奏視点
沖縄に着いた私たちは、最後の直前練習を済ませてミーティングをしていた。ちなみに3年生は別行動のため、愛しの久美子先輩とは別行動だ。
「明日はパレード本番で〜す!北宇治の力を沖縄の皆さんに教えましょ〜♪北宇治ファイトー、」
「「「「「オー!」」」」」
梨々花の号令のもと、練習を締める。この後はホテルに帰って寝るだけだ。
「皆さん、この後はホテルに戻ってもらいます。着いたら梨々花が鍵を受け取るので、部屋の代表者は梨々花のところに来てください。」
「「「「はい!」」」」
ちなみに私は梨々花と同部屋。W鈴木が同部屋で、大輝は月永………じゃなくて鈴木靖也と同部屋だ。部屋割りを見た3バカが私と大輝を同部屋にしろとか騒いでたが、権力で黙らせた。
その後、私はホテルに着き、梨々花と一緒に自分たちの部屋に入った。
「ごめんね〜、大輝君と一緒じゃなくて。」
「一緒じゃなくていいよ。生ゴミを部屋に置いたまま寝たくないし。」
「そんなこと言っちゃだ〜め♪」
「そんなこと言われるアイツが悪いんでしょ。」
ちなみに大輝は沖縄の夜の街に行こうとして、松本先生や滝先生にこっぴどく怒られてた。本当に頭の悪い男だ。先輩方が血迷って部長や副部長にしなくてよかったと、心の底から実感した。
「そういやさ〜、」
「い〜や〜さ〜さ〜?」
「奏は大輝君のことが好きってことで、いいんだよね〜?」
そんな事を思ってると、梨々花がバカな事を言い始めた。
「嫌いって認識に改めて。」
「なるほど〜、そういう設定ね〜。」
「設定じゃない。」
本当に皆は私と大輝を相思相愛にしたがるなぁ。そんなこと、ちっともないのに。むしろ嫌いだし。音楽以外は。
「でもさ〜、大輝君が他の女の子と付き合い始めたら、どう思うの〜?」
仮に大輝が誰かと付き合ったとしても、何も思うことは………いや、あるな。
「その女の子が可哀想。真実を伝えて別れさせないと。」
私が風紀を守るとか言ってる理由はこれだ。これ以上被害者を増やさないため。
「嫉妬〜?」
「違う‼︎」
決して大輝を取られて悔しいとかじゃない。決して大輝に恋しているとかじゃない。本当に。絶対にそうと言い切れる自信が、私にはある。
「分かった、そういうことにしといてあげる〜♪」
「納得してくれてよかったよ。」
そんな事を思いながら、私はしばらく梨々花と喋った後に寝たのだった。
翌日、いよいよパレード当日。本番の時間が、もう目の前に迫っていた。
「さて、俺の演奏を聴いて、何人の女の子が惚れるんだろうか。楽しみだな〜♪」
「そして、何人の女の子が性格を知ってドン引きするんだろうか。楽しみだな〜♪」
「うるさいカス石‼︎お前だって人のこと言えないだろ‼︎」
「少なくとも大輝よりはマシ。」
そんな中でも、相変わらずの大輝。沖縄に来てもいつも通り痴態を晒すその様は、もはや見ていて安心するものだった。
「ソリ、頼んだぞ。」
「大輝もね。」
そんなダメダメの奴だが、演奏面だけは本当にすごい人だ。そんな人と一緒に沖縄でソリを吹けるなんて、本当に夢のような話だ。願わくば、ずっと醒めないでほしい。そんな事を思いながら、私たちのパレードは幕を開けた。
パレードの最初は、吹き慣れた大江戸捜査網のテーマ。隣の佳穂と歩調を合わせながら、堂々と楽しそうに、前に進んでいく。沿道沿いのお客さんの拍手と笑顔が、私のモチベーションを更に上げてくれた。
ちなみに先頭でドラムメジャーをやるのは大輝………ではなく美玲だ。理由は2つあって、1つは大輝がソリで楽器を吹くから。今回はパレードで移動しながら吹くため、大輝がドラムメジャーをやると、道中に楽器を置きっ放しにしなきゃいけない。楽器は高価なため、流石にそれは避けるべきだ。
そして2つ目は、何と言っても見栄え。美玲と大輝じゃ、どっちがいいかは比べるまでもないだろう。
そして、テーマパークの中の南国植物エリアに到着。ここで列は止まって、2曲目の演奏………の前にMCだ。
「沖縄の皆さ〜ん‼︎こんばんは〜‼︎」
「こんにちはだよ。」
もちろんやるのは私と大輝。結局最後までやる羽目になってしまった。だからこそ、ソリを任されたんだけど。
「そういや、太陽出てたな‼︎分からなかったぜ‼︎」
「あれが分からなかったら、病院行った方がいいよ。」
「ちなみに俺、琉球弁を勉強してきました!太陽って『てぃだ』って言うんですね!てぃだてぃだてぃだ‼︎俺は京都のてぃだ‼︎」
「そんな事ありませんからね。」
「ということで聴いてください‼︎うちなーのてぃだ‼︎」
そして、2曲目は2010年の課題曲、『うちなーのてぃだ』。直訳すると『沖縄の太陽』で、琉球音階で奏でられる陽気なメロディーが印象的だ。またこの曲はほぼ全パートにソロ*1があり、楽器紹介に最適だ。ちなみにソロ担当はユーフォが佳穂、チューバがすずめだ。
2曲目が終わると、またもやMCの時間がやってきた。
「以上、うちなーのてぃだでした。」
「それにしても、ここはなんか異世界っすね!京都じゃ見ない植物だらけ!」
「ここは沖縄の森をイメージしたエリアだそうで。自然を感じたい方におすすめです。」
ちなみにテーマパークのオープニングパレードということもあり、各エリアの紹介をやりながらパーク内を練り歩く構成だ。ここで吹いたら、次は別のエリアへの移動だ。
移動間は3曲目、オーメンズ・オブ・ラブ。最初のファンファーレの後に動き出すという構成だ。これもノリのいい曲なので、吹いてて楽しかった。中盤の木管の超速いメロディーも、聴いてる分には爽快感があってとても楽しかった。やってる側はしんどそうだったけど。
その後は遊園地のエリアに到着した。そして、いつものようにMCをしていると………
「さてさて、次は遊園地のエリアに到着です!」
「沖縄の景色を一望できる素敵な観覧車に、非日常的なスリリングな体験ができる大迫力ジェットコースター。その他にも色々面白いアトラクションが勢揃いです。」
「こんなところで好きな人とデートしたら、さぞ楽しいんだろうな〜♪」
「来世に期待ですね。」
「うるせえ‼︎」
梨々花が謎のカンペを出していた。えっ、なになに?
「えっと………今デートしてるじゃん………って、違いますからね⁉︎」
全く、アドリブで変なカンペを出さないでよ‼︎皆クスクス笑ってるし‼︎
「こんな女はさておいて、楽しい楽しいテーマソングを発表です!なんとこのテーマパークオリジナル楽曲を初披露‼︎」
大輝は興味無い感じだし‼︎上手く軌道修正したけどさ‼︎
「それでは聴いてください、『夢の世界へ』。」
そして、私は怒りながら、このテーマパーク用のオリジナルソングを演奏したのだった。
その後は、次のスポットへの移動となった。少し長めの曲のため、移動間は2曲披露した。楽曲はなんと課題曲2つ、『マーチ・ワンダフル・ヴォヤージュ』と『コンサート・マーチ 虹色の未来へ』。滝先生曰く、コンクールでやる課題曲の候補らしい。マーチ以外の3曲は今年はやらないのだと。どっちをやるのか、そして自由曲は何になるのか。とても気になるところだ。
そんなこんなで、別のエリアに到着した。
「おっと〜、ここはなんとラブラブスポット‼︎随分ロマンチックなエリアですねぇ‼︎」
「沖縄の海を一望できる上にツーショットが撮れるスペースもある、素晴らしいエリアです。」
そこは断崖絶壁*2の先に沖縄の青い海が広がっており、とても景観の良い場所だった。そして中央にはちょっと大きなハート型の、海をバックにした、カップル用の写真撮影スペースまである。大輝には縁のないエリアだ。
「本当に、隣に彼女が居てくれたら最高なのになぁぁぁぁぁ‼︎」
「私が彼女ですって?断じて違います。」
そして、観客に勘違いされてるだろうから言っておく。皆がえ〜って顔してるけど、そんなの気にしない。
「なんせ、あることを除けば、全く気の合わない2人ですので。」
「そのある事とは…………」
そして、いよいよこの曲を吹く時が来た。
「「音楽さ!」」
私たち2人が奏でるソリ。
「「それでは聴いてください。BUMP OF CHICKENさんの、ray。」」
皆に大輝とのコンビネーション、見せてあげる!
第四楽章は次で終わりです。お楽しみに!