たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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 弥生の内面の解釈が違うかもしれません。あしからず。


練習番号D なにわのストリート

  奏視点

 

 12月頭。私たちの次なる舞台は大阪だった。

 

「なんと大阪!私のおかん爆誕の地!ということは私も実質なにわ女子!1年4組上石弥生です!」

「ぷっw」

 

 どうやら弥生のお母さんが大阪出身らしい。まあ弥生自身大阪のおばちゃんっぽいところがあるし。そうだ、これを機に司会を押し付けよう。

 

「弥生、せっかくなら司会やってみたら?親戚いるんでしょ?」

「いやいやそんな!私の漫談なんて、お2人の夫婦漫才には及びませんよ!」

「夫婦じゃないから‼︎」

「ぷっw」

「こらそこ、笑うな!」

 

 どうやら司会をやるつもりはないらしい。それなら権力を使うまで‼︎

 

「ねえ大輝、ドラムメジャーでしょ?弥生を司会に指名してよ。」

「ついでに俺の彼女に指名してもいいか?」

「それはダメ。」

「超超丁重にお断りさせていただきます。」

「ぷっw」

「そんなぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎」

 

 ダメだった。大輝がアホすぎて使い物にならなかった。

 

「それはさておき、司会じゃなくとも目立たせようと思っている。」

「えっ、マジっすか⁉︎」

 

 と思ったら、意外にも使えるようだった。その目立たせる手法とは?

 

「今度やる曲のソロ、担当は弥生ちゃんだぁぁぁぁ‼︎」

「「「「ええっ⁉︎」」」」

 

 なんと、司会じゃなくてソロの指名だった。

 

「えっ、ちょっ、ま、マジっすか?」

 

 当の弥生は指名されて困惑している。普段は快活な彼女の、珍しい困り顔。案外根は常識人なのかもしれない。

 

「おめでとう、やよちゃん!ソロだって!」

「さっちゃん先輩………が、頑張りマッスル‼︎」

「ぷっw」

 

 いつもみたいにギャグで取り繕おうとするも、どこか戸惑いが隠せない。絶対自分じゃないだろうと、内心思っていたのがよく分かった。

 

「ええ〜、ソロってオーディションじゃないんですか〜?」

「すずめちゃん、落ち着いて聞いてくれ。」

「はい!」

「コンサート祭りの最終的な目標は、コンクールで全国金を取るための下地を作ること。だから、全員に経験を積ませたいんだ。オーディションは一番を選ぶためだろ?それはコンクールで使うべきで、育成期間の今使ったら一番上手い人しか育たない。オッケー?」

「ほぇ〜。」

 

 ちなみにオーディションを採用しない理由はこれ。コンクールの時とは目的が違うから。だから私もコンサートの曲でソロが出てきた場合は佳穂と分け合っている。そのおかげか知らないけど、佳穂もかなり上手くなってきたような気がする。

 

「だから私が大輝と相談して、ソロを弥生に決めたの。」

「みっちゃん先輩…………」

「弥生ちゃん、自分なんかがって思いがちでしょ〜!そこも直してもらいたくてね!」

「いや、私はその………」

 

 まあ、弥生が自信無くすのも分かる。化け物級の大輝にめちゃくちゃ上手い美玲。さつきも上手いし、同じタイミングで始めたはずのすずめとはもう差がついてしまった。自分が一番下手なことが分かっているからこそ、どこか引いてしまうのだろう。常識的な彼女だからこそ、自分の実力に自信が持てないのかもしれない。

 

「それに、ポップスを吹くなら弥生ちゃんが一番合ってると思うぞ。」

「へっ⁉︎ま、マジっすか⁉︎」

「オールラウンダーの美玲、繊細な表現のさっちゃん、大音量大迫力のすずめちゃんみたいに、弥生ちゃんにも武器がある。」

「私に………武器………?」

「弥生ちゃんはアーティキュレーションがハッキリしてる。スタッカートやスラー、アクセントが過剰なほどに。それはポップスにおいて、めちゃくちゃ重要だ。」

「そ、そうだったんですね!」

「得意な事を伸ばして自信をつける。そしたらもっと上手くなれるぞ!」

「わわわ、分かりました!」

 

 にしても大輝は、パート員の長所短所をきちんと分析できてるのが凄いな。私は佳穂しか居ないから把握できるけど、チューバは4人もいるのに。なんなら他パートの分まで結構把握してたな。ホント、音楽だけはすごい男だ。

 

 

 

 

  弥生視点

 

 私がソロ………?いや、無理だって。一番下手っぴじゃん。コンクールの時だって、私以外のメンバーはコンクールメンバーの可能性があるって、大輝先輩が奏先輩と話してるところを聞いちゃったし………。あの頃よりは上手くなってる自信はあるけど、それでも周りの方が上手い。大輝先輩の褒め言葉も、どう考えてもリップサービスだろう。

 

「弥生ちゃん、もっと堂々と吹いていいよ!」

「はっ、はい!」

 

 本当に大丈夫なのかな、私?練習しても練習しても、不安は取れないままでいた。

 

 

 

 

 

  奏視点

 

 そんなこんなで、コンサート当日がやってきた。場所は大阪のとある商店街。前回と大きく違うのは、遠いが故に3年生が誰も居ないこと。このアウェーな中で、お客さんを楽しませることができるか。

 

「おっ!弥生がいつもと違うバンダナつけてる!」

「黄色か‼︎‼︎」

「弥生の黒髪と合わさると………」

「夢は大きく阪神のピッチャー‼︎1年4組、上石弥生です。」

「ぷっw」

 

 当の弥生はいつも通りリラックスしてる………と思いきや、ちょっと肩が震えていた。

 

「ともかく、ソロ頑張って!」

「応援してるぞ‼︎‼︎」

「大丈夫だよ!」

「弥生ならやれる!」

「みんな、アリが十匹ありがとう!」

「ぷっw」

「弥生ちゃん!お前の力を親戚に見せてこい!絶対成功するから!」

「頑張ってね♪」

「上手くいく事を願ってるよ。」

「君ならできるさ。」

「大輝はお世辞とか言わないから。信じていいよ。」

「ありがとうでございまする‼︎」

「ぷっw」

 

 低音の皆と義井さんが思い思いに励ます。これで成功するといいな。

 

 

 

 

 

 しばらくすると、コンサートが始まった。今回のセトリはオーメンズ・オブ・ラブ→ミッション・インポッシブル→嵐メドレー→Another Day of Sun。ここまでは大阪のおばちゃんの活気もあって、非常に大盛り上がりだった。

 

 そして最後は…………

 

「大阪という学園は、美少女だらけの天国や〜‼︎」

「ということで聴いてください、『学園天国』。」

 

 弥生のソロがある、学園天国だった。

 

 

 

 

  弥生視点

 

 いよいよ本番、学園天国。いつもは楽しいはずの曲も、どこか顔がひきつってしまう。皆の顔を見ながら、なんとか自分を奮い立たせてる。頑張らなきゃ、頑張らなきゃ………っ!

 

 そうこう考えてる間に、あっという間に1番が終わる。ソロは2番のサビ前。ヤバい、もうすぐだ。来る………来る………っ!

 

 そんな事を思っていると、隣からすずめがウィンクをしてくれた。そういや、すずめはソロ吹きたかったんだよな。それを大輝先輩の指示を聞いて、譲ってくれた。なら、私がやらなきゃ………っ‼︎私が………っ、1年4組、上石弥生だぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

 

 そう自分を奮い立たせ、私はソロを吹くために前に出た。

 

 

 

 

 そして気がついたら、自分のソロが終わっていた。沢山の拍手の中、

 

「弥生、戻って!」

 

 みっちゃん先輩からの声で我に帰る。ヤバっ、戻らなきゃ。それにしても、お客さんのこの反応…………私、上手く吹けたかな?

 

 

 

 

 本番後、私はドキドキしながら舞台裏に撤収した。皆、なんて言ってくれるかな………?

 

「弥生いぃぃぃぃぃぃ!カッコよかったじゃぁぁぁぁん‼︎」

「すごいよ、あんなに吹けて!」

「自分も感動しましたぞ‼︎‼︎」

「お疲れ様。よかったよ!」

 

 いつもの4人が笑顔で褒めてくれる。よかった、私上手く吹けたんだ………っ!そう思うと、自然と涙が溢れてきた。

 

「やよちゃん!すごかった………って泣いてる⁉︎」

「大丈夫?」

「ほら、テッシュあるぞ。」

「大輝に泣かされたの?」

「俺のせいじゃねえよ!」

「うぇぇぇぇぇぇん‼︎むっちゃ緊張しましたぁぁぁぁ‼︎」

「弥生、お疲れ〜!おばちゃんやで〜!」

「おかんやで〜!」

「おとんだよ〜!」

「お前の嫌いな姉貴だよ。」 

「皆、来てくれてありがとぉぉぉぉぉ!」

 

 そして、低音の先輩方や自分の家族達を見て、涙が溢れてしまった。本当に、本当に上手くいってよかった。練習しててよかった。続けててよかった。ありがとう、先輩方。私にソロをくれて。本当に本当に、世界が変わった日でした。これからも、よろしくお願いします!




 ということで、弥生回でした。これからも、アホなようで常識人・1年4組上石弥生をお願いします!
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