奏視点
いよいよ我ら北宇治の番。やってやるぞと意気込んで臨んだ本番は………
「あっという間だったね。」
「それな。」
気がついたら終わっていた。
「なんかコンクールっていつもこうだよね。」
「定演*1とかだと20曲くらいやるもんな。それが2曲しかないって考えたら、そりゃもうあっという間よ。」
「確かに。言われてみればそう。」
その時間、わずか12分。この短時間で全てが決まると思うと、とても恐ろしい勝負だなと、改めて感じるのであった。
「まあ、終わったらもうやることはねえ‼︎よしっ、ナンパしてくるぜ‼︎」
「じゃあ私は警備員をやるよ。会場内の風紀が乱れないか、きちんと見張ってないとね♪」
「うるせえ‼︎お前は邪魔すんな‼︎」
「梨々花〜、助けて〜!暴漢に襲われる〜!」
「そのまま襲われたらいいと思うよ〜♪」
「なんでよ⁉︎」
にしても、ホント切り替え早いな‼︎いっそのこと会場から追い出した方がいいんじゃないか?そんな事を思いながら、私たちは会場の近くを歩き回ったのだった。もちろん梨々花を無理矢理同伴させて。そうでないと、私が耐えられないからね!
そして、1時間後のこと。私たちは表彰式のために会場のロビーに戻ってきた。
「最後は龍聖か。」
「月永君のところだね。」
「古巣だね〜。」
戻る時間が少し早かったのか、会場では最後の団体である龍聖が演奏をしていた。それをロビーのモニター越しで聴いてたわけだが………
「上手すぎるな………」
「だね〜。」
「指導者がいいんだろうね。」
「男子校ならではの迫力に、男子校らしからぬ繊細さ。マジかよ………」
演奏を聴いていた大輝の顔に焦りが浮かび始めた。モニター越しに聴いてるだけだから、ホール内部ではまた違って聞こえるはず*2。それなのに、これだけ焦るってことは………
「龍聖がここまで上手いなんて聞いてないぞ。完全に計算外だ………」
マズい、もしかしたら龍聖に抜かれる。そうなったら、3枠ある全国への切符が手に入れにくくなる。実質2枠になるから。他の強豪がもし失敗してたらまだいいけど、残念ながら演奏の準備で他校の演奏を聴けていない。杞憂に終わるといいけど………。そんな事を思っているうちに、あっという間に表彰式の時間がやってきた。
表彰式では、相変わらず大輝と梨々花が隣にいた。
「14番。兵庫県代表、光川高等学校。銀賞。」
私たちはまず金賞を取らなければならない*3。代表枠を勝ち取るための最低条件だから。そして、次は北宇治の番。お願い、取れてて………っ!
「15番。京都府代表、北宇治高等学校。ゴールド金賞。」
良かった〜‼︎なんとか第一関門はクリア!
「よしっ!」
「まずは一安心、だね〜。」
「問題は次だ。」
しかしもう1段階関門がある。残り7校の賞を発表し終えたところで、いよいよその時はやってきた。
「続きまして、来る10月に行われる全国大会に出場する3団体を発表します。」
全国大会の出場校の発表。金賞を取った学校の中から上手い3校が選ばれる。ここの中に入ることが一番大切だ。
「1校目。3番。大阪府代表、明静工科高等学校。」
最初は有名な強豪校。流石にここは来るか。
「2校目。8番。大阪府代表、秀塔大学附属高等学校。」
次も有名な強豪校………ってヤバい、残り1枠しかない‼︎頼む、北宇治、入っていて‼︎お願いだから…………
「3校目。22番。京都府代表、龍聖学園高等部。」
ダメ…………だったか………。大輝の嫌な予感、的中。全国金を目指していたのに、全国すら行けなかった………
「終わった…………」
「うぅ………」
「くそっ………‼︎」
やるだけのことはやったのに、それでも行けなかった。結果が出なくて、何にもならなかった。本当に馬鹿みたいだ。悔しい、悔しいなぁ。悔しくて死にそうだ‼︎
表彰式を終えて外に出た私たち。そこで早速………
「後藤先輩、梨子先輩、夏紀先輩………すいませんでした‼︎先輩方が全国行けなかったのは、俺のせいです‼︎」
大輝が泣きながら3年生に謝り始めた。
「おいおい、急に謝るなよ。お前は悪くないって。」
「そうだよ〜。今までありがとね〜。」
「アンタのおかげで、色々上手くなれたから!」
「すいません、ありがとうございます………」
あれだけ全力を出し、実力もあった大輝が、自分を力不足といい謝る。
「先輩方、すいません。私もです………」
「久石ちゃんも落ち込まないで!来年見せてくれたらいいから、全国金を!」
「すいません………っ‼︎」
それじゃあ尚更、実力のない私はもっと力不足だったということだ。夏紀先輩と約束したのに。全国金取ろうって。それなのに、全国すら行けなかった。
「ちょっとちょっと〜、何この空気〜?お通夜じゃないんだから〜。」
そんな悔しい雰囲気を吹き飛ばすかのように、我らの部長・吉川先輩が現れた。
「何落ち込んでんの〜?私たちは今日、最高の演奏をした‼︎それは事実でしょ?これまで私たちを支えてくれた部員の皆、先生たちや保護者の皆さんのためにも、胸を張って帰らなきゃ!確かに、全国には行けなかった。でも、落ち込む必要は無い‼︎私たちはあの瞬間、最高の演奏をした‼︎そしてこの経験は、絶対明日に繋がる。来年に繋がる‼︎1年間部長をやった私が断言するよ。北宇治はもっと良くなる。もっともっと強くなる‼︎だから、顔を上げて‼︎」
自分が一番悔しいだろうに、自分が一番泣きたいだろうに。それなのに、堂々と凛々しい顔をして、部員を鼓舞する。本当にカリスマ性溢れる、すごい部長だ。
「今日という日は、来年のコンクールの1日目‼︎明日からの練習、頑張って〜、いきましょう‼︎」
そうやって鼓舞されたおかげか、段々と復讐心が燃えてきた。コンクールへの。
そして帰りのバスの中で、私たちは誓った。
「久美子先輩、葉月先輩、緑先輩、求、美玲、さっちゃん、そして久石。来年は全国金、取りましょう‼︎」
「「「「「「「はいよ‼︎」」」」」」」
次こそはリベンジすると。
久美子視点
関西大会から数日が経ち、部長となった私のところに、いきなり荒川君がやってきた。
「お疲れ様です、久美子先輩。」
「お疲れ〜、荒川君。どうしたの、ナンパ?」
「はい‼︎」
「悪いけど、奏ちゃんをあたってね〜。」
「それは嫌です‼︎」
そうやって冗談を言う彼の手元には、ある紙があった。
「それで、今日はどうしたの?」
「はい。実は…………」
彼が私のところに来た理由。それは…………
「ソロコンに出させて下さい。今年こそは全国金、取りたいんです。」
ソロコンの申請だった。
以上で第一楽章終了です!色々まとめたら案外短くなりました!次の話から第二楽章「アンコン裏の一人舞台」が始まります!お楽しみに!