奏視点
いよいよ、修学旅行の日がやってきた。今年は例年より早めの5月末。なんとか梅雨の時期を回避し、快晴の中、私たちはその日を迎えた。
「さつき、美玲、月永君。大輝をよろしくね。」
「「「はいよ!」」」
「しゃあ!うるせえ女から離れられて自由だ〜♪」
「大輝君、かなぴーにそんなこと言わないの!」
「いつもお世話になってるんでしょ?」
「素直になれよ。」
「うるせえな!俺はいつだって素直だ!」
「だろうね。それじゃあ梨々花、行こっか。」
「は〜い♪」
そして、修学旅行中はもちろんクラス単位での行動なので、私と大輝は別々。さつき達に大輝を押しつけ、晴れて自由を手に入れた。
「奏〜。」
「何?」
「寂しくなったら、いつでも大輝君に会わせてあげるからね!」
「そんな事は未来永劫無いから大丈夫。」
私は梨々花達クラスメイトと自由行動。今日の18:00までに宿に帰って来れれば、あとは何しても大丈夫。さてと、計画していた場所に行くとするか………
そして、私たちはまず、
「「「「動物園〜!」」」」
上野動物園へとやってきた。上野駅から徒歩5分、大都会の中に展開される自然の空間は、日頃の喧騒を忘れさせてくれた。
「ねえねえ〜、パンダ見に行こうよ〜!」
「「「「賛成!」」」」
そしてなんといっても有名なのがパンダ。リーリーとシンシンという夫婦と、その2人から生まれたシャンシャンという可愛い赤ちゃん*1。テレビでも何度か見たことのある子たちだ。梨々花やクラスの他の子達もそれが目当てだったようで………
「「「わ〜、可愛い〜!」」」
「仲良し家族だね〜。」
「そうだね。」
パンダが見えた瞬間、大はしゃぎしていた。
「お、笹食べてる!」
「パンダが笹食べてるところ、初めて見たかも〜。」
そんなはしゃぐ私たちを全く気にすることなく、3頭のパンダは笹に齧り付いてた。シャンシャンも子供ながらもう笹を食べられる歳になったようで、小さな身体で笹を一生懸命食べてる姿が見ていて可愛らしかった。
「可愛いね。」
「もしかして、あれが奏の将来………?」
「なんでよ?私は笹食べないけど。」
「いや、違うよ〜。オスとメスと子供。つまりは………」
「大輝と家族になるつもりないし‼︎///」
「私まだ何も言ってないのに〜。自覚あるじゃ〜ん。」
「自覚じゃない‼︎皆がそう揶揄ってるだけ‼︎///」
あと、私は大輝とああなるつもりはないから‼︎つーか、なんでここに来てアイツのこと思い出さなきゃいけないんだよ‼︎ムカつく!
「えっ、奏ってもう子供いたの⁉︎」
「あの彼氏君とそこまで………」
「そ〜だよ〜♪」
「違うから‼︎///」
クラスメイトにまで大輝のこと覚えられてるし‼︎マジで違うから‼︎あんな奴と結婚したら、それこそ人生の墓場だよ‼︎そんな事を思いながら、私は他の動物を見た後に、上野動物園をあとにしたのだった。
そして、次に私たちが向かった先といえば………
「お〜、これが雷門か〜!」
歴史的な建物が有名な、浅草へとやってきた。中でもここ雷門は赤い大提灯が有名で、浅草の顔とも言えるような場所だ。有名な場所だからか、沢山の観光客で賑わっており、
「お〜、これが雷門か〜!すっげ〜!」
「Wow! It's amazing‼︎」
「来れてよかったよ!」
「てやんでいてやんでい‼︎」
「左を押してください‼︎中を押してください‼︎右を押してください‼︎」
「あっ、ママ先輩‼︎お久しぶりです‼︎」
「あれっ、大輝君?どうしてここに………?」
「先輩と付き合いたくて、つい来ちゃいました!」
ああやって、黒江先輩をナンパする大輝が…………って‼︎
「ちょっと大輝に黒江先輩⁉︎何してるんです⁉︎」
嘘でしょ⁉︎大輝がナンパしてるのはいつものことだけど、黒江先輩までいるなんて‼︎確かに、東京の国立大に進学したとは言ってたけど‼︎ここで出会すなんて、そんな偶然ある⁉︎
「あっ、奏ちゃんだ!お久しぶり〜!」
「げっ………!なんで居るんだよ⁉︎」
「げっ、じゃない‼︎つーかどういう状況です⁉︎」
「う〜んとね、奏ちゃんが私に嫉妬して、大輝君のところに来たって状況かな?」
「「「「大当たり〜!」」」」
「違います‼︎///」
つーか、全く合ってないんだけど‼︎梨々花に加えて、大輝と同行してたさつきや美玲も同調してるし‼︎
「本当のことを言うと、大学の空きコマで浅草に遊びに来たの!」
「なんだ、紛らわしいことしないで下さいよ。」
「久石、ここから先は俺とママ先輩の時間だ。大人しくクラスの人たちと戯れててくれ。」
「ダメに決まってるでしょ‼︎というか黒江先輩も揶揄わないで下さい‼︎」
「福岡に続いて2人の旅先で会うって、すごい偶然だね!夢みたい!」
「とんだ悪夢なんですけど‼︎」
これじゃあ福岡の時と一緒じゃん!あの時はお互い初対面だったから、まだマシだったし‼︎
「それはこっちのセリフだ‼︎人がせっかくママ先輩をオトそうとしてるのに‼︎」
「無理なものは無理‼︎迷惑だからやめてあげな!」
「そんな事ねえだろ‼︎ね、ママ先輩!」
「私はこの後授業があるから、あとは2人で楽しんでね〜♪」
「「ちょっと‼︎」」
しかも黒江先輩行っちゃったし‼︎とにかく早く梨々花と合流しないと‼︎このままだと大輝と2人きりになっちゃうし………
「「あれ?」」
と思ってたら、いつの間にか梨々花やさつき達が居なくなっていた。私たちは完全に置いてかれてしまったのだ。とりあえず、メッセージを送らないと‼︎えっと、梨々花に………ん?梨々花からメッセージが来てる………?
『奏〜、あとは大輝君と楽しんでね〜♪』
って、わざとかよ‼︎ふざけんなし‼︎なんで東京に来てまで、コイツと一緒に居なきゃいけないんだよ‼︎
「くそっ!さっちゃん達、俺を置いてきやがった‼︎」
しかも大輝もかよ‼︎なんで皆はこういう事するのかな〜⁉︎
「こうなったら、誰かナンパするしか………」
「東京に来てまで、人様に迷惑かけない。」
「お前だってかけてるだろ。俺に。」
「大輝は人間じゃないし。」
「うるせえ、悪魔め‼︎」
とりあえず、コイツは私が見張ってないと、何をしでかすか分からない。現状をマシにするためにも、仕方なく私が隣で監視することにしたのだった。
その後、私たちは浅草を散歩していた。
「くっそ〜!隣にいるのがお前じゃなかったら、どれだけよかったか………」
「それはこっちのセリフ。なんで浅草に来てまで、アンタと一緒なのよ?」
「さっちゃん達がハメたからだろ。」
「それはまあ………そうだね。」
とりあえず、何か美味しいものを食べて気を紛らわそうか。まずはあそこにたい焼き屋さん。その次はパン屋さんに、さらに次は雷門メンチカツ屋さん。どれも美味しそうで、困っちゃうな〜。
「ねえ、大輝。」
「なんだ、久石?飯なら奢んねえぞ?」
「ちえっ。」
「食いたいなら自分の金で勝手に食え。」
「じゃあ、大輝も一緒に食べよ♪」
「お前と食べ歩いたら、胃が爆発しちまうよ‼︎」
どうやら大輝は奢ってくれない様子。まあいいや。今回は特に世話した記憶もないし。普通に自分のお小遣いの範囲内で食べよう。そう思って、気になるものの値段を足し合わせたが…………
「何してんのお前?」
「…………全然足りない。」
「金が?」
「うん。」
余裕で1万円、小遣いの範囲内を超えていた。こうなったら、やることは一つだ。
「ねえ大輝さん、ちょっとお願いがありまして………」
「なんだ、久石?」
「あの…………お金、貸していただけないでしょうか?」
「お前、ここに捨てるぞ。」
こうして、私の渾身のお願いは却下されたのだった。
しばらく浅草を食べ歩いた後、私たちは地下鉄に乗り………
「「おお、これがスカイツリーか!」」
東京スカイツリーへとやってきたのだった。