奏視点
そして、いよいよコンクール全国大会の日がやってきた。舞台は名古屋国際会議場・センチュリーホール。ようやくこの場所に辿り着くことができたのだ。
「相変わらずデケえとこだな。さぞかし可愛いJKもいっぱい居るんだろう!」
「アンタの足は私ってこと、理解してる?」
ちなみに私は大輝の車椅子*1を押す係をやっていた。会場まで大輝のお父さんお母さんにお願いしてもよかったんだけど、滝先生が直前期のアドバイスをお願いしたいということで、大輝がサポートメンバーとして同行。そしたらこんなことに。
「お前なら分かってくれるだろ。俺がナンパしたいって。」
「大輝なら分かるでしょ?そんなことしたら車道にぶん投げるって。」
「誰か〜、チェンジで!」
「だ〜め。」
にしてもコイツ、どんだけ女好きなんだよ。利き足と利き手が折れてるんだからやめとけよ。そうじゃなくてもやめとけよ。ここは全国大会の会場なんだし。
そんなことを思ってると、
「おい大輝、大丈夫か⁉︎」
「荒川君、大丈夫………?」
なんとOBOGということで、後藤夫妻がやってきた。お2人はそれはそれはお似合いなペアルックで、それがまた大輝の心を破壊した。
「たった今、大丈夫じゃなくなりました。」
「「どういうこと(だ)⁉︎」」
「先輩が心配して来てくれたんでしょ?素直にお礼言いなよ。」
「だってよぉ、こんなリア充っぷりを見せられて、俺が耐えられると思ってるんですかぁぁぁぁ⁉︎勘弁して下さいよぉぉぉ⁉︎」
「全く、相変わらずなんだな。」
「でも、元気そうで安心したよ!」
そんな様子を見ていると、
「あっ、姉ちゃんと
「あっ、辰馬だ〜!来たよ〜!」
長瀬弟がやってきた。しかも凄い呼び方付きで。
「「
「辰馬。お前、その呼び方やめろ。」
「すいません、もう結婚するのかと思いまして……」
「あのなぁ………まぁいっか。」
「家族公認のお付き合い、だとっ⁉︎おい辰馬、姉ちゃんの奪い方教えてくれ!」
「無理ですね………」
「そんなぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
どうやらこの2人の結婚は決まっているらしい。大輝は骨だけでなく心まで折られたようだった。ざまあみろ、ナンパなんてしようとするからだ!
それにしても、あと1人足りないよな………
「そういや、夏紀先輩はどうしたんです?またどっかでやらかしてるんですか?」
夏紀先輩だ。確かに後藤夫妻の邪魔をしないとはいえ、ここはコンクール。OGとして、3人で低音パートに来るのが普通でしょ。
「中川は吉川と一緒に新幹線寝過ごしたんだと。」
「名古屋超えて横浜だよ〜。」
「何してるんですか、あの人は………。まあ、いいですけど………」
アホ過ぎない⁉︎副部長じゃなくなったからって、だらけまくりじゃん‼︎ホント、どうしようもない人なんだから………
「先輩方、これは夏紀先輩が居なくて寂しいって意味ですので、ご安心を。」
「そうだよね〜♪奏ちゃん好きだもんね〜。」
「違います‼︎勘違いしないでください!あと大輝、勘違いさせないで!」
「へいへ〜い♪」
「聞いてる⁉︎」
全く、ムカつくことばっかり言いやがって‼︎今度絶対沢山のご飯奢らせるんだから‼︎
「それはそうと…………コンクール、頑張ってね!」
「期待してるぞ。」
「「「はいよ!」」」
それはそうと、OBOGの為にも頑張らないと。そう思い、私は会場の中に入った。
しばらくすると、私は低音1年からあるものをもらった。
「奏先輩!これ、どうぞ!」
それはユーフォ4人で撮った写真だった。更に『奏先輩、ファイト!』と佳穂の字で書かれたデコレーションまでついていた。
「ありがとう。」
「それとこれも‼︎沙里の神社のお守りです‼︎」
更に石神井君からは彼女の実家のお守りを貰い、
「それとこれも!大輝先輩とのラブラブツーショット♪」
「それは要らない。」
弥生からの大輝との隠し撮りツーショットは断り、
「最後にこれも!佳穂が描いた恋愛漫画『だいかな恋愛譚』‼︎」
「それも要らない。」
すずめからのクソ漫画も断った。
「いや〜、こんなの貰ったら和んじゃいますね!名古屋だけに!」
「ぷっw」
「和むかぁ⁉︎」
なんで半分が私と大輝のやつなの⁉︎ホントムカつく‼︎どう考えてもあり得ないから‼︎地球がひっくり返っても付き合わないから‼︎
「ということで〜、」
「「「コンクール、頑張って下さい!」」」
「自分とは一緒に頑張りましょうぞ‼︎」
「はいよ。」
でもまあ、応援されるのは悪くない。石神井君以外はコンクールの舞台に乗れないわけだし。私がこの子たちの分まで頑張って、先輩らしいところを見せるんだ!更に………
「久美子先輩!」
「どうしたの、奏ちゃん?」
「北宇治の100%、見せましょう!」
「そうだね!」
大好きな先輩と一緒に、全力を出し切るんだ‼︎そして………
「久石、任せたぞ。」
「はいよ!」
怪我で出られない大輝のために、全国金を獲るんだ‼︎
そうして臨んだコンクールの舞台は、瞬く間に終わった。
「久石、良かったぞ!」
「大輝、ありがとう。」
楽器を片付けてすぐに、私は大輝の所へ向かった。そしたら彼は満面の笑みで褒めてくれた。良かった、本当に良かった………っ!
「大輝のために吹いてくれてありがとね!」
「お父さんたちも嬉しいぞ!」
「いえいえ!こちらこそありがとうございます。」
そして、そばで見守っていた大輝のお父さんお母さんも、とても嬉しそうだった。
「「これからも大輝をよろしくね。」」
「それは困ります。」
「俺からも願い下げだよ!」
「大輝、素直になりなさい。」
「後悔するよ?」
「俺は素直だよ‼︎」
ただ、将来ずっとは勘弁してもらいたい。コイツと関わるのは、音楽の時だけでいいから。
演奏が終わってから数時間が経ち、いよいよ結果発表の時間となった。
「お待たせいたしました。これより高等学校前半の部の成績を発表します。」
1年間、いや2年間。やってきたことの答えが、全て出る。この瞬間に、全て。
「3番、北宇治高等学校。」
お願い。金賞であって。お願い……………
「銀賞。」
えっ…………?嘘でしょ………?ゴールド付いてない?銀………ってこと………?そう、だよね………
「そんな………」
なんで?なんで?これだけやってきたのに?嘘でしょ?今年もダメなの………?
「………すまん。俺が怪我してなければ……」
「そんなこと言わないでよ………」
それじゃあ、大輝が怪我したから銀賞だったっていうの?あんな1mmも悪くない事故のせいで、金賞を逃したっていうの?ねえ、私たち何かした?こんなの、あまりにも理不尽過ぎるよ………
外に出ると、
「葉月先輩、久美子先輩、ママ先輩、緑先輩………すいませんでした。俺が怪我してなければ………」
大輝はあまりにも元気なく、先輩方の前で謝った。怪我してなければって………。悪いのは轢き逃げした女なのに………
「そんな、大輝君は悪くないって!」
「謝らなくていいよ!」
「貰い事故ですよね?本当に、仕方ないと思います。」
「………来年、来年だ!来年見せてよ!全国金………って、先輩方のセリフ、パクっちゃった♪」
「葉月先輩………っ!」
本当にやりきれない。こんなの運じゃん。運が悪かっただけじゃん。ふざけんなよ、なんなんだよ、本当に意味が分かんないよ。私たちが何をしたって言うんだよ………っ‼︎やり場のない怒りがこみ上げてきて、思わずどこかに当たりたくなってしまう。
そんな中で、
「分かりました。来年は必ず全国金獲ります。どんな理不尽にも負けないような、神すらも覆せないような、どんな悪運にも負けることのない、世界中の誰もが認める、圧倒的な実力で。この俺が北宇治を、全国最強にします‼︎」
骨が折れてるはずの大輝は心が折れてなかった。いや、折れてたのを強引に治した。そうだ、どんな不運があっても覆せないくらい、上手くなればいいんだ。世界で一番上手くなったら、アクシデントがあったって金から落ちやしない‼︎
「大輝だけにやらせるかっつーの。」
「久石の言うとおり。僕だっている。」
「私もいる。」
「私だって‼︎」
「自分だって‼︎」
「「「私たちだって‼︎」」」
「来年はここの全員で、圧倒的な全国金を獲ります‼︎だから、………聴きにきて下さい!」
「「「「「お願いします!」」」」」
「「「「はいよ!」」」」
こんな脳筋みたいな考え、私らしくもない。でもこの時ばかりは、そう思わざるを得なかったのだった。そして私は折れた心に接着剤をつけ、無理矢理次の曲を始めたのだった。
これで第三楽章は終わりです!銀賞になった理由は、本人の怪我によるリタイアで、大輝メインで考えてたバランスが崩れたからです。ただかなりの紙一重で、あと少し上手ければ金賞でした。
そして、久美子たちも引退し、いよいよ奏たちが幹部になります!まずは久美子たちが卒業するまで!第四楽章「うちなーのてぃだ」、お楽しみに!