、あんな風に出てきたので。最初はびっくりしちゃいました」

 

「そ、そうか。確かに驚くよな、あれは」

 

 頷くしかない指揮官に、チャイムが駆け寄る。

 

「そんなことより、まず、貴様! 貴様はまさか、マリアンをアークから逃して寄越した、指揮官とやらか?」

 

「!? なぜそれを!?」

 

 指揮官とニケたちが戸惑う一方、破茶滅茶な戦場のなか、クーは飛び回りながらある箇所に目をつけた。

 

「ふん、あの偉そうなアイツが幹部か」

 

「げっ、気づきやがった!!」

 

 クワガタのようなボクサー『バグジー』が、空中のカービィたちを睨む。

 ワドルディたちが、必死に槍をバグジーの前にかざして防御しようとする。

 クーはカービィの頭を掴んで急上昇。槍が絡み合ってあわあわしているワドルディたちの頭上へカービィを落とし、後は重力に任せる。

 

「ジャイアントハンマーおとし!」

 

 カービィはチカラを込めると木槌を巨(・)大(・)化(・)さ(・)せ(・)、そのまま振り落とした。

 地面が唸るほどの衝撃波をその身に受け、ワドルディ軍団は一挙に蹴散らされる。

 

「ぐ、ぐげげ……」

 

 バグジーは仰向けに拳でハンマーを辛うじて受け止め、ほぼ圧し潰される形で藻掻き苦しみながらも、混乱する軍団を前に息を吸い込む。

 

「カービィどもばっかに見とれてんじゃねぇ! 命の恩人たちをテメーらは見捨てんのか!?」

 

 鶴の一声で一斉に視線が指揮官たちへ集中し、軍団の一部が枝分かれした。

 

「うわぁぁぁん、めちゃくちゃ怖いですけど、お二人とも今、お助けしますーっ!」

 

「そこの狼藉者、さっさと放しやがれー!!」

 

 銃を構え、引き金を引こうとしたカウンターズの顔は、それでも困惑に満ちていた。

 彼らが思い描いていた図とは、まるで状況が違う。

 手下たちの手が彼らに伸びかけた直前、チャイムが代わりにその前に立って両手を広げ、軍勢を食い止めた。

 

「ま、待て待て待て! 私もさっぱり訳が分からんが、何やら両方、大きな誤解があるようなのだ! とりあえず手を止めるのだ!」

 

「へ?」

 

「誤解ってどういうことです?」

 

 手下たちが顔を見合わせていると、

 

「者ども、控えおろーッ!!」

 

 扉を乱暴に開け放ったその一言で、城内の部下たちは一斉に道を開けた。

 城の道の中央を、ガウンを着こんでハンマーを担ぐペンギン、そして白のドレスに黒いズボンを纏った流れるような金髪のニケが、並び立って胸を張って歩いてきた。

 カービィはリック、カイン、クーを後ろに立ったままそのペンギンを真っすぐに見つめ、

 

「でででっ!」

 

「カービィ! それと陸海空3人組も一緒か。よくここまでやってきたな」

 

「……んよ?」

 

「私はクラウン。この王国の王ですわ。あなた、デデデのお友達ですね?」

 

 彼女の柔らかな微笑を見て、初めてラピが目を見開く。

 

「指揮官、思い出しました。以前にスノーホワイトが預けてきたという『安心できるところ』……白騎士を名乗る姉妹!」

 

「っ! となると、ここが!」

 

 やっとか、という風にチャイムは溜息を吐くと、びしっと姿勢を改め、箒を杖のように地面に立たせた。

 

「ここはクラウン王国! 私は気高く美しき王であるクラウンお嬢様にお仕えする秘書、チャイムなのだ!」

 

「いろいろツッコミたいところだらけだけど……だったら、なんでデデデに乗っ取られてんのよ!?」

 

「はああああ、乗っ取られるぅ!? 奴は大食らいでわがままで大迷惑な、ただの居候なのだ! この国の主は今も変わらず、お嬢様……」

 

 アニスの問いに、チャイムがデデデを指差してキンキン喚くが、デデデは彼女には一瞥もくれず、じっとカウンターズを眺めて鼻を鳴らした。

 

「ふん。なるほど、アイツらがカービィの新しい仲間か。相変わらず、いつでもどこでもトモダチを作りやがる」

 

 デデデの前へバンダナワドルディが槍を横に、遮るように割り込む。

 

「大王さま、なに一丁前にカッコつけてんですか! 早いとこ事情説明して、さっさとカービィにきらきらぼし渡しましょうよ!」

 

「気が変わった。思えば、ちょうどいい機会だ」

 

「……へ?」

 

「見るがいい、クラウン。オレ様の超弩級のわがままを」

 

 クラウンに振り向いてみせると、デデデ大王は眼下にいる全員に向かってバッと両手を広げた。

 

「者どもっ! これからオレ様は、サイッコーのデスマッチを開く! 形式は……最初にアイツとぶつかった、あの日を完全再現!!」

 

 それを聞いたデデデ軍団は、一斉にどよめいた。

 いずれの眼にも驚きと、そして輝きがあった。

 

「もちろん、誰であっても手出しは無用! これは……オレ様と、アイツとの戦いだッ!!」

 

 デデデはそう拳を握りしめて叫ぶと、最後に、天へ向かって拳を振り上げた。

 

「お前ら! 余ってる資材をありったけ持ってこーい! 秒で支度しろ!」

 

「ははーっ!」

 

 あっという間に軍団は、クラウン王国の倉庫目掛けて駆けて行った。

 それを見たチャイムは、血相を変えてデデデに飛び掛かる。

 

「貴様ーっ! やっぱり我らの王国を乗っ取るつもりで……」

 

「がっはっは、工事で余った資材を使うだけだから心配はいらねぇ。この庭先に、超絶愉快なモンが出来上がるだけさ」

 

 チャイムが振り回す箒を掴んだまま、デデデはバンダナワドルディに振り返る。

 

「お前には設計の指示を頼む。コイツさえ黙らせるくらい、スゲーもんを作らせろ」

 

「あーもう大王さまったら……分かりましたよ、もうッ!」

 

 デデデは不敵に笑うと箒を突き返し、そのまま堂々とした足取りで倉庫の中へ消えていった。

 バンダナワドルディはそれを追いつつ指揮官たちの方に振り返ると、手を振りながら大声を張り上げた。

 

「あのー、本当にこの度はすみません! 絶対にあなた方に危害は加えないと保証しますので! どうか、大王さまの勝手なわがままを、聞いてやってくれませんか!? ただ見てるだけでいいのでー!」

 

 呆気に取られたまま、カウンターズは顔を見合わせる。

 続いてバンダナは倉庫の方に何かを指示すると、部下からリレーのようにして赤い物体を受け取った。

 

「カービィ、トマトあげるからちょっとバトルは待っといてー!」

 

 そうして手慣れた手つきで放り投げられたのは、「M」の文字が書かれたトマト。

 

「わぁっ!!」

 

 さっきまで闘志に燃え盛っていたカービィの顔が、完全に食欲に塗り替えられる。

 すぐに彼はハンマーを脇に置いて、そのトマトを美味しそうに頬張り始めた。

 

「い、いったい何が始まるというんだ……?」

 

 これから何が起こるか予想できないのは指揮官始め、クラウン王国のニケ陣営も同じ。

 チャイムが慌てて駆けて行き、自らの手で持ってきた王座に座る我が王の顔を覗き込む。

 

「お嬢様、止めるなら今のうちでございます。このチャイム、指示さえくださればただちにバンダナを通じて何とか説得を……」

 

「結構ですわ」

 

「……え?」

 

 望みが民への奉仕しかなかったこの国の主の眼に、確かに興味の色が浮かびつつあった。

 

「デデデの超弩級のワガママとやら……私、この目で拝見したくなりました」

 

「お、お嬢、様……?」

 

 チャイムは、目を丸くして主を見つめ、しばし、迷ったように視線を巡らせた。

 しかしやがて彼女は決心したように見返して、頷いてみせた。

 

「……承知いたしました。お嬢様がそう仰るのならこのチャイム……そのご判断に身を委ねます」

 

 ワドルディを中心に、数分後には4本の支柱の上に四角い足場が組まれた。素材には、頑丈なラプチャーの残骸を使用。

 足場の四方を軸に、3本のロープが巻かれる。

 並行して作られるのは木造で作られた、即席の観客席。

 足場にペンキを使って塗られていくのは、ドヤ顔でピースをする自己顕示欲たっぷりのデデデの顔。

 そして最後に背後に建てられた巨大な看板には、こう書かれていた。

 

『チャンピオン デデデ大王 vs チャレンジャー 星のカービィ』

 

 指揮官たちが呆気に取られているうち、一頭身の者たちは次々と歓声を上げて観客席に飛び込んでいく。

 

「リング……だと?」

 

「ごっほん。さあ……第何回目でしょうか、カービィ対デデデ大王。宿命のデスマッチが再びやって参りました。勝利の女神はどちらに微笑むのか。この日、いよいよ何度目かの決着がつきます!」

 

 バンダナワドルディがカンペを幾度か見つつ、大声で読み上げる。

 

「入場、チャレンジャー・カービィ!」

 

 カービィはちょうどトマトを食べ終わると、勢い良くリングに飛び込む。

 大半がデデデの手下のはずなのに、なぜか湧き上がる大歓声。

 彼は嬉しくなったのかその場でハンマーを持ったままあちこちへ手を振り、雰囲気に流されるままよく見える席に座ったカウンターズを見つけると、そちらにも笑顔で宙返り、飛び跳ねてアピールした。

 

「あの子、ホントその場のノリで生きてるわね」

 

「なぜこんな展開になったのか、理解に苦しむわ……」

 

「フフフ……こうなったら私たちこそ、カービィにとっての勝利の女神になるまでです!」

 

 次にバンダナワドルディは、反対側へ手を伸ばす。

 

「続いて入場、チャンピオン・我らがデデデ大王さま!」

 

 カービィと同等か、それ以上の歓声が巻き起こった。

 城の方からわざわざワドルディたちに神輿に担がれ、あちこちへ手を振るデデデがやってくる。

 腰を上げ、その身に合わない大跳躍でリング上に踏み込んだ。

 もう一回上がる歓声。

 大盛況を満足げに見回したあと、デデデは太鼓腹をポンと叩き、がなった。

 

「がっはっは! 者ども見るがいい、オレ様の大活躍を!」

 

 興奮冷めやらぬなか、ゴングは鳴らされた。

 

「では、デスマッチ……スタートッ!!」




実はメインストーリーでは割と珍しい、洗脳なしデデデ大王とのガチバトル、いざ始まる!
次回は明日、もしくは土曜日に投稿予定。

初期に大型連休は毎日投稿!と意気込んでおいてなんですが、今年の祝日ペースをよく確認してなかったせいでシルバーウィークでストックが予想以上に溶けており、ちと焦ってます。(事前に確認しとけや!!)
UAを見ていてもとにかくずっと連日投稿すればいいわけでもなさそうだし、引き続き連休ではなるべく連日投稿・最低週1更新を心掛けますが、場合によってはきついかもしれません。でも、少しでもお話をお届けできるよう頑張ります!

執筆活動の大きな励みとなりますので、ご感想や評価、いつでもお待ちしています!
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