奏視点
それから数日後のこと。
「荒川君。ソロコン出ていいよ〜。滝先生もオッケーだって。」
「頑張れよ、大輝。」
「あざっす、久美子先輩!塚本先輩‼︎」
「滝先生との2人きり………ずるい。」
「麗奈〜、冷静になって〜。」
「滝先生のあれこれ、聞いてきますよ‼︎」
「聞くな!」
「お願い。」
「しないでください‼︎」
大輝は久美子先輩達からの許可が降りてウキウキしていた。よほど出られるのが嬉しいのだろう。
「それじゃあ、滝先生のところに行ってきます!」
「行ってら〜。」
「奏ちゃんはついていかなくて大丈夫?」
「遠慮しま〜す!久美子先輩と塚本先輩の絡みが見たいので♪」
「はぁ⁉︎///」
「見ても何も面白くないよ〜。」
そして、大輝はスキップをしながら滝先生のところに向かったのだった。
松本先生視点
生徒の自主性を重んじる。これが滝先生の指導方針。
「滝先生、承諾してくださり、ありがとうございます。これからよろしくお願いします‼︎」
「荒川君。こちらこそ、よろしくお願いします。目標はソロコンで全国金、でしたっけ?」
「はい‼︎俺が全国金取って広告塔になり、来年優秀な生徒をかき集めます‼︎」
「期待してますよ………って、私も頑張るんでしたね。奏者として。」
「はい。お互い頑張りましょう‼︎」
それを逆手にとって、自分の夢を叶えるために邁進するとは。やはり、若者が努力する姿はとても素晴らしいな。
「 あと、女の子と遊んだらダメですからね⁉︎」
「はい?えっと…‥私、既婚者ですよ?遊びませんから……」
「なん………だとっ⁉︎」
「荒川、教師に変な事を言うな‼︎」
「ひいっ、松本先生ぃ⁉︎」
ただ、もう少し口の利き方に気をつけてほしい。そう思ったのだった。
奏視点
大輝が帰ってくるまでの間、私たちがパート練習をしていると………
「イケメンが帰ってきましたよ〜♪」
アホがアホな事を言いながら帰ってきた。
「幽霊でも連れてきたの?私霊感無いから見えないんだよね。」
「幽霊じゃない、現実だ。もし俺の顔が見えないなら、眼の病院行った方がいいぞ。」
「その顔でイケメンって思うなら、頭の病院に行った方がいいんじゃない?」
「2人で仲良く入院したら?」
「「黙れ月永‼︎」」
しかも月永にまでバカにされる始末。私悪いことした?してないよね?全部大輝が悪い。
「それで〜、どうだったの、ソロコン?」
「オッケーでしたよ、葉月先輩‼︎」
「おっ、よかったじゃん!頑張って!期待してる♪」
「はい!ありがとうございます‼︎」
「葉月先輩、私もアンコン頑張ります!勝負ですね!」
「わ、私も………///」
「みっちゃん、さっちゃん、負けないよ〜♪」
「緑、楽しみにしてますね!」
「皆で聞きに行くよ〜。」
「頑張れよ。」
「はいよ‼︎」
そして、戻ってきた大輝はすぐさまソロコンのことを報告。滝先生からオッケーもらえたんだ。本当に嬉しいよ。
「よかったね、大輝。これでしばらく女の子が居ない生活だね。」
「俺もお前と別行動になれて、心底嬉しいぜ。」
「こら、2人とも?素直にならなきゃダメですよ!」
「「素直ですよ⁉︎」」
「素直になりなさい。これは部長命令です。」
「じゃあ久美子先輩は塚本先輩に素直になってくださいよ。」
「なんてこと言うんだ〜⁉︎」
だって一緒にいる時間が減るから。これからの練習は、私がアンコン、大輝がソロコン。つまりは完全別行動。しかも滝先生と2人きりのため、他の生徒がナンパの被害に遭うこともない。なんて平和な時間なんだ。
「そうだ!2人とも大好きのハグをしたらいいんじゃない?」
「「えっ………?」」
その平和は加藤先輩の発言によって、すぐさま崩れ去った。大好きのハグ。お互いの大好きなところを言ってハグするという、南中から輸入された悪魔的な行事は、何故か女子部員の間で流行っていた。それをコイツとやれと?正気を保てるわけがない。
「何を言ってるんですか、葉月先輩⁉︎俺に生ゴミを抱きしめろと⁉︎」
「下水から出てきた汚物を
「ほらほら〜、素直に言っちゃいなよ!」
「大好きのハグが無理なら、キスとかがいいんじゃない?」
「「余計無理だよ、さつき(さっちゃん)‼︎」」
「とりあえず、お互いのいいところだけ言ってみたら?」
「美玲、余計な事言わなくていいから。」
「おっ、それがいいですね!」
「よくないですよ、緑先輩。」
「じゃあやって下さい。これは部長命令です。」
「それ流行ってるんですか、久美子先輩の中で?」
周りがワイワイガヤガヤと煽り始める。なんでそうなるかなぁ?
「よし分かった‼︎久石、お前はいい性格をしているぞ‼︎」
「褒めてないじゃん‼︎」
大輝も大輝だし‼︎もっと私のいいところあるでしょ‼︎なんなら一ミリも褒める気無いし‼︎だろうと思ったけどさ‼︎このままやり返すのも癪だし、ここは一枚上手になってやろうか‼︎
「わかった。私が大輝を褒めるなら………楽器が上手いことと、音楽への知見がすごいことかな?」
「そりゃ練習したからな!」
「うざっ。」
なんでお前は自信満々に返せるんだよ‼︎ずるい‼︎照れさせて揶揄いたかったのに‼︎
「ちなみに音楽以外は………?」
「………………」
「久石。」
「………………」
「お〜い、久石。」
「………………」
「おい久石、3分経ったぞ。何かないのか?」
「あったらすぐ言ってるよ。」
「ほら、あるだろ?顔とか気遣いとかめっちゃモテることとか。」
「どんなに非現実的なことでも、諦めずに行動し続けることが素晴らしいと思いました。」
「何が非現実的だ⁉︎」
これで皆も満足かな?
「よしっ、このまま2人を閉じ込めるよ!」
「「「「「はいよ‼︎」」」」」
「「何しようとしてるんですか⁉︎」」
そんなことなかった‼︎皆いつの間にか廊下に退避してるし‼︎こんなのと2人きりとか死んじゃうって‼︎
「久石、任せろ!」
「大輝じゃ無理でしょ‼︎」
「それでは聞いて下さい………完全初見*1のチャルダッシュ。」
とりあえず大輝が皆を呼び戻すために楽器を吹き始めたけど………って上手っ。初見でここまで吹けるの?テンポは原曲より遅めだけど、それでもこんな速さじゃ吹ける気しない。
「えっ、ちょっ、連符やばっ!」
「これ本当に練習してないんだよね⁉︎」
「これ吹いてるところ一回も聞いたことないから、合ってると思う。」
チューバの3人が目に見えてびっくりしている。同時に美玲なんかは、今の自分と照らし合わせたのか、苦い顔をし始める。もちろん私もだ。さっきまでのおちゃらけモードが一変してしまった。
「はいよ、ざっとこんなもんか‼︎」
「アンタ、ほんと楽器
「他も凄いだろ‼︎」
「悪い意味で、ね。」
「うるせえ‼︎」
この圧倒的な実力。ほんと凄いよなぁ。そこだけは素直に褒められる。そう思った日だった。