扉のムコウの君   作:コハク

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第4話

あれから、もう1か月もたった。

今もりょう君は家に来て、扉の前で私に声をかける。

 

「すみれ、やっぱり怖いのか?外が怖い?俺が、信じられない?」

 

最近は泣きそうな声でゆっくりと、優しく声をかけてくる。私は扉の前で正座をして、扉にそっと手をおく。

 

「……出られないよ。りょう君。怖いんだよ…。」

 

私はつぶやく。誰にも聞かれないように。あの過去を、自分の中から消し去るために。

 

ーーー

 

「お前、キモいんだよね。うちらのジャマ。」

 

「本ばっかり読んでるし…友達いないの?」

 

「ウケる~。ボッチ飯~!!」

 

足元にぐちゃぐちゃになった弁当が転がったこともあった。

 

教室に全然華やかじゃない紙吹雪が舞ったときもあった。

 

泥水の中に突き落とされたこともあった。

 

いつも、学校では何かがおこった。

それでも、私は学校に行った。

負けたくなかったし、りょう君にも会いたかった。

たまにでも、一緒に帰ったときはすごく楽しかったし、幸せだった。

そのひとときを求めて、学校に向かっていた。

 

でも、我慢の限界だった。

私は、学校に行くことができなくなった。

学校が怖い。仲間が怖い。外が怖い。世界が怖い。

何もかも信じられなくなって、何もかも暗くて、冷たいものに思えてくる。

それから私は、一度も世界を見ていない。

 

ーーー

 

「……今日は帰るよ。明日も、またくるから。」

 

その声で、はっと我に返った。りょう君の悲しそうな声。

そのまま、階段を降りていく音がした。明日もまた、来てくれるのだろう。きっと、また。

私はそれを願って、今日も机に向かって一冊のノートを開く。そこに私は新しく、1つのセリフを書いた。

 

『僕は、外が怖いんだよ。

どうしようもないくらい、震えてしまうくらいに、怖いんだ。』

 

私はその一言を書くと、真っ黒な天井を見上げながら、静かに涙を流し続けた。

 

ーーー

 

それからまた、5日がたったその日。

りょう君はまた、私の部屋の前に立っていた。

今日は何もいわずに、ただ私の部屋の前にいた。

 

「すみれ…。」

 

小さくりょう君がつぶやいたときだった。

 

「りょう君!!ちょっと出かけるから、すみれのことよろしくね。」

 

「え、ちょっと、おばさん!?」

 

「30分ぐらいで戻ってくるから、ね?よろしく!行ってくるわね~。」

 

「あ、えっ、まっ…!」

 

ガチャン、と大きな音がして、家の中が静かになる。

はぁ、とりょう君がため息をつくのが聞こえた。

 

「……なぁ。すみれ。」

 

唐突に、りょう君が話し始めた。

 

「俺の声は、すみれにちゃんと届いているのか?」

 

私はびくりと肩を震わせた。

ちゃんと、届いてる。ちゃんと、聞こえてる。

そう答えたい。りょう君と話したい。でも、声が出ない。りょう君と、話せない。

 

「すみれが閉めたこの扉を、俺はずっとノックしてるんだけどな。」

 

わかってる。わかってるよ。りょう君が、私を助けてくれようとしてること。

全部、全部わかるけど…怖いんだよ。外にでるのが、怖いんだよ…。

 

「俺はもっとすみれと、昔みたいに笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり…。いろいろなことがしたい。いろいろなものをみたい。また、すみれと話したい。すみれと、遊びたい。」

 

私だって話したい。遊びたい。もっと笑いあいたい。

もっと、りょう君と一緒にいたい。

 

「俺はさ、ヘタレだから、この扉を開けられないんだよ。だからさ、すみれ。一緒に開けてくれないかな?もう、俺一人じゃ開けられないんだよ。

そんなせま苦しい、限られた世界じゃなくてさ、もっと広くて、もっと楽しい世界にいこうよ。だから俺と一緒に、扉を開けてくれないかな?」

 

私は泣きながら、震える手を伸ばしてドアノブを握った。

歪む視界のまま、手に力を込めてゆっくりとノブをひねる。

ゆっくりと、ゆっくりと、扉を開いていった。

 

顔を伏せたまま、私は扉を開いていった。

 

「ねぇ、すみれ。顔を、見せてくれないかな。」

 

涙声のりょう君が、私に言う。私は恥ずかしくて、首を横に振った。そのままりょう君の方に歩いて、抱きついた。

のどの奥から絞り出すように、私は小さく、呟くように言った。

 

「やっぱり、怖いよ。外に、出たくないよ。」

 

りょう君は背中をゆっくりとさすりながら優しく言ってくれた。

 

「大丈夫だよ。怖いことがあったら、俺が守ってやる。だから、さ。大丈夫だよ。多分。」

 

「多分、なの?」

 

私は軽く頭を上げて訪ねた。りょう君は苦笑いしてこう言った。

 

「すみれは、絶対守るから。」

 

「それ、多分じゃ、ない。」

 

「だな。多分じゃなくて、絶対だ。」

 

私の顔を見て、優しくほほえむりょう君は、小さい頃のりょう君とは違って、すごくかっこよかった。

私は再びりょう君の胸に顔をうずめて小さく、

 

「ありがとう。」

 

とつぶやいた。

そのささやきがりょう君に聞こえたかはわからないけど、りょう君はお母さんが帰ってくるまでずっと背中をさすってくれた。

 

end




終わったぁぁぁぁぁぁ…

受験も小説も終わったぁぁぁぁぁぁ…。

疲れましたよ。皆さん。もう小説に入り浸りたいですよ。現実逃避したいですよ。

あ、これは余談なんですが、この間占いしたら結果が
『現実逃避、してませんか?』
でした。
当たりすぎて怖かったです。

とにかく…

ここまで読んでくださったみなさま、ありがとうございました。
新作もすぐに出しますよ。
現実逃避ですから。
次の作品は都市伝説をモチーフにしたものです。
良ければ読んでください。
それではまた次の作品でお会いしましょう。
本当にありがとうございました。
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