奏視点
夏休み2日目。私は低音の女子たちと一緒にプールに来ていた。
「今日は大輝先輩と一緒じゃないんですね⁉︎」
「これはまさかの倦怠期⁉︎さっちゃん先輩曰く、『事件です!』と!」
「ぷっw」
「違うから。男子全員でハイキングしてるだけ。」
「求先輩も照葉君も居ませんもんね。」
「だね。」
ちなみに大輝は居ない。理由はさっき言った通り。山で女をナンパするとか言ってたけど、そこにいるのは野生動物のメスだけ。とうとう人間以外も守備範囲内になったのかと、呆れたのを覚えている。
それにしても、義井さんだけは本当にまともだな。今の低音に不足している癒し枠だ。
「ねぇ、義井さん。」
「はい?どうしました、久石先輩?」
「低音に来ない?クラには大輝と3バカを送るからさ。」
「えっ⁉︎」
「ちょっと待ってくださいよ、奏先輩‼︎弥生と佳穂と石神井をバカだなんて!」
「そうですよ!すずめと佳穂と石神井を大馬鹿者だなんて!」
「石神井君って、そんなにバカって感じじゃないですよね……?」
「君ら3人だよ君ら。」
「「バカップルには言われたくないです!」」
「ぷっw」
「そういうとこだよ‼︎」
全く、うちの3バカとどうしてここまで差がついたのか。ずっと一緒にいる4人のはずなのに。来年入ってくる後輩もこんな感じじゃない事を祈りたい。
「そういや、奏先輩は水着の自撮り送んないんですか?」
そんな事を思っていると、すずめが変な事を言い始めた。
「誰に送んの?もしかして梨々花?今から見るでしょ。」
「またまたとぼけちゃって〜!」
「遥か彼方の森の先、山の魔神がいるじゃないですか!」
「ぷっw」
「大輝って言いたいの?送るわけないでしょ。」
「「え〜‼︎」」
どうやらコイツらは私と大輝を揶揄いたいらしい。そんなに面白いかな?どうせ水着姿を送っても、『美人局だろ。』ってしか言わないって。絶対そう。
「そもそも山だから、電波飛んでないんじゃない?」
「さっすがサリー!あったまいい〜!」
「だよね。」
そもそも電波飛んでないし。現に、あのバカから気持ち悪い自撮りは送られてきてない。だからこうして私も、ずっと平穏を保っていられるわけで。
「もしやもしやサリーさん。山にいる愛しのフィアンセに、水着姿を送ろうとしたのではございませぬか?」
「ぷっw」
そんな事を思ってたら、弥生がとんでもない事を暴露した。山にいるフィアンセ?うちの男子部員たちが今山登りしてるから………あの中に彼氏がいるってこと?
「えっ⁉︎ちょ、いや、そんな事………///」
「あるな、これ。絶対。」
「ラブラブだね、サリーちゃん!」
「うん………///」
「で、相手は誰なの?」
「それは…………秘密です///」
「ちぇっ。」
本人からははぐらかされたけど、一体誰なんだろう?あの中で彼女がいるのは確か………
「奏〜、お待たせ〜!お腹痛たただったよ〜!」
「梨々花、やっときた。大丈夫?」
「うん。ありがと〜!」
そんな事を考えてたら梨々花が来たので、私たちはプールで遊び始めたのだった。
大学の説明会にプール、そして家で宿題をしているうちに、あっという間のお盆休みは終わってしまった。今日からまた練習が再開、つまりは大輝と顔を合わせる日々の再来ということで………
「皆の水着姿だ〜♪うっひょ〜、たまんねえぜ‼︎」
「黒江先輩、コイツに写真見せるなって言いませんでしたっけ?」
「奏ちゃんの水着姿を見たいかなって思って♪」
「ママ先輩、焼き増しお願いします‼︎久石以外のを‼︎」
「そろそろ黙って。」デュクシ
「ぐへっ…………」バタン
こうしてアイツの尻拭いがまた始まってしまった。本当に気持ち悪い男だ。よく色んな人からボイコットされないかと、いつも思う。
「奏先輩〜、彼氏に水着姿を見られた感想は〜?」
「私、彼氏居ないから分かんな〜い。」
「「またまたまた〜!」」
「ぷっw」
「家に帰って見せたりしたの?」
「久美子先輩、家に大輝は居ませんよ。」
あと、マジで私は大輝に水着姿を見せたいわけじゃないから。本当に。アイツに気持ち悪い目で見られるとか嫌過ぎるし。だから皆も勘違いしないで………
「あれ〜?佳穂ちゃんが描いてくれた漫画では、同棲してたんだけどな〜。」
いや、待て。は?
「ちょっと待って、佳穂。何それ?」
「あの、私、漫画を描くのが好きでして………」
「そこじゃないよ。私と大輝が同棲って、何?」
「それは私が描いた、奏先輩と大輝先輩の恋愛漫画の一コマなんですけど……」
「はぁ⁉︎何描いてるの⁉︎」
コイツ本当に何してくれてんの⁉︎いくら元漫画部だからって、それはダメでしょ‼︎しかもそれを久美子先輩に見せたの⁉︎
「めっちゃトキメキますよ!私のおすすめです!」
「既に1年の間では大ブームです!」
「どんだけ広げてるんだよ⁉︎」
「非常に参考になる良書です‼︎‼︎」
「参考にするな‼︎彼女に怒られるだろ‼︎」
「え〜、読みたい読みたい!」
「私も………」
「緑も読みたいです!」
「はい、ど〜ぞ!」
「渡すな‼︎」
なんなら既に1年の間で広まってるし‼︎先輩の間でも広まろうとしてるし‼︎本当に何してんの⁉︎これじゃあますます誤解が広がるじゃん‼︎
「奏先輩には破られたら困るんで、電子で渡します!」
「破られて困るなら描くなよ。」
「ご、ごめんなさい、それは無理です……。私、漫画描くの好きなので………」
「だったら題材を変えて‼︎」
くっそ‼︎オドオドしながらズケズケと人の嫌がる漫画を描きやがって‼︎許さないからな‼︎いつか佳穂が彼氏作ったら、徹底的に揶揄ってやる‼︎そう思った日だった。
それから数日が経ち、いよいよ合宿初日がやってきた。今宵は関西大会のオーディションの日。今日また、コンクールメンバーが決まる‼︎
「よしっ、頑張るぞ‼︎」
「葉月ちゃん、ファイトです!」
「緑、ありがと‼︎」
加藤先輩もいつも以上に気合が入っている。そりゃそうだ。次こそは初のコンクールにしたいだろうから。大輝も言ってたな。今まで以上に練習頑張ってるって。その努力が報われるかは、今夜決まるわけか………
「さてと、新山先生はどこかな〜?」
「こらそこ、ナンパしない。」
「うるせえな、久石‼︎合宿といったら新山先生だろ‼︎」
「そんな事ないでしょ。」
一方で大輝はリラックスしてる。まあメリハリは過剰なくらいにつけてるタイプだから、何も心配してないけど。そんな事を思いながら、私たちは練習に励んだのだった。
その日の夕食のこと。
「わぁ〜、緑カレー大好き♪」
「俺は緑先輩が大好きです!」
「久石の間違いだろ。」
「うるせえ、求‼︎」
大輝が隣のテーブルで聞いたことあるようなやり取りをしている中、
「久美子先輩、ご一緒しても?」
「もちろん。真由ちゃんと佳穂ちゃんももうすぐ来るから。」
「流石黒江先輩。舎弟まで連れて、抜け目がない。」
私はユーフォで食べることにした。
「またそう言う。」
「そうですか?久美子先輩も薄々感じているところがあると、お見受けしますけど。」
「何それ?」
「迂闊に心を許すと、チクッ。」
「真由ちゃんはそんな子じゃないよ。」
やっぱり黒江先輩は危険だ。特に今日はオーディション当日だからか、何をしでかすか分からない雰囲気を出している。だから久美子先輩は、私が守らないと………っ!
「お待たせ〜!ごめんね、水どこにあるか分からなくて。」
「ママ先輩と2人で、迷ってました!」
そんな事を思っていると、黒江先輩が舎弟を連れてやってきた。
「あっ、奏ちゃん!」
「大輝先輩と一緒じゃなかったんですね!」
「違うから。アイツとひとまとめにしないで。」
「とりあえず、今お水取ってくるね!」
「いえいえそんな!黒江先輩に水汲みなんかさせたら………」
とりあえず、私が取ってこよう。一旦距離を取って、遠くから観察し………カウンターだ‼︎
だが、思ったより水が分かりにくい場所に置いてあった。そのせいで時間を食ってしまい、
「あれ、久美子先輩は?」
「もう食べ終わったよ。」
「高坂先輩に呼ばれたみたいで!」
「え〜っ。」
久美子先輩と一緒に食べることはできなかったのだった。
原作では後輩から恐れられてる奏も、本作では舐められまくってます!大輝のせいですね!