奏視点
その後なんだかんだで、今日の練習が終わった。のだが………
「荒川、ちょっと来てくれる⁉︎」
「なにっ⁉︎美女の先輩が俺に声かけ⁉︎いいですよ!」
「笑ってる場合じゃないから‼︎」
「えっ………?」
なんと大輝がトランペットの黒髪の先輩*1に呼び出されるという。しかもめちゃくちゃキレられてる。もしかして、さっきの無礼かな?流石の大輝もちょっと困っている。
「麗奈、どうしたの⁉︎」
「おい大輝、お前高坂に何したんだ⁉︎」
「いや〜、俺もよく分かんなくて………」
「中川、とりあえず吉川呼んできてくれるか?」
「分かった、呼んでくる。」
先輩方も大慌て。本当に大丈夫かな?心配だから、ちょっと様子を見てみよう。
ということで、私たちは大輝が呼び出された教室の外、いわゆる廊下から盗み聞きすることにした。
「俺、行かなくて大丈夫なのか………?」
「私も行こうか?」
「先輩方、見ててください!多分そっちの方が面白いので!」
「奏ちゃん、意地悪だな〜。」
後藤先輩や吉川先輩、そして黄前先輩と一緒に。
さてと、あの2人のやりとりはどうなる………?
「ねえ、荒川‼︎さっきの滝先生への態度は何⁉︎」
さっそくその事で高坂先輩に怒られていた。そりゃそうだ。いきなり顧問に突っかかったんだもの。後藤先輩も指導しようとしてたし。
「あれですか?言い方は荒かったんですけど、言うべきことはちゃんと言うってことっすよ!それが顧問相手でも!」
それに対して、なんだそんなことか、と安心して応える大輝。本人的には大したことじゃないと分かったのだろう。
「滝先生が意見求めてない時も、文句を言うってこと⁉︎」
高坂先輩的には、大したことみたいだけど。
「そりゃ全国金獲る上で、こう指揮した方が吹きやすい、とかあるでしょう?」
「滝先生に限ってそんなこと………」
「ありますよ。だってあの人も人間ですよ?完璧なわけないでしょ?」
「でも………」
私も最初は反対だったけど、大輝に諭されて賛成派になった。コイツ、音楽の時だけIQ200くらいになるんだよね。それ以外は3くらいしかないけど。
「もしかして、滝先生のこと好きなんですか?」
3くらいしかないけど。アンタさ、そんなわけないじゃん‼︎なんで急に恋愛の話になるの⁉︎
「そうだよ。」
そうなの⁉︎
「ラブの?」
ライクじゃなくて⁉︎
「そうだよ。」
ラブなの⁉︎
「じゃあ、滝先生をオトすぞ大作戦、やりましょうか‼︎」
やるな‼︎
「えっ、いいの………?」
よくないよ‼︎
「もちろん!」
「ありがとう、荒川!これからよろしく!」
「お願いします!」
よろしくするな‼︎
「で、さっきのことなんだけど………」
話を戻すな……いや、戻して‼︎
「そのことですか?なら補足すると、全国金取るために改善点あったら言う。あなたの好きな滝先生は『うるせえ、生徒の分際で‼︎』って突っぱねるような、器の小さい人じゃないでしょう?」
「それはまあ、そうだけど………」
「そして、生徒の意見を冷静に判断できる人物でもある。」
「それもそうね。」
「だから、あの人を信頼するからこそ、自分も全国金目指す上で遠慮なく意見する。そういうことです!」
「………分かった。そういうことなら認める。」
まあいいや。あの2人の言い合いが収まったんだからよしとしよう。
「ちなみに、恋愛作戦の方は………?」
いや、そっちの話もするんかい‼︎もういいでしょ‼︎
「とりあえず、2年待ちましょう‼︎」
「はぁ⁉︎2年も⁉︎」
「滝先生は未成年に手を出すような……?」
「人じゃない。」
「だから、今告白してもダメです!まずは成人するまで待ちます!できるだけがむしゃらな子供っぽく‼︎」
「そして………?」
「大人になって久々に会った麗奈先輩に、『高坂さん、大人になりましたね。』と思わせるのです‼︎」
「おお、すごい………っ!理にかなってる。」
あと、全然すごくないんです。ソイツ恋愛経験ゼロなんです。とりあえずこのままいくと高坂先輩に悪影響だから、止めにいきますか〜。
「はいは〜い!雑談はそこまで〜。大輝には後で後藤先輩から、ありがた〜いお説教がありま〜す!」
「そういう言い方するな、久石。」
「げっ………」
「げっ、じゃない。こっち来い、大輝!」
「ひいぃぃぃぃぃ‼︎鬼ぃぃぃぃぃ‼︎」
ということで、大輝は後藤先輩に、
「高坂には、私からありがた〜いお話があるよ〜。」
「え?私もですか、優子先輩?」
「当たり前でしょ‼︎いきなり1年生を恫喝する2年生がいる⁉︎」
「香織先輩の件の時の優子先輩とか。」
「あれとは別‼︎」
高坂先輩は部長に説教?され………
「私は〜、帰ります!」
「黄前先輩は私と一緒に帰りましょうね〜♪」
「ごめん、私は麗奈達と用事があるから後で帰るね。」
「そうですか。それは残念です………」
「荒川君と一緒に帰ったら?」
「それは嫌です!」
私は黄前先輩と一緒に帰り………たかったが、1人で帰ることにしたのだった。
茜色の空の中、1人のんびり下校していると………
「おい久石、1人で帰るとか危ないだろ‼︎」
なんと大輝が走って呼び止めにきた。
「いや、大丈夫だけど………」
「お前が誰かに危害を加えたらどうするんだ⁉︎」
「普通逆でしょ‼︎」
理由はしょうもないことだった。なんで私が加害者になる前提⁉︎どう見ても人畜無害な女子高生なのに‼︎
「それより、俺と麗奈先輩さ〜、お似合いだと思う?」
そんな事を思っていると、大輝が頭おかしい事を言い始めた。
「全然。」
「だよな………っておい!そこはお似合いだよって言うところだろうが‼︎」
「あんな美人で滝先生ラブな先輩が大輝に振り向くと思う?」
「恋愛相談しているうちに、俺の魅力に惹かれてくと思うんだが………」
「アンタの
もしかして、ワンチャンあると思ったから恋愛相談乗ってたの⁉︎ホント頭悪い‼︎どう見てもノーチャンス‼︎たった一つの隙すら無いよ‼︎
「ちなみにお前のとこに来たのも、久美子先輩に『奏ちゃんを追っかけたら、明日麗奈が朝練に来る時間教える♪』って言われたからだぜ!」
「バカなの⁉︎絶対私たちのこと揶揄ってるだけじゃん、それ‼︎」
しかも黄前先輩はまた揶揄ってるし‼︎部長副部長みたいなケンカップルじゃないっつーの‼︎私にゴミを押し付けないでくれるかなぁ⁉︎
「お前と会う苦しみだけで、麗奈&久美子先輩と会える楽しみが味わえるんだから、仕方ないだろ。」
にしてもムカつくな、このアホは。誰が罰ゲームだって?痛い目見せてやる‼︎
「よし、じゃあ一生会えなくしてあげようか?」
「やれるもんならやってみろよ、クソガキ‼︎」
「セクハラで訴えるけど、いい?」
「お前、それはずるいぞ‼︎」
「あれれ〜、自信あったんじゃなかったのかな〜?」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁ‼︎」
ちなみに翌日は黄前先輩が私に朝練の時間を教えてくれたので、安心して奴の奇行を止める、もとい朝練に行くことができた。
「来ちゃった♪」
「お前ってやつはぁぁぁぁぁぁ‼︎」
その日見た悔しそうな顔は一生忘れられない思い出となったのだった。