たわけ!ドアホ男子   作:スピリタス3世

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練習番号F ばちばちアッチェレランド

  奏視点

 

 新年明けて数日後。滝先生が練習後の私たちを呼び出した。

 

「集まってくれてありがとうございます。ちょうど3人にしたい話がありまして。」

 

 滝先生から呼び出すなんて珍しい。一体何事だろう?

 

「もしかして、いけそうなキャバ嬢の紹介ですか⁉︎」

「そんなわけないでしょう。」

「滝先生、すいません。彼にはあとで罰を与えます。」

「頼みますよ、久石さん。」

「部長からもおねが〜い♪」

「おい久石‼︎俺に何をするつもりだ⁉︎」

 

 隣のバカはあとでなんとかするとして、今は先生の話を聞かないと。

 

「荒川大輝君は置いといて、橋本先生から依頼があったんですよ。今度沖縄で開演するテーマパークのオープニングパレードに参加しないか、って。」

 

 そんな事を思っていると、なんとも凄い依頼が舞い降りた。

 

「「「沖縄⁉︎」」」

「はい。時期は3月中旬。コンサート祭りの締めには丁度いいでしょう。」

「行きます行きます!可愛いうちなーんちゅ、捕まえてみせます!」

「彼の頭は治しておきます。」

 

 沖縄での依頼演奏。しかも新しいテーマパークのオープニングパレード。すごい大規模だ。当然責任も重いが………

 

「ドラムメジャーは賛成なようですか、お2人は?」

「私も賛成で〜す!」

「大丈夫です。」

「ありがとうございます。では、沖縄での依頼演奏、引き受けましょう。」

「「「はい!」」」

 

 やりがいも大きい。このオフシーズンの最後を締めくくるには、丁度いい舞台だろうと、心から思ったのだった。

 

 

 

 

 その後の練習は、部員皆が沖縄への思いを馳せたからか、順調に進んだ…………かのように思えた。

 

「クラ、最近ずっと顔が怖いぞ?何があった?もしかして、俺の取り合いでもしてる?」

 

 クラの雰囲気がおかしいのだ。1年生はビビっていて、一部の2年生がピリピリしてる。そして一部の2年生は我関せず、という感じだが………

 

「そんなわけないでしょ。」

 

 キレ気味に詩織が返事する。どう考えても何かあった顔だ。

 

「俺じゃないのか………、はさておき、パレードで笑顔がないのは致命的だ!演奏中はせめて取り繕って!」

 

「「「はい。」」」

「「は〜い。」」

 

 いつも以上に元気が無い返事。そして若干2名の、投げやりな返事。もしかして、あの2人が喧嘩してる………?

 

 

 

 練習後、私たち3人はクラのパートリーダー、詩織を呼び出した。

 

「ねえ、何?私忙しいんだけど。」

 

 明らかに機嫌が悪いムーブ。絶対なんかあったでしょ。

 

「ま、まあまあ〜!ちょっとお話を聞きたくて………」

「別に何も無いから。」

「えっと…………」

 

 梨々花は困惑してる。やっぱりこういう時は、私や大輝みたいな厳しく言える人の出番だ。

 

「もしかして、加藤さんと喧嘩したでしょ?」

「…………それが?」

 

 若干答えに間があった。図星なのだろう。返事が投げやりだったのもこの2人だし。

 

「別に喧嘩はしてもいいけど、演奏に出さないでほしいなって。」

「出してるつもりないけど。」

「出てるから言ってるんだぞ。」

「…………そう。」

 

 大輝に言われて黙り込む。実力で全ての誤魔化しを潰せる彼は、やっぱり鞭側の人間だ。

 

「別に仲直りしろなんて言わない。けど、表面上だけでも普通の対応してほしいな〜。後輩たちを怖がらせないために♪」

「そんなの、勝手にあっちが怖がってるだけじゃないの?」

「勝手にと言われても、怖いもんは怖いさ!それに、2人が普通に接していれば、その怖さは無くなるでしょ?過剰な恐怖はかえって悪影響なんだよ!」

「だから表面上は仲良くしろ、と。」

「まあ、仲良くとはいかないまでも………普通に接するくらいで!皆の聞いてないところとか、俺にイライラをぶちまけるのはいいからさ!せめて皆の前では取り繕おうか!」

「わかった、やってみるよ。樹はやらないかもしれないけど。」

「アイツには話しておくからさ!」

「そう。」

 

 そのことを大輝自身も分かってるからか、あんまりキツい言葉は使わない。むしろところどころ気軽な感じで話す。でも言うべきことは言う。

 

「で、何があったの?」

「………男を取られた。」

「えっ⁉︎俺取られた覚えないんだが………」

「ごめん、詩織。コイツ捨てとくよ。」デュクシ

「ぐへぇ………」バタン

「ありがとう、奏。」

 

 そして、音楽以外は壊滅的なアホ。そんな奇妙なバランスが、彼を成り立たせているのだ。

 

「樹は詩織が好きだった事知ってるの?」

「うん。でも先に告白しない方が悪いって、アイツが。」

「知ってて狙うの、か。」

「そうだったんだね〜。」

「そうなの!それがホントムカつく!」

 

 にしても、恋愛相談ね。私たちには正直どうすることも出来ないし。樹がその男を捨てたら捨てたでまた揉めそうだし。なんかいい解決法無いのかな?とりあえず、今は不満を吐き出させておくか。

 

「大輝君の言う通り〜、私たちに不満をぶつけていいよ〜!」

「ありがとう。全くアイツったら‼︎」

 

 ということで、私たちは詩織に不満を吐き出させた後に、同じような事を樹にもしたのだった。

 

 

 

 

 そして、翌日のこと。基礎合奏の中で………

 

「クラ、昨日よりは良くなってる!表情はその感じでやってな!」

「「「「はい!」」」」

 

 多少のぎこちなさはあるものの、なんとかなったのか………

 

「ただ、ここちょっとミスってたぞ!気をつけて!」

「そこミスったの詩織じゃない?」

「はぁ?私じゃないんだけど。パートリーダー的には………」

 

 なってない‼︎やっぱり1日じゃ収まらないか‼︎というか合奏中に喧嘩するなし‼︎

 

「俺誰がミスったか分かるんだが………言った方がいいか?」

「「…………いや。」」

 

 大輝が実力で黙らせにくる。不服そうな反応ではあるものの、とりあえずなんとか収まったか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減にして‼︎」

 

 と思ったら、なんと黙って聞いてた梨々花が爆発した。あまりにも衝撃的すぎて、思わずびっくりしてしまった。

 

「些細なことをいつまでもぐちぐち言わない‼︎全部言わなきゃ分かんない⁉︎面倒見なきゃ出来ない⁉︎幹部は皆のお母さんじゃないんだけど‼︎」

 

 人生で初めて聞いた、梨々花の怒鳴り声。あまりの迫力に、思わず私もたじろいでしまった。それと同時に、爆発してもいいよと言ったとはいえ、副部長なのに梨々花を支えきれずその状態に至らせてしまった事を、悔いることになった。ここは一つ、梨々花に合わせておくか。

 

「てなわけで、皆もうちょっと大人になろうか。」

「そしたらもっと楽しいぜ‼︎演奏や表現にも深みが出る!いい事ずくめだ‼︎リベンジ、成功しちゃうかもよ〜♪」

「奏に大輝君、ありがと〜。ということで、皆よろしくね〜。」

 

 そして、大輝が飴の役割を果たし、梨々花が元通り優しい口調に戻った。他の部員はそれを聞いて戸惑いながらも、より引き締まったような気がした。

 

 

 

 

 練習後、これでよかったのかと思いつつ、私と大輝は梨々花と一緒に帰った。

 

「ごめんね、梨々花。」

「俺たちの支えが足りてなかったな。」

「謝らなくていいってことよ〜。私もちょ〜っとばかり、計算して言ったことだし〜。奏も言ってくれたじゃ〜ん?」

「まあ、そうだけど………」

 

 案外計算高い彼女。敢えてのことだったか。

 

「こうなったら強引に〜、仲直りさせよ〜!ということで〜、私と奏であの2人を連れて服を買いに行くよ〜!」

「わっ、分かった!」

「俺は…………?」

「大輝君は〜、お留守番で〜!」

「アンタ、女の子の服とか分からないでしょ。」

「失敬な!俺好みのスタイルにしてやるぜ!」

「じゃあ余計ダメ。」

「なんでだ⁉︎」

「教えてくれたら〜、奏用にそれ買うよ〜♪」

「「それは結構!」」

 

 そして、独特な仲直り方法を思いついた梨々花。彼女も彼女なりの部長を務めるようだった。そして、私ができるのは、梨々花の目指す部長としての在り方に合わせること。副部長として、ね。そう思った日だった。

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