勝利の旅人:星のカービィ×NIKKE   作:Misma

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8話:楽園に巣くう道化たち

 パピヨンが正門を潜ると同時に、円筒状に吹き抜けとなったガラス張りの空間が、彼女を出迎えた。

 ここが、楽園エデン。アークの高官の間で噂されていた、地上の生存者が集う失楽園。

 ハラン曰く、エデンにおいて、弱者はニケも人間も関係なく存在を許されない。彼女が実力を測るため課した試練に、パピヨンは無事に合格したのだ。

 ──もっとも、これくらいできなければスパイは務まらない。

 

 彼女の目に真っ先に留まったのは、中央に鎮座する翼のついた帆船だった。

 

「なにこれ……船? やたら浮いたデザインだけど」

 

「ヤァ、キミがアークからのお客サン? よく来てくれたネェ」

 

 答えるように響いた甲高い声に、パピヨンは肩を跳ね上げた。

 船体横にあった扉から、昇降ブリッジが展開される。

 歯車模様があしらわれた青いフードをまとう20cmほどの丸い生き物が出てきて、腕のない手を空中で広げた。

 

 明らかに、人間どころか地上の生物ですらない。

 愛嬌のある見た目こそしているが、ニケに対する恐れの感情はかけらも見られない。

 彼は当たり前のように音もなく浮き上がると、パピヨンに笑顔で手を差し伸べる。

 

「フフ、な~んて顔してるんダイ? ホラ、まずは親善の握手をしようヨ!」

 

「あ……あなたが、例の宇宙人……?」

 

「おっ。話が早くて助かるのサ!」

 

 パピヨンの視界が、突然牙を覗かせた笑顔で塗りつぶされた。

 道化帽子を被った生き物が、鼻先が触れそうな距離でこちらを逆さに覗き込んでいる。

 

「ひっ!?」

 

「ケケッ、ニケのクセに怖がってやがんの。アークの奴らってみーんなこんななのサ?」

 

 道化師は顔から離れると、空中でその身をくるりとひっくり返す。

 一頭身の下には不釣り合いなほど大きい靴を履き、手のあるべきところに鏃のような羽を生やし、その下に虹色のプリズムを煌めかせている。

 

「マルクゥ、キミのサプライズ癖には困ったものダネェ。ボクはマホロア。この星に流れ着いた旅人ダヨ!」

 

 呆れ笑いとともに再び手を差し出された直後、パピヨンの脳裏に電流が走った。

 ──こいつらが、カービィとカウンターズを消させた張本人。

 

「……バーニンガム副司令官直属のパピヨン。まったく、いきなり宇宙人がお出迎えだなんて、エデンってずいぶん進んでるのねぇ」

 

 パピヨンは、内心を態度には出さず握手を返した。

 

「キミ、聞くところによると『ピンクの悪魔』カービィと出会ったみたいダネェ。食べられそうにならなかったカイ?」

 

「ないけど……あなたたちはあるの?」

 

「ああ、それはもう! キミには信じられないだろうけど、アイツはあんな顔でトモダチのふりをして、信じ切ったところで牙を剝いてくるのサ! ボクらはそれに騙されて、故郷の星をムチャクチャにされたのサ!」

 

 道化師マルクは、実際に牙を出して恐ろしい顔を実演してみせる。

 

「ええっ!? そ、そう……それは恐ろしいわね……!」

 

 ──どの口が。

 パピヨンは、カービィのことを全て知っているわけではない。

 だが、彼が指揮官を必死に守ろうとしたのをその目で見た彼女からすれば、彼らの訴えは三文芝居にしか聞こえなかった。

 

「私も今度から気をつけるようにするわ。それで、あなたたちはいつからここにいるの?」

 

 どうやら、彼らはパピヨンがカービィと共闘した事実までは把握しきれていない。ならば、今はその演技に乗っかってやるまでだ。

 

「ボクらが来たのは1週間くらい前ダヨ。カービィから逃げるタメにこの天翔ける船『ローア』に乗って、必死でディメンションホールを開いたらこのすぐ近くに出たンダ。マ、つまりキミらにとってはまさに、彷徨える異星人ってとこカナ?」

 

 パピヨンは冷めた確信を抱きつつ相槌を打つ。

 

「ケド、すぐにカービィの仲間が空中戦艦で追ってきてサァ。スグ撃ち落とせはしたケド……」

 

「そうそう。しかもその戦いを見てヘレティックだったかプラスチックだったか、空飛ぶ女の子も襲ってきたんで、ついでに追っ払ってやったのサ。ありゃー面倒だったのサ」

 

 マルクの何気ない一言で、注意深く聞いていたパピヨンの思考が一瞬凍り付いた。

 

「……いま、何て言ったの? ヘレティックを?」

 

「名前はニヒリスターとかいったかなー。ドラゴンになれるなかなか気の強い女の子だったけど、ボクらの敵じゃなかったのサ!」

 

「も~、マルクったら大げさダナァ。あれはローアの自動防衛システムが起動しただけダヨォ」

 

「あぁそっかぁ。とにかく、尻尾巻いて逃げる時のアイツの顔ときたら、愉快で愉快で仕方なかったのサ!」

 

 パピヨンは思わず嘘だ、と叫びそうになった。

 しかし、実力主義の塊であるエデンの連中がこの一頭身どもの滞在を認めている事実が、その言葉の信憑性を裏付けている。

 マホロアの謙遜した笑いも、マルクの無邪気な笑いも、傲慢な自負が透けて見えるようだった。

 

「デ、今はこの船も頑張りすぎたせいで疲れちゃってネ。しばらく修理のため動けないンダ。そこで、ボクたちの活躍を見たインヘルトが、このエデンに居候させてくれてるッテワケ!」

 

「マ、パピヨンも歩き旅で疲れただろうから、休んでいくのサ! あ、ニケには余計なお世話だった?」

 

「……いいえ。散歩でもして気を紛らわせるわ」

 

「そうカイ? ボクたちに会いたくなったら、いつでも来てネ!」

 

 パピヨンは、手を振ってローアのなかへ消えていく一頭身たちを密かに睨んだ。

 ──絶対にここで突き止めてやる。お前たちが何者で、何を企んでいるのか。

 もしその企みが、アークに害なすものであれば──

 パピヨンは背後に鎮座する神々しい帆船から逃れるように、広間を後にした。

 

 

 しばらくパピヨンは、エデンの廊下を歩いていく。

 ガラス越しに拡がる緑豊かな平原を眺めたついでに端末を見れば、無情な『圏外』の表示。

 よく考えてみれば当然のことだ。今までアークで散々噂だけは飛び交いながら、エデンの座標を正確に捉えられた者は、終ぞ一人たりともいなかったのだから。

 

「……決心したのはいいけど、これじゃ任務どころじゃないわね」

 

 ──それに、ハニーが生きていたとして連絡が取れない。

 零した溜息が消えるよりも早く、ウィーン、と何かが開くような駆動音が彼女の耳に届いた。

 咄嗟に壁の陰に姿を隠しつつ、音のした方向を覗き見ると──

 誰もいないのに、勝手に隔壁が開いていた。

 カメラの類は見当たらない。パピヨンは十分に気配を消しつつそこをくぐった。

 

 その後も彼女が進むたび、自動扉はまるで彼女を案内するかのように道を開けていく。

 やがて道は、エデンの外に突き出したテラスのような場所へとつながった。

 ──気配がする。

 パピヨンは罠の可能性を警戒して深呼吸すると、銃のグリップを握り直してさっと飛び出した。

 

「貴女がパピヨンですね?」

 

 銃を気配の主に向けようとした直前、落ち着いた声が彼女を制した。

 目の前で純白のドレスに身を包んだ淑女が椅子に座り、優雅な手つきで紅茶をカップに注いでいた。

 シニヨンでまとめたピンクのロングウェーブヘアーが、穏やかな風にそよぐ。

 パピヨンは、ゆっくりと銃を下ろした。

 

「そう言う貴女は……もしかして、ドロシー?」

 

「おや。よくご存知のようで」

 

「ハランから聞いてるわ。インヘルト部隊のリーダーなんですってね」

 

 ドロシーは天使のような微笑みを浮かべると、白い机の向かい側──今しがた彼女が置いたばかりの紅茶のカップへと、手のひらを傾けた。

 

「どうぞ、おかけになってください」

 

 パピヨンは言葉に従い、脚の長い椅子に腰を下ろした。

 抜けるような青空の下、小鳥のさえずりが聞こえてくる。

 

「……なぜ、私をここに?」

 

「お客様をもてなすのは当然のことではありませんか? 見慣れないものばかりで息も詰まったでしょうし、ここで一息つければ、と考えたのです」

 

「それはありがたいわね。じゃあ、いただくことにしましょうか」

 

 単純な善意でここへ誘ったわけがない。ドロシーにも何か狙いがあるはずだった。

 敢えて、パピヨンはそれに乗ることにした。彼女がカップを手に取ると、ドロシーもそれを合図としたように語り掛けた。

 

「エデンに入っていきなり、驚いたでしょう?」

 

「当然よ。ロビーに船を置くなんて、大層なご趣味なこと」

 

「それは彼らに言ってください。それに、見慣れてしまえば悪くない景観ですよ」

 

 パピヨンは紅茶の香りを嗅いだ。

 エデンで育てた茶葉だろう。アークにある『似せて』作られた香りとは深みが違う。

 本物の動植物を育ててかつての地上を再現しているというのは、あながち嘘ではないらしい。

 

「……随分、ここに馴染んでるようね。あの異星人たち」

 

「ええ。ノアにちょっかいをかけたりヨハンと喧嘩をしたりはしますが、意外と上手くやっています」

 

 ──研究所でのヨハンの口ぶりからして、とてもそうは見えなかったが。

 一方でドロシーは紫色の目を伏せ、紅茶にそっと唇をつけた。

 

「貴女は、アイツらを歓迎してるみたいだけど」

 

「はい。あの旅人たちは、エデンにとって天からの恵みのようなものですから」

 

「私にとって、の間違いじゃなくって?」

 

 パピヨンは、ドロシーの紫色の瞳を探るように覗き込んだ。

 そもそもこの茶会自体、彼女独断の行動だろう。こんな敷地の外れに誘導したのも、身内からの監視や傍受を避けてのことに違いない。

 ドロシーは否定せず、むしろ真正面から見つめ返した。

 

「貴女も私たちに興味があったとハランから聞きましたが、今や彼らの方にお熱そうです。よほど、あの指揮官たちを消されたことが悲しいのですね」

 

 ティーカップを持ち上げたパピヨンの手が止まる。

 

「……勘違いしてもらっちゃ困るわ。ハニーたちは単なる調査対象。それ以上でもそれ以下でもない」

 

「あら、そうですか」

 

 パピヨンは紅茶に目線を落とすと、それに映った未練がましい瞳を一瞬睨みつけ、顔をカップで覆い隠すようにくいっと飲み干してみせた。

 ふふ、と小さく笑みを零すのが聞こえたのでドロシーに向き直ると、彼女は「あら、失礼」と上品に口元を手で押さえた。

 

「からかうために呼んだのなら、もう帰らせてもらうわ」

 

 空になったカップをソーサーへ置き、パピヨンは椅子を鳴らして立ち上がる。眉根を寄せたまま、来た通路へ踵を返した。

 

「いいのですか? アークに、貴重な情報を持ち帰りたいのでしょう?」

 

 三歩目が、床から離れないまま止まった。

 パピヨンが振り向くと、ドロシーはカップをソーサーに戻し、指先を組んで取引する顔になっていた。

 

「貴女の味方になってさしあげます。ここで知った情報を1週間に1度だけ、アークへ送信することを許可しましょう」

 

「……」

 

「貴女がアークに有益と判断する情報ならば、エデンについても、異星人についても、自由に報告して構いません」

 

 パピヨンは再び席に腰を下ろすと、しばらくカップのふちを人差し指でなぞる。

 そうした思案を経て、やがて、深い溜息が口を突いて出た。

 

「……一瞬はまぁまぁな条件かと思ったけど、もう一押し欲しいわね」

 

「何かご不満が?」

 

 パピヨンは机に肘をつくと、伏せた睫毛の下からじろりとドロシーを見上げた。指先が、机上を軽く二度叩く。

 

「だって、『送る価値のある情報を教える』って条件が抜けているもの。最悪、『外の景色が綺麗でした~』で終わる可能性だってあるじゃない」

 

 痛いところを突いたつもりだった。だがドロシーは瞬きひとつせず、むしろ待っていたとばかりに口角を上げた。

 

「ご安心を。貴女がこれから私の言う通りに動いていただければ、望むものが得られます」

 

「ふぅん。じゃあ、一度聞かせてくれる?」

 

 ドロシーの瞳の奥に、吸い込まれるような深い藍色が宿る。

 

「2つあります。まずは、3人目の異星人、カービィについてです。貴女は、彼と一時的に同行していましたね。その目で見た全てを教えてください」

 

 パピヨンは直感した。ドロシーも、マルクとマホロアの話を信じていない。そして、こちらもそうであることを見抜いている。

 

「……もう一つは?」

 

「エデンを毎日くまなく散歩して、気づいたことを私と共有してください。怪しまれないよう、時間帯はずらして。今回のように権限を操作しておきますから、気兼ねなく楽園の風景を楽しんでください」

 

 やがて、パピヨンは目を細めて肩を竦めた。

 差し出されたものを数え直しても、天秤はどちらにも傾かない。

 

「期待外れだわ。結局、自分で調べろってことじゃない」

 

「言っておきますが、私の協力を得ず情報を仕入れるのは至難の業ですよ。セシルという、ヨハンさえ頭の上がらない責任者がいますから。それこそ、景色と家畜くらいしか報告するものが無くなるでしょうね」

 

 ドロシーからすればパピヨンを振ったところで失うものもないのだろう。余裕の表情をしている。

 

「それに、見ず知らずの他人の噂よりは、ご自身で掴んだ情報の方がずっと信頼性があると思いますが」

 

 反論の言葉は、喉の途中で行き場を失った。何より、自分がその通りに生きてきたからだ。

 

「……なるほど。で、その散歩がどう貴女の目的につながるというの?」

 

「先日、彼らは私に、このエデンを『強者にふさわしい姿』にすると約束してくれました」

 

 答えになっていない答えを返すドロシー。彼女は床を、正確にはさらにその下を見つめた。

 

「しかし、不思議なものでして。エデンの設備に何ら問題はないはずなのに……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のです」

 

「……何ですって?」

 

「いったい、なぜ。何のために。どうやって。何の意味があって」

 

 パピヨンの動揺を見透かしたような問いかけが、次々と彼女へ突き刺さる。

 

「つまり。私と貴女は、彼らの背後に何があるのか興味がある点で一致している。いいパートナーになりそうでしょう?」

 

 天使のごとき微笑みを向けられたパピヨンは目を見開き、一杯食わされた、と知った。

 ドロシーは、完全にこちらの意図と目的を知っている。この申し出を断れないと踏んだうえでこの場を設けたのだ。

 

「……よくもまぁ、エデンに来て初日の相手にそこまで大胆に出れるものね」

 

 半ば呆れ気味に出たパピヨンの言葉に、ドロシーはくすくすと笑ってみせた。初めて彼女がみせた、年頃の少女らしい表情だった。

 

「最近、やたらと夢見がいいもので」

 

 ドロシーが手を差し伸べた。パピヨンはそれに応えざるを得なかった。

 淑女らしい繊細さを見せる白い手指は、彼女の肌に蛇のようにしっかりと絡みついていた。

 

 

 パピヨンがエデンに到着してから、数時間後。

 青を基調とした大きな画面と白い床がスペースを占領する、ローア船内。

 寝転がりながらトランプでババ抜きをしていたマルクとマホロアの脇で、端末の通知が鳴った。

 マホロアは、コーヒー片手に応答する。

 

「ん、ヨハン? キミからかけてくるナンテ珍しいネェ」

 

「道化師、商人。外に出ろ」

 

「え~。ちょうど面白いところなのに!」

 

「重要なことだ。早く出なければ……」

 

「ハイハイ、分かったヨォ」

 

 2人の異星人は渋々とローアから外に出る。ほぼ同時に、銀髪の男の冷徹な視線が彼らを貫いた。

 

「おい、お前たち」

 

「も~。ヨハ~ン、いい加減名前で呼んでくれよ~。ボクには『マルク』っていうカワイイ名が……」

 

 ヨハンは即座に、マルクの額に拳銃を突きつけた。

 

「外部の者から、妙な侵食とラプチャーを見たという話を聞いた。貴様ら、何を企んでいる?」

 

「ナニ言ってるノ? 呼び出していきなり銃を突きつけるナンテ、酷いヤツだヨ~」

 

「全くサ。もうちょっとカルシウム摂った方がいいぜ?」

 

 ヨハンは一度目を閉じ、大きく息を吐いた。

 1秒も経たず、右手がマホロアのフードを、左手がマルクの赤リボンをひっ掴む。

 彼らの丸い身体が、凄まじい勢いで地面に叩きつけられた。

 

「私は奴に会い、貴様らとの関係を訊いた。すると、奴は即答した。『トモダチ』だとな」

 

 2人を拘束するヨハンの目には、明らかに殺意が籠っていた。

 

「お前たちの言葉通りカービィが擬態する生き物であれば、そんな答えを返すはずがない。一度襲った以上、何の益もないからな。だが、どうにも話が違うようだ」

 

 それでも、彼らの顔が恐怖に歪むことはない。マホロアが呆れたように肩を竦め、マルクはにやりと笑ってみせる。

 

「ヨハン。キミは、あまりにカービィを知らなさすぎるネェ。アイツは、トモダチだと思いながら相手を殺せるンダヨ」

 

「ケケッ。それともヨハンは、ボクたちと同じくらい得体の知れない、あのピンクだまの言うことを信じるのサ?」

 

「……少なくとも、勝手に我々の楽園をいじくり回す奴らよりはな」

 

 ヨハンの静かな一言を聞いたマホロアは、わざとらしく「オオ!」と声を上げた。

 

「ナンダ、ソレで怒ってたンダネ。心配しなくていいヨ。それハ、エデンをこの星サイキョウの要塞にスルための工事ナンダ!」

 

「それを、貴様らは我々に一言も相談せず実行した。その事実だけでも、貴様らを疑うには十分すぎる」

 

 ヨハンがますます腕に力を込めて床にひびを入れるが、マルクは小首を傾げる。

 

「え~? 今回もどこかの誰かさんは許してくれたんだけどな~。おっかしいのサ~」

 

 ヨハンは目を細め、吐き捨てるように舌打ちをした。

 

「……ドロシーめ」

 

「アァもう、ヨハンはじゃれ合いが好きみたいダネェ。暑苦しいヨォ」

 

 次の瞬間、異星人たちは、ヨハンの手中から文字通り消え去った。

 直後、彼の頭上の空間に再びその姿を現す。

 

「用事は終わり? そろそろ帰ってもいいのサ~?」

 

 丸い異星人たちを、ヨハンは拳を握りしめて睨みつける。

 

「言っておくが、ここは貴様らの遊び場ではない。もし貴様らが、我々の誇りと目的を侮辱すれば……!」

 

「地獄に落ちるとか何とか言うんだろ~? 出来もしないことをペチャクチャ喋るなんて、ジンルイって面白いのサ~」

 

「……本日からは船からの外出を一切禁止し、監視カメラの数も増やす。貴様らの企みは、必ず暴いてやる」

 

「ハイハイ、分かったヨ~。じゃあ元気デネ、ヨハン!」

 

 マホロアたちは手を振りながらローアの中に戻った。ヨハンは自ら手を潰してしまいそうなほど拳を握りしめ、その場を立ち去った。

 

 

 ローアに戻った彼らは、巨大モニターの前にあるふかふかのクッションに寝転び、先ほどのババ抜きを再開する。

 

「ケケケ。ヨハンはどーでもいいけど、あのパピヨンってニケ、なかなか食えないヤツなのサ」

 

「ボクも同感ダヨォ。おおかた彼女を引き入れたのはドロシーの差し金で、ここじゃ得られない情報が欲しいっテとこダネェ。なかなか厄介そうな子ダナァ」

 

「マホロア、ここは黙っておくのサ。彼女、面白いオモチャになりそうなのサ♪」

 

 マルクの手札からカードを引こうとしたマホロアは、じっとマルクの丸い瞳を見つめ、やがてにやりと笑った。

 

「……ハァ、マルク。ボクにもキミの考えてること、ゼ~ンゼン予想できる気がしないヨォ」

 

 マホロアが取ったカードは、ものの見事にジョーカーだった。

 

「あーあ。飽きちゃったナァ。そろそろ、カービィの様子ヲ確認しとくカイ?」

 

「おっ。そーしよーぜー」

 

 マホロアとマルクがいったんトランプを置いてモニター上に映し出したのは、この星の地上の地図だ。

 

「えーっと。カービィとカウンターズはディメンションホールを通って、なんと! きらきらぼしを手に入れちゃったみたいダネェ」

 

「おおっとぉ~!? そんじゃあ、さっそく反応を辿ってエデンに来られちゃうのサ~!?」

 

「ナニ言ってンダイ。ボクらのいただいたきらきらぼしは、ああやってジェムリンゴに閉じ込めタじゃナイカ。ここの位置を知られることはないヨ」

 

 マホロアがモニターに映る映像を指さす。

 

 そこでは、リンゴ状の宝石が、黒ずんだ芽を出して虹色の光を放ち続けていた。

 その中に閉じ込められているのは、他でもないプププランドの秘宝、きらきらぼしだ。

 

 マルクはペロリと舌を出して笑う。

 

「ジョーク、ジョーク。で、カービィたちはどこに向かってんの?」

 

 彼の言葉を受け、キーボードを叩いて詳細を調べていたマホロアの黄色い目が、愉快そうに細められた。

 

「クク……。マルク、面白いことが分かったヨォ」

 

「えっ、なに、なに? 早く教えるのサ!」

 

「ホラ。次にカービィが向かってルきらきらぼし。その近くに、こんなモノがあるんダヨネェ」

 

 マホロアが地図で示される一点をタップする。拡大されて表示されたのは、周りを堀に囲まれた城だった。

 

「うっへー、オンボロー。ちょっとつついたら崩れちゃいそうなのサ。で、マホロア。これがどうしたのサ?」

 

 急かすように道化帽子を振るマルクと見つめ合うマホロアは、散々勿体ぶってから咳払いした。

 

「その城の正体は、ヴァイスリッターとかいう『王』を名乗るニケの部隊が統治する『王国』らしいヨ!」

 

「……ぉっ、おほっ、おほほ……」

 

 マルクはしばらく肩を震わせたあと──

 

「おっほっほっほっほ~! お、お、王国ゥ~!?」

 

 噴き出して後ろに倒れ込み、足をジタバタさせて笑い転げる。

 

「ホホ、ホントなのサ!? そんなデデデのマヌケの丸写しみたいなヤツが、この世界にもいるのサァ~ッ!?」

 

「クックック! コイツは見物ダヨォ、マルク」

 

 マホロアは、画面に映る金髪のニケ、子どものような顔のニケ、そして包帯を巻いた銀髪のニケの顔を前に、両手を大きく広げた。

 

「サァ、カービィ。この世界で、キミはどんなショーを見せてくれるノカナァ?」




意外にもマルクとマホロアの直接の絡みってないんですよね……。

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