奏視点
いよいよアンコン校内予選当日。
「平和に1番になるぞ!」
「「「「「「オー‼︎」」」」」」
どこが平和なんだと思いつつ、私たちはステージに上がった。
ステージに上がると、そこには部員だけでなく、一般の生徒やお客さんもいた。今回の校内予選はコンサートの側面も兼ねているためである。もちろん滝先生や松本先生もいる。そして………最前列で腕を組んで座ってる大輝。アイツに成長した私を届けるんだ‼︎
そして、私たちのティータイムは終了した。4分間、あっという間だった。皆で最高のパフォーマンスをすることができたし、ソロも上手く吹くことができた。
その後、私はステージを降りて客席に戻ると、
「お疲れ、久石。お前上手くなったな!音がクリアになって、表現の幅が広がってたよ。」
「ありがと、大輝♪ご褒美に何か奢って♪」
「お年玉尽きたから無理。」
「じゃあバイトしたら?」
「そんな時間あるかぁ⁉︎あと奢ってもらう相手を働かせるな‼︎」
大輝が真っ先に褒めてくれた。なんだかんだ、音楽のことはちゃんと見ててくれるんだよね。そういうところはいいな、って思う。
「で、なんで梨々花はずっと黙ってるの?」
「いや〜、カップルのイチャイチャを邪魔したら悪いと思って〜♪」
「「カップルじゃない‼︎」」
「俺とりりりんがカップルなんだよ。ずっと隣に居たし。」
「違うよ〜。奏の席を確保してただけ〜。」
「いっそのこと私と梨々花が付き合って、コイツを追い出す?」
「お〜、斬新なアイディアですなぁ〜。」
「りりりん、やめとけ。コイツと付き合うと胃に穴が開く。」
「アンタよりはマシでしょ。」
でもそれ以外はダメ。あと梨々花、頼むからもっと喋って。近づいて。私をコイツと2人きりにしないでほしい。私が耐えられないから。
数時間後。全グループが終了して、いよいよ府大会への出場グループ発表の時間になった。
「結果発表〜♪」
ちなみに今回の司会は大輝。どのグループにも所属してないから、運営の方を先生方と一緒にやってたんだよね。ただ、私の演奏の近辺だけ客席にいた。滝先生や松本先生と分担してたから、その時間暇だったのだろう。
「まずは一般投票から!第3位は………コントラバス二重奏、メヌエット‼︎」
「「「「おお!」」」」
このアンコン校内予選は一般投票と部員投票に分かれている。一般投票は一般のお客さんが良かったグループを書いて投票する仕組みになっている。部員投票はその部員版だ。両方で1位が異なっていた場合は、部員投票の方が優先される。
「続いて第2位‼︎金管七重奏、金管七重奏のためのティータイム‼︎」
そして、私たちは2位、か。
「うぉ〜。奏のとこ、2位か。」
「一般は2位。悔しいけど、部員1位も狙える!」
一般で2位になったからといって、部員投票で1位になれば逆転で府大会に出場できる。
「最後に一般投票第1位は、管打八重奏、フロントライン〜青春の響き〜‼︎」
だが………っ、1位はチーム高坂か‼︎よりによってライバルチーム‼︎これはキツいぞ…………
「続いて部員投票の〜、結果発表〜♪」
とにかく、こっちで逆転するしかない。
「まず第3位は〜、サックス三重奏、スペイン舞曲よりガランテ・バレンシアーナ‼︎」
まず3位は………って、全然予想と違うところ入ってる‼︎確かに上手かったけど、一般投票じゃ3位以内にも入ってなかった!マズい、これは1位になれるのか………?
「続いて第2位は…………」
お願い、入ってて…………っ‼︎
「金管七重奏、金管七重奏のためのティータイム‼︎」
嘘………。こっちも2位ってことは、予選落ち確定…………
「最後に第一位は、クラリネット四重奏、革命家‼︎見事府大会進出です‼︎おめでとうございます‼︎」
大輝に並び立とうと思ったのに、結局ダメだった。
「お互いお疲れ様だね〜、奏。」
「そうだね、梨々花…………」
結構本気で狙ったのになぁ。その結果どっちも2位。あと1歩でいけたかもしれないと思うと、胸の中から悔しさが湧いてきた。
その後、私たちはティータイムのメンバーで集まった。
「ダメ………でしたね………」
「悔しい、悔しいよぉぉぉぉ‼︎」
「あと少し、か…………」
コンクールであと少しのところで全国逃して、アンコンでもあと少しのところで府大会を逃す。あとちょっとだけ上手かったら、絶対に行けてた。そう思うと、涙が止まらなかった。
帰り道、私は大輝と2人きりで帰った。
「お疲れ、久石。」
「お疲れ、大輝………」
「あと少しだったな。」
「うん…………悔しい。」
「そっか。」
珍しく揶揄いもせずに、そっと寄り添ってくれる。それがなんか少し安心する。
「ちなみに、大輝はどこに入れたの?」
「お前のとこ。」
「
「当たり前よ。俺は本気で1番だと思ったところにしか入れねえから。」
「そう………ありがと………」
「それはこっちのセリフだ。いい演奏聴かせてくれてありがとな。」
「どういたしまして………」
あと、やっぱり大輝は私のところに入れてくれたんだ。昔からそうだよね。音楽だけは何故か私を過大評価してくれる。この前も、上手いのは久美子先輩だけど、好きなのは私って言ってくれたし。ホント、なんでそこだけ評価してくれるんだろう?イマイチよく分からない。
「傷心のお前に、俺が最高のプレゼントをやるよ。」
「プレゼント………?キモい自撮りとかは要らないからね。」
「そんなチャチなもんじゃねえ。」
そして、そんな彼からのプレゼント………。一体何をくれるんだろうか…………?
「来るクリスマスの日に、埼玉に来い。そこで俺が全国金の演奏を見せてやる。」
それはなんと、ソロコン本選のお誘いだった。
「予選の時みたくマネージャー的な?」
「それでもいい。とにかく、俺の演奏を聴いてくれさえすればいい。絶対お前に特別な時間をプレゼントするから。」
しかもクリスマスという特別な日に。
「分かった。大輝からのクリスマスプレゼント、楽しみにしてる♪」
「はいよ‼︎」
ここまで言われたら、もう期待するしかない。どんな演奏を見せてくれるのか、どんなクリスマスプレゼントをくれるのか。どうか、私の悔しさを吹き飛ばすような演奏をしてほしい。ついそう思ったのだった。
吹奏楽の各種コンクールは土日開催です。そして、作中の2016年(奏1年時)はクリスマスイブが土曜、クリスマスが日曜でした。マジで偶然です。僕もびっくりしました。