奏視点
今回の演奏会ではなんと、別枠で3年生バンドが発足するという。そのため、2月くらいから練習に現れる3年生が増え始めた。久美子先輩もまた、その1人だった。
「やあ、奏ちゃん。大輝君とは順調かい?」
「順調に心が離れつつあります。」
「それは大変だ。今すぐくっつけなきゃ!」
「余計なことしないでくれません?」
「お〜、久しぶりのツンデレだ。」
「それより久美子先輩、合格おめでとうございます!聡明な先輩なら、受かると思ってましたよ♪」
「ありがとね、ツンデレ奏ちゃん!」
「ツンデレじゃないです!」
「久美子先輩、おめでとうございます!」
「佳穂ちゃんもありがとね!」
「あと、だいかな恋愛譚の続きです!」
「ありがとう!続き気になってたんだよね〜!」
「何渡してんの⁉︎」
ささっと合格を決めて戻ってきた久美子先輩。本当にすごい人だ。ちなみに黒江先輩は国立大を受験するためか、決まるのが遅い*1。そのためまだ現れていない。
「「「「「葉月先輩、おめでとうございます‼︎」」」」」
「ありがと〜、皆!おかげで無事、短大生だよ!」
「「緑先輩(師匠)、おめでとうございます。」」
「ありがとね、皆!」
ちなみに低音の他2人の先輩も戻ってきていた。久しぶりの先輩方に、なんだか懐かしい気持ちになった。
その後、私たちがしばらくパート練習していると…………
「たのも〜う!」
「「「失礼します!」」」
梨々花が何人かの1年生を連れてやってきた。
「どうしたの?まさかカチコミ?」
「そんなまさか〜。私たちは2人に用があって来たんだよ〜。」
「2人………?」
「もしかして、俺に告白とか………?」
2人………?どの2人だろう?
「「「だいかな先輩‼︎」」」
「「そのまとめ方をするな‼︎」」
なんと、最悪の組み合わせだった。
「「「この曲を吹いてください!」」」
そして、彼女らのスマホから流れた音楽は………BUMP OF CHICKENのrayだった。確か数年前*2の曲だっけ?チラッと聴いたことがあるのを覚えている。でも一体、どういうこと?
「2人には沖縄のパレードで、これを吹いて欲しくて〜!」
「お2人のソリで、他の皆が伴奏です!」
「司会の2人が楽器を持って、抜群のコンビネーションを見せるんです!」
「最高じゃないですか!」
そういうことか。コンチェルトのソリバージョンね。正直大輝に関しては、チャルダッシュでもやらせておけば盛り上がるだろうけど………そう言われたら、燃えるものがあるな。
「さぁて、お2人さ〜ん!ここはいっちょ、ご協力を〜………」
「「やる。」」
どうやら私と大輝の回答は同じだった。
「「「「えっ⁉︎」」」」
「私は演奏面だけは、大輝のこと信頼してるから。」
「俺もだ。音楽面だけは何故か久石と合う。全員に見せてやるよ。」
「「俺(私)たちのコンビネーションを!」」
「「「「おお!」」」」
いつか吹いてみたかったんだよね、大輝と。それがまさかこんな時に来るなんて。これはチャンスだ。全力で楽しもう、楽しませよう、音楽を!
「それじゃあ、まずはデートだね〜。」
「「それは却下。」」
「梨々花ちゃん、部長2代で言おっか。」
「はい!」
「「言わせませんよ‼︎」」
それ以外は勘弁だけど。
その日以降、私と大輝の2人っきりの練習は幕を開けた。
「久石、ここもっと滑らかに吹けるか?」
「うん、やってみる。」
「おお、いい感じじゃん!それで頼む!」
「分かった!」
大輝と合わせていると、なんだか自分が自分じゃなく感じる気がする。具体的には、より上手くなったような。今の私なら、ソロコンで全国金も取れるんじゃないか?そう勘違いしてしまう。
「ちょっとここ、1人で吹いてみて!」
「わかった。」
そして、自分1人で吹いて現実に戻される。やっぱり下手のままだ。まだまだ久美子先輩や黒江先輩には及ばない。
「やっぱお前の音最高だわ。どう吹けばいいか、すごい分かりやすい。」
「ホント?」
「俺が音楽で嘘ついた事あるか?」
「無いね。ありがとう。」
「ど〜も。」
そして、なんで大輝はこの実力の私と吹いて一番合うのか。1人でも全国金獲れる実力があるのに。ホント、疑問が絶えない。
「それじゃあ、ちょろっと通して今日は終わりにするか!」
「だね!」
「終わったらナンパするぞ〜♪」
「それはダメ。色んな人に迷惑がかかるから。」
「むしろナンパ出来なくて、俺が迷惑してるんだが。」
「それはよかった♪」
「ぶっ飛ばすぞ‼︎」
音楽以外はとことん合わない2人なのに。
そんなこんなで数週間が経ち、いよいよ沖縄へ行く日となった。
「先輩方も来るし、可愛いうちなーんちゅにも会えるし、楽しみだ‼︎」
「アンタの好きにはさせないから。」
「邪魔するな、久石‼︎」
そして、私は沖縄にて、いつも通り大輝の面倒を見ることになったのだった。行きの飛行機で、私たちは隣の席にさせられてしまったからだ。
「みてみて〜!ラブラブカップル〜♪」
「「ホントだ〜!」」
梨々花の策略によって。
「帰りの便は席交代ね、梨々花。」
「俺からも頼む!」
「む〜り〜♪」
「「なんでだよ⁉︎」」
伊丹から沖縄までの数時間、コイツの隣に居なきゃいけない。しかもスマホは機内モード。だからずっと相手にしなきゃいけないんだけど………。一体何をして時間を潰せばいいか。いっそのこと、寝たふりでもしようかな?
「とりあえず、愛してるゲームやって時間潰したら〜?」
「「あれは絶対嫌‼︎」」
そんな事を思っていると、梨々花が地獄のゲームを提案した。最近1年生の間で流行っている、悪魔的なゲーム。その名も、『愛してるゲーム』。輪になって隣の人から『愛してるよ。』と言われたら、逆隣の人に『愛してるよ。』と言うか、言ってきた人に対して『もう一回』とか言ってまた同じ事を言わせるかを選べるゲームだ。そして、恥ずかしがったり照たりしたら負けという。本当に意味分かんないゲームだ。
「とりあえず、私から〜!奏〜、愛してるよ〜♪」
そして、私の逆隣は大輝。もちろん愛してるよなんて言うわけない。だから………
「もう一回。」
「え〜!奏〜、愛してるよ〜♪」
「ごめん、聞こえなかった。」
「か〜な〜で〜‼︎あ・い・し・て・る・よ‼︎」
「アンコール♪あと飛行機の中はお静かに!」
「ぐっ………!」
「ほら、ルールでしょ?早く言いなよ?」
全部梨々花に返す‼︎ほら、早く照れろ‼︎私が爆弾発言する前に‼︎それで梨々花の負けだ‼︎
「分かった。奏のことはスキップするから。」
は?ちょ、えっ?そしたら梨々花が大輝に言うってことじゃん‼︎それはヤバいって‼︎
「それはダメ‼︎」
「え〜、でも奏はやる気無いんでしょ〜?じゃあ飛ばしてもいいよね〜、って♪」
「コイツにそんな事言ったら、碌なことにならないって‼︎」
「自分の好きな人が取られるから〜?」
「私は梨々花のためを思って言ってるの‼︎アイツのことを好きなわけじゃない!」
「私は構わないよ〜♪」
「いやいや、ダメだって!」
絶対大輝が調子に乗るから‼︎言質取ったとか言って、絶対梨々花と付き合い始めるって‼︎そうなったら絶対後悔するから!梨々花が‼︎
「じゃあ、奏が次の人に回したらいいのに〜♪」
「それは………っ!」
マズい‼︎このままじゃあ地獄の2択になる!私が大輝に愛してるって言うか、梨々花がそう言うか。とりあえず、なんとか回避しないと………
「「ねえ、奏。」」
「何?みちるに詩織?」
そんな事を思ってたら、ちょうど後ろの席に座ってたみちると詩織が乱入してきた。これはもしや、私のことを助けてくれるのか………?
「「早く告白しないと、後悔するよ?」」
「2人が言うと重いよ!」
逆だった。失恋経験のある2人から放たれる言葉は、とんでもなく反応しづらかった。
「ほ〜ら、早く〜!」
「「いいの?」」
マズい、マズい、なんとかしないと………っ‼︎
「分かったよ‼︎でも今から言う言葉は冗談だからね‼︎」
「そういうことにしといてあげる〜♪」
ええい、もういいや!言っちゃぇぇぇぇぇ‼︎
「大輝、あ、あ、………愛してる///」
とりあえず、すぐに否定しないと‼︎それか、逆に大輝に言わせて照れさせて………
「zzzzzzz」
って、寝てるんだけど‼︎
「あれま〜、おやすみでしたか〜♪」
「はぁ⁉︎///」
ホントムカつく‼︎これじゃあ私だけ損したじゃん‼︎ふざけんなよ!
「奏が告ったか〜!」
「これは広めないと!」
「違うから‼︎本当に‼︎///」
「ちなみに照れたから奏の負け〜♪」
「うるさい‼︎///」
周りは揶揄うし、当の大輝は私の勇気を全部台無しにするし‼︎あったまきた‼︎なんで沖縄に来てまでこんな目に遭わなきゃいけないんだよ‼︎腹立つ‼︎
そして沖縄に着いた時、私は腹いせで、
「大輝、早く起きて。じゃないと海に落とすから。」
「痛ぇ………なんだよ久石?なんでそんなにキレてんだ?」
「大輝のせいだから。」
「はぁ⁉︎理不尽過ぎるだろ‼︎」
「これは大輝君が悪いね〜。」
「「そうだね。」」
「なんでだよ⁉︎俺が寝てる間に何があったんだ⁉︎」
大輝に怒ったのだった。