たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号F かぜひきボイコット

  奏視点

 

 黒江先輩がいきなり爆弾を投下してきた。

 

「でも、仲間なわけだし………」

 

 久美子先輩が反論する。この人は本当に誰も見捨てたくないって思っている。

 

「辞めたい子は辞めて部活から解放されるし、残った子はその子を気にせず演奏に集中できるようになる。むしろいいことなんじゃない?たかが部活なんだし、無理してしがみつくことじゃないと思うし。」

 

 それに対する黒江先輩。この人は本当に、空気というものが読めないのかなぁ⁉︎

 

「あれっ、私変なこと言った?」

「いえ。黒江先輩らしくない過激な発言だと思っただけです。」

「あっ、ごめんね!極端だったよね。私、たまにこういうところあって………気にしないで!」

 

 気にするでしょ‼︎この人天然でとんでもないこと言いまくってない⁉︎本当に腹立つ‼︎

 

 

 

 

 その日の帰り、梨々花が居ない影響で大輝と2人きりになってしまったので、不満をぶつけることした。

 

「なんなの、あの人は⁉︎普通あの場であの発言しなくない⁉︎」

「分からなくはないけどな。」

「はぁ⁉︎」

 

 そしたら、まさかの黒江先輩の発言に同調。嘘でしょ⁉︎

 

「大輝も黒江先輩側なの⁉︎」

「側とかねえだろ。つーか100%賛成してるわけじゃねえし。」

「じゃあどういうこと⁉︎」

 

 賛成と反対が混じってるって………。ハッキリしたことを言って欲しいんだけど‼︎

 

「辞めたい奴は全国金目指す環境が嫌……つまり目標が合わないということ。その人がいると全体の演奏の質も落ちやすい。これが賛成の理由。」

「じゃあ反対もあるってこと?」

「もちろん。2つあって、純粋な戦力ダウンと、あとは集団退部の実績だ。戦力についてはサリーと照葉が居なくなるのはかなりの痛手、これは分かるな。」

「じゃあ集団退部の方は?」

「幹部や顧問への不信感だ。この人らが悪いから、集団退部が起きた。だから言うこと聞いてもしょうがなくね、という雰囲気が演奏の質を落としやすい。」

「なるほど…………」

 

 そういうことね。目標のためなら情のかけらもない、大輝らしい答えだ。優しいように見えて、どこか冷たいんだよな。全国金のためなら、部員を駒としか思ってない。なんなら滝先生のことすら、そう思っているのだろう。

 

「ちなみにお前はどうなんだよ?」

「久美子先輩の意見に賛成。理由は大輝の集団退部のやつ。」

「お前に情が残ってたんだな。」

「失敬な。私、優しいですから。」

「優しいという言葉の意味を辞書で引き直した方がいいぞ。」

 

 そんな彼にも不思議なことがある。何故か私の音だけを好きと言ってくれて、一緒に演奏するなら私とか言ってくれる。久美子先輩とか黒江先輩とか、私より上手い人ならいくらでもいるのに。そこが不思議だ。

 

「ちなみに、ドラムメジャーはやる気あるの?」

「それは3年生と高坂先輩の腕次第だな。現状はあの人で問題ないと思っている。変に変える方が、かえって悪くなると思うし。」

「なるほどね〜。」

 

 そして、ドラムメジャーについて。すずめの発言は、どうも冗談に聞こえなかった。今はまだ低音以外は大輝の指導力をほぼ知らない。これが仮に広まったら………

 

 

 

 

 

 

  梨々花視点

 

 サリーちゃんの実家の神社に、なんと全員いました!

 

「本当に体調悪かったんだね〜。大丈夫?」

「私は大丈夫って言ったんですけど、石神井君とすずめが皆で一緒に帰った方がいいって………」

「えへん!」

「そうであります‼︎」

「そうなんだ………平気?」

「はい。もう熱も下がりましたし、ただの風邪だと思うので………」

 

 そして、サリーも他のみんなも無事でした!良かった〜♪

 

「なんか、取り越し苦労でしたね〜。」

「もう〜!さっちゃんが事件だ事件だ騒ぐから〜!」

「えっ⁉︎そんな事になってたんですか⁉︎」

「あぁぁぁぁ‼︎いやいや、大丈夫大丈夫!問題ないよ‼︎」

「義井、体調が悪いんだから仕方あるまい‼︎大ごとにしたのは先輩方だ‼︎」

「ま、まあそうだね〜!」

「すみません………」

 

 にしても、石神井君って意外なこと言ったりしたりするんだな〜。なんか、練習練習、みたいな熱血タイプだと思ってたから〜。

 

「サリーちゃん。少しだけ話、させてくれないかな?私とサリーちゃん、2人で。」

「はい………」

 

 まあいいや。とりあえず、神社の境内で写真、撮りますか〜。

 

 

 

 

 

 数十分後。写真撮影やら久美子先輩の説得やらが終わって、私たちは帰宅していると………

 

「そういや、久石!数学の宿題、写させてくれ!」

「2回殴られた後に自力でやって。」

「2回殴られる意味がねえ‼︎」

 

 カップルがイチャイチャしてるところを目撃した。

 

「お〜、あれが今アツいカップルですか〜!」

「今日も仲良くしてるね〜!」

「あの2人が幸せならオッケーだね。」

「先輩方⁉︎」

「それに梨々花まで⁉︎」

「見つかった!走って逃げろ〜!」

「「はいよ!」」

「「逃げないでください‼︎」」

 

 この2人の邪魔をしたら悪い。そう思って、私たちは走ったのだった。

 

 

 

 

 

  奏視点

 

 その後、私たちはサンフェスに向けて………

 

「いやぁ、謎ステップは難しいですな‼︎求兄さん、どうしてそんなに動けるんですか⁉︎」

「柔軟かな。照葉は僕より体力あると思うし、必要なのは体の柔らかさだと思う。」

「なるほど、ありがとうございます‼︎」

 

 暑い日々を更に暑くするような石神井君の声を聞きながら、私たちは練習に励んでいた。

 

「あの、つき……求先輩、名前確認して下さい!」

「はぁ?だからなぁ………」

「求兄さんの名前合ってるな‼︎針谷、ありがとう‼︎」

「ど、どうも………っ!」

 

 そして、相変わらず月永が月永していた。

 

「求、アイツ大丈夫か?」

「大輝よりは大丈夫じゃない?」

「ちっと言ってくる。おい求ゴルァ‼︎」

「また大輝?久石とイチャついてろよ。」

「お前さぁ、後輩をビビらずなって言わなかったっけ⁉︎最近は良かったのによぉ⁉︎」

「分かった、分かったよ。ごめん、針谷。」

「いえ、大丈夫です!」

 

 確かに、最近またピリピリし始めた気がする。何かあったんだろうか?あの爺ちゃんと揉めた?先週家の用事で休んでたから、その時に何かあったのだろう。そんな心配をよそに、日々は過ぎていった。

 

 

 

 

 そしてサンフェス当日。

 

「はい立華、注目‼︎」

「うぉぉぉ!めっちゃ可愛い人いる!はい、俺も注目します!」

 

 早速バカがやらかした。立華の佐々木梓部長を見てはしゃぎ始めたのだった。

 

「声がデカい。態度もデカい。おまけにキモくてしょうもない。いい加減にして。」

「いい加減にするのはお前の方だろ!人のナンパを邪魔するなよ‼︎」

「するなって言ってるの‼︎」

 

 コイツは相変わらず女好き。演奏は上手いが、女の子が見えたらナンパする機能がついてるポンコツロボットだ。

 

「We are〜!」

「「「「「立華‼︎」」」」」

「よしっ、俺らも対抗して掛け声するか!北宇治ファイトー、」

「恥ずかしいからやめて。」

 

 ぶっちゃけここで捨てようかな。そう思っていると………

 

「あ、あれ…………」

 

 どうやら立華の子が私たちを指差した。確か久美子先輩と佐々木梓部長が知り合いなんだっけ?それで、北宇治を知ってるのかな………?

 

「北宇治の魔神・荒川大輝じゃん!」

 

 いや、待て⁉︎どういう呼ばれ方⁉︎魔神って⁉︎コイツそんなカッコよくないって‼︎

 

「ホントだ!」

「梓、凄いって言ってたもんね!ソロコン全国金、しかも最優秀のクリスタル・ミューズ賞!」

「よしっ、サインもらって来よう!行ってくる!」

「「「うちの魔王と北宇治の魔神の共演だ〜‼︎」」」

 

 しかもあっちもあっちで変な呼ばれ方してるし‼︎意味分かんないんだけど⁉︎確かに憧れられる要素はあるけどさぁ‼︎

 

「あの、君が北宇治の魔神・荒川君?」

 

 そんな大層なものじゃないですよ。

 

「はい、魔神です‼︎」

 

 違うでしょ。

 

「そういうあなたは魔王さん、ですか?」

 

 どんな聞き方してんの⁉︎

 

「うん!」

 

 うん、じゃないが。佐々木梓でしょ、あなた。

 

「ねえ、荒川君!サイン下さい!」

 

 にしても、サインねだられるって凄いな。

 

「いいですよ!ですが俺からもお願いです。俺と付き合って下さい!」

 

 いや、いけるかぁ⁉︎

 

「ごめんなさい!」

 

 でしょうねぇ‼︎

 

「どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎」

「立華の皆さん、お騒がせしました。ほら大輝、出番だから帰るよ。」

「ありがとね、彼女ちゃんも!」

「「違いますよ⁉︎」」

 

 ということで、私は大輝を強引に引き連れて、皆の待機場所まで戻ったのだった。

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