奏視点
黒江先輩がいきなり爆弾を投下してきた。
「でも、仲間なわけだし………」
久美子先輩が反論する。この人は本当に誰も見捨てたくないって思っている。
「辞めたい子は辞めて部活から解放されるし、残った子はその子を気にせず演奏に集中できるようになる。むしろいいことなんじゃない?たかが部活なんだし、無理してしがみつくことじゃないと思うし。」
それに対する黒江先輩。この人は本当に、空気というものが読めないのかなぁ⁉︎
「あれっ、私変なこと言った?」
「いえ。黒江先輩らしくない過激な発言だと思っただけです。」
「あっ、ごめんね!極端だったよね。私、たまにこういうところあって………気にしないで!」
気にするでしょ‼︎この人天然でとんでもないこと言いまくってない⁉︎本当に腹立つ‼︎
その日の帰り、梨々花が居ない影響で大輝と2人きりになってしまったので、不満をぶつけることした。
「なんなの、あの人は⁉︎普通あの場であの発言しなくない⁉︎」
「分からなくはないけどな。」
「はぁ⁉︎」
そしたら、まさかの黒江先輩の発言に同調。嘘でしょ⁉︎
「大輝も黒江先輩側なの⁉︎」
「側とかねえだろ。つーか100%賛成してるわけじゃねえし。」
「じゃあどういうこと⁉︎」
賛成と反対が混じってるって………。ハッキリしたことを言って欲しいんだけど‼︎
「辞めたい奴は全国金目指す環境が嫌……つまり目標が合わないということ。その人がいると全体の演奏の質も落ちやすい。これが賛成の理由。」
「じゃあ反対もあるってこと?」
「もちろん。2つあって、純粋な戦力ダウンと、あとは集団退部の実績だ。戦力についてはサリーと照葉が居なくなるのはかなりの痛手、これは分かるな。」
「じゃあ集団退部の方は?」
「幹部や顧問への不信感だ。この人らが悪いから、集団退部が起きた。だから言うこと聞いてもしょうがなくね、という雰囲気が演奏の質を落としやすい。」
「なるほど…………」
そういうことね。目標のためなら情のかけらもない、大輝らしい答えだ。優しいように見えて、どこか冷たいんだよな。全国金のためなら、部員を駒としか思ってない。なんなら滝先生のことすら、そう思っているのだろう。
「ちなみにお前はどうなんだよ?」
「久美子先輩の意見に賛成。理由は大輝の集団退部のやつ。」
「お前に情が残ってたんだな。」
「失敬な。私、優しいですから。」
「優しいという言葉の意味を辞書で引き直した方がいいぞ。」
そんな彼にも不思議なことがある。何故か私の音だけを好きと言ってくれて、一緒に演奏するなら私とか言ってくれる。久美子先輩とか黒江先輩とか、私より上手い人ならいくらでもいるのに。そこが不思議だ。
「ちなみに、ドラムメジャーはやる気あるの?」
「それは3年生と高坂先輩の腕次第だな。現状はあの人で問題ないと思っている。変に変える方が、かえって悪くなると思うし。」
「なるほどね〜。」
そして、ドラムメジャーについて。すずめの発言は、どうも冗談に聞こえなかった。今はまだ低音以外は大輝の指導力をほぼ知らない。これが仮に広まったら………
梨々花視点
サリーちゃんの実家の神社に、なんと全員いました!
「本当に体調悪かったんだね〜。大丈夫?」
「私は大丈夫って言ったんですけど、石神井君とすずめが皆で一緒に帰った方がいいって………」
「えへん!」
「そうであります‼︎」
「そうなんだ………平気?」
「はい。もう熱も下がりましたし、ただの風邪だと思うので………」
そして、サリーも他のみんなも無事でした!良かった〜♪
「なんか、取り越し苦労でしたね〜。」
「もう〜!さっちゃんが事件だ事件だ騒ぐから〜!」
「えっ⁉︎そんな事になってたんですか⁉︎」
「あぁぁぁぁ‼︎いやいや、大丈夫大丈夫!問題ないよ‼︎」
「義井、体調が悪いんだから仕方あるまい‼︎大ごとにしたのは先輩方だ‼︎」
「ま、まあそうだね〜!」
「すみません………」
にしても、石神井君って意外なこと言ったりしたりするんだな〜。なんか、練習練習、みたいな熱血タイプだと思ってたから〜。
「サリーちゃん。少しだけ話、させてくれないかな?私とサリーちゃん、2人で。」
「はい………」
まあいいや。とりあえず、神社の境内で写真、撮りますか〜。
数十分後。写真撮影やら久美子先輩の説得やらが終わって、私たちは帰宅していると………
「そういや、久石!数学の宿題、写させてくれ!」
「2回殴られた後に自力でやって。」
「2回殴られる意味がねえ‼︎」
カップルがイチャイチャしてるところを目撃した。
「お〜、あれが今アツいカップルですか〜!」
「今日も仲良くしてるね〜!」
「あの2人が幸せならオッケーだね。」
「先輩方⁉︎」
「それに梨々花まで⁉︎」
「見つかった!走って逃げろ〜!」
「「はいよ!」」
「「逃げないでください‼︎」」
この2人の邪魔をしたら悪い。そう思って、私たちは走ったのだった。
奏視点
その後、私たちはサンフェスに向けて………
「いやぁ、謎ステップは難しいですな‼︎求兄さん、どうしてそんなに動けるんですか⁉︎」
「柔軟かな。照葉は僕より体力あると思うし、必要なのは体の柔らかさだと思う。」
「なるほど、ありがとうございます‼︎」
暑い日々を更に暑くするような石神井君の声を聞きながら、私たちは練習に励んでいた。
「あの、つき……求先輩、名前確認して下さい!」
「はぁ?だからなぁ………」
「求兄さんの名前合ってるな‼︎針谷、ありがとう‼︎」
「ど、どうも………っ!」
そして、相変わらず月永が月永していた。
「求、アイツ大丈夫か?」
「大輝よりは大丈夫じゃない?」
「ちっと言ってくる。おい求ゴルァ‼︎」
「また大輝?久石とイチャついてろよ。」
「お前さぁ、後輩をビビらずなって言わなかったっけ⁉︎最近は良かったのによぉ⁉︎」
「分かった、分かったよ。ごめん、針谷。」
「いえ、大丈夫です!」
確かに、最近またピリピリし始めた気がする。何かあったんだろうか?あの爺ちゃんと揉めた?先週家の用事で休んでたから、その時に何かあったのだろう。そんな心配をよそに、日々は過ぎていった。
そしてサンフェス当日。
「はい立華、注目‼︎」
「うぉぉぉ!めっちゃ可愛い人いる!はい、俺も注目します!」
早速バカがやらかした。立華の佐々木梓部長を見てはしゃぎ始めたのだった。
「声がデカい。態度もデカい。おまけにキモくてしょうもない。いい加減にして。」
「いい加減にするのはお前の方だろ!人のナンパを邪魔するなよ‼︎」
「するなって言ってるの‼︎」
コイツは相変わらず女好き。演奏は上手いが、女の子が見えたらナンパする機能がついてるポンコツロボットだ。
「We are〜!」
「「「「「立華‼︎」」」」」
「よしっ、俺らも対抗して掛け声するか!北宇治ファイトー、」
「恥ずかしいからやめて。」
ぶっちゃけここで捨てようかな。そう思っていると………
「あ、あれ…………」
どうやら立華の子が私たちを指差した。確か久美子先輩と佐々木梓部長が知り合いなんだっけ?それで、北宇治を知ってるのかな………?
「北宇治の魔神・荒川大輝じゃん!」
いや、待て⁉︎どういう呼ばれ方⁉︎魔神って⁉︎コイツそんなカッコよくないって‼︎
「ホントだ!」
「梓、凄いって言ってたもんね!ソロコン全国金、しかも最優秀のクリスタル・ミューズ賞!」
「よしっ、サインもらって来よう!行ってくる!」
「「「うちの魔王と北宇治の魔神の共演だ〜‼︎」」」
しかもあっちもあっちで変な呼ばれ方してるし‼︎意味分かんないんだけど⁉︎確かに憧れられる要素はあるけどさぁ‼︎
「あの、君が北宇治の魔神・荒川君?」
そんな大層なものじゃないですよ。
「はい、魔神です‼︎」
違うでしょ。
「そういうあなたは魔王さん、ですか?」
どんな聞き方してんの⁉︎
「うん!」
うん、じゃないが。佐々木梓でしょ、あなた。
「ねえ、荒川君!サイン下さい!」
にしても、サインねだられるって凄いな。
「いいですよ!ですが俺からもお願いです。俺と付き合って下さい!」
いや、いけるかぁ⁉︎
「ごめんなさい!」
でしょうねぇ‼︎
「どうしてだよぉぉぉぉぉぉぉ⁉︎」
「立華の皆さん、お騒がせしました。ほら大輝、出番だから帰るよ。」
「ありがとね、彼女ちゃんも!」
「「違いますよ⁉︎」」
ということで、私は大輝を強引に引き連れて、皆の待機場所まで戻ったのだった。