たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

38 / 38
 一年の詩も楽譜を持ってないので、演奏シーンは飛ばします。奏3年次の自由曲については過去の僕の経験から語れるので、演奏シーンがあります。よろしくお願いします。


練習番号U ねらえゴールドプライズ

  奏視点

 

 そして、いよいよコンクール全国大会の日がやってきた。舞台は名古屋国際会議場・センチュリーホール。ようやくこの場所に辿り着くことができたのだ。

 

「相変わらずデケえとこだな。さぞかし可愛いJKもいっぱい居るんだろう!」

「アンタの足は私ってこと、理解してる?」

 

 ちなみに私は大輝の車椅子*1を押す係をやっていた。会場まで大輝のお父さんお母さんにお願いしてもよかったんだけど、滝先生が直前期のアドバイスをお願いしたいということで、大輝がサポートメンバーとして同行。そしたらこんなことに。

 

「お前なら分かってくれるだろ。俺がナンパしたいって。」

「大輝なら分かるでしょ?そんなことしたら車道にぶん投げるって。」

「誰か〜、チェンジで!」

「だ〜め。」

 

 にしてもコイツ、どんだけ女好きなんだよ。利き足と利き手が折れてるんだからやめとけよ。そうじゃなくてもやめとけよ。ここは全国大会の会場なんだし。

 

 そんなことを思ってると、

 

「おい大輝、大丈夫か⁉︎」

「荒川君、大丈夫………?」

 

 なんとOBOGということで、後藤夫妻がやってきた。お2人はそれはそれはお似合いなペアルックで、それがまた大輝の心を破壊した。

 

「たった今、大丈夫じゃなくなりました。」

「「どういうこと(だ)⁉︎」」

「先輩が心配して来てくれたんでしょ?素直にお礼言いなよ。」

「だってよぉ、こんなリア充っぷりを見せられて、俺が耐えられると思ってるんですかぁぁぁぁ⁉︎勘弁して下さいよぉぉぉ⁉︎」

「全く、相変わらずなんだな。」

「でも、元気そうで安心したよ!」

 

 そんな様子を見ていると、

 

「あっ、姉ちゃんと義兄(にい)さん。」

「あっ、辰馬だ〜!来たよ〜!」

 

 長瀬弟がやってきた。しかも凄い呼び方付きで。

 

「「義兄(にい)さん⁉︎」」

「辰馬。お前、その呼び方やめろ。」

「すいません、もう結婚するのかと思いまして……」

「あのなぁ………まぁいっか。」

「家族公認のお付き合い、だとっ⁉︎おい辰馬、姉ちゃんの奪い方教えてくれ!」

「無理ですね………」

「そんなぁぁぁぁぁぁ⁉︎」

 

 どうやらこの2人の結婚は決まっているらしい。大輝は骨だけでなく心まで折られたようだった。ざまあみろ、ナンパなんてしようとするからだ!

 

 それにしても、あと1人足りないよな………

 

「そういや、夏紀先輩はどうしたんです?またどっかでやらかしてるんですか?」

 

 夏紀先輩だ。確かに後藤夫妻の邪魔をしないとはいえ、ここはコンクール。OGとして、3人で低音パートに来るのが普通でしょ。

 

「中川は吉川と一緒に新幹線寝過ごしたんだと。」

「名古屋超えて横浜だよ〜。」

「何してるんですか、あの人は………。まあ、いいですけど………」

 

 アホ過ぎない⁉︎副部長じゃなくなったからって、だらけまくりじゃん‼︎ホント、どうしようもない人なんだから………

 

「先輩方、これは夏紀先輩が居なくて寂しいって意味ですので、ご安心を。」

「そうだよね〜♪奏ちゃん好きだもんね〜。」

「違います‼︎勘違いしないでください!あと大輝、勘違いさせないで!」

「へいへ〜い♪」

「聞いてる⁉︎」

 

 全く、ムカつくことばっかり言いやがって‼︎今度絶対沢山のご飯奢らせるんだから‼︎

 

「それはそうと…………コンクール、頑張ってね!」

「期待してるぞ。」

「「「はいよ!」」」

 

 それはそうと、OBOGの為にも頑張らないと。そう思い、私は会場の中に入った。

 

 

 

 

 しばらくすると、私は低音1年からあるものをもらった。

 

「奏先輩!これ、どうぞ!」

 

 それはユーフォ4人で撮った写真だった。更に『奏先輩、ファイト!』と佳穂の字で書かれたデコレーションまでついていた。

 

「ありがとう。」

「それとこれも‼︎沙里の神社のお守りです‼︎」

 

 更に石神井君からは彼女の実家のお守りを貰い、

 

「それとこれも!大輝先輩とのラブラブツーショット♪」

「それは要らない。」

 

 弥生からの大輝との隠し撮りツーショットは断り、

 

「最後にこれも!佳穂が描いた恋愛漫画『だいかな恋愛譚』‼︎」

「それも要らない。」

 

 すずめからのクソ漫画も断った。

 

「いや〜、こんなの貰ったら和んじゃいますね!名古屋だけに!」

「ぷっw」

「和むかぁ⁉︎」

 

 なんで半分が私と大輝のやつなの⁉︎ホントムカつく‼︎どう考えてもあり得ないから‼︎地球がひっくり返っても付き合わないから‼︎

 

「ということで〜、」

「「「コンクール、頑張って下さい!」」」

「自分とは一緒に頑張りましょうぞ‼︎」

「はいよ。」

 

 でもまあ、応援されるのは悪くない。石神井君以外はコンクールの舞台に乗れないわけだし。私がこの子たちの分まで頑張って、先輩らしいところを見せるんだ!更に………

 

「久美子先輩!」

「どうしたの、奏ちゃん?」

「北宇治の100%、見せましょう!」

「そうだね!」

 

 大好きな先輩と一緒に、全力を出し切るんだ‼︎そして………

 

「久石、任せたぞ。」

「はいよ!」

 

 怪我で出られない大輝のために、全国金を獲るんだ‼︎

 

 

 

 

 

 そうして臨んだコンクールの舞台は、瞬く間に終わった。

 

「久石、良かったぞ!」

「大輝、ありがとう。」

 

 楽器を片付けてすぐに、私は大輝の所へ向かった。そしたら彼は満面の笑みで褒めてくれた。良かった、本当に良かった………っ!

 

「大輝のために吹いてくれてありがとね!」

「お父さんたちも嬉しいぞ!」

「いえいえ!こちらこそありがとうございます。」

 

 そして、そばで見守っていた大輝のお父さんお母さんも、とても嬉しそうだった。

 

「「これからも大輝をよろしくね。」」

「それは困ります。」

「俺からも願い下げだよ!」

「大輝、素直になりなさい。」

「後悔するよ?」

「俺は素直だよ‼︎」

 

 ただ、将来ずっとは勘弁してもらいたい。コイツと関わるのは、音楽の時だけでいいから。

 

 

 

 

 演奏が終わってから数時間が経ち、いよいよ結果発表の時間となった。

 

「お待たせいたしました。これより高等学校前半の部の成績を発表します。」

 

 1年間、いや2年間。やってきたことの答えが、全て出る。この瞬間に、全て。

 

「3番、北宇治高等学校。」

 

 お願い。金賞であって。お願い……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「銀賞。」

 

 えっ…………?嘘でしょ………?ゴールド付いてない?銀………ってこと………?そう、だよね………

 

「そんな………」

 

 なんで?なんで?これだけやってきたのに?嘘でしょ?今年もダメなの………?

 

「………すまん。俺が怪我してなければ……」

「そんなこと言わないでよ………」

 

 それじゃあ、大輝が怪我したから銀賞だったっていうの?あんな1mmも悪くない事故のせいで、金賞を逃したっていうの?ねえ、私たち何かした?こんなの、あまりにも理不尽過ぎるよ………

 

 

 

 

 

 外に出ると、

 

「葉月先輩、久美子先輩、ママ先輩、緑先輩………すいませんでした。俺が怪我してなければ………」

 

 大輝はあまりにも元気なく、先輩方の前で謝った。怪我してなければって………。悪いのは轢き逃げした女なのに………

 

「そんな、大輝君は悪くないって!」

「謝らなくていいよ!」

「貰い事故ですよね?本当に、仕方ないと思います。」

「………来年、来年だ!来年見せてよ!全国金………って、先輩方のセリフ、パクっちゃった♪」

「葉月先輩………っ!」

 

 本当にやりきれない。こんなの運じゃん。運が悪かっただけじゃん。ふざけんなよ、なんなんだよ、本当に意味が分かんないよ。私たちが何をしたって言うんだよ………っ‼︎やり場のない怒りがこみ上げてきて、思わずどこかに当たりたくなってしまう。

 

 そんな中で、

 

「分かりました。来年は必ず全国金獲ります。どんな理不尽にも負けないような、神すらも覆せないような、どんな悪運にも負けることのない、世界中の誰もが認める、圧倒的な実力で。この俺が北宇治を、全国最強にします‼︎」

 

 骨が折れてるはずの大輝は心が折れてなかった。いや、折れてたのを強引に治した。そうだ、どんな不運があっても覆せないくらい、上手くなればいいんだ。世界で一番上手くなったら、アクシデントがあったって金から落ちやしない‼︎

 

「大輝だけにやらせるかっつーの。」

「久石の言うとおり。僕だっている。」

「私もいる。」

「私だって‼︎」

「自分だって‼︎」

「「「私たちだって‼︎」」」

「来年はここの全員で、圧倒的な全国金を獲ります‼︎だから、………聴きにきて下さい!」

「「「「「お願いします!」」」」」

「「「「はいよ!」」」」

 

 こんな脳筋みたいな考え、私らしくもない。でもこの時ばかりは、そう思わざるを得なかったのだった。そして私は折れた心に接着剤をつけ、無理矢理次の曲を始めたのだった。

*1
右手と右脚を骨折してるが故に、松葉杖だと歩くのが厳しいため




これで第三楽章は終わりです!銀賞になった理由は、本人の怪我によるリタイアで、大輝メインで考えてたバランスが崩れたからです。ただかなりの紙一重で、あと少し上手ければ金賞でした。

そして、久美子たちも引退し、いよいよ奏たちが幹部になります!まずは久美子たちが卒業するまで!第四楽章「うちなーのてぃだ」、お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ダブルリードの苦労人(作者:桜紅月音)(原作:響け!ユーフォニアム)

北宇治高校吹奏楽部に所属する彼こと鈴木拓哉は苦労人である。▼部長である小笠原晴香や同じダブルリードのパートリーダーである喜多村来南、同級生の吉川優子を始めとした吹奏楽部のメンバーに苦労している。▼更には、部活の雰囲気も変わって更に苦労が…▼分岐ルートは、原作、アニメが混ざっております。▼ご視聴の際はご注意願います。▼*投稿済みの話を順次進行形で修正中▼久美子…


総合評価:345/評価:7.36/連載:126話/更新日時:2026年06月16日(火) 00:00 小説情報

カリスマチート転生者先輩 in 北宇治(作者:山田太郎)(原作:響け!ユーフォニアム)

カリスマチート転生者先輩を小笠原世代に生やして、早いうちに吹奏楽部を改革します。▼ガールズラブタグは超保険です。必須タグなので入れましたが、殆ど0です。そこを期待している方はすみません。▼テンポ優先のため、アニメで描かれた部分は必要な部分だけ書きます。未視聴の方はアニメを観ましょう。▼原作2年目で完結しました。3年目はあまり書けるパートがなさそうなので、思い…


総合評価:1833/評価:8.54/完結:8話/更新日時:2026年02月20日(金) 20:00 小説情報

いつか途切れた、音の続きを(作者:いつかの音色)(原作:響け!ユーフォニアム)

 中学二年生のあの時、私は間違えた。私の行動一つで部が崩壊してしまうと、あの時の私は知らなかった。そして、私は逃げてしまった。▼ 周囲への気配りが足りなかった。みんなが何を考えているか、なんて全然考えていなかった。何より、心が弱かった。▼ もう二度と、同じ過ちは繰り返さない。私はもう絶対に、逃げたりしない。▼ ▼△▼ 南中出身、音楽チートの主人公を黄前世代に…


総合評価:3575/評価:8.98/連載:22話/更新日時:2026年06月21日(日) 20:00 小説情報

響け!元野球部のクラリネットパート!!(作者:桜紅月音)(原作:響け!ユーフォニアム)

中学では野球部だった主人公の工藤浩輔。▼北宇治に入学し、野球部に行くつもりが、気づいたら吹奏楽部に入っていた。▼知識はあるものの、吹部自体は初心者である彼は、無事に吹奏楽部でやっていけるのか▼不定期更新▼*小説タイトル変更有り▼


総合評価:25/評価:-.--/連載:4話/更新日時:2026年06月16日(火) 00:00 小説情報

想いを音色に乗せて(作者:猫柳/nekoyanagi)(原作:響け!ユーフォニアム)

▼ 両親を早くに亡くし、バイトと勉学、音楽の両立に四苦八苦しながら北宇治高校吹奏楽部で己の理想の音色をトランペットで表現しようと頑張る男の子の物語。▼ 原作終了後、大学以降の物語も書きたいなぁと思っております。▼ クロスオーバーは迷っているので念の為です。原作の間に出すことは恐らくないです。▼ キャラタグ一旦消去させていただきます。▼ 青のオーケストラ要素ち…


総合評価:1842/評価:8.96/連載:18話/更新日時:2026年03月09日(月) 19:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>