練習番号A ねっけつアンノウン
奏視点
4月になり、私たちは2年生に進級した。
「っしゃあ‼︎今日から俺も2年生‼︎後輩女子に『大輝先輩、私と付き合ってください!』とか言われるんだろうな〜♪」
「その前に、よく進級できたね。絶対留年すると思った。」
「当たり前だろ‼︎俺を誰だと思ってる⁉︎」
「学年逆首席。」
「うるせえ‼︎」
そして、相変わらず大輝は浮かれていた。こんなのが先輩になるとか、演奏面以外で後輩に示しがつかない。だから私がしっかりしないと。
「お〜、相変わらず仲良しだね〜。」
「マジラブだよ〜!」
「りりりんにさっちゃん、どこをどう見たらそう見えるんだ?」
「「ん〜、全体的に〜?」」
「2人とも、目にゴミついてない?」
「「バッチリ綺麗で〜す♪」」
ちなみに、大輝とはもちろん別クラス。私と梨々花は進学クラスに所属しており、ギリギリ合格の大輝がいる普通クラスとは完全に別の学科だ。これは1年の頃からそう。アイツとクラスが絶対に被らないというのは、心の安寧を保つ上で、とても重要な要素だ。
ちなみに低音+梨々花のクラス分けはこんな感じ。
2組 さつき、大輝
5組 美玲、求
8組 奏、梨々花
なんとさつきと大輝が同じクラス。普段揶揄ってる分、思う存分大輝の被害を受けて欲しいと、心の底から祈っている。また、この3人の中にさつきが居るのは、大輝と同じクラスだからだ。
「そういやお前ら、チャルダッシュの伴奏頼んだぞ!」
「「はいよ!」」
「めんどくさ〜。まあ、やるけど。」
なんと大輝効果を狙って、新歓の曲目にチャルダッシュがある。しかもピアノ伴奏を吹奏楽伴奏に変えたもの。そのバージョンの元はアルトサックスのソロだったが、それをチューバに書き換えている。あの曲の伴奏が出来ると思うと、ちょっと嬉しい。
「さあ〜、俺の演奏を聴いて、何人の可愛い子が釣れるかな〜?」
「入部してすぐ退部させないように、演奏以外もちゃんとしてね。」
「は?元からちゃんとしてるだろ?」
「してないから言ってんの‼︎」
「さつきさん、こりゃ痴話喧嘩ですたい!」
「梨々花さん、あっちもそう思ったところで〜。こりゃ〜、」
「「退散やな!」」
「「逃げるな‼︎」」
だけど、コイツの世話をしないといけないのが悲しい。そう思った日だった。
その日の放課後。新歓開始前日という事もあり、パートリーダーの川島先輩主導で作戦会議が開かれていた。
「低音パートは現在7人。今後に向け、1年生を引き込まねばなりません!」
「でも、後藤夫妻と夏紀先輩が抜けただけですよね?」
「3人は大きいよ。」
「経験者3人くらい入ってくれそうな気もしますけど。」
「俺効果で、何人か来ませんかね〜?」
「演奏時期は12月。その時期に荒川は、全国金の上にクリスタルミューズ賞まで貰いましたからね。志望校を決めるにはいい時期だと思います。」
そういや美玲の言う通り、大輝はソロコンの後、金賞受賞者が集まるコンサートに招待され、そこで1人しか貰えないクリスタルミューズ賞を獲得した。文字通りの全国一位。控えめに言って、とんだ化け物だ。
「その効果を期待したいんですけど………」
「協調性など実力以外の要素もありますからね。これ以上久美子先輩の胃を虐めるのも可哀想ですし。」
「誰が虐めてるんだか………」
「久美子先輩。コイツ自覚した上でこれなんで、諦めた方がいいですよ。」
「自分も人のこと言えなくない?」
「こらこら、痴話喧嘩は家でやって。」
「「同棲してないです!///」」
それ以外は違う意味で化け物だけど。本当に一番の問題は、大輝の演奏目当てで入った後輩が、大輝の痴態を見て辞めないかどうかだ。コンクールだけでは人間性は測れないからね。
「コンバスは今年入れないんですよね。」
「2台しかありませんからね。」
そして、コンバスのデキてると噂されるカップル。私と大輝より、あっちを揶揄うべきだと思うけど…………
「頼もう‼︎」
うわっ⁉︎ちょっ、何⁉︎馬鹿デカい何かを背負った、馬鹿デカい声の知らない男が、いきなり教室のドアを開けたんだけど⁉︎誰⁉︎そして何⁉︎学ラン着てるから、生徒なのは分かるけど………
「えっ、えっと………君は………?」
「おっと失礼しやした〜♪自分はこういうもんでして………」
そうして不審な男は黒板に名前を書き始めた。
石神井照葉
「これ、読める人‼︎」
どうやらこれがこの人の名前らしい。見たところそんなに難しい名前ではなさそう。ただ、真ん中の「井」がすごい違和感。
「いしがみ・いてるは君?」
「残念、違います‼︎」
「いしがみい・てるは君?」
「区切りを変えただけ‼︎違います‼︎」
「う〜ん…………」
どうやら変わった読み方をする様子。一体どんな読み方をするんだろう?
「答えはこちら‼︎『しゃくじい・しょうよう‼︎』」
「「「「えっ⁉︎」」」」
しゃくじい⁉︎しょうようはまだ分かるけど、しゃくいじ⁉︎そんな読み方するの⁉︎
「あっ、
「正解です‼︎自分は千葉県柏市、酒井中学校出身‼︎コントラバス1年予定の、
「酒井中学校ですか⁉︎全国金常連、千葉の強豪校ですよね⁉︎」
「その通りです‼︎」
どうやら関東の人らしい。あとそのデカいの、よく見たらコントラバスだった。まさかマイ楽器を持って千葉から京都まで来たの?凄すぎない?
「自分、ソロコンで荒川大輝先輩の演奏を聴いて、入部を決めました‼︎」
そしてなんと………大輝効果が早速出た‼︎強豪校からコンバスを引っ張ってこれるなんて、流石過ぎる‼︎
「大輝、ありがと。たまには役に立つじゃん。」
「う〜ん…………」
ただ、本人はなんか納得がいってない様子。一体どういうことだろう?
「女の子がよかった…………」
「「「「そこ⁉︎」」」」
そういうこと⁉︎どんだけ女好きなんだよ⁉︎ホントに呆れた‼︎せっかく千葉から来てくれたんだからさ〜、もっとあるでしょ‼︎
「ごめんなさいね、石神井君。彼、女好きで………それ以外にもアホで間抜けでろくでなしだから、期待しないでね。」
「大丈夫です‼︎なんなら自分、女になりましょうか⁉︎」
いや、いい子か‼︎遠路
「いやいや、ならなくていいぞ‼︎ごめんな!俺が大輝だ‼︎照葉、よろしくな‼︎」
「はい‼︎よろしくお願いします‼︎」
大輝も珍しく焦って謝るし。なんか本当にすごい人が来たな………
「マイ楽器持ちならいけますね!コントラバス3年の、川島緑輝です!緑って呼んで下さい!よろしくお願いします!」
「コンバス2年の月永求だ。僕のことは求って呼んで。よろしく。」
「はい‼︎よろしくお願いします‼︎」
まあ、根はいい人そうだから馴染めるだろう。月永の後輩とか大変だと思うけど、彼ならなんとかやってくれるでしょう。
翌日の練習で………
「緑師匠、求
「新歓の演奏に混ざっちゃいましょうか!」
「緑先輩の意見に賛成です‼︎ということで、よろしく。」
「はい……ってそうだ‼︎自分友達案内するんで、一旦抜けます‼︎」
「友達?もう出来たんですね!凄いです!」
「流石。」
「ありがとうございます‼︎」
あまりにも馴染みすぎてる石神井の姿が目撃された。というかどんな呼び方⁉︎師匠はまだしも、兄さんって………完全に落語家じゃん‼︎
「照葉、俺のこと忘れてね………?」
「そりゃ忘れたくなるでしょ。憧れの人がこんなアホなら。」
「お前だって、見た目で騙された奴が性格知って離れてくじゃねえか。」
「大輝よりはマシだから。」
「それはどうだか。」
やっぱり大輝の影響で入ったところで、落胆して辞めるだけか。そう思ってると………
「荒川くん、久石さん。ちょっといい?」
私たちはパーカッションの釜谷先輩から話しかけられた。
「「どうしました?」」
「まさか、ナンパ………」
「荒川君に会いたいって人がいたから、連れてきたよ!」
「マジっすか⁉︎」
なんと大輝目当てはまだまだいる様子。これは期待できるな。さて、どんな子が来るんだろう………
「荒川康太です!大輝先輩、中学ぶりです!またフルートやります!よろしくお願いします。」
「長瀬
「昨日ぶりです‼︎石神井照葉です‼︎自分ら3人が、大輝先輩目当てで入った同志です‼︎」
「全員男じゃねえかぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
なんともまあ、全員男だった。女の子からのチヤホヤ生活を夢見て全国金を獲った大輝の野望は、儚く崩れ去ったのだった。
ちなみにオリキャラはこの3人だけです。真由と久美子のソリオーディションの人数合わせのため、この人数にしました。また他パートの荒川康太と長瀬辰馬は出番少なめです。
あと、すずめ達はちゃんと出ますし入ります。なんなら照葉以外の2人より圧倒的に出番多いです。文字数の関係で1話で入りきらなかった都合です。よろしくお願いします。