先行はデデデ大王。大きくハンマーを振りかぶり、カービィに食いかかる。
「おりゃああああああああ!」
カービィは難なく一撃を避ける。振り降ろされたそのハンマーは、リングに容易くヒビを入れた。
「へへっ! 腕は鈍ってねぇみてぇで安心したぜ!」
次にカービィが、避けざまに力を込めていたハンマーをデデデ大王の脇腹にぶち当てようとする。
デデデはそれを予期したかのように、己のハンマーを横に振って盾にした。
木槌同士で火花が散った。
「マリアン。少し見ない間に、ずいぶんと成長したようだな」
観客席で丸い友の勇姿を見つつ、指揮官は、隣のマリアンの頭を指の背でそっと撫でた。
「包帯も、ずっと巻いてくれていたのか」
「はい。これがあればいつでも指揮官の温もりを思い出せましたから」
マリアンがそう微笑む向こうでは、デデデ大王がカービィを圧し潰そうと高く飛び上がった。
「なんだか、話し方が大人らしくなりましたね!」
「カービィ以上に手が付けられなかった子が、ここまでねぇ……」
ネオンとアニスの感傷に浸った表情に、マリアンは思わず顔をほころばせる。
リングではカービィが寸前で飛び避けた目の前で、デデデが脆い床を破砕しつつ陥没、下半身を埋まらせる。
「ごめんなさい。あの時は私、文句ばかりごねて」
「いいのよ。むしろ、いまのあなたが無事で……よかった」
目を伏せたマリアンに、ラピは優しく語りかける。
一方のカービィはしめたとばかりに、デデデの顔をハンマーで3連、4連、5連と滅多打ちにする。
再会の喜びを分かち合うカウンターズに、チャイムがそっと横から顔を出す。
「水を差すようで悪いが、カービィの心配はしなくていいのだ? ま、まぁ、今は優勢のようだが……」
それにネオンは、得意げにかちゃりとメガネを掛け直した。
「甘く見ないで下さい。カービィの火力は伊達ではありませんので」
「そういうあんたこそ、デデデが心配じゃないの? けっこう滅茶苦茶な目に遭ってるけど」
「あ、あんなヤツ、私は……」
アニスから視線をそらすチャイムを前に、改めて指揮官は姿勢を正した。
「チャイム。今一度、君たちの置かれている状況を聞かせてほしい。我々はとある場所に行くため、カービィと共にきらきらぼしという宝を探している」
チャイムは「……なに?」と指揮官へ振り向き、箒を取り落とした。
*
顔中をたんこぶだらけにされたデデデは気を取りなおし、飛び上がってリング上に復帰する。
「へへっ。オレ様の直伝のハンマー、よく使ってんじゃねぇか。だが……本家本元のハンマーは、それ以上にすげぇぞ?」
続いて取っ手を下に面をカービィへ向けたハンマーの内部から、機械音を立ててバルカン砲が飛び出した。
カービィの驚いた顔を見て、デデデ大王は満足げに笑った。
「あら、デデデ。いつの間にそんな
「へへん、テメーらの武器を参考にさせてもらったぜ!」
特別席にいるクラウンに、デデデはそう笑って見せた。
カチッと引き金を引いた瞬間、カービィに向かって容赦なく銃弾が弾かれる。
「どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあ!」
リングに無数の穴が空き、カービィへ一直線に進む。
「どうでぃ! 流石のお前でもこれには手こずるだろ!」
だが、音速を超える弾の雨を前にして、カービィは動じなかった。
彼は姿勢を低くして滑り込むことで、難なく弾雨を躱す。
射線を調整するデデデにインコースで走り寄り、ジャイアントスイングで強引に銃弾を弾き返しつつ、一挙に距離を詰める。
そうして潜り込んだ懐から、勢いを殺さないまま、ハンマーを思いっきり顎下から叩きつけた。
「ぐっ……やるじゃねぇか……ッ」
よろめいたデデデ大王は顎を撫でつつ──
「流石は……星のカービィだ!」
思い切り息を吸い込んだ。
「ぉよっ!?」
カービィの身体が大きな口に収まったかと思うと、そのままリングのロープへ吐き出された。
「むぃっ!!」
今にもロープがはち切れんばかりの一撃を喰らったカービィは、一時その場に倒れ伏す。
「ちょっと、カービィ!」
慌ててアニスがリングに頭を出し、手を振って叫ぶ。
「待って2人とも、今すぐ攻撃をやめてーッ!」
「あにしゅ?」
「さっきチャイムから事情を聴いて、誤解があったって……お互い敵じゃないってはっきり分かったのよ! だから──」
「手出し無用つっただろ!」
デデデはカウンターズへ片手で『No』を突きつけ、リングへハンマーを思い切り叩きつけた。
ニケたちの身体が、部下たちの身体が一瞬浮き上がる。
辺りは一気に静まり返った。
「今回の件が誤解だなんてのは、百も承知! このオレ様が気づかねぇと思うか!?」
ぐっ、とデデデ大王は親指で自信満々に自身を指さしてみせる。
「いいか、オレ様はいまな、最高に燃えてンだ! コイツと久しぶりに、まともな形でハンマーを交えられるのがよ!」
デデデ大王は、ハンマーを真っすぐカービィへと突きつけた。
「それはテメーもだろう、カービィ?」
「……ぽよっ!」
デデデが笑うと、カービィも満面の笑顔を返した。
「ぃよしっ! そんなら再開とするかっ!!」
両者はすぐ、同時にハンマーを構えた。
ゴングが再び鳴る。
指揮官は、その時の自称プププランドの大王の表情から目が離せなかった。
楽しんでいる。
冤罪の被害者とは思えない、溌剌とした表情で。
カービィも罪の意識すらなく、今この瞬間を最大限に楽しんでいる。
「がんばれ、大王さまー!」
「がんばれ、カービィー!」
乱れんばかりの歓声が飛ぶ。
野次など一つもない、ただ一つのこの光景を、2人の対決を全力で楽しもうとする者たちの声。
「うむ。いい、眺め」
少し辿々しく低い声が聞こえた。
指揮官が弾かれるように横を向くと、そこには腕組みして静かに試合を見守るゴリラの姿があった。
「ボ、ボンカース!?」
「さっきは、どうも」
「す、すまない、あの時は……!」
「あの、ニケとの、連携。見事、だった」
指揮官の謝罪を、ボンカースは賞賛で断ち切った。
戸惑うカウンターズに、彼はもさっとした頭をぼりぼりと搔く。
「俺こそ、すまん。口下手だから。よく、勘違いされる。ほら、見ろ。いまはただ、楽しめ。それでいい」
言葉少なだが、ボンカースは口元に柔らかい微笑みを浮かべていた。
「フレー、フレー、大王さま! ちゃ、ちゃ、ちゃ!」
「今日もハンマー捌き、最高ですぜ、大王さまー!」
「大王さま、最強! 無敵!」
ワドルディたちが、バグジーが、ボンカースが声を張り上げる。
「カービィ、やっちまえーッ!」
「キミならいけるはずだよ〜、カービィ〜」
「あの自称大王に今更負けるわけねーよな、カービィ!」
リック、カイン、クーが声を張り上げる。
そして観客席のどこかで、
「どっちも頑張れー!!」
ワドルディの1体が、いや、決して少なくない人数の手下たちが、飛び上がりながら全力で叫んだ。
しばらくそんな歓声を聞き届けて、マリアンがそっと指揮官の顔を覗いた。
「あ、あの、指揮官。私、デデデを応援して……いいですか?」
「……もちろんだ、マリアン。だが、私はカービィを応援させてもらうぞ」
2人はどこかおかしそうに笑い合うと、リングへ向いて声を張り上げた。
「デデデ、頑張ってくださーい!」
「カービィ、負けるなーッ!」
カウンターズもそれを見て頷き合うと、息を吸って──
「カービィ、顔を徹底的に! 視界さえ塞げば!」
「ええーい、もうこうなったら行くとこまで行っちゃいなさーいっ!」
「両方とも、火力、火力、火力ーーーーッ!! すべてを焼き尽くすのです!!」
3人揃って声援に参加する。
カービィたちがハンマーを遠慮なくぶん回し、リングの床に穴を開けまくる。
デデデがハンマーの裏側から発射した爆弾が、炎柱を上げる。
もはや、リングはただのガラクタの寄せ集めとなる。
それでも歓声と熱狂は王国中に鳴り響き、止むことはなかった。
「な、なんと、これは……」
「デス
特別席の王と臣下も、この盛り上がりを前に目を見張る。
そして、これで何度目か。ハンマーがかち合った衝撃で、カービィとデデデは互いにリング端までずり下がった。
「……やるな、カービィ。テメーはまさしく、オレ様の永遠のライバルだ」
傷つきボロボロになったハンマーを、デデデは不敵な笑みを浮かべて握りしめた。
「この奥義を見せるに、相応しい!」
ハンマー後部が開き、ノズルが飛び出す。
そこから青い炎が噴射した。
「ジェットハンマー、限界突破ァ!!」
瞬間、デデデ大王の身体が浮いた。
巨体が、瞬く間に空へ空へと高く舞い上がっていく。
「あれは……風水……」
「りゅ、流星でございます、お嬢様!」
すべての観客が、上を見上げたまま呆気に取られる。
しばらくその生きた流星は、青空に滅茶苦茶に何度も弧と円を描き──
「でぇりゃあああああああああああああああああ!!」
光った。
急転直下、隕石のごとく地上のカービィへ一直線に突撃する。
ちょうどその頃、カービィは一歩たりとも動かず。
代わりに握るハンマーが、急速に熱を帯びていた。
「ふぅぅぅぅぅ……ッ!」
決着は一瞬。
そのことを、観客たちの全員が悟る。
ごくりと生唾を飲み、沈黙して見守る。
両者の距離が一気に縮まった。
リングが衝撃波で吹き飛ぼうとする、その刹那。
カービィが振り放った、業炎をまとった木槌。
それがデデデの木槌が直撃するまで、0.01秒という寸分の差で。
デデデの太鼓腹へ、アッパーカットで叩きこまれていた。
「おにごろし、かえんハンマーッ!!」
「どんぎゃーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
クリーンヒット、ホームラン!
思い切り吹っ飛んだデデデ大王はリングを遥か飛び越え、頭から城の塔にめり込んだ。
ごーん、ごーん、ごーん……。
頂にあった鐘がゴング代わりに、クラウン王国の敷地に鳴り響いた。
*
「んぃっ!」
カービィは、ニケたちと共にデデデ大王の身体を引っ張って引き抜いた。
顎が外れたように伸びきって気絶したデデデを、みんなで支えて地上へ降ろす。
やがてカービィがハンマーで顎下を「んしょっ」と叩いて元に戻す。
「はーい大王様ー。さっさと起きてくださーい」
バンダナワドルディが槍の柄でデデデの頬をつつき、目を覚まさせる。
「あっ……ちっ、負けたか。ったく、テメーは相変わらずつえぇなぁ。ま、次はこうはいかねぇがな」
デデデはそうぼやきつつ、カービィから笑顔で渡されたマキシムトマトを頬張った。
指揮官はずっとその様子を見て考えていた。
──いったい、カービィとデデデ大王の関係とは何なのだろう。
すれ違いや誤解という、自分たちにとってはあまりに苦しく重いものを、彼らは軽々と乗り越えてみせる。
その両者の姿が、指揮官にはあまりにも眩しく見えた。
「……私たちの世界も、ああであれたら」
叶うわけもない願いを口にした瞬間、背に気配を感じた。
「……」
振り返ると、クラウン王国の秘書チャイムが、むすっとした顔で腕を組んでいた。
「デデデ。カービィ。よぉ~く後ろを見るのだ」
「んぁ?」
「ぽよ?」
彼らが振り向いたのは、王城の中でも最も大きな塔。
その中央に、見事なまでにデデデ型の穴が開いている。
「貴様らが! 暴れたせいで! 塔が! 壊れた! のだッッ!!」
怒り心頭で叫ぶチャイムから、デデデ大王はそーっと視線を逸らしつつ、
「あ、あぁ~、すまんすまん。そんじゃ部下にささっと……」
「ならーん!」
小さな身体から出るとは思えない声量で怒鳴られた。
「カービィ、デデデ! 貴様らには被害箇所すべて、完ッ璧に修繕してもらうのだ!!」
「げ、げげーっ!!」
「ぽよ?」
「ぽよじゃない、はいなのだ!」
「はぁい!」
「せめて深刻そうな顔をするのだ~~!!」
ともかくも、カービィとデデデの自慢のハンマーはそのまま、大工道具としてこき使われることとなったのだった。
*
「滅茶苦茶ですわね」
クラウンが城を歩く最中、振動のあまり城の割れかけた壁面をなぞる。
ちょうど前を歩いていたバンダナワドルディが、さっと青ざめて地面に顔を擦り付けた。
「本当に本当に本当に本当に本当にすいません! もうあの自称大王とピンクだまは永久追放でいいんで! どうか部下たちだけはー!!」
バンダナが青い顔で何度も頭を打ち付けて土下座懇願する一方、クラウンは眼を細める。
その先にはひーひー言いながらハンマーを釘に振るうデデデ大王と、楽しそうに次の資材を持ってくるカービィの姿があった。
「本当にどこまでも滅茶苦茶に光り輝いていますわね。あの方たちのわがままは」
え、とバンダナは顔を上げる。
クラウンはデデデたちに対して、どこか羨望の混じった笑みをたたえていた。
*
修繕も一通り終わったところで、一同は食卓に集った。
「ってーわけで、まずはほれ。渡してやろう」
デデデは、きらきらぼしを懐から取り出しカービィへ放り投げた。
「わぁい!」
受け取って喜ぶカービィを横目に、指揮官は顔を引き締める。
「デデデ大王、さっそくだが本題に入りたい。君がカービィにきらきらぼしを渡す目的は?」
「エデンへ向かって、マルクとマホロアをぶっ飛ばす」
「! 君まで、エデンの名を?」
──あの平和なプププランドに戦艦が、そしてそれを所有する個人がいるのか。
慣れというものは恐ろしいもので、指揮官は決して驚きの声を上げることはない。
だが、改めてその戦艦すらも凌駕する存在に、危機感を懐かずにはいられなかった。
「ちょっと待って。申し訳ないけど一つだけ言わせて」
そこに、ずいとアニスが顔を突き出す。
「ウィスピーウッズの件は大変だったわよ。最初に『カービィが来たらきらきらぼしを渡して』って説明したらよかったじゃない。それなら、この城だって無事だったでしょうに」
物怖じしない彼女のツッコミに対し、デデデ大王は肘をついて不機嫌そうに掌でバンバンとテーブルを叩く。
「そういう事情は、このオレ様からコイツに直接伝えてやるつもりだったんだよ」
デデデは、吞気にリンゴをつまむカービィの頭を掴み上げた。
「ぉよ?」
「コイツにとって異世界への遭難なんざ、ちょっとしたピクニックみたいなもんさ。すぐにこっちの危機を察して帰ってくるようなタマに見えるか?」
「……見えませんね」
構わずリンゴを真顔でかじるカービィを前に、ネオンは確信をもって頷いた。
「だから、カービィを連れ戻してから全部渡してやる方が手っ取り早い。そう考えたわけさ。ま、お前らと出会ったことまでは予想外だったがな」
次にデデデは空いた方の片手を挙げ、背後にいるバンダナワドルディに合図を送った。
「で。話を戻すと、カービィ探しでプププランド中を部下に走らせてたら、こーんなモンが出てきやがった。ほら、テメーはこれを見てオレ様の城に向かったんだろ?」
デデデは、バンダナワドルディから受け取ったピンク色の手紙を、掴み上げているカービィの目の前へ突き出した。
現地の文字に、Vサインのハンコが書かれている。
カービィはそれを見ると目をまん丸にしてリンゴの芯まで飲み込み、わたわたと手足を振った。
「ぱーてぃ! ぱーてぃ!」
「なるほど。それが、カービィが受け取った招待状か」
「そうだ。そこにまさしく『エデン』の名前が載っていた」
指揮官に、デデデは真っすぐ頷いた。
「この手紙は、マルクとマホロアの仕業だ。カービィは、アイツらの罠でこの世界に連れてこられたんだよ。だから、こりゃ腰を上げなきゃならねぇとオレ様たちが直々に……てわけさ」
「で、私たちの城が壊されかけたのだ」
部屋の隅っこで食事当番をしているチャイムが、凄まじい量の野菜を切っては鍋に放り込みつつ悪態をついた。
その気苦労を想いつつ、指揮官は話を前に進める。
「……なるほど、事情は分かった。だが、彼らは君に濡れ衣を着せてまで、エデンへカービィを導きたいのか? いったい、何のために」
「分かんねぇ。だが仲間からの最後の連絡によれば、エデンは光学迷彩で姿を消す上にえげつねぇ武装を持ってるようだ。居場所が分かったところで素直に通しはしねぇだろう」
それを聞いたアニスは、テーブルに肘をついて思いっきり溜息をついた。
「意味分かんないわねー。カービィを入れたいのか入れたくないのか、ハッキリしなさいよ。ねー、カービィ。困るわよね?」
「むい!」
彼女がカービィと目を合わせると、彼もぷくっと顔を膨らませた。
──たぶん、何も分かっていないのだろう。
その脇で、指揮官がテーブルの木目を見て過去の記憶を洗い出しているうち、思い当たるところがあった。
「……インヘルトとマホロアたちの間には、何やら確執があるようだった。あちらにもあちらで事情があるのかもしれない」
研究所で対面した時の一件だ。彼らはカービィの存在を彼らから知らされていながら、『カービィを狙うラプチャー』については全く知らなかったのである。
「しかし、共通点もあります。まずインヘルト部隊は、エデンの座標を簡単には教えたくないはずです」
ラピは頷くも、難しい顔で進言する。
「一方で、マホロアたちもわざわざこの世界にきらきらぼしを持って逃げてきた以上、何らかの方法で探知を妨害している可能性があります」
「……そうだな」
指揮官は机の上に置いた拳を、静かに握りしめる。
その考えこそ頭の隅にはあったが、いざ口に出されると、自分たちがどれほどか細い糸に縋りついているのかをまざまざと見せつけられる。
「仮にエデンがマホロアたちの技術で丸ごと改造されていた場合、今のままの私たちに尽くせる手は……」
しかし指揮官たちの表情とは正反対に、デデデは余裕綽々で顎を撫でていた。
「ふっふっふ。実は……尽くせる手が一つだけあるんだよなー、これが」
カウンターズが注目すると、待ってましたとばかりにデデデは指を1本立ててみせた。
「実はな。きらきらぼしを3つ手に入れると、とある特別な能力が発動するんだ」
「……そうなのか?」
目を見張る指揮官の横で、ネオンが両拳を握りしめる。
「おお! では、ウィスピーウッズからもらった分とここでもらった分、そしてあともう一つさえ揃えば……」
「ああ。真正面切ってエデンへ入れる。最初っからオレ様の計画はこうだった、ってワケさ」
「すごいです、デデデ大王! 人って見かけによりませんね!」
「いやはや~それほどでも……」
照れかけたデデデの顔が豹変する。
「って、テメー! オレ様の見かけがなんだってー!?」
……何というか、実に顔がうるさい王様だ。
「あ、す、すみません! あまりに特徴的な顔ですので、つい!」
「特徴的ィ~~!?!?」
もうお前は喋るなという風にアニスがネオンの口を塞ぎ、ラピが、ハンマーを持ち上げたデデデを身を挺して宥める。
「……話を進めたい側の気持ちも、少しは考えてちょうだい」
ラピはネオンをたしなめつつ、ハンマーを掴みながら冷静に問いただす。
「デデデ大王。そのもう一つのきらきらぼしは、どこに?」
舌打ちしたデデデは、しぶしぶハンマーを下ろす。
「そのやられた仲間が持っていた。ずっと遠くのようだが、反応を辿ってけば分かるはずだ」
途端に、カウンターズの顔に不安が浮かぶ。
「大丈夫なの? エデンや他の勢力に襲われて奪われていたり、そんな可能性は……」
「心配ねぇ。戦艦はこれまで何回も堕ちてきたが、アイツ自身はいつでもシャキッと立ち続ける。そんな気高く強い漢だ」
ラピの疑問にも腕組みして断言するデデデの言葉は、確信に満ちていた。
「……なるほどな。その仲間にさえ会えば、きらきらぼしに頼らずとも交戦時の情報から大まかなエデンの位置が割り出せる。そういうことだな、デデデ?」
「おうともよ、話が早くて助かるぜ。そんあとは突撃あるのみだ」
そう言って指揮官を見るデデデの目つきは鋭い。
「アイツは待ち続けているはずさ。カービィがやってくるのを信じて」
「ぽよっ!」
デデデがカービィを見つめると、彼は屈託のない笑顔で頷く。
その顔を見て、指揮官も腹を括った。
──これは無謀な賭けなどではなく、長年の信頼と実績に基づいた計画なのだ。
「分かった。では私も、その友を信じるとするか」
指揮官が同意し、ニケたちも頷いた──
途端に、デデデが掌をいきなりこちらの方へ押し付ける。
「と、その前に」
「……その前に?」
──世界の命運を分けるかも知れないときに最優先するほど重要なこととは、いったい何だろうか。
疑問に思った指揮官の前で、デデデは息を思いっきり吸い込み、ハンマーを真上に突き上げ、そして叫んだ。
「パーティーで、腹ごしらえだ~~~~~~~~~~~!!」
「……パーティー?」
指揮官は、思わずオウム返ししてしまった。
カービィも、青い瞳を星空のように煌めかせて飛び上がる。
「ぱーてぃーっ!!」
手紙にはなかったパーティーが、かつてカービィが期待に胸躍らせたパーティーが、形を変えて蘇る。
会場は、もちろん──クラウン王国。
「ぱー……てぃー……?」
目の光を失ったチャイムの手から、ジャガイモがぽろりと零れ落ちた。
64個目の皮を、剥いたばかりだった。
お約束書くの、やっぱきもちい~~~~!
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