たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号B おねがいティーチャー

  奏視点

 

 それから数日後のこと。

 

「荒川君。ソロコン出ていいよ〜。滝先生もオッケーだって。」

「頑張れよ、大輝。」

「あざっす、久美子先輩!塚本先輩‼︎」

「滝先生との2人きり………ずるい。」

「麗奈〜、冷静になって〜。」

「滝先生のあれこれ、聞いてきますよ‼︎」

「聞くな!」

「お願い。」

「しないでください‼︎」

 

 大輝は久美子先輩達からの許可が降りてウキウキしていた。よほど出られるのが嬉しいのだろう。

 

「それじゃあ、滝先生のところに行ってきます!」

「行ってら〜。」

「奏ちゃんはついていかなくて大丈夫?」

「遠慮しま〜す!久美子先輩と塚本先輩の絡みが見たいので♪」

「はぁ⁉︎///」

「見ても何も面白くないよ〜。」

 

 そして、大輝はスキップをしながら滝先生のところに向かったのだった。

 

 

 

 

  松本先生視点

 

 生徒の自主性を重んじる。これが滝先生の指導方針。

 

「滝先生、承諾してくださり、ありがとうございます。これからよろしくお願いします‼︎」

「荒川君。こちらこそ、よろしくお願いします。目標はソロコンで全国金、でしたっけ?」

「はい‼︎俺が全国金取って広告塔になり、来年優秀な生徒をかき集めます‼︎」

「期待してますよ………って、私も頑張るんでしたね。奏者として。」

「はい。お互い頑張りましょう‼︎」

 

 それを逆手にとって、自分の夢を叶えるために邁進するとは。やはり、若者が努力する姿はとても素晴らしいな。

 

「 あと、女の子と遊んだらダメですからね⁉︎」

「はい?えっと…‥私、既婚者ですよ?遊びませんから……」

「なん………だとっ⁉︎」

「荒川、教師に変な事を言うな‼︎」

「ひいっ、松本先生ぃ⁉︎」

 

 ただ、もう少し口の利き方に気をつけてほしい。そう思ったのだった。

 

 

 

 

  奏視点

 

 大輝が帰ってくるまでの間、私たちがパート練習をしていると………

 

「イケメンが帰ってきましたよ〜♪」

 

 アホがアホな事を言いながら帰ってきた。

 

「幽霊でも連れてきたの?私霊感無いから見えないんだよね。」

「幽霊じゃない、現実だ。もし俺の顔が見えないなら、眼の病院行った方がいいぞ。」

「その顔でイケメンって思うなら、頭の病院に行った方がいいんじゃない?」

「2人で仲良く入院したら?」

「「黙れ月永‼︎」」

 

 しかも月永にまでバカにされる始末。私悪いことした?してないよね?全部大輝が悪い。

 

「それで〜、どうだったの、ソロコン?」

「オッケーでしたよ、葉月先輩‼︎」

「おっ、よかったじゃん!頑張って!期待してる♪」

「はい!ありがとうございます‼︎」

「葉月先輩、私もアンコン頑張ります!勝負ですね!」

「わ、私も………///」

「みっちゃん、さっちゃん、負けないよ〜♪」

「緑、楽しみにしてますね!」

「皆で聞きに行くよ〜。」

「頑張れよ。」

「はいよ‼︎」

 

 そして、戻ってきた大輝はすぐさまソロコンのことを報告。滝先生からオッケーもらえたんだ。本当に嬉しいよ。

 

「よかったね、大輝。これでしばらく女の子が居ない生活だね。」

「俺もお前と別行動になれて、心底嬉しいぜ。」

「こら、2人とも?素直にならなきゃダメですよ!」

「「素直ですよ⁉︎」」

「素直になりなさい。これは部長命令です。」

「じゃあ久美子先輩は塚本先輩に素直になってくださいよ。」

「なんてこと言うんだ〜⁉︎」

 

 だって一緒にいる時間が減るから。これからの練習は、私がアンコン、大輝がソロコン。つまりは完全別行動。しかも滝先生と2人きりのため、他の生徒がナンパの被害に遭うこともない。なんて平和な時間なんだ。

 

「そうだ!2人とも大好きのハグをしたらいいんじゃない?」

「「えっ………?」」

 

 その平和は加藤先輩の発言によって、すぐさま崩れ去った。大好きのハグ。お互いの大好きなところを言ってハグするという、南中から輸入された悪魔的な行事は、何故か女子部員の間で流行っていた。それをコイツとやれと?正気を保てるわけがない。

 

「何を言ってるんですか、葉月先輩⁉︎俺に生ゴミを抱きしめろと⁉︎」

「下水から出てきた汚物を(まと)えなんて、加藤先輩も鬼畜な事を言いますね‼︎」

「ほらほら〜、素直に言っちゃいなよ!」

「大好きのハグが無理なら、キスとかがいいんじゃない?」

「「余計無理だよ、さつき(さっちゃん)‼︎」」

「とりあえず、お互いのいいところだけ言ってみたら?」

「美玲、余計な事言わなくていいから。」

「おっ、それがいいですね!」

「よくないですよ、緑先輩。」

「じゃあやって下さい。これは部長命令です。」

「それ流行ってるんですか、久美子先輩の中で?」

 

 周りがワイワイガヤガヤと煽り始める。なんでそうなるかなぁ?

 

「よし分かった‼︎久石、お前はいい性格をしているぞ‼︎」

「褒めてないじゃん‼︎」

 

 大輝も大輝だし‼︎もっと私のいいところあるでしょ‼︎なんなら一ミリも褒める気無いし‼︎だろうと思ったけどさ‼︎このままやり返すのも癪だし、ここは一枚上手になってやろうか‼︎

 

「わかった。私が大輝を褒めるなら………楽器が上手いことと、音楽への知見がすごいことかな?」

「そりゃ練習したからな!」

「うざっ。」

 

 なんでお前は自信満々に返せるんだよ‼︎ずるい‼︎照れさせて揶揄いたかったのに‼︎

 

「ちなみに音楽以外は………?」

「………………」

「久石。」

「………………」

「お〜い、久石。」

「………………」

「おい久石、3分経ったぞ。何かないのか?」

「あったらすぐ言ってるよ。」

「ほら、あるだろ?顔とか気遣いとかめっちゃモテることとか。」

「どんなに非現実的なことでも、諦めずに行動し続けることが素晴らしいと思いました。」

「何が非現実的だ⁉︎」

 

 これで皆も満足かな?

 

「よしっ、このまま2人を閉じ込めるよ!」

「「「「「はいよ‼︎」」」」」

「「何しようとしてるんですか⁉︎」」

 

 そんなことなかった‼︎皆いつの間にか廊下に退避してるし‼︎こんなのと2人きりとか死んじゃうって‼︎

 

「久石、任せろ!」

「大輝じゃ無理でしょ‼︎」

「それでは聞いて下さい………完全初見*1のチャルダッシュ。」

 

 とりあえず大輝が皆を呼び戻すために楽器を吹き始めたけど………って上手っ。初見でここまで吹けるの?テンポは原曲より遅めだけど、それでもこんな速さじゃ吹ける気しない。

 

「えっ、ちょっ、連符やばっ!」

「これ本当に練習してないんだよね⁉︎」

「これ吹いてるところ一回も聞いたことないから、合ってると思う。」

 

 チューバの3人が目に見えてびっくりしている。同時に美玲なんかは、今の自分と照らし合わせたのか、苦い顔をし始める。もちろん私もだ。さっきまでのおちゃらけモードが一変してしまった。

 

「はいよ、ざっとこんなもんか‼︎」

「アンタ、ほんと楽器()()はすごいね。」

「他も凄いだろ‼︎」

「悪い意味で、ね。」

「うるせえ‼︎」

 

 この圧倒的な実力。ほんと凄いよなぁ。そこだけは素直に褒められる。そう思った日だった。

*1
全く練習してない、の意味

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