プププランドのヒーロー、カービィ。
彼がワードレスの前に現れた瞬間、取り巻きの空気が一気に湧き立った。
「わーい、カービィだー!」
「グーイと一緒ならムテキだね!」
量産型ニケたちは歓声に押されている。
──真正面から戦えば、恐らく勝ち目はない。
そう直感したミハラは一歩前に進み出ると、頭を下げた。
「カービィ、グーイ。手荒なことをしてしまってごめんなさい」
量産型ニケたちが無言で顔を見合わせ、ユニも訝しげにミハラの背中を見た。
戦闘態勢に入っていたカービィも目を丸くする。
「実は、私たちの世界には『侵食』という病気があるの。心まで別のものに変えてしまう病気がね。空に穴が開いてから、それがこちらに移っていないか心配で、みんなを調べさせてもらっていたの」
「びょーき?」
「ええ。痛みを訊いたのも、その検査よ。でもこちらの言葉が足りなかったせいで怖がらせて、こんなことになってしまってね」
「ぉよ?」
「でも、あなたたちのように強い子なら、侵食に負けない理由が分かるかもしれない。どうか私たちと一緒に来て、力を貸してくれる? もちろん、捕まえた子たちは全員解放するわ」
ミハラはカービィに向かって手を伸ばす。儚げな表情を絶やさず、いかにも不運な善人という顔で。
「おお! 悪いことをやめてくれるんですね~。そりゃよかった!」
「ぽよ!」
カービィとグーイが一緒に笑顔を浮かべた瞬間だった。
遠巻きに見ていた、手足の短い一頭身──確か、ワドルディと言ったか──の集団が、同じような顔を並べて騒ぎ立てる。
「カービィ、グーイ、騙されるなー!!」
「ついこないだ、空の穴にみんな吸い込まれた時みたいになるぞー!」
「そうだそうだ! 暗いトコロでずっと回し車を走らされるんだー!!」
思わぬ横槍に、ミハラは眉を上げた。
「あら。平和そうな土地の割に、ずいぶん苦労しているのね」
「ぽよ?」
「……困ったわ。どうすれば信じてもらえるのかしら」
カービィは、ワドルディたちとミハラを交互に見やる。
その無垢な顔を見て、ミハラは胸を痛める。だが同時に、どうにかユニを戦わせず場を収めたいという焦りもあった。
──私ったら、ずいぶんと必死になるのね。
そう、胸の内で呟く。
ユニと仲良く過ごした記憶はないのに、自分の中にある説明のつかない何かがミハラを突き動かしていた。
「まだ信じてるの? カービィさえ捕まえれば、全部元通りになるって」
ミハラがはっと振り向くと、ユニがゆらり、と亡霊のように前へ進んでいた。
「シュエンが約束を守るわけないじゃない。アイツにとって、私たちは……」
「ユニ!」
肩を掴んで止めようとするが、ユニの歩みは止まらない。彼女の視線は、カービィたちにしか向いていなかった。
「どこまで行っても、ただの鉄くずなんだから!」
彼女はミハラを突き放して、ロケットランチャーを構えた。
「ダ、ダメッ!」
引き金が引かれ、弾頭が発射された。
「わわ〜っ」
「むぃっ!」
カービィが口を開けて吸い込み、弾頭ごと頬張った。
「トモダチのことを忘れてもトモダチ!? あはは、笑わせないでよ!」
ユニは間髪入れず雲の地面を蹴り、鞭を振り上げて迫った。
カービィたちは同時に、放たれた一撃を軽々と左右に分かれて避ける。
「どうせカービィもグーイも、お互いのこと大して好きじゃないんでしょ!? なんとなく仲良くなって、なんとなく仲良くして!」
鞭をめちゃくちゃに振り回すユニの瞳から、いつの間にか涙が溢れていた。
攻撃は精彩を欠いている。子どもの起こした癇癪と、そう変わりなかった。
「何も喪わないし! 喪っても喪ったことにすら気づけないから! そんなことが言えるんだっ!!」
ニケから放たれた攻撃だけあって、雲が千切れ、柱にヒビが入る。
しかしそれを前にしても、カービィとグーイの表情は変わらなかった。
「なんだか難しいこと言ってるな~。なんとなくじゃダメなのかな~」
「ぐーい!」
「そ~だね~。とりあえず今は──」
グーイがにょろんと舌を伸ばし、弾頭を頬張ったままのカービィをその上に乗せた。
「暴れてる子は、止めてあげないと!」
「ぅいっ!」
カービィがぽーん、とバレーボールのように打ち上げられ、ユニの頭上を通過する。
彼は空中から、頬張った弾頭を星型の弾にして死角から吐き出した。
「ユニッ!!」
ミハラが咄嗟に援護。アサルトライフルの銃弾が星型弾を数回撃ち抜き、何とか打ち消す。
「……」
反射的にうずくまっていたユニに、ミハラが駆け寄る。
「ユニ、怪我は──」
「……お願いだから、何もしないで。『本物』の真似をしないで」
背を向けたまま彼女から震えた声で返ってきたのは、拒絶の言葉。
思わず立ち竦んだミハラをよそに、ユニは再びロケットランチャーを構える。
ただ手当たり次第に、何度も撃ち放つ。
ミハラは理解した。
今のユニの頭からは、捕獲任務のことなど完全に抜け落ちている。
行き場を失った感情のはけ口を、この世界に、あの2人に求めているだけだ。
戦場は、灰色に包まれていた。
弾けた雲と爆煙のなかで、ユニは息を荒くして獲物を待ち構えた。
「……そこっ!!」
小さな影へ鞭を振るうが、それは瞬く間に煙の中へ飛び退いて消える。
その間にカービィが、背後からユニの懐に素早く滑り込んでいた。
「うっ……!?」
姿勢を低くしての、スライディングキック。
脚を崩すことで手元が緩む。
「あれ、吸い込めそうだよ~!」
そこを狙いすまし、再び煙から飛び出したグーイの舌が打ち払う。
鞭が、ユニの手から離れる。
「いたっ……」
「うんゃっ!」
カービィは手放された鞭を吸い込み──
飲み込んだ。
「ウィップ!」
丸い身体が光り輝いたかと思うと、カービィの姿は様変わりしていた。
その手には鞭、頭にはウェスタン風の赤帽子。彼は凛々しい顔で、鞭をぱしんと鳴らしてみせる。
「変身……した……?」
ミハラが愕然とする一方、あまりにも鮮やかなコンビネーションを見せつけられたユニは──
「ただのトモダチのくせに、ただのトモダチのくせに、ただのトモダチのくせに──」
絶叫した。
今度はカービィへ直接、ロケットランチャーを構えるユニ。
もはややぶれかぶれとしか言えない行動だったが、
「とりゃ~っ」
グーイがロケットランチャーを舌で絡めとり、投げ飛ばす。
完全に丸腰になったユニは、なおも鞭を奪ったカービィへ飛びかかるが、
「百れつウィップ!」
目にも止まらぬ鞭捌きで腕を打たれ、怯んだところへ、
「パラダイスタイフーン!」
カービィは、鞭をプロペラのように振り回して上昇。
風圧はすさまじく、周囲の煙が一瞬にして晴れた。
ユニは腹に直撃を浴びて吹っ飛び、背後にあった柱に激突、轟音と共に吐血した。
「ぐ、ぐぅっ……」
なおも、ユニはカービィを睨んで手を伸ばす。
「ユニッ!」
ミハラが見かねて駆け寄ろうとしたとき──
グーイの身体が、浮き上がった。背に6つのオレンジ色の球体が生え、回転している。
「う~ん、これなら流石にやめてくれるかな~」
ミハラは言葉を失った。
──グーイの背から、一つの目玉が無機質な瞳でミハラを覗いていた。
「ダ~クレ~ザ~」
グーイの眼前の空間が歪み、漆黒の雷が放たれた。
それは再び立とうとしたユニの頭のすぐ真横を一直線に掠め、石柱に穴を開けた。
ピンク色のツインテールの一部が、焼き切られた。
「ぁ……」
ユニの表情が、一瞬で恐怖に塗りつぶされた。
「やめて!!」
ミハラの悲痛な叫びに、カービィたちの動きが止まった。
「お願いだから、ユニの頭と胸だけはやめて! そこをやられたら、私たちは……あなたたちみたいに『やり直せない』の!」
当の本人たちは、驚いて目を丸くする。
「ぽよっ!?」
「そりゃ大変だ~! これからでっかい人たちを相手する時は気をつけないとだね~、カービィ!」
「ぅんやっ!」
「ユニさん、大丈夫ですか~?」
慌ててカービィが鞭を吐き出して元の状態に戻り、グーイと一緒に心配げに駆け寄る。
「あはは。やっぱり」
ユニは虚ろな視線で、柱にもたれたまま天を見上げていた。
「やっぱりユニたちはシュエンの言う通り、こんな玉っころにすら情けをかけられる鉄くずなんだ。あははは。あは、はははははははは」
笑っていない顔で乾いた笑いを上げるユニ。
それをカービィは不思議そうに見つめ、グーイはくんくんと嗅ぐような動作をする。
「カービィ。このヒト、どこからか
「おょ?」
2人は、虚無を見つめるユニの顔をじいっと覗き込んだ。
「うーん。本人からイヤ~な感じはしないけど……とりあえず、試してみる〜?」
カービィが頷き、両手を真上に掲げる。
するとそこにいきなり、ピンク色のハートが浮き上がった。
「な、何。ユニに、何する、つもり……?」
ユニの顔に浮かんだのは、未知への戸惑いと恐怖。
カービィがそれを投げようとするのを見て、彼女は懐から何かを取り出そうとした。
「ユニッ!!」
その寸前、ミハラはカービィが捨てていた鞭を拾いあげた。
咄嗟にそれをカービィとグーイへ弧を描くように放ち、引っかける。
ぐるぐる巻きになった彼らを掴み、鞭ごと思い切り放り投げた。
「わぁっ!?」「わわわ~」
彼らはお互いに絡まったまま、塊になって雲の足場から落ちていった。
「ミハ、ラ……?」
「ユニはそこで待っていて! 私が捕まえてくるわ!」
そう言うと、ミハラはカービィたちの落ちた方向へ、雲の足場から飛び降りていった。
*
カービィとグーイは雲の足場から落っこちて、頭から下にあった雲に半身を埋めていた。
「ず~いぶん落っこちたね~」
「ぐーいー?」
「ボクは大丈夫だよ~」
彼らは柔軟な体を生かし、ぽん、ぽん、と小気味いい音を立てて絡んだ鞭から抜け出した。
直後、じゃら、と鎖の音を鳴らして、彼らの前に黒髪のニケが降り立った。
彼女は、自分たちを追い詰めた膝にも届かない背丈の生き物たちを静かに見下ろした。
「びよよ~ん! もう追いつかれちゃった!」
「……」
ミハラは無言でアサルトライフルを地面に投げ捨て、その場に崩れ落ちる。
「あれれ、ど~しちゃったんですか!?」
「……ごめんなさい。あのワドルディたちが言っていた通り、私はあなたたちを騙して捕まえようとしていたの」
カービィとグーイは目を丸くして顔を見合わせると、
「ありゃりゃ、びっくり~。でも、正直に謝ってくれてよかったです~」
「ぅぃゆ!」
「だよね~。後は連れ去ったヒトたちさえ帰してもらえれば~」
「……そんなに、あっさり許してもらえるの?」
──今こうして騙されているかもしれないのに、本当に、なんて純粋な子たち。
ここまで無垢な世界の住民を騙そうとしていた事実を前に、ますますミハラの視線が沈む。
「申し訳ないけれど、今すぐは難しいわ。シュエンという私たちのボスが許さないでしょうから」
「しゅえん?」
「あ、なるほど~。そのシュエンさんって方があんまりに恐ろしくって、あなた方は逆らえないってわけですね~?」
「……そんなところね。彼女の命令は絶対なの」
「ぽよ……」
ミハラの表情を見て、カービィもミハラの膝を優しくぽんぽんと叩く。
「でもボクたちと話してるってことは、なにか相談したいことがあるんですよね~?」
しばらく間があって、ミハラは頷いた。
「探るようで申し訳ないけれど、まず、カービィがさっき投げようとしたハート。あれはいったい何だったのか教えてくれる?」
「はーと?」
カービィは何となく意味を理解したのか、両手を掲げてさっきと同じくピンク色のハートを出現させる。
「これですか? フレンズハートって言います! これを投げてあげると心に悪いモノが憑いてたらソレを追い出して、トモダチになれるんです~」
「あなた、そんな能力まで持っているの?」
ミハラは目を見開く。
彼女が真っ先に連想したのは、ラプチャーの行う侵食だった。
「そのハートを受け取ったら、カービィのトモダチになった子は別人になるの? 自我や記憶を上書きされたりは……」
「う~ん、それは違う気がするよね~」
「んゃ!」
「目の前のヒトを助けたくなったり、トモダチになりたくなるってところかな~。その他はだ~いたいそのまんまですよ~」
「……そう、厳密な意味での洗脳ではないのね。では、ユニは悪いモノに憑かれていたの?」
なんと都合がよく、それでいて優しいチカラ。つくづく、世界そのものが違うとミハラは実感する。
次の問いに、グーイは伸ばした舌で頭を掻く。
「それがボクたちにもよくわかんないんですよね~。多分憑かれてはいないんですけど仲直りしたいし、傷も痛そうだったので使おっかなって~」
「傷を治す効果まであるの?」
「ぅんやぃ!」
「……そう。本当にあなたたちは、ユニのことを気遣ってくれていたのね」
あのハートを見て、ユニに何が起こるか怖くなった自分が恥ずかしい。
そう思えるくらい、ミハラにとって、カービィの笑顔は眩しく見えた。
カービィははっと、何かを思い出したように目を丸くしてグーイに振り向く。
「ぐーい! ぁいやぃ!」
「え~? きらきらぼしを探してる~? ボク、忘れっぽいし散歩してただけだから、よくわかんないなぁ~」
「……きらきらぼし?」
カービィが手を掲げると、その名の通り燦然と煌めく星が2つ、音もなく現れた。
ミハラは思わず、踊るように浮くそれらが放つ、完璧なまでの虹色に見とれた。
「すごく……綺麗な星ね」
一方のカービィは、それらを不思議そうに見上げながら首を傾げる。
「んゃ?」
「えぇ~、ここら辺にもう一つあるはずなのに、むしろ反応が鈍くなってるって~? ど~いうことかな~」
それを聞いた瞬間、ミハラの脳裏によぎったのは──
先刻入れ替わったばかりのアーク最強の部隊、メティス。
「……もしかしたら、私たちの前に来た部隊が奪っていったのかもしれないわ」
「ぅやっ!? ぷぅやいっ!」
「ありゃりゃ、そりゃ大変ですね~。カービィによると、この国のタイセツ~な宝物みたいですよ~?」
ミハラは、深く項垂れた。自分たちのやったことの罪深さが、重く心にのしかかるようだった。
「もし、事実だとしたら……とても、謝って済む問題じゃないわ」
「たぃてぇぷっ!」
「そ~そ~。シュエンさんが悪いんですから、あなたが謝る必要なんてないですよ~」
「とは言っても、私たちのやったことは到底許されることではないでしょう?」
しばし、カービィとグーイは顔を見合わせる。
「ぅんやい!」
「まぁ、確かに~。このままじゃ、みんなが困っちゃうよね~」
「トモダチ、トモダチ!」
「あ、そうなんだ~! ミハラさん、安心してください! カービィはあっちで新しいトモダチが待ってるから、まずそっちに帰ってこのことを伝えるみたいです~」
「……トモダチ? 私たちの世界で仲良くなった人がいるの?」
「はぁい!」
驚くミハラに、グーイが手の代わりに舌を持ち上げカービィとハイタッチする。
「カービィはこのプププランドはもちろん、行く先々でトモダチができちゃうトモダチ作りの大天才ですから~。きっと今回のことだって、まるっと解決しちゃうはずです~!」
「……」
フレンズハートを使って作ったのか、などという邪推はすぐ消えた。
自分たちに襲い掛かったユニにさえ手を差し伸べたカービィなら、あれを使わずとも誰とだってトモダチになれる。ミハラにとっては聞くまでもなくそう思えた。
そこで初めて彼女の瞳の奥が、決意したように光った。
「……カービィ。私にこんなことを言える資格がないことも、あなたに余裕がないことも承知だけれど……一つ、頼みを聞いてもらってもいいかしら」
「んゃ?」
カービィの前に、ミハラは深く頭を下げた。
彼の小さな手を、縋るように必死に握る。
「お願い。ユニを、助けてあげて」
「えっ、ど~いうことですか~? やっぱりハートを投げてほしいんですか~?」
「……たぶん、そのチカラでは、解決しない問題なの」
「んゃ?」
「ユニは『本物』の私を失って壊れ始めてる。『偽物』の私の言葉は、もう、今のユニに届かない」
ミハラは唇を噛みしめ、胸を押さえる。
「そして、今回のことで分かったわ。ユニがこの先でもし悪いことをした時、もう私だけじゃ止めてあげることすらできない」
ミハラは再び顔を上げて、カービィの青い瞳を真っすぐ覗き込んだ。
「だから、カービィ。出来ればそのトモダチにこのことを伝えて。もし、ユニが悪いことをしようとしたら。それを、私が止められなかったら……。どうか、一緒にあの子を止めてくれる?」
頼んでおきながら、迷い気味にミハラは少しだけ視線を落とす。
「……出来れば、の話だけれど」
「はぁい!」
だが、カービィは迷わなかった。
任せとけという風に笑って、胸(?)をぽんと叩いた。
はっ、とミハラは顔を上げた。
──本当に助けるというのだろうか。こんな大罪人を。
「大丈夫です~。カービィは絶対、困ってる人を見捨てませんから! ミハラさんは安心して待ってください~!」
「……ありがとう。あなたたちは、本当に優しい子なのね」
ミハラはカービィとグーイの頭を優しく撫でてから、無線端末に口を近づけ、スイッチを入れる。
「こちら、ミハラ。対象は撃退したわ。総員、速やかに撤退準備。私とユニが戻るまで、輸送機内で待機して。くれぐれも、信号はパッシブのままで」
『……了解』
彼女は無線を切ると、近くに落ちていたユニの鞭を拾い上げ、懐にしまった。
「なるべく量産型の子たちに見つからないようにしておくわ。カービィ、私たちが乗るキカイが飛んで見えなくなってから、お友達に会いに行ってあげて。グーイも、気をつけてね」
「はぁいっ!」
「……う〜ん。やっぱりユニさんと仲良しなんですね〜、ミハラさん」
「え?」
グーイは虚を突かれた顔のミハラに、気づかせようとするかのように飛び跳ねてみせる。
「ほら。ユニさんはいろいろ言ってましたけど、ミハラさんはユニさんのこと覚えてないのに、こんなに助けてあげたいって思ってるじゃないですか~」
「……」
「ボクたちからすれば、たとえあなたの言葉が届かなくたって、十分にトモダチ……あっ、ハグルマだっけ~? とにかく、そ~んなカンジの関係だと思いますよ~」
「そう……かしら」
「あっ、それと、これ!」
グーイはその辺に落ちていたリンゴへ舌をにょろんと伸ばし、ミハラに投げて寄越した。
「ユニさんに食べさせてあげてください。とりあえず怪我を治さないと~」
「みはりゃ! たぁやい!」
「そうだそうだ、ミハラさんの分もいるよね~」
「……ありがとう。私の分まで」
ミハラは2つのリンゴを見つめると、目を閉じて額に当てた。
「決して、無駄にはしないわ」
*
ミハラが戻ると、ユニはさっきと全く同じ姿勢で、抜け殻のように柱に背を預けていた。
「ごめんなさい、ユニ。捕獲に失敗したわ」
「……嘘つき。わざとだよね」
「……そう、今のはただの建前。そもそも捕まえられるような存在じゃないわ、彼らは」
「あはは、やっぱりこうなるんだ。そうだよ、私たちはどうせ、ただの鉄くず……」
ミハラはあるものを取り出し、屈みこみながらそっとユニへ差し出した。
「……カービィとグーイからよ。私ももらって1個食べてみたけれど、とても美味しいわ」
そう言って、リンゴを彼女の手に握らせた。
あえてミハラは、ユニへ向かって笑顔を浮かべる。
「あの子たち、心の底から貴女を心配してた。あのハートも、貴女の傷を癒そうとしてのものだったらしいの」
「……!」
リンゴを見つめる灰色の瞳が、一瞬揺らぐ。
またじわりと涙が浮かんで、ぼろぼろと零れ落ち始める。
「あは、はははは。ホント、どうしようもない奴ら。傷を、癒す? やっぱり私たちのこと、何にも分かってないじゃない……ッ」
リンゴを乱暴に投げ捨てようとしたユニの手を、ミハラがそっと包み込む。
「そうね。そうかもしれない。でも、貴女に向けてくれた善意は本物よ。今後のためにも、これだけは受け取っておきましょう」
「……」
ユニは、黙ってリンゴを一口頬張った。
彼女の目が、少しだけ見開かれた。
「……おい、しい」
一口食べるごとにユニのボディが輝いて、傷が塞がっていく。
そうやって少しずつ食べていくユニを、ミハラは愛おしく見つめた。
最後の一口を見届け、芯を受け取った時、ユニの顔色は少しだけだがよくなっていた。
「ちょっとは元気になった?」
「……うん」
「じゃあ、行きましょう」
異空間ゲートへ向かう途中、ミハラはグレープガーデンへ振り向いた。
雲の合間からわずかに覗く青空には、夢に描いたようにきれいな虹が架かっていた。
そのあまりの眩しさに、彼女は目を細めた。
「プププランド、といったかしら。本当に美しくて、優しい世界ね」
フレンズハート、あまりに無法すぎる代物なのでぎりぎりまで出すべきか迷っていたけど、ちょっと今後のプロットで面白くなりそうなので取り入れた所存。割とスターアライズ本編ではニケの侵食並みに洗脳じみてる描写だけど、そこは独自解釈でやさしい世界にしてみました。
ユニとミハラは、果たして救われるのか……?今回は悪いことしてるけど、ミハラはニケ世界では珍しい常識人なんですよね。姿と性癖は常識人じゃないけど……。
次からは再び指揮官目線に戻る予定です。
執筆活動の大きな励みとなりますので、ご感想や評価などお気軽にどうぞ!
ニケ側の人物が多い回をどう読んでいますか?
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全員把握して読んでいる
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主要人物だけ追っている
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雰囲気で読んでいる
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正直ついていけないときがある