奏視点
大輝目当てで入った新入生は、なんと全員男だった。
「よ、よろしくな………」
「ごめんね。康太君と石神井君は知ってると思うけど、コイツ女好きだから。」
「そうでしたね!久石先輩、お久しぶりです。相変わらず仲良しですね!」
「どこをどう見たらそう思えるの?」
また、荒川康太は私が大輝を下の名前で呼ぶようになったきっかけの人。同じ西中で、苗字が大輝と同じで紛らわしいから。ホント、ただそれだけだ。
「そういや、辰馬だっけ?なんかどこかで見たことあるような……?」
「おそらく、姉が去年お世話になった影響かと………」
「まさか、梨子先輩の弟⁉︎」
「はい!」
「おお‼︎通りでなんか似てるわけだ‼︎」
そしてなんと残る1人は長瀬先輩の弟。確かに温厚な雰囲気が似ている。きっとあんまり怒らないタイプなのだろう。この子が大輝にダル絡みされないことを祈る。
「それじゃあ皆、よろしくな‼︎」
「「「はい‼︎」」」
「おっと返事は、『はいよ‼︎』だ!」
「それは教えなくていいんだよ。」
「「「はいよ‼︎」」」
「流行らせなくていいからね?」
ということで、大輝とそのファン達は別れたのだった。
その後、私たちは低音パートの部屋に戻った。すると、
「あれ、この子達は………?」
そこには1年生の女の子達が待っていた。ざっと4人、か。
「女の子だぁぁぁぁあ‼︎来た来た来たぁぁぁぁぁ、これこれこれ‼︎俺の春の、到来だぁぁぁぁぁぁ‼︎」
そして、大輝が恥を晒し始めた。これはマズい。早く消滅させないと。
「「「「えっ?」」」」
「デュクシ。」
「ぐへぇ………」
「皆、今のは見なかったことにして。お願い。」
「「「「はい…………」」」」
とりあえずデュクシしてダメージを負わせといた。これならしばらく喋れないからいいだろう。ごめんね、後輩たち。入部早々、こんな化け物をお見せして。お詫びとして、丁重に扱うことにしよう。
そして私たちが、石神井君も含めた1年生たちを座らせていると………
「あれ?もしかして、義井さんだよね?」
「鈴木先輩!覚えてくれてたんですか⁉︎」
「覚えてるよ。義井さん上手だったから。」
「ありがとうございます!」
なんと美玲が先輩面し始めた。どうやら同じ中学らしい。ただ、言い方的に低音じゃないっぽい。だって同じパートの先輩に対して、覚えててくれたんですね、は違和感ありすぎるもん。
「ってことは、他3人も同じ中学?」
「はい。でも、吹部は私だけで………それは、その………」
「出来たら初心者3人は一緒がいいなって話してまして……人気のない低音なら、競争率も低いかなって。」
「まあ、そういうことならそうだよね…………」
そして、他3人はどうやら初心者みたい。義井さんに誘われたのかな?まあ、初心者でも入ってくれるだけマシか〜。
「はい!改めまして、釜谷すずめです!中学はバスケ部でした!好きな言葉はニラレバ炒め、嫌いな言葉は新興住宅です!よろしくお願いします!」
この子は運動部って感じみたい。あと、ちょつと噂になってた釜谷先輩の妹かな?大人しめなお姉さんとは真逆の雰囲気だけど、どことなく似ている感じもある。
「ニラレバ好きなの?」
「いえ、好物はこんにゃくステーキです。」
「えっ?」
「ニラレバは好きな言葉で、むしろレバーは嫌いです。」
いや、紛らわしいな‼︎そんな事ある⁉︎
「ややこしくていいね!」
そして加藤先輩‼︎それでいいの⁉︎
「それじゃあ次、佳穂!」
「は、はい!は、針谷佳穂です!中学は漫画部で、鍵盤ハーモニカとリコーダーしか経験ないですけど………」
続いてはおとなしめな子。
「大丈夫だよ!私も高校から始めたんだから。」
「本当ですか?」
「うむ!」
こういった初心者のフォローには加藤先輩が向いてるな。というか今の低音パートで高校から始めたのって、加藤先輩しかいないし。
「そして、次………」
「はい‼︎お気に入りのバンダナを巻いてたら………アンタ、海賊を目指すの、って言われました。海賊ちゃうわ〜、オシャレや〜。1年4組、上石弥生です。」
そして次のバンダナの子………はキャラ濃すぎ‼︎お笑い芸人か‼︎
「ぷっw」
あと針谷さん、これツボなの?浅くない、大丈夫?
「おっ、貴殿は落語が好きなのか⁉︎」
「いや、違うよ?ただのネタ。」
「なんと、これは才能の塊………っ‼︎自分は千葉県柏市、酒井中学校出身‼︎コントラバス1年予定の、
「「「「よろしく!」」」」
そして、何故か上石さんに共鳴するかの如く自己紹介をする石神井君。いや、ホント………皆キャラ濃すぎない?胃もたれしそうなんだけど。
「えっと………私は義井沙里です。私はクラリネット希望で………皆を連れてきただけです!」
「なんと、貴殿は優しいのだな‼︎」
「へっ?あっ、ありがとう……///」
そして、唯一清涼剤になりそうだった子はクラ希望。ちょっと残念だけど、経験者ならそっち行ったほうがいいからね。
「で、照葉以外で、俺目当て集まった子はいるかな〜?」
「「「「えっと…………違います。」」」」
「違うんかぁぁぁぁぁい‼︎」
で、また大輝が復活して暴れ始めたんだけど‼︎最悪‼︎
「まあいい。俺の名前は荒川大輝‼︎昨年度のソロコンで全国金&クリスタルミューズ賞を獲得した、今をときめくイケメンチューバ奏者さ!」
「あっ、あの上手いチューバの人………ですよね?」
「そうだぜ!どう、俺に惚れた?」
「えっと…………」
後輩たちも混乱してんじゃん‼︎もう、このままだと辞めちゃうって‼︎だから私がなんとかしないと‼︎
「答えにくいから、後輩にその絡みするのやめな。可哀想でしょ。」
「は?いいだろ?俺だぜ?超絶イケメンの。」
「ごめんね、皆。彼見ての通り、頭が悪いの。だから大目に見てあげて。」
「それを言ったら、コイツは性格が悪いぞ。だから気をつけな。」
「これこら〜、痴話喧嘩しないの〜。」
「「違います‼︎」」
だから久美子先輩、痴話喧嘩とか言わないでください‼︎後輩たちに勘違いされたらどうするんですか⁉︎
「ぷっw」
「「今笑わなかった⁉︎」」
「ごめんなさい、ついw」
「「ついじゃないが⁉︎」」
「どうやら佳穂のツボに入ったっぽいですね〜!」
「私が面白さで負けるなんて………っ!」
「いい夫婦ですね‼︎」
「「よくない‼︎」」
しかもまともだと思った佳穂*1は、私たちを見て吹き出すし。他の1年生もここぞとばかり馬鹿にするし‼︎なんなの⁉︎もっとまともな1年は来ないのかな?そんな事を思いながら、その日は終わったのだった。
次の日、私たちは入部が確定した皆の前でパート紹介をしていた。
「次は低音の番だね。奏ちゃん、頼んだよ。」
「はい!」
そして、次は低音の番。担当は私だ。皆に入ってもらえるように、頑張るぞ〜!
「初めまして〜♡低音パート、久石奏で〜す♡皆さ〜ん、私が手にしているこの楽器ぃ〜、ご存知ですかぁ〜?ユーフォニアムといって、丸みを帯びた、落ち着いた美しい音色を奏でる楽器なんですよぉ〜♡」
これでどうかな?
「「「「………………」」」」
えっ、ちょっ、反応悪いんだけど………
「グロ映像をお見せしてしまい、申し訳ございません。改めてここはイケメンの俺が、パート紹介を致します☆」
しかも大輝がしゃしゃり出てきた‼︎ふざけんなよ‼︎余計悪化するじゃん‼︎
「ごめんなさい、映像が乱れました〜!彼のことは無視してくださいね〜!」
「うるせえ、邪魔すんな久石‼︎せっかくお前のやらかしをカバーしようとしてんのに‼︎」
「余計酷くなるから‼︎だから出てこないで‼︎」
「低音パート、時間終了。次はパーカッションで。」
「「あっ。」」
「ぷっw」
そして私たちのパート紹介は呆気なく終わってしまい………
「昨日の4人しか来なかったね〜。」
「久石のせいだな!」
「いや、大輝のせいでしょ。」
「ぷっw」
「「笑うなぁぁぁぁぁ‼︎」」
針谷佳穂、上石弥生、釜谷すずめ、石神井照葉の4人しか低音には入りませんでしたとさ。