たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号I なついろフェスティバル

  奏視点

 

 そして、あがた祭りの日がやってきた。

 

「奏〜、ごめんね〜。大輝君と一緒じゃなくて〜。」

「全然いい。むしろこの方がいい。ずっと一緒にいて。」

 

 私は梨々花とサシで祭りを回ってる。ちなみに浴衣は私が赤、梨々花は白と、紅白で映える組み合わせだ。

 

「それは無理〜。後半はダブルリードの会なのです〜。」

 

 そして、途中で裏切られることが判明した。

 

「嘘でしょ⁉︎」

「愛しの後輩に誘われたら、断れないのですよ〜。」

「わかった。じゃあ私は前半……1時間半くらいで帰るね。」

「そうはさせない!既に男子グループに話を通して、大輝君を奏と合流させる手筈になってるのです〜!」

「余計なことしないでくれる⁉︎」

 

 しかも後半からアイツの面倒を見なきゃいけないの⁉︎最悪なんだけど‼︎こうなったら、意地でもアイツを置いて帰ってやる!

 

「ということで、手を繋いで〜!」

「くっ、逃がさないつもり⁉︎」

「もちろ〜ん!」

「梨々花め………っ⁉︎」

 

 と思ったら、まさかの梨々花に強引に手を掴まれて、逃亡を阻止されたのだった………

 

 

 

 後半大輝との公開処刑が確定している私は、前半のうちに全力で楽しむしかない。この時間を大切に過ごすんだ!

 

「よしっ、梨々花。まずは屋台の食べ物を片っ端から食べよっか。」

「お〜!」

「あそこが焼きそばで、隣がべっこう飴。その隣はわたあめで、さらに隣は大判焼き。全部美味しそう♪端から端まで多分30店舗くらい、全部食べよ!」

「って、そんなに食べられないよ〜!」

「梨々花は好きなやつ食べたらいいよ。」

 

 ということで、私は祭りで食べまくることにした。やっぱり祭りといえば食べ歩きだよね。色んな美味しいものを食べて、楽しまなきゃ!

 

「というか、そんなにお金無いでしょ〜。」

「お金なら………」

 

 この日のために、お年玉を貯めて………

 

「あっ。」

「どうしたの?」

「財布忘れた。」

 

 って、家に置いてきちゃった〜‼︎

 

「ウケる〜。」

「うるさい!」

 

 こういう時はいつも勉強会のお礼として、大輝に奢らせてたんだった!だから財布をあんまり持ち歩いてないんだよね。うっかりしてた!

 

「大輝君に奢られ慣れてるからって〜、油断しちゃダメだぞ〜。」

「ホントそれ。」

「これで、彼と一緒にデートする大義名分が出来たね。」

「デートじゃないけどね。」

「素直になりなよ〜。」

「素直だから。」

 

 ということで、悲しいことに私は大輝と一緒になる未来が確定したのだった。

 

「財布忘れたなら、もう合流する〜?」

「いや、いいよ。梨々花の時間もあるし。遊んでるとこそばで見ててあげる。」

「なんか見られると緊張しますな〜。」

「梨々花が緊張することなんてあるんだね。」

「ありまくりだよ〜。」

 

 その後、私はしばらく梨々花の射的やら金魚すくいをただ眺めるという、謎の時間が発生したのだった。

 

「せいっ!」

「梨々花、下手くそ〜。」

「奏ったら、ひど〜い!」

 

 しかもめちゃくちゃ下手。射的は景品に全然当たんないし、金魚すくいはすぐポイを破るし、輪投げはちっとも入らない。普段したたかでエリートな彼女の、なんとも意外な一面だ。わざとやってる可能性もあるけど。

 

「これは〜、大輝君に取ってもらうしかありませんな〜。」

 

 やっぱり。大輝をカッコよくするための演技じゃん。

 

「私、ご飯しか興味ないから。」

「でた、食いしん坊〜。」

「太らないからいいのです。」

「ずるい〜!女の敵〜!」

「仕方ない仕方ない。」

 

 そんなことしても、無駄だというのに。アイツはちょっとカッコつけたくらいじゃ、欠点を帳消しできない。梨々花がいくら努力しようと、私がアイツに惹かれることだけはないんだからね。

 

「りりりん先輩〜、お疲れ様で〜す!」

「「「ダブルリードの会の時間です!」」」

 

 そんな事を思っていると、オーボエ1年の加千須さんが、ファゴットの3人を連れてやってきた。どうやら梨々花とのお祭りはここまでのようだ。

 

「おっ、みくちゃ〜んにみんな〜!おつかれ〜!」

「それじゃあ、私は財布のところに行くね。」

「そんなこと言わないの〜!」

「「奏ちゃんってツンデレだったんだ。」」

「違う‼︎」

 

 そして、出会った瞬間にファゴットの2年2人に揶揄われた。頼むからやめて。1年生2人が勘違いするから。

 

「えっ、でも好きだよね?」

「ソロコンの時告白してたよね?」

「あれは音楽が好きってこと!それ以外は嫌い‼︎」

「2人きりの時しかデレないらしいよ〜。」

「梨々花も変なこと言わない!」

「「恋愛の参考にさせていただきます!」」

「何も参考にならないよ⁉︎」

 

 ほら、勘違いしちゃった。全く、余計な事を言うなっつーの‼︎私のことを揶揄う後輩は3バカ*1だけで充分だ‼︎どこをどう見たら私が大輝と付き合ってるように見えるんだか………

 

「頼む、お前ら‼︎もっとナンパをさせてくれ‼︎久石(あのおんな)のところに行きたくないんだぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 ほら、アレだよ?ナンパのために人前で大声で土下座。男として魅力ある?無いよね?自分たちが嫌だからって、私に押し付けないでほしい。

 

「大輝君〜、こっちこっち〜!」

「あっ、りりりん!ちょうどよかった、俺とデートしてくれ!」

「それは無理〜、だってここに奏がいるもの〜♪」

「げっ…………」

「げっ、って何?それが勉強を教わった人に対する態度?」

「そんな可愛い浴衣着て、おめかしもしてさぁ‼︎絶対美人局(つつもたせ)じゃねえか‼︎」

「別に、私は勉強を教えてくれたお礼が欲しいだけだよ。」

「な〜んだ、そんなことか………」

「あと、財布忘れた。」

「やっぱ美人局じゃねえかぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 とりあえず、ナンパの方は全く上手くいかなかったのだろう。そりゃそうだ。周りに男子部員しか居なかったし。あと可愛いって言ってくれたの、ちょっと嬉しかった。その後のセリフで、その気持ちは吹き飛んだけど。

 

「ということで〜、ダブルリードは〜!」

「「「「退散!」」」」

「俺たちも行くか!」

「「「「うっす。」」」」

「ちょっと待ってくださいよぉぉぉぉぉぉ!」

「大輝、食べたいものがあるんだけど………いいよね♪」

「よくねぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 ということで、あがた祭後半戦が幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 私は大輝と一緒に、屋台を回っていた。

 

「お前さあ、少しは申し訳なさそうにしろよ。」

「それ言うなら、日頃からちゃんと勉強して。」

「財布忘れるのと勉強しないのは違くねえか⁉︎」

「同じ同じ♪」

 

 ちなみに大輝からは1店舗1品までの最大4店舗と言われた。ケチだなと思いつつ、焼きそば&フランクフルト&わたあめ&大判焼きの簡単お祭りセットが楽しめるので、まあいいかと思った。

 

「で、相変わらず食い意地張ってんな。太るぞ。」

「私は太らない体質なので〜♪」

「それ、他の女子の前で言うなよ?」

「梨々花には言ってる。」

「可哀想に、りりりん………」

 

 にしても、大輝って意外と浴衣似合うんだな。ダークな紺色の浴衣にシンプルな下駄。そして爽やかな黒の短髪。普段見慣れない服装だからか、それとも祭で気分が高揚しているのか、黙っているとちょつとカッコいいと思えてしまう。

 

「それにしても………照葉、アイツの彼女は誰なんだ⁉︎ストーカーして邪魔してやる‼︎」

 

 黙っていれば、ね。

 

「可哀想だからやめてあげて。」

「くそっ、俺のがカッコいいのに………」

「あんなみみっちいこと言う人がカッコいいと思う?」

「後輩のくせに俺より先に彼女を作るのが悪い‼︎」

「先輩のくせにキモいのが悪いんでしょ。」

「うるさい‼︎」

 

 にしても、本当に綺麗な夜空だな。雲一つない、透き通った黒。宇宙の広さを感じられるような、真っ暗なキャンパス。そんな場所には………

 

「おっ、花火だ。」

「綺麗〜。」

「綺麗な金色、だな。」

 

 煌びやかな花火がよく似合う。真っ黒な空に光り輝く金色の花火。そのあまりの綺麗さは、思わず手で掴みたくなるほどだった。

 

「なぁ、久石。」

「何、大輝?」

「今年こそは全国金、獲るぞ。」

「もちろん。」

 

 そして私たちは、金色の花火に金色の賞を添えることを誓ったのだった。

*1
佳穂、すずめ、弥生の3人。奏の事を揶揄ったり笑ったりするので、奏からこう呼ばれるようになった。

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