たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

15 / 15
練習番号E ひさびさポニーテール

  奏視点

 

 福岡から帰ってきた日、大輝は皆に歓迎されていた。

 

「荒川君、おめでとう!全国だね!」

「流石荒川。」

「あざっす!」

「で、かなぴーとの進展は⁉︎」

「福岡でどんなデートしたんですか⁉︎緑気になります!」

「デートじゃないっすよ!ただ中洲の屋台で博多ラーメン食べただけです!」

「それ以外は何もありません。」

「「「ホントにそれだけ〜?」」」

「「それだけですよ!」」

 

 なんか皆何かを期待してるみたいだけど、本当に何も無いし何かする気もないから。ただご飯を奢ってもらえればそれでよし。本当にそれだけでいいのだから。

 

「そういや奏ちゃん、明日夏紀先輩のとこ行く?」

 

 そんな事を思っていると、久美子先輩が懐かしい名前を言った。

 

「えっ、どういうことなんです?」

「実は受験が終わった優子先輩と希美先輩が、アンコンでまだ決まってない子のために出ることになったんだよ。」

「お〜、それはいいですね〜。」

「ただ、その2人が勝手に夏紀先輩の名前を書いたから、一応確認をと思って〜。」

 

 どうやらグループが決まってない子たちのために出てあげるみたい。というか受験もう終わったんだ。早いな。まだ10月末なのに。まあいいや。とりあえず行ってあげるか〜。

 

「なるほど、そういうことでしたか。仕方ないですね、行ってあげます。」

「夏紀先輩に会えるんですね⁉︎俺も行きます‼︎」

「また鼻の下伸ばして〜。着いて来なくていいのに。」

「お前があの人に無礼を働かないか心配だしな。」

「うるさい。」

 

 なんか余計なのが着いてきたけど、いっか。どうせいつも通りやらかして、いつも通り笑われるだけだから。気にしないでおこう。

 

 

 

 

 次の日の休み時間、私と久美子先輩は夏紀先輩の教室に来た。

 

「えっと………」

「おっ、黄前ちゃん!それに久石夫妻まで!久しぶり!」

「「夫婦じゃないです‼︎」」

 

 そして、いきなり揶揄われた。こんな事になるなら来るんじゃなかった。

 

「で、どうしたの?」

「昨日優子先輩が楽器室に来たんですけど〜、何か聞いてませんか?」

「えっ、別に?」

 

 というかこの人、私が髪切ったのに気づいてくれないし………

 

「その前に何か無いんですか?」

「ん?」

「後輩がおめかししてわざわざ教室まで来たのに。」

「それって荒川君のためじゃなくて?」

「違います‼︎昨日美容院で髪切ったんですよ‼︎5mmくらい。」

「荒川君は分かったの?」

「美容院行くって聞いてたのに大して変わってなかったんで、金の無駄って言ったら怒られました!」

「そりゃ怒るでしょ〜。ダメだよ〜、そんな事言っちゃ〜。」

「気づかなかった人が言わないでください。」

「5mmなんか分かるか〜‼︎」

 

 まあ、気づかれるとも思ってないけど。大輝よりはマシだからいっか。

 

 その後、久美子先輩が事情を話すと………

 

「優子、何勝手に人の名前書いてくれちゃってんの〜⁉︎」

「優しさでしょ〜。あ〜、夏紀先輩はお気持ちだけで充分なんで、って言われないための♪」

「そんな事言って、ウザいOG化してんのはアンタの方じゃないの?黄前ちゃん、遠慮なく言っていいからね。う・ざ・い、って‼︎」

「誰がよ⁉︎」

 

 いつもの通り夏紀先輩と吉川先輩の痴話喧嘩が始まった。もはや3年生の間でも風物詩になっており、

 

「アイツら、またやってるよ………」

「だね〜。ホント元気だよね〜。」

「梨子先輩、お久しぶりです‼︎あと一応後藤先輩も。」

「皆、久しぶり〜!」

「ごめんなさい、後藤先輩。彼の生意気は治せませんでした。」

「相変わらずなんだな………」

 

 その様子を後藤夫妻も眺めていた。

 

「で、夏紀先輩………、参加の方は………?」

「別にいいけど、出来たらコイツと別だと嬉しい‼︎」

「はぁ〜?今なんて言った〜⁉︎」

「だからアンタと一緒が嫌だって言ってるの‼︎」

 

 にしても、いつも喧嘩してんな。そこだけは私と大輝みたい。

 

「オッケーっと。奏ちゃんと荒川君、行こ。」

「いいんですか、ほっといて?」

「うん。いい。」

「ほな、ずらかりますか〜♪」

 

 ということで、私たちは先輩方の前から去っていった。

 

 

 

 

 

 その後、私はアンコンの練習、大輝はソロコン全国大会の練習と、お互いに会わない時間が増えていった。

 

「滝先生。ここアッチェレ*1かけようと思うんですが、ついてこれます?」

「どのくらいかけます?ちょっとやってみて下さい。」

「わかりました。」

 

 今や大輝は完全に滝先生の相棒みたいな関係だ。歳は20近く離れているのに、そんな事を感じさせないような雰囲気。お互いが敬語なのもあって、お互いをリスペクトしながら、更に高め合ってゆく。あそこまで対等にやり合えるのは、本当に凄いなぁ。予選で聞いた時よりも、更に上手くなってる気がする。

 

「私も、あそこについていけないと………」

「美玲、いきなりアレは無理でしょ。」

「それは分かってる。」

 

 実際後藤夫妻が抜けて、大輝の次に上手いのは美玲になった。だが、その差は歴然。正直大輝と美玲の差は、美玲とさつきや加藤先輩の差の倍近くあるのではと思ってしまう。そして、それを美玲自身は分かってる。

 

「奏、私たちもアンコンで全国行こう。そして、荒川に追いつかないと。」

「そうだね。アイツだけが上手いって言われるのも癪だし。あと、全国行くだけじゃ足りないよ。」

「そうだね。私たちが行けるか分からない全国も、あの人にとっては簡単に足を踏み入れられる舞台だもの。その先に行かないと。」

「だね。」

 

 だからこそ、闘志を燃やす。大輝とその他大勢のその他にならないためにも。飄々と皆と過ごす中で、私は内なる闘志を秘めていたのだった。

 

 

 

 

 そして更に1ヶ月が経ち、本番当日がやってきた。

 

「さっすがですね〜、チーム高坂!」

 

 私はシャドーボクシングをしながら、久美子先輩に話しかけていた。

 

「あら奏ちゃん。」

「この前、演奏を聞いてて思いました。これは負けられないな、って。」

「チーム高坂って言うんだ、私たち。じゃあ奏ちゃんのところはチーム久石?」

「いえいえ。うちはトップは居ませんので、言うなれば『チーム平和主義』かと。」

「それだとかえって、なんかあるっぽく聞こえるけど。」

 

 ちなみにこのシャドーボクシングは大輝撃退用にやってるやつだ。アイツがいつかキモい言動をしながら接近してきた時、これで倒そうと思っている。

 

「こういう少人数の演奏って、意外な人が上手かったりして面白いですよね。」

「う〜ん、それは私も思った。」

「滝先生も部員の実力を見極めて、自由曲も決めやすくなった………って言いたいですけど、大輝につきっきりでしたね。」

「そうだね。奏ちゃんも寂しいよね。」

「寂しくなんかありません。むしろ居なくて最高です!」

「素直になりなよ〜。」

「超素直ですよ、私。」

「そだね〜、そういうことにしといてあげる〜。」

 

 にしても、この人は本当に私と大輝をくっつけたがるな〜。何がいいのやら、あんな奴。

 

「それじゃあ今日は、勝負です!」

「はいよ!」

「大輝の真似しなくていいんですよ?」

「あれ、流行ってるからさ〜。」

「なんで流行ってるの………?」

 

 まあいいや。とにかく頑張らないと。全国金、取るために‼︎

*1
テンポを徐々に上げる事。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

カリスマチート転生者先輩 in 北宇治(作者:山田太郎)(原作:響け!ユーフォニアム)

カリスマチート転生者先輩を小笠原世代に生やして、早いうちに吹奏楽部を改革します。▼ガールズラブタグは超保険です。必須タグなので入れましたが、殆ど0です。そこを期待している方はすみません。▼テンポ優先のため、アニメで描かれた部分は必要な部分だけ書きます。未視聴の方はアニメを観ましょう。▼原作2年目で完結しました。3年目はあまり書けるパートがなさそうなので、思い…


総合評価:1745/評価:8.48/完結:8話/更新日時:2026年02月20日(金) 20:00 小説情報

いつか途切れた、音の続きを(作者:いつかの音色)(原作:響け!ユーフォニアム)

 中学二年生のあの時、私は間違えた。私の行動一つで部が崩壊してしまうと、あの時の私は知らなかった。そして、私は逃げてしまった。▼ 周囲への気配りが足りなかった。みんなが何を考えているか、なんて全然考えていなかった。何より、心が弱かった。▼ もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。私はもう絶対に、逃げたりしない。▼ ▼△▼ 南中出身、音楽チートの主人公を黄前世代に…


総合評価:2977/評価:9/連載:18話/更新日時:2026年05月17日(日) 21:30 小説情報

ダブルリードの苦労人(作者:桜紅月音)(原作:響け!ユーフォニアム)

北宇治高校吹奏楽部に所属する彼こと鈴木拓哉は苦労人である。▼部長である小笠原晴香や同じダブルリードのパートリーダーである喜多村来南、同級生の吉川優子を始めとした吹奏楽部のメンバーに苦労している。▼更には、部活の雰囲気も変わって更に苦労が…▼分岐ルートは、原作、アニメが混ざっております。▼ご視聴の際はご注意願います。▼火曜日と土曜日の0時に更新しております。▼…


総合評価:361/評価:8.17/連載:120話/更新日時:2026年05月26日(火) 00:00 小説情報

北宇治のまえせつさん(作者:コーヒーまめ)(原作:響け!ユーフォニアム)

矢田明宏、15歳。和歌山の孤児院から引き取られ京都は北宇治へ。そんな未踏の地で織りなす高校生活とは。▼以前投稿していた『黒江真由との短編──或いは、こんな居場所──』という作品を長編として練り直し投稿したものです。


総合評価:1617/評価:8.92/連載:27話/更新日時:2026年05月17日(日) 18:02 小説情報

想いを音色に乗せて(作者:猫柳/nekoyanagi)(原作:響け!ユーフォニアム)

▼ 両親を早くに亡くし、バイトと勉学、音楽の両立に四苦八苦しながら北宇治高校吹奏楽部で己の理想の音色をトランペットで表現しようと頑張る男の子の物語。▼ 原作終了後、大学以降の物語も書きたいなぁと思っております。▼ クロスオーバーは迷っているので念の為です。原作の間に出すことは恐らくないです。▼ キャラタグ一旦消去させていただきます。▼ 青のオーケストラ要素ち…


総合評価:1790/評価:8.96/連載:18話/更新日時:2026年03月09日(月) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>