練習番号A どきどきニューカマー
奏視点
久美子先輩たちも無事卒業し、いよいよ私たちは3年生になってしまった。今日はその初登校日。
「3年生のイケメン魔神。顔も良くて頭もいい。こりゃ、後輩たちもメロメロなんだろうな〜♪」
「そんなわけないでしょ。」
そして、いつも通り大輝は恥を晒していた。
「お前はいちいちうるせえ!第一お前が居なかったらなぁ⁉︎」
「早々に捕まってたね。」
「そこまでか⁉︎」
「こ〜ら、2人とも!痴話喧嘩しないの!」
「「痴話は余計!」」
「チワワ〜?」
「「違う!」」
ちなみに、クラス分けはこんな感じになった。
3年1組 大輝 美玲 さつき 求
3年8組 奏 梨々花
なんと、普通科の4人が同じクラスという。とんだ奇跡だ。
「や〜い、低音で久石だけ仲間はずれ〜!」
「かなぴ〜、可哀想………」
「彼氏と一緒じゃなくて、ね。」
「久石、僕と交換するか?」
「月永君、そんな事しなくていいから。」
「そういや、この間2人はお
「そ〜だよ〜♪」
「「流石カップル。」」
「「あれは先輩方からの贈り物が被っただけ‼︎」
もちろん私は普通科じゃなくて特進科だから、大輝と同じクラスなわけがない。しかも文系理系違うし。というか低音が私以外文系なんだね。1人くらい理系がいても良かったのにと、ちょっと思った。
6人で雑談しながら歩いていると、
「そういや、今年はどんな子が入ってくるのかな?」
さつきが新入生の話題を振った。
「俺に一目惚れした可愛い女の子とか‼︎」
「それは2年前に奏が入ってる。」
「違うから!///」
「大輝の冗談はおいといて、初心者は来ないだろうな。」
「全国金を目標に厳しい練習をする、って言ってるしね。」
「多分人数も少ないんじゃないかな〜?」
「少数精鋭、だな‼︎」
今年の1年生は恐らく、上手い子だらけになるだろう。あの目標を言う以上、初心者は入ってきにくい雰囲気になるし。なんなら多くの人が敬遠するかもしれない。もしかしたら、ユーフォは誰も居ないかもね。
「ちなみに〜、もう入部届もらってま〜す!」
そんな事を思っていると、梨々花がとんでもないことを言い出した。
「「「「えっ⁉︎」」」」
「入学式は明日だよね⁉︎」
「それに、なんで梨々花が部長って分かったんだろう?」
入学前の1年生が入部届を出している事実。しかも部長が誰か知っている。どういうこと?そんなの、梨々花の身内じゃないと知り得ないはず。
「そりゃ、私の家族だからね〜。」
そして、梨々花が見せてくれた入部届には、『剣崎
「おっ、ちょうど正門で待っててくれてる〜!」
どうやら妹は正門にいるらしい。果たして、どんな子なんだろう?梨々花に似てるのかな?それとも、全然似てなかったりして………
「おばあちゃ〜ん♪」
「「「「えっ⁉︎」」」」
なんと驚愕の新入生は、梨々花のおばあちゃんだった。
「お〜、梨々花じゃのぅ〜!」
「来てくれてありがと〜!」
「おっとこれはこれは……先輩方に挨拶せんといかんのぅ〜。剣崎です〜。あと〜、小百合です〜。よろしく頼むのぅ〜。」
「「「「お、お願いします!」」」」
綺麗な白髪に、どことなく梨々花に似ている、優しい雰囲気の顔。そこに刻まれた優しいシワの数々は、これぞまさに梨々花のおばあちゃんといった感じだった
「みんな〜、びっくりしすぎでしょ〜!」
「いや、するでしょ!2つ下の妹が出てくるのかと思ったら、60こくらい上のおばあちゃんが出てきたんだよ⁉︎」
「大丈夫じゃ。干支は他の1年生と同じ、
「1回り違うんですわ‼︎」
「2002年生まれかと思ったら、1942年生まれですか………」
「75歳*1………」
「ちなみに、フルート担当じゃのぅ〜。」
「わ〜い!梨々花の隣〜♪」
「梨々花が完全に孫の顔してる………」
昭和17年、戦前生まれのおばあちゃん。そんな人が、明日からは制服を着て北宇治の吹部に所属する。なんとも珍しい光景だ。久美子先輩たちが見たらびっくりするんだろうな。
ただ、びっくりだけで済ませちゃいけない。私は北宇治の副部長。方針に納得できない新入生の入部は断らなければいけない。梨々花のおばあちゃんだから知ってると思うけど、身内贔屓を無くすためにも、身内じゃない私から言わないと。
「あの、水を差すようで申し訳ないんですけど………」
「どうしたのじゃ?」
「ここ北宇治の吹奏楽部は、全国金賞を目指して活動しています。お孫さんから聞いてるとは思いますが、とても厳しい練習になると思います。それでも入部しますか?」
「もちろんじゃ。」
そう返す小百合さんの眼は優しくも真剣なもので、75年の人生経験を物語らせるほどに説得力のあるものだった。これなら大丈夫だろう。私はそう判断し、
「そうですか。では、よろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いするのぅ〜。」
「ありがとね〜、奏〜♪」
「いえいえ〜、こちらこそ〜。」
孫の梨々花に代わって、彼女の入部を受け入れた。
その後、私は大輝と帰っていた。
「いや〜、まさかりりりんのおばあちゃんが入ってくるとはな!」
「私もびっくりだよ。」
ちなみに梨々花は小百合さんと帰宅。そのため悲しいことに、大輝と2人きりになってしまったのだ。
「確か、元々フルートやってたんだっけ?」
「そうみたい。」
「表現力はピカイチなんだろうな。ただ、フルートは肺活量がかなり必要だから………」
「あの歳だと、そこが心配だね。」
そして、小百合さんの実力。圧倒的な人生経験からくる表現には期待したいところ。反面年齢による衰えは気になるところだ。そして大輝も目標がある以上、75歳のおばあちゃんにも全力指導する様子。そこは安心だ。
そんな事を思っていると…………
「おい杏奈ァ‼︎喧嘩で全国制覇するんじゃなかったのかァ⁉︎」
「何勝手に北宇治行ってんだァ、テメェ⁉︎」
「うるせえな‼︎私の勝手だろ‼︎」
鴨川の河川敷でヤンキーたちが喧嘩してるのが見えた。うわぁ、ああいうの京都でもあるんだ………。つーか1人は北宇治って………。うち、そんなヤンキー高校じゃないんだけど。
「あの子たち、もしかして俺を取り合ってるのか?」
「大輝、喧嘩に混ざってきていいよ。」
「うるせえ久石‼︎俺が勝てるとでも思っているのか⁉︎」
「負けるのかよ。」
そして、そんなヤンキーすらも守備範囲の大輝。いっそのこと、ボコボコに殴られたらいいのに………と、思ってしまった。
そんな事を思っていたら、次の日に…………
「すいません………。あの、吹奏楽部って、ここですか?」
なんとそのヤンキーの子が来たのだった。長い金髪に鋭い目つき。そして耳につけた銀のピアス。北宇治の制服を着ているとはいえ、どこか人を殺しそうな雰囲気が漂っていた。現に彼女の恐ろしいオーラを見た他の部員や1年生は、彼女から自然と距離を取っていた。
「こここ、ここだぜ‼︎」
そして、明らかに大輝がビビっていた。昨日は可愛いとか言ってたくせに。近くに来たら怖いってか?つーか、3年男子が1年女子にビビんなよ。
「ありがとうございます。」
「ちちち、ちなみに!ここって全国金を目指してガチ練してるから、だいぶ厳しい練習になると思うけど……っ!だだだ、大丈夫か⁉︎」
「大丈夫です。よろしくお願いします。」
ビビりながらもちゃんと聞く大輝。そして、ヤンキーちゃんはどうやらやる気があるみたいだった。
「わ、分かった!ちなみに楽器は………?」
「チューバです………」
「ちゅ、チューバ‼︎俺もだ、よろしく‼︎」
「私はユーフォ3年で副部長の久石奏。こっちはチューバ3年でドラムメジャーの荒川大輝。コイツすぐセクハラするから、なんかあったら言ってね。」
「そそそ、そんなことしねえよ‼︎」
「あ、あの荒川先輩………よろしくお願いします………」
「も、もしかして俺のこと知ってた?」
「はい………。一昨年ソロコンで全国金を取られてたので………。本当にすごいです………」
「あああ、ありがとな!」
そして、楽器はチューバ。まさかのパートの後輩かつ名前を覚えられていた事実に?大輝が更にビビり散らかす。上手いんだから堂々としてなよ。
「えっ⁉︎チューバなの⁉︎やった〜♪私チューバ3年の鈴木さつき!よろしくね!」
「1年の
「もしかして、経験者⁉︎」
「はい。中学の時やってました。」
「おお!これは頼もしいね‼︎」
「ありがとうございます……///」
そんな大輝とは裏腹に、はしゃぎながら湊さんに近づくさつき。このコミュ力の高さを見ると、1年生係にして良かったと心の底から思った。あと、湊さんは案外礼儀正しいな。ヤンキーだから、上下関係は絶対とか?
そんな事を思っていると………
「あの〜、ユーフォって席あります〜?」
なんともまあ、ものすごく見覚えのある顔と声に、ものすごく見覚えのあるデカリボンをした女の子がやってきた。どう見ても一昨年の部長の妹だ。しかもユーフォ担当という。もしかしたら、夏紀先輩と吉川先輩の隠し子かもしれない。
「えっ、優子先輩⁉︎」
「ちょっと‼︎クソ姉貴の名前、出さないでもらえます⁉︎」
「やっぱ妹なんだ。そっくりだね。」
「ぜっんぜん似てないですから‼︎私は元南中のユーフォ奏者・吉川
「ごめんな!よろしくね、華子ちゃん!」
「よろしく、吉川さん。」
そして、姉に似てとても気が強い。そんな人が同じ楽器の1年生で入ってきた。これはこれは、大変な1年になりそうだ。そう確信した日だった。
低音は湊杏奈(チューバ)と吉川華子(ユーフォ)の2人だけです!よろしくお願いします!