たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号H おさそいシンコペーション

  奏視点

 

 中間テストも無事終わり、大輝の赤点もなんとか回避出来たころ………

 

「つまり、全国大会まで進んだ場合………大会の都度、要は府大会と関西大会と全国大会の前で、計3回オーディションは行われる事になります。」

 

 なんと久美子先輩からとんでもない発表があった。3回のオーディション、というか、大会毎のオーディション。これはとんでもない変化だ。当然周りもざわつき始める。

 

「質問ある人は挙手をお願いします。」

「はい。」

「久石さん。」

「ソロの方はどうなるのでしょう?ソリストも毎回決め直す形になるのでしょうか?」

「そうなります。」

「なるほど。実力の変化に合わせて、ベストメンバーを選ぶわけですね。」

「北宇治は完全な実力主義。それが一番理にかなってると思います。」

「そうですね、異論ありません。」

 

 もちろんソロもその都度選ぶ。これはすごい戦いが繰り広げられそうだ。

 

「はい。」

「はい、黒江さん。」

 

 私の次は、黒江先輩が手を挙げた。この人は何を質問するつもりなんだろう?

 

「あの、そのオーディションって……私もやるんですか?」

 

 いや、この人は何を言ってるの?

 

「部員なので、当然やります。」

「そうですか………」

 

 当たり前じゃん。まさか自分は強豪出身だから、オーディション無しでメンバーになれると思ったの?大輝ですらやるんだから、そんなわけないのに。意味不明な質問だった。

 

 

 

 

 ので、パート練習の時に聞いてみた。

 

「オーディション、そんなに嫌なんですか?」

「嫌っていうか、辞退できないのかな?」

「どうしてです?」

 

 オーディションの辞退………?コンクールは出ないって事?楽器吹ければいい、的な?

 

「だって私も出る事になったら、一枠埋まるわけでしょ。だったら北宇治で長くやってる人が、優先で出るべきだと思うんだよね。」

 

 そういうこと………?長くいる人がやる的な。確かに私が中学の時悩んでたやつだ。大輝にそれを吹き飛ばされたけど。なんでだろう?私と同じはずなのに、どこかモヤモヤするというか、イラッとするというか………

 

「おお!ママ先輩の自信、いいですね!」

「へっ⁉︎じっ、自信⁉︎いや、その………」

「だって自分が出れば、一枠は自分で埋まるって確信してるんでしょう?そんなの自分の腕に自信がないと言えないっすよ!俺、そういうの好きですよ♪」

「いや、その………」

 

 そういうことか。自分が出たらその枠を確定させるから、辞退して荒波を立てないようにする。去年の私と同じ、か。

 

「もしよそ者の自分が長く居た久美子先輩や久石を退けてメンバーになったりしたら、部の雰囲気が悪くなる………とか思ってます?なら大丈夫です!自分がその雰囲気壊すんで!」

「本当に?」

「はい‼︎久石もそれで、去年思いっきり吹けたんですよ!」

「そうなんだ〜。仲良いね〜。」

「「それは違います‼︎」」

 

 まあ、現状は久美子先輩がソロを吹くだろう。そして、コンクールメンバーは佳穂以外の3人………いや、ユーフォ3人は正直多いな。そして、上から選ぶとしたら………2番目は黒江先輩になる。正直この人は上手い。流石強豪でやってただけある。でも………

 

「言っておきますけど、実力で落ちる可能性を考慮してくださいよ?私も久美子先輩も、負けるつもりないんで。」

「べ、別にそういう事言ってるわけじゃ………」

「言っていいですよ!遠慮は要らねえ!そこは恨みっこなしの、ガチバトルです!」

 

 負けてたまるか。今は全然差があるけど、絶対詰めてやるんだから。

 あと、勝って辞退とかしないよね?そんな不安が、ふと胸の中をよぎった。

 

 

 

 

 数日後の練習の休憩中のこと。低音の部屋の話題はあがた祭り一色となっていた。

 

「わぁ〜、久美子先輩〜!久美子先輩も行きますよね、あがた祭り‼︎」

「トランペットの子たちが皆で行くって聞いて!低音も皆で!」

「そ、そうなんだ………でも………」

 

 すずめと弥生が久美子先輩にたたみかけ、強引に連れてこうとする。

 

「さっきママ先輩に聞いたら、つばめ先輩と行く予定だから、つばめ先輩がよければ一緒でもいいよって……」

「なるほどね………」

 

 そして佳穂が黒江先輩も誘っている事を明かす。ちなみにその黒江先輩はフィルムカメラを持って、皆のことをパシャパシャ撮っていた。

 

「おっ、古いカメラじゃん!」

「うん、フィルムカメラだよ。写真付きなんだ〜。」

「素敵ですね!おしゃれしていきます!」

「ママ先輩、カッコいい俺を撮ってください!」

「全身にモザイクをかけた方がいいですよ。」

「コイツには目に黒線を‼︎絶対犯罪やるんで‼︎」

「2人のツーショット、撮っておいたよ!」

「「それは消して下さい‼︎」」

 

 にしてもあがた祭りかぁ〜。

 

「で、久美子先輩‼︎どうですか⁉︎」

「えっと………ちょっと先約があって………」

「「秀一ですか⁉︎」」

「違うわ‼︎」

「俺のことかな?」

「「先輩は奏先輩と行って下さい!」」

「「それは嫌!」」

 

 私は梨々花から誘われてるから。それに、休みの日にわざわざこのアホと会おうと思わないし。

 

「まあ、俺は男子で行くんだけどな。なぁ、求と照葉。」

「そうだね。」

「はい‼︎」

 

 会う可能性は高いけど。男子全員で行くなら、かなり目立つだろうし。もしそうなったら、コイツがナンパしないように見張らないと!

 

「これで、〜あがた祭りでナンパ祭り・リベンジ〜が果たせるぞ〜‼︎」

「ナンパ祭り、ですと⁉︎それは出来ませぬ‼︎」

「なにっ⁉︎」

 

 見張らないと‼︎全く、コイツはすぐナンパしたがるんだから〜‼︎幸い真面目な石神井君が止めてくれそうなので、私は安心して自分の祭りに集中できそうだ………

 

「なぜなら自分には、彼女がいるからです‼︎」

「「「「えっ?」」」」

 

 と思ってたら、とんでもないこと言われたんだけど⁉︎嘘でしょ⁉︎石神井君、そういうの興味無さそうだったのに⁉︎

 

「えっ、だれだれだれ⁉︎」

「緑、気になります!」

「ツーショット、撮ろうか?」

「部長として、部内の恋愛事情を把握せねば………」

「みっちゃん、誰だか知ってる⁉︎」

「いや、知らない。求は?」

「僕も知らない。初耳。」

「私も知らないし………」

 

 当然先輩方や同級生はびっくりしている。そりゃそうだ。熱血真面目系で、恋愛よりも練習練習練習って、イメージだったし……

 

「おい、ゴルァ照葉‼︎師匠の俺に黙って彼女を作るとはどういうことだ⁉︎」

「恋愛は関係ないので‼︎」

「なぁぁぁぁぁぁ⁉︎おまっ、お前ぇぇぇぇぇ‼︎」

「大輝、後輩にそれ言うのやめろ。萎縮するだろ?」

「求、どの口が言ってんだぁぁぁぁあ‼︎」

 

 まあ、大輝は発狂するだろうね。後輩に先越されたわけだし。あと、彼女持ち嫌いだし。ホントつくづく小物だな、と思う。そんなんだからモテないんだよ。

 

「ちなみに、1年生は知ってたのか?」

「「「…………」」」ニヤリ

「知ってるじゃねえかぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 そして、ニヤつく1人3人組。流石に同級生なら知ってるか。

 

「で〜、誰なの〜?」

「それは本人の口から聞きましょう!」

「その方がいいですよ!」

「弥生時代から結ばれし2人組………尊い‼︎」

「ぷっw」

「そんな前ではないぞ‼︎あと相手は言えませぬ‼︎言っていいか聞いておりませんので‼︎」

「くそぉぉぉぉぉぉぉ‼︎」

 

 しかし、この3人の中にもしかしたらいるのか?快活なすずめとか、芸人風な弥生が一見すると合いそうだけど………大人しめな佳穂との組み合わせもある。まあ誰でもいっか。大輝の悔し顔が見れたし♪

 

「ちなみに、あがた祭りは男子で行動してていいの〜?」

「彼女さんは怒らないんですか?」

「前半は男子で、後半は彼女と行動します‼︎」

「おぉ、いいね!」

「久美子先輩もそれにしましょう!秀一と!」

「しないから!それやるなら久石夫妻‼︎」

「「しませんよ⁉︎」」

「ぷっw」

「「笑うなぁぁぁぁぁぁ‼︎」」

 

 なんかセットにされたのが癪だけど。私は決してコイツと一緒に行動しないからね。絶対。そう固く誓い、あがた祭りに想いを馳せたのだった。

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