Ex-Pancake Party!!   作:お竹

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彩葉とかぐやの暮らした期間は彩葉の誕生日とまるで重なってないけど、かぐやなら知れば祝わずにはいられないだろうなと思ってこうなりました。


特別じゃない、特別な日。

 

『今日は○○さん八十歳、傘寿の祝賀会。都内某所で盛大なパーティーが執り行われ──』

 

 なんか配信に使えるネタないっかなーとショート動画をぐるぐるザッピングしていたらその内の一つのサムネイルに見慣れないワードがででんと表示されていた。なんぞー?と思って動画をクリック。強制表示の15秒CMがうざい。やっぱいいかな、と思うもたかがCMごときに負けるのは悔しくて、めんどくささと負けん気がデスマッチし負けん気が辛くも判定勝ち。     

 見る前から好感度マイナスなCMを仕方なく眺めて、そのまま回復することなく過ぎ去っていく。なんの意味があるんだろ、と不思議に思いながらも本命の動画を見てみると、なにやら大勢の人が集まって祝い事をしている。中央に居る主役っぽいのはスーツをびしっと着こなしたおじいちゃん。かぐやは知らない人だけど、きっと偉くてすごい人なんだろう。こう、ヤチヨに似たオーラがある。これ言うとよよよ、ヤッチョはおばあちゃんなのです、とか泣きそうだけど。八千歳設定やめればいいのにね。

 んで会場にでかでかと掲げられた横断幕には○○さん八十歳の誕生日おめでとうございます、の文字列。アナウンサーがそれを読み上げながら会場の様子を伝える。はて、誕生日。たんじょうび?んぅ?

 わからないことは人に聞く!

 

「ねーねーいろはー。誕生日ってなにー?」

「あんたそんなことも知らないの?その人が生まれた日ってこと」

 机に向かって勉強していたいろはが、体ごと向きを変えてため息混じりに教えてくれる。言葉こそ小馬鹿にした感じでぶっきらぼうだけど、勉強で忙しいのに、自分で調べろとか、質問を無視したりとかいじわるをしてこない。優しい、いろは。大好きないろは。

 変なことは知ってるくせに、と独り言みたいに漏れ出た言葉ですらかわいい。でも、そうか。生まれた日かー。宇宙びと的にはいまいちピンとこないけど、あれだけ盛大に祝ってるならきっと特別な日なんだね。

「じゃあさ!いろはの誕生日っていつ!?」

「え……五月、十一日だけど……」

「ゔぇ、もう過ぎてんじゃん!?」

 なんと、特別な日はとっくに過ぎ去っていたのでした。しかも三ヶ月も前に。うっそぉ。盛大なパーティー計画が計画を立てる前に頓挫した。

「なんで教えてくれなかったの!?」

「いやあんたその時まだいなかったでしょ」

 そりゃごもっとも。おっしゃるとおり。かぐやちゃんは地球来臨一ヶ月のウルトラ健康体ベイビーですので。でもそれとこれとは別っていうか、やっぱり好きな人の特別な日を知らなかったのが悔しくて地団駄を踏んでしまう。

「いいよ別に気にしなくて。真実と芦花に祝ってもらったし」

「やーだー!パーティーしたい〜!!」

「文句言っても仕方ないでしょ……パーティーなら今後もできるから我慢しなさい」

 いやお母さんか。そりゃお母さんみたいなもんだけどさ。いろはは勉強もスポーツもできるのに時々にぶちんになることがある。かぐやがパーティーしたいのは、騒ぎたいわけじゃなくて、いろはをお祝いしてあげたかっただけなのに。

「特別な日ってのはその時だけだからいいの。何かにつけてやってたら特別でもなんでもないでしょ」

 特別でもなんでもない。その言葉が妙に胸に刺さった。じくじく、ぴりぴりする。ムカってきたわけじゃない。なんとなく、いろはにそう言われるのがイヤだった。かぐやにとって、いろはと一緒に過ごす日々は毎日が特別なのに。いろはにとってはそうじゃないみたいで。

 そっか、そっちがそうならこっちにも考えがある。頑固で分からず屋でとーへんぼくないろはに、かぐやがいろはのことをどれだけ好きかわからせてやろう!

「決めた!今日はパーティーする!」

「ちょっと、話聞いてた?」

「もちろん!だから今日はいろはに誕生日を教えてもらった記念日!!」

「なにそれ……無茶苦茶じゃん」

 自分でもちょっと、いやかなり無理があるかなとは思う。そんな息を吹き掛ければ飛んでっちゃう、ほったて小屋のような理論武装に呆れながら苦笑いという名の北風を浴びせてくるいろは。でも特別な人をお祝いするのに、特別な理由が必要な方がもっと変だと思う。

 

 みんな知ってる?本当に大事な人の笑顔って、北風でもあたたかいんだよ。

 

「ようしなら早速プレゼント用意しなきゃ!彩葉!なにがいい!?」

「そんな急に言われても……」

 唐突な無茶ぶりに困惑するいろは。そりゃそうだよね、ごめんちゃい⭐︎でも思い立ったら誰も止められやしないのがかぐやだから、そこは諦めてほしいな。その代わりにハッピーエンドまでノンストップだから!

「なら、美味しいごはん、かな」

「よっしゃ任せんしゃい!腕によりをかけて作ったるからね!」

 そんならラクショー!ガッテン承知!と意気込んだはいいものの、時計の針はすでに夕方五時前。今から用意できるものなんてたかが知れてるし、このみすぼらしいボロアパートにはオーブンなんて高尚なものはないから、ケーキもパンケーキが精一杯。幸いノニナナのホットケーキミックスは常備してあるから材料には困らないけど。……やっぱり早く引っ越そうよ。

 

 まあそんなこんなで、一時間足らずで何ができるわけもなく。結局は特急かぐやちゃん号で仕上げたパンケーキがある以外はなんの変哲もない食卓になってしまいまして。そのパンケーキもスペシャリティな要素は何もなく、しいていえばバターとハチミツがちょっとお高いやつを使ってるくらい?いろはに怒られるから値段はヒ・ミ・ツ。調味料ケチったらロクなことにならないよ!

「ごめんねいろは〜〜……」

「なに謝ってんの」

「でもほら、お祝いしたかったのに……」

 結局、思い通りにいかなかったことにしょんもりしてしまう。目を合わせるのも申し訳なくて、うつむいたまま指をくるくる。居心地が悪くて、正座した足の指先をもにょもにょしてしまう。

 いろはは計画性の鬼だからきっとこんなことにはならないんだろうな。でもいろははニンゲンだから、鬼になりすぎると体調崩しちゃわないか心配。

「かぐや、こっち見て」

 そう言われても顔向けできなくて。俯きがちだった首の角度がさらに沈んで斜め30°の鋭角を描く。でも無視するのはもっと悪くて、がんばってがんばって首を上げる。15°くらい。

「かぐや」

 そうして45°の視界に入ったいろはの顔は、怒ってるかと思いきやなぜだかとっても優しい顔をしていて。そんな顔を向けられる心当たりはないのに、その顔を見ただけでしょんもりした気持ちが吹き飛んでしまう。我ながら調子がいいなぁと思いつつも、だって相手がいろはだから仕方ないじゃん。

「いろは、怒ってない?」

「いや怒る要素がどこにあんのよ。ご飯作ってもらっといて怒るとか、かぐやの中で私はどうなってんの」

 えっ、そりゃもう大好きな人だけど。んで良く言えば芯の強い人。悪く言えば頑固で分からず屋。もっとかぐやの優先順位上げてほしいかなーって。学校と勉強はまあ仕方なくもないかもだけど、アルバイトは減らしてよくない?かぐやちゃんこう見えて稼ぎいいよ?その分遊んでくれたらwin-winってやつじゃん。

 っていうかまさかかぐやがこれだけ好き好きラブビームをことあるごとに照射してるのにまさか通じてない!?うっそでしょ!?にぶちんにもほどがあるよ!?

「……ねえ、失礼なこと考えてない?」

「なんでそれは分かるかなぁ!?」

 確かに八割くらいは失礼なことだけど、これどっちかというといろはが悪いからね!ていうか残り二割にも気付いて!少数派にも愛の手をー!!

 そんな私の百面相だか二十面相だかにころころ変わる顔を見ていたのか、ふっ、といろはが笑い出した。

「っふふ、わかりやすすぎ。ほら、冷めないうちに食べよ」

 そんなやわこい笑顔が可愛くて、愛しくて。さっきまで胸の中でぐるぐるハリケーンしていた不安な気持ちは、きれいさっぱり吹き飛ばされて。あっぱれ快晴雲ひとつなし!にされちゃって。

「いろは、誕生日おめでとうー!でした!」

「はいはいどーもー」

 こうなりゃヤケだ、となんとも締まらないファンファーレがパーティーの始まりを告げて。それに対するぶっきらぼうなレスポンスも照れ隠しみたいで可愛くて。

「パンケーキんまああぁぁあ!かぐや超っ天才!!」

「ふつーのパンケーキでしょ。いや美味しいけどさ」

 その時食べた、特別じゃない、なんの変哲もないパンケーキは今まで食べた中で一二を争うくらい美味しくって。

「……ありがと、かぐや」

 そっけなく言いながらも、普段はあまり見せないいろはの顔がとっても優しくて、太陽みたいに暖かくて、大好きで。

「んひ、どーいたしまして!」

 ああそっか。特別じゃないってことは、どうでもいいってこととは違うんだ。そんな答えが、じくじくぴりぴりしていた胸にすーっと染み込んで、痛いの痛いのとんでけーって治しちゃった。

 

 みんな知ってる?大事な人の太陽は、北風よりずっとずっとあたたかいんだよ。

 

「ね!明日こそちゃんとパーティーしよ!」

「やだ」

「そこをなんとか〜〜〜〜〜〜!!」

 

 




彩葉誕生日おめでとう!
ということでもう少し早く言ってよぉ!と半ばキレながら書き上げました。
おそらくそんな仲間が大勢いると思います。
みんな、愛だね。
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