勝利の旅人:星のカービィ×NIKKE   作:Misma

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24話:記憶のないトモダチ

 メティスとワードレスが顔を合わせる、その数十分前。

 カウンターズの指揮官は、姿勢を正して画面と向かい合っていた。

 

『──状況は概ね把握した』

 

 皺ひとつない軍服を着た精悍な男性が、画面越しに頷いた。

 アンダーソン副司令官。

 アーク中央政府所属であり、指揮官の直属の上司にあたる。

 

『君たちはD-WAVEを介さず来訪した未確認生命体「カービィ」を、中央政府に無断で保護したまま任務を開始。現在はエデンの部隊に奪われたアンチェインドを取り返すため、彼の故郷の秘宝「きらきらぼし」を集めている。これでいいな?』

 

「はい」

 

『これを、私に報告した理由は?』

 

「あなたなら、この意味を理解していただけると思ったからです」

 

 指揮官が真っすぐに画面を見つめる。

 アンダーソンはこちらを見つめ返しながらふむ、と顎髭を撫でる。

 

『……マリアンの件が根拠かね。私なら、良からぬ連中の手からカービィたちを庇ってくれると』

 

「甘い考えと思われるでしょうが、もはや時間がありません。プププランドの存在が明るみに出れば、上層部は黙っていないでしょう。最悪、市民を扇動して侵略活動を計画するかもしれません」

 

 瞬間、あちらの目が細められ、注がれる視線が鋭くなるのを感じた。

 後方にいるカウンターズからも、ごくりと唾を飲む音が聞こえた。

 

『……いま、君は非常に危険なことを言っているぞ。アークの明日の存続より、目の前にある食糧と資源の山を手つかずにしておく方が大事だと』

 

「むしろ私は、アークの存続のためにこの判断をしています」

 

『どういうことか、説明してくれるかね』

 

「ここにいる彼が、そんなことは絶対に許さないからです」

 

「はぁい!」

 

 カービィが指揮官の肩に乗っかり、笑顔で無邪気に目の前の画面へ手を振った。

 アンダーソン副司令官の厳しく引き締められていた顔が、虚を突かれたようにやや緩んだ。

 

『……それが、カービィか。単体でロード級ラプチャーに大打撃を与えたという。失礼ながら、とてもそうには見えないが』

 

「仲間の話によれば、彼は太陽と月の喧嘩を止め、布と毛糸にされた世界を元に戻し、機械化された星から侵略者を追い出し、宇宙から来た黒い雲をも退治しました」

 

 アンダーソンは眉間に皺を寄せ、しばらく黙った。

 

『……すまない。君は何を言っている?』

 

「気が狂ったと思われても仕方ありません。ですが彼の実力を隣で見た身としては、それらも事実と思える説得力がありました」

 

 振り向くと、指揮官の背後のカウンターズも揃って頷く。

 ラピが前に進み出る。

 

「彼の持つ『吸い込み』と『吐き出し』は、自身へのあらゆる攻撃を反撃に転化できることを意味します。加えて、飲み込んだ対象の能力を自分のものとする『コピー能力』……素の戦闘センスもさることながら、戦えば戦うほどカービィが有利になると言っても過言ではない特質です」

 

 カービィは何となく褒められたと思ったのか、「きゃははいっ!」と無邪気に喜び、ラピの肩に飛び移ってアピールするように跳ねる。

 ラピは「こら」と叱りながらカービィを片手でつまみ、胸の下に抱き込んだ。

 それだけ見ていれば、本当にただのぬいぐるみのようだ。

 指揮官が苦笑するも上司の手前、咳払いして顔を引き締め直す。

 

「それだけではありません。彼には星ぐるみで並び立つ実力を持つ『トモダチ』がいます。しかも生死の概念すら大きく異なる種族です。地下に100年以上籠りっぱなしのアークが下手に手を出したりすれば……」

 

 しばし、沈黙が訪れた。

 アンダーソンは、腕時計に少しばかり目線を落とす。

 

『ひとまず君たちの言い分は分かった。いったん、この後の会議では高官たちの眼を地上から逸らさせておこう。ちょうど現在、アウターリムが騒がしいようなのでね』

 

「っ……ありがとうございます」

 

 深く一礼する指揮官を見ながら、アンダーソンは手を組みなおした。

 

『さて。このことは、私と君たちとだけの秘密にしておくかね』

 

「……イングリッドCEOとマスタングCEOにも伝えてください。前者は状況によってはやや読めませんが、後者はきっと、最善の判断をしてくれると信じています」

 

『ほぅ。そこでシュエンを省くとは、随分と主観が入った判断じゃないか?』

 

「いえ。客観的に見ても、彼女に伝えておくメリットは一切ありません。デメリットしかありません」

 

『……いくら秘匿回線といっても、念のため言葉には気を付けろ。あれでも一応、三大企業のCEOなのだからな』

 

 その時、何かに気づいたネオンが振り返って叫んだ。

 

「みんな、隠れてっ!」

 

 瞬時に傍受を避けるため通信を端末の電源ごと切り、全員が近くにあった岩陰に滑り込む。

 数十秒後。どこからか、空気を重く切り裂くプロペラ音が鳴り響く。

 ラピが抱くカービィの口をそっと押さえて、息をひそめて通過を待つ。

 音が遠くなってまた数十秒後、ラピが岩からわずかに顔を出し、双眼鏡を通じて通過した物体を観察した。

 それが山の向こうへ消えて戻ってこないことを確認してから、通信を再開する。

 再びアンダーソンの顔が映った。

 

『状況の報告を』

 

「ミシリス製のステルス輸送機です。恐らくは極秘任務用。方角は……我々が向かうきらきらぼしの反応と、ほぼ一致」

 

 ラピの冷静な分析の横で、アニスが歯噛みする。

 

「まさか、もうシュエンに見つけられてたっていうの……!?」

 

『断定は出来ないが、そうだとすれば凄まじい嗅覚だな』

 

「ミシリスの通信網は、アークのインフラ全域を支配しています。地上の情報の断片を繋ぎ合わせ、発見したとしても不思議ではありません」

 

 ラピの言葉を受けて、指揮官は拳を握りしめる。

 

「……プププランドの秘宝が、奪われるかも知れない」

 

 よりによって、シュエンの手に。しかも、こんなタイミングで。

 

「全く。人の邪魔にかけては一流ですね、あの社長は!」

 

「デデデが言ってたメタナイトってのが簡単に倒されるとは思えないけど……嫌な予感しかしないわ」

 

 ネオンとアニスは、輸送機の飛んだ方向を真っすぐに睨んだ。

 

『安易な接近は推奨しない。もし君たちがミシリスの極秘部隊とまともに鉢合わせれば、厄介なことになるぞ』

 

「はい、それは心得ています。しかし、となると残る手は……」

 

 アンダーソンからの忠告に、指揮官の視線がラピの手元へ移った。

 

「はぁい!」

 

 カービィがすぐに笑顔を浮かべて手を振った。

 そこへ指揮官が少し屈んで、視線の高さを合わせた。

 

「カービィ。すまないが、私たちはここから動けない。少しだけ、きらきらぼしについて偵察──こっそりと隠れながら調べてもらえるか?」

 

「んゃ?」

 

 最近になって感じ取れるようになったが、何のことだかさっぱり分からないという顔ではない。しっかりと話を聞いてくれている。

 指揮官は、カービィが、易しい言葉と身振り手振りを交えれば大抵のことを理解してくれると分かってきていた。

 

「きらきらぼしが今どうなってるか、少し様子を見るだけでいい。なるべく、さっきの飛ぶキカイには見つかるな。何か分かったら、すぐに帰ってきて私たちに教えてくれ」

 

「ぅんやぁっ!」

 

『……本当に通じているのか? しかも一人で向かわせるようだが、大丈夫かね』

 

 アンダーソンは訝しげだが、指揮官は迷わず頷く。

 

「はい。たとえ当該部隊に遭遇したとしても、彼が捕獲されるなどの可能性は低いと考えています」

 

『随分と信頼が大きいな。私の目にはかなり危うげな綱渡りに映るが』

 

「彼は純粋ですが愚かではありません。それに正直なところ、カービィの存在がミシリスに漏れることそのものより……」

 

 画面の向こうの視線が、ラピの胸の下にいるピンクの丸い存在に注がれる。

 

『シュエンにきらきらぼしをアークに持ち込まれる……正しくはそ(・)の(・)後(・)の方が、よっぽど恐ろしい。そう言いたいのだな』

 

「はい」

 

 再びアンダーソンは腕時計を見やると、鷹揚(おうよう)に頷いた。

 

『分かった。私は5分後に会議なので、これで失礼する。諸君の健闘を祈る』

 

 敬礼とともに通信終了を確認すると、ラピが屈んでそっとカービィを腕の中から解放する。

 

「カービィ。くれぐれも無理はしないで。分かった?」

 

「はぁい!」

 

 カービィは敬礼代わりに元気いっぱいにカウンターズに手を振って、背を向けた。

 ぽぽぽ、と軽い足取りで草原を走り、追ってきたワープスターに飛び乗って、青空を駆けていった。

 

*

 

 メティスが去った後の雲の海(グレープガーデン)は、悲鳴で溢れかえっていた。

 

「わーん、たすけて~!」

 

「ヒェーッ!」

 

 飛行ドローン2体が檻に入れられた大量の住民たちを連れ、ゲート外にある輸送機へ行列を成して運んでいく。

 同じ装備、同じ顔に同じ型のバイザーをつけた量産型ニケたちが列の両脇につき、見張りを行っていた。

 

「行けーッ! プププランドをノッポどもから守るのだーッ!」

 

 そこへ雲の足場を伝って、ブーメランや槍、剣を持った一頭身の集団が現れる。

 量産型ニケの1人が表情を変えないまま、無線端末に呼びかけた。

 

「……10時方向、上空の足場に敵を確認」

 

『了解』

 

 しかし、彼らの得物が彼女たちに届くことはない。

 彼らが飛び掛かろうとする寸前、雲の足場がロケットランチャーの弾頭の直撃により霧散。

 当然、後は落ちることしかできない。

 

「ギャーッ!」「うわーっ!」

 

 彼らのほとんどが頭から雲に埋まり、虚しく藻掻いている間に2体の飛行ドローンによって檻を被せられ、捕獲された住民たちと同じ行列に加わる。

 運よく立ち上がってきたのは、ブーメランを持ったピエロ『ポピーブロスJr.』のみ。

 

「こ、こうなりゃヤケッパチだーっ!」

 

 その一心で投げられたブーメランは、アサルトライフルで撃ち抜かれる。

 量産型ニケたちの視線が、歩いてくる2人のニケへ向く。

 

「……」

 

「わーん、もう何もしませーん!」

 

 ワードレス部隊だ。

 前方にいるユニは、丸腰になった途端にあっさり降伏した彼を、無言で柱の前まで追い詰める。

 そして、右手で銃の形を作り──

 

「ばん」

 

 撃つような動作とともに手の中を赤色に光らせる。

 しかし、相手はキョトンとするだけだ。

 

「え、な、なに? リアクションが欲しいの……? う、うわ~っ……」

 

「……これもダメ」

 

 倒れるふりをしていた彼は慌てて立ち上がり、涙目になりながら両手を擦り合わせた。

 

「す、すみませんすみません! ノリについてけなくてすみません!」

 

「謝らなくていいわよ。こちら側の勝手な事情だから」

 

 続いてミハラが前に出て手を翳すと、全身から青い波長が放たれてポピーブロスJr.を包み込む。

 それを確認すると、彼女は自身の左手の甲をつねってみせる。

 

「どう、あなた? 左手に痛みはあるかしら?」

 

「……あ、ありませんけど」

 

「……そう。なら、いいわ」

 

 ポピーブロスJr.は訳も分からないまま頭上から檻を被せられ、連れ去られていった。 

 

「ど、どゆこと~~!?!?」

 

「このタイプもハズレね。比較的人間に似てると思ったのだけれど」

 

 輸送担当の一組であるミシリス製量産型ニケたちが、ドローンを見張るついでに顔を寄せ合う。

 

「……あの失(・)敗(・)作(・)、また試してんの? あれで何度目?」

 

「ラプチャー捕獲任務への復帰がかかってんだってさ」

 

「なるほど。さすがは社長の元(・)オキニだけはあるってわけ?」

 

「もうここの生き物には無駄だって分かりきってんのに、必死なモンよね」

 

 ユニが振り向いて量産型ニケを無表情で見つめると、彼女たちは何事もなかったように歩いていった。

 

「……」

 

「気を落とすことはないわ、ユニ。ノルマは最低限確保できたわよ」

 

 ユニの持つ『感覚遮断』、ミハラの持つ『感覚交換』。

 前者は視覚や聴覚などの感覚を奪うことで拘束し、後者は自身の痛みを目標と交換する。対象はニケ、ラプチャー、人間と幅広い。

 だからこそ、このような捕獲任務には抜群に相性がいい──はずだった。

 

「……あの子たちには分からないんだろうね。二度と元に戻らないモノを失った気持ちなんて」

 

 ユニはぼそりと呟きながら、灰色の目でまた雲の上に現れた軍勢を見やる。

 

「……ユニ」

 

「えへへ。まぁ、いいや。失敗してもいい憂さ晴らしになるし」

 

 そして空虚に笑い、残る反抗勢力に向かっていく。

 

「ほらミハラ、一緒にやろうよ」

 

「……ええ、そうね」

 

 新たに判明した法則として、彼らは過剰な攻撃を加えれば星屑となり、またどこからか蘇ってしまう。

 

「か、かかれ~! 怯むな~!」

 

 だから『痛み』を利用する。

 何度も大きな音を出す。何度も叩く。何度も爆風で吹き飛ばす。

 

「ひぃ~、おにぎりあげますから許してください~!」

 

 追い詰め、怯えて動けなくなったところをドローンで捕獲する。

 

「あ、ありゃりゃ!? 閉じ込められ……」

 

 ただ、それだけの作業だ。

 原住民捕獲を命じられたワードレス率いる第二部隊の戦果は、数だけでいえば悪くない。

 だがそれは決して彼女たちだからこそ出来たことではなく、言ってしまえば量産型ニケでも可能なことだった。

 

「うっわ。いまこっちにも当たりそうだったんだけど」

 

「ユニとか言ったっけ? 絶対いつか問題起こしてインキュベーター部隊送りだよ、あれ」

 

 大量の冷たい視線を背に受けながら、ミハラは彼女の隣に立つことしかできない。

 決して埋まることのない、見えない溝の向こう側に。

 

「……カービィさえ、見つければ。名誉を取り戻しさえすれば」

 

 ──イチからやり直して、『仲の良かった』時に戻れるのだろうか。

 ミハラは何度も鞭打つユニの背を見ながら、そう自分に問いかける。

 その時後ろから、ぶよん、ぶよん、と地面で弾む音がした。

 

「あれあれ~? いったいぜんたいどうしたんだろ~」

 

 振り向くと、紺色のずんぐりとした塊がいた。

 一言でいえば、間の抜けた顔をしている。

 焦点の合わない丸い瞳、薄く開けられた口からでろんと垂れた長い舌。

 それが警戒心の欠片もなくワードレスへと飛び跳ねて近づき、挨拶代わりか、舌を上に挙げて振る。

 

「こんにちは~。ボク、グーイっていいます~。そこのおっきいお方、何してるんですか~? 鬼ごっこですか~?」

 

 ユニはゆっくりと振り向いた。

 まるで新しいオモチャを見つけた子どものように笑って、鞭をバシィンッと地面に叩きつけた。

 

「あはははは! 新しいタイプの原住民だよ、ミハラ! 捕まえようよ!」

 

「……ええ、そうね。あなたたちは下がっておいて」

 

 ミハラがアサルトライフルを構え、量産型ニケたちに合図する。

 そして照準を覗き、引き金を引く。

 マズルフラッシュとともに銃口から弾かれた銃弾は、グーイのすぐ横の雲に突き刺さった。

 

「んっ?」

 

「へへ、ユニがたっぷり遊んであげるよ!!」

 

 ミハラが作った隙をつき、グーイと名乗る生き物へユニが一瞬にして距離を詰める。

 既に鞭は振り上げられている。

 もはや見慣れた景色がまたしても繰り広げられようとした、その時。

 

「べろ~ん」

 

 ユニが振るった鞭を、彼は舌を巻きつけるようにして受け止めた。

 下へ突き抜けるはずの彼女の腕が、途中で縛られたように止まった。

 

「ちょっとちょっと、危ないじゃないですかぁ~」

 

「……え?」

 

 思わずミハラが目を見張る。

 身長差10倍弱、そして仮にもニケのチカラを、彼は苦も無く舌一本で受け止めてみせたのだ。

 

「な、なんなの、コイツ……」

 

 ユニも驚愕を隠せていない。

 そこへ新世界の住民たちが集まり、グーイの背後から声をかける。

 

「グーイ、ちょうどいいところに来たじゃんか~!」

 

「そいつら、侵略者なんだ! ササッとやっつけちゃってよー!」 

 

「え~、そうだったの~? わかった~」

 

 グーイは、あくまで間抜けな顔と間延びした声のまま答える。

 ユニはぎりっと歯を食いしばる。

 

「……バカに……してくれちゃって!」

 

 彼女はならばと鞭ごとグーイを振り回そうとしたが、それを察知したようにグーイは舌を離す。

 

「ユニ、離れてッ!!」

 

 ただならぬものを感じたミハラが、アサルトライフルを再び構える。

 今度は直撃コース。

 しかし、放たれた銃弾は舌で器用に素早く絡めとられ──そのまま、食べられた。

 

「!?」

 

 ミハラは、一歩後退りする。グーイは、銃弾をがりがりと音を立てて咀嚼し始めた。

 

「うっひゃ~、すんごく速いタマ~! 味は、う~ん……フツーかな~」

 

「グーイ、よかったらこのパラソル使ってー!」

 

 後方で観戦していた一人が、赤白模様の傘を投げ、銃弾を飲み込んだグーイは、それを舌で受け取る。

 

「ありがと~」

 

「それが……なんだっていうの!?」

 

 激昂したユニがロケットランチャーを構え、撃ち放つ。

 対するグーイは、舌を使ってパラソルを盾にした。

 爆発が起こった。が、当たり前のように傷一つつかない。

 

「なんなの、コイツ……!?」

 

「これまでの原住民と、何かが根本的に違う……」

 

 ミハラが、戸惑う量産型ニケたちに振り返らないまま叫んだ。

 

「みんな、下がって! 並みの相手じゃないわ!」

 

 グーイは、パラソルを頭上でくるくるさせながら聞いた。

 

「もぉ~、まずは話し合いましょうよ~。あなたたち、いったい誰ですかぁ~?」

 

「……ワードレス。私はミハラ、彼女はユニ。あなたたちを捕まえにやってきた……そう、悪者よ」

 

「そ~なんですか~。見たところおトモダチみたいですけど、一緒になって悪いことしちゃ~いけませんね~」

 

「……友達?」

 

 ユニが、あははは、と笑う。

 

「違うよ。ミハラは私にとって……この世に一つしかない、私の歯車だったの」

 

「歯車~? 一緒にごろごろ転がって遊ぶんですか~。楽しそうですね~!」

 

「……」

 

 眉間に皺を寄せるユニをよそに、グーイはふと気づいたように、舌でハテナマークを作った。

 

「あれれれ? でも、『だった』ってど~いうことですか~?」

 

「……今のミハラは……ミハラじゃないから」

 

 ますますグーイは口をへの字に曲げて首を傾げるばかり。

 ミハラが息を吞んで、ユニを見た。

 彼女の視線はミハラへ向かわなかった。それどころか、グーイすら見ていなかった。

 

「全部忘れたから。私が刻み込んであげた傷を、思い出を、何もかも忘れたから。ユニのことを大好きだったミハラは死んだの。永遠に戻ってこないの」

 

 独り言を言いながら虚空を彷徨っていたユニの視線が、やっとグーイに戻る。

 

「分かるでしょ? たとえトモダチでも、自分のことを忘れられたらその人は赤の他人になるんだって」

 

「え~!?」

 

 グーイは純粋に驚いたように飛び跳ねた。

 

「トモダチのことを忘れたらトモダチじゃなくなるんですか~!? そんなこと、初めて聞きましたよ~!」

 

「……は?」

 

 ユニが、半笑いで問いかける。

 

「本っ当に何も考えないで生きてるんだ。自分のことに当てはめれば分かるでしょ?」

 

「んー、ボク、いろんなことぜーんぶ忘れちゃってますけど、今でもボクのトモダチはずっとトモダチのままですよ~?」

 

「……え」

 

 ユニが言葉を失い、ミハラがグーイの顔を覗き込む。

 

「どこまで……忘れたの?」

 

 グーイが斜めに身体を傾け、ぐるぐるぐるぐる瞳を回す。

 

「え~? ん~、ボクが生まれたところとか~? あと、トモダチと旅をしたっぽいこととか~? とにかく、な~んにもぜ~んぜん覚えてませ~ん!」

 

「……そうなんだ。ふぅん、それはよかったね」

 

 満面の笑みで答えたグーイに対し、ユニは鞭を握りしめ──

 憎悪に染まった涙を浮かべながら振り上げた。

 

「あなたがおめでたい頭で生きてて、本当に……ッ!」

 

 その時、雲の中から影がユニとグーイの間に割り込んできた。

 ピンクで丸い身体がグーイと絡まり、鞭の一撃から逃れるように転がった。

 先に起き上がったボールは、グーイに笑顔で手を挙げた。

 

「ぐーい!」

 

「あ、カービィ! 久しぶり~。前はいつ会ったっけ~?」

 

「うぅややぁい!」

 

 ワードレスは、その乱入者を思わず凝視した。

 

「え? あなたが……あの、カービィ?」

 

 シュエンから提示された最重要捕獲目標であり、ワードレス名誉回復のための切り札。

 それは彼女たちの視線に気づくと、むんっと眉を引き締めてグーイの前に立ちはだかった。




ニケのためだけに有給取って新章とイベント読んだけど……感慨深いという気持ちが先に来ました。「あの子がこんな場面で」とか「あの子がこんな展開に」とかいろいろね……(語ること多すぎるがネタバレ防止)
そして案の定、本作のプロット後半への影響がデカすぎて笑った。もはや根っこから改修レベル。でも、こうやって原作に翻弄されるってのもけっこう楽しいもんです。

勝利の女神:NIKKE、4周年イベントでガチャし放題だしストーリーだけ読みたい勢にもめちゃくちゃ優しいから、始めるなら今がオススメですぞ!可愛い女の子がいっぱいでハートフルなストーリーだよ!!(今更感)

また、今後の執筆の参考とするため新しいアンケートを開設しました。この件に関しては活動報告で書いておりますので、具体的意見がある方はそちらに書いていただけますと幸いです!

執筆活動の大きな励みとなりますので、ご感想や評価などお気軽にどうぞ!

ニケ側の人物が多い回をどう読んでいますか?

  • 全員把握して読んでいる
  • 主要人物だけ追っている
  • 雰囲気で読んでいる
  • 正直ついていけないときがある
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