奏先輩
大輝の提案から1週間後のこと、
「それでは、オーボエの特別講師を紹介します。」
「えっと………」
「この子はここのOGで、音大のオーボエ専攻の鎧塚みぞれ!私はただの友達の傘木希美!よろしくね!」
「よろしくお願いします………」
鎧塚先輩が傘木先輩を連れて、北宇治にやってきた。
「「うわ〜、のぞ先輩だ〜!お久しぶりです!」」
「久しぶり〜!皆もう3年生か………って、おばあちゃん⁉︎」
「この方は梨々花のおばあちゃんです!」
「どうも〜、剣崎です〜。あと、小百合です〜。よろしく頼むのぅ。」
「おお、口癖もそっくり!よろしくお願いします‼︎」
傘木先輩はフルートの子達と戯れるとして………
「今日の練習は、オーボエが鎧塚先生の特別レッスン。その他のパートはパート練習でお願いします。」
「「「「「はい!」」」」」
私たちは、普通にパート練習となった。
「じゃあ美玲、俺オーボエの練習見てくるから頼んだ!」
「分かった。」
「滝先生、俺たちもオーボエの練習を見学しましょう!」
「そうですね。今回のパート割は、コンクールの明暗を左右しますからね。」
そして、大輝はオーボエの特別レッスンへ。となれば、残された私たちでのパート練習だ。大輝が居ない間に、しっかり7/8のリズムを身体に染み込ませないと………
梨々花視点
なんと、みぞ先輩が帰ってきました!しかものぞ先輩付きで!
「みぞ先輩、お久しぶりで〜す!」
「剣崎さん、お久しぶり。元気だった………?」
「はい!」
「あの………私のこと、覚えてます?」
「覚えてるよ。加千須さん………でしょ?」
「はい!ありがとうございます!」
あ^〜、久しぶりのみぞ先輩はサイコー♪本当に眼福だよ〜。
「みぞ先輩!俺と結婚する約束は覚えてます⁉︎」
「あれ、久石さんとは別れたの………?」
「別れてないですよ〜♪」
「そもそも付き合ってないですから‼︎///」
どうやら大輝君のことも覚えているみたい。流石〜!その2人、もうすぐ付き合いますよ!ソースは私の勘♪あとは2人が自分の気持ちに気づくだけさ〜!
さてと、癒しタイムは置いといて………ちゃんとレッスンを受けないと!今年のオーボエは大役!しかもみくちゃんと2人で!
「前置きは置いといて〜、みぞ先輩……じゃなくてみぞ先生‼︎レッスンお願いしま〜す!」
「「お願いします!」」
「鎧塚先生、よろしくお願いしますね。」
「分かりました………」
そして、みぞ先生のレッスンは始まった。
しばらく私とみくちゃんはオーボエとコーラングレの両方を交代交代で吹いていたのだが………
「鎧塚先生、どちらがいいとかありますか?」
「正直に言っちゃって下さ〜い!」
「えっと………かなり悩みます。正直どちらが吹いてもいいような………」
私とみくちゃんに大きな差は出なかった。
「滝先生の好みはどっちですか?」
「私も正直言って、これだけでは決めきれないですね。」
「みぞ先生!大変なのってどっちですか?」
「えっと、コーラングレの方………というより、それをやる人かな。慣れない楽器で重要なソロを吹かなきゃいけないから………」
「滝先生にみぞ先生。コーラングレ吹く人は課題曲を吹かない、はありですか?課題曲は楽譜通りの編成でやらなきゃいけない。課題曲にコーラングレは無いから、必然的にコーラングレ奏者はオーボエも吹くことになる。でも、両方やるのはかなりの負担でしょう?」
「滝先生………。課題曲を全く吹かないことって、出来るんですか………?」
「可能ですね。人数が増えなければOKです。あまりやったことはありませんが。」
そして、薄々分かってたこと。コーラングレをやる方が大変だということ。吹いてみて思ったけど、コーラングレはおっきいオーボエだけど感覚が違う。リードも違うから別で作らなきゃいけない。となったら、自ずとやる方は決まってくるだろう。私は先輩だし、部長だ。だから大変な方を…………
「分かった。じゃあ私が…………」
「それなら、私がコーラングレをやります‼︎」
「みくちゃん⁉︎」
と思ったら、みくちゃんが手を挙げた。嘘………でしょ?
「りりりん先輩は部長で受験生です。それだけでも大変なのに、もっと大変な思いをさせるわけにはいきません!」
「いや、でも………」
「りりりん先輩、私に恩返しさせてください!」
そんな、私のためを思ってやってくれるなんて………本当にありがたい!私、泣いちゃうよ…………っ!
「うわぁぁぁぁん‼︎」
「りりりん先輩⁉︎」
「ありがとねぇ、みくちゃぁぁぁぁん!」
こんないい後輩に恵まれてよかった!オーボエの後輩がみくちゃんでよかった!みぞ先輩から受け継いだものを、全部この子に渡すんだ!
「私もそれでいいも思う………。2人とも、頑張って。」
「みぞ先輩〜‼︎ありがとうございますぅ〜‼︎」
「ありがとうございます‼︎」
「それでは、決まりですね。」
「2人とも、頼んだぜ!」
「「はいよ!」」
その後、私たちはみぞ先生のレッスンをみ〜っちり受けたのだった。
奏視点
その日の練習のお昼休憩のこと。
「うわ〜!みぞれ先輩に希美先輩、お久しぶりです!」
「華子ちゃん、久しぶり‼︎大きくなったね〜!」
「はい!もう高校生になりました‼︎」
「優子は元気………?」
「残念ながら元気です‼︎」
「そっか………。それは良かった………」
「良くないですよ、あんなうるさいクソ姉貴‼︎」
華子が鎧塚先輩たちとお姉さんの話で盛り上がっていた。
「まあ、夏紀先輩を連れてきてくれることだけは、褒めてあげなくもないですね。」
そして、お姉さんの影響で夏紀先輩の事も知っている、どころか好感度が高そうだった。お姉さんは表バチバチ裏仲良しだったけど、妹は違うのかな?
「華子ちゃん、夏紀のこと好きだもんね〜!」
「はい!だってあの人見てユーフォ始めたんですもの!」
「そういえばそうだったね!」
そして、驚愕の事実判明。まさかの始めたきっかけが夏紀先輩。そんな事ある⁉︎確かに自分の姉が仲良かったら、嫌でも演奏を聴く機会が多いけどさ!
「あんなカッコよくていい人なんて、そうそう居ないですよ〜!それなのにあのクソ姉貴はツンケンしてさぁ!マジ有り得ないんですけど〜!」
「あはは!華子ちゃんは優子のことが大好きなんだね!」
「人の話聞いてました⁉︎」
「なんか嬉しそう………」
「人のこと見てました⁉︎」
そして、意外とお姉さんのこと好きなのかな?面白いから揶揄おっと!
「お姉さんに似たデカリボン付けてて、嫌いなわけないと思いますよ。」
「だよね⁉︎」
「チビリボン先輩は黙ってくれます⁉︎」
チビリボンなんて初めて言われた。大輝にも言われたことないのに。
「奏先輩、華子ちゃん!あの………」
「あっ、佳穂先輩だ〜♪今日の姿もマジ天使〜♪あの〜、久石先輩に虐められたんで、慰めて下さ〜い♪」
「えっと………、一緒にご飯食べよ?」
「は〜い♪」
「「おぉ………優子そっくり!」」
「ですよね。」
「違います‼︎」
そして、相変わらず佳穂にはベッタリな華子。どうやら一個上の先輩に懐くのはお姉さんと同じなようだ。あの2人が言うなら間違いないだろう。
「久石先輩は大輝先輩とでもご飯食べてて下さい!あっかんべー‼︎」
にしてもコイツ、本当に生意気だなっ‼︎
「なんか、久石ちゃんが1年生の時の夏紀への態度に似てるね!」
「分かる………」
「そんな事………ないですよ。」
「ある感じじゃん‼︎」
私は2年前そんなじゃなかった………とは思えないかも。まあ、大輝も後藤先輩に対しては同じような感じだったし、いいか。あと、あそこまで好き嫌いを表に出してた覚えはないし。
「はぁ⁉︎久石先輩ったら、あの夏紀先輩に失礼な態度とってたんですか⁉︎マジ許せないんですけど‼︎」
「自分も失礼な自覚あるじゃん。」
しかも華子はさぁ、私にキレるのかよ‼︎自分だって同じくせに‼︎
「佳穂先輩、あんな先輩ほっといて行きましょう‼︎」
「い、いや、ダメだよ!奏先輩、今日
「佳穂ってたまに、普通に失礼だよね?」
「そ、そんな事ないですよ!」
「仕方ないですね。佳穂先輩が言うなら、一緒に食べてあげましょう♪」
「頭のリボン、口に突っ込むよ?」
そして、私は生意気な後輩2人と昼ごはんを食べたのだった。
みぞれ視点
今日初めて先生呼びされた………。なんか慣れないな………。でも音大に入って、将来音楽を仕事にしていく以上、いずれこうなるのか………。なんか違和感まみれの、でもとても楽しかった1日だった。
そして、剣崎さん。随分成長したな。部長にもなって、それでいて前みたいに明るく喋ってくれて。その姿を見れたことが、何よりも嬉しかった。
ということで、梨々花がオーボエソロ、加千須みくがコーラングレソロになりました!オーボエが曲の最後のソロ、コーラングレが後半部の最初のソロになります(両者前半部にも、ちょっとしたソロがありますが)。曲を締めくくる綺麗なソロと、戦いから一転して友情が芽生える美しいシーンのソロ。2人には頑張ってもらいましょう!